「ここが体育館だよ!」
ドーンとそびえ立つ大きな扉。
この先からは微かに人の話し声が聞こえる。
ただでさえアンカーで、更には爆睡して30分も待たせてしまったときたもんだから
正直、少し緊張していた。
「早く開けてくださいよ」
『ああもう、はい今開けますよって…』
「この扉ちょっと重いから気をつけてね」
ぐ、と力を入れると重苦しい唸り声のような音を立てて扉は開いた。
その音は室内に鳴り響いてしまっていたようで中にいる子たちが一斉にこちらを見る。
見るからに元気そうな子から隅で怯えている子、不安そうにしている子から落ち着いている子まで、個性豊かな面々。
20数名の同年代と思わしき少年少女が集まっているという事実が何よりも大きく、逸る鼓動を落ち着かせてくれた。
「…君、随分遅かったね。」
「わあ!これがニッポンの主役は遅れてshow up!というものなのですね!」
「あはは!まあ、確かに登場の仕方はヒーローみたいだったかもね!」
ほっぺに寝跡さえ付いてなければ♪と腰あたりに大きなリボンをつけた彼が悪戯っぽく笑う。
ギョッとして慌てて頬を触ると確かに少しだけ窪んでいるような感触が…。
最初に口を開いたプリン頭の茶髪の彼は変わらない表情で見つめてくるだけだけど、日本語と英語が入り交じった喋り方をする彼女は大きな目を細めて楽しそうにしていた。
彼女の隣には畏まった服装の少年が佇んでいて、2人は元々知り合いみたい…?
「うふふ、ホントにおもろし…おろもしい……?です!」
「おもしろい、ではないでしょうか。確かに面白いやり取りではありましたね。」
「そう!おもしろい!思わず笑ってしまいました、very hilarious!」
こんな風にやり取りをしてみせた。
2人の間に流れる空気は穏やかで、緊張も不安も抱いていないようだった。
見知った人物がこれまでと変わらずそばに居てくれているからかもしれないな…。
コツ、コツ、コツ。
後ろから靴の鳴る音が聞こえてきて、ふと後ろを見てみると警察官のような格好をしている男の子が立っていた。
「ああ…驚かせてしまいましたか?すみません。全員が揃ったようですし、そろそろ自己紹介でもしませんかと言おうと思いまして。」
彼の言葉が聞こえていた子達が「確かに」「そうだね」と賛成の意を見せ頷いている。
始めは申し訳なさそうな、困ったような笑顔だった彼も周囲の反応が悪いもので無いと分かると嬉しそうな笑顔に変わり、さあ誰から始めましょうかと色違いの目を動かした。
トップバッターを切るのは恥ずかしいのか何なのか、先程のワイワイとした空気が嘘のように静まり返る。みんながみんなお互いの顔を見つめ様子見しているようだ。
『……、…あ、のさ!みんなのこと待たせちゃったし、ここに来るのも最後だったからさ。トップバッターでも良い…かな?』
一拍の間を置いて、優しい声。
「はい、良いですよ」
声色通りじわりと心のあたたかく染まるような顔をした、先程の警察官のような彼。
その言葉に続いて、女の子3人の声。
「ぃ、良ぃ、って思ぅ…!」
「うんうん!おまえ、勇気あるねー!」
「気負わなくていいんじゃないかなぁ、まぁ緊張はしちゃうんだろうけどぉ」
コスプレのような軍服を着ている子と、棒のような杖のような物を持っている子、やけに背の高い可愛らしい制服を着た子が首を縦に動かしながらこちらに視線を投げていた。
無愛想な彼と穏やかな彼女も、
「みんな優しい人達だね」
「また待たせてますよ、ほら」
と隣に立ってくれた。
初対面なのに空気間が妙に心地良い。
それは体育館に入ってから感じ続けている。
私達も先に自己紹介しちゃおうか、
ええ…それ本気で言ってます?
なんて2人の会話をBGMにして深呼吸。
『…じゃ、改めて。』
『皆のかなちゃんこと歌方奏瑛だよ〜。よろしくね』
「次は私でもいいかな?」
「私は超高校級の作曲家の暁美奏撫です!あなたのために素敵な音色を届けるよ!」
「…はあ、仕方ないですね」
「僕は超高校級のスパイ、柊夏月です。あなた達と馴れ合う気は無いです。」
俺を挟むようにして立っていた彼女と彼、基、奏撫ちゃんと夏月くんが自己紹介を終える。
この後はどうしようかなんて考える隙も与えずに、夏月くんの隣に立つあの子が声を出した。
「ふむ、それじゃあ順番は僕から時計回りでもいいんじゃあないのだろうか!」
もちろん異論が出るはずもなく、その案は即採用されて提案者のあの子はにっこりと嬉しそうに笑った。
「はっはっは!僕は宍戸奉憧というのだよ!超高校級の幸運でね…おっとこんなところにバナナが!!!!!!!」
「幸運だって?……それはだめだ。ああ、本当に…政府に認められるくらいの、なんて。」
「はじめまして、僕は幸運…いや、麻堂っていうんだ。なんて言ったら良いんだろ…あんまり近くに寄らないでね、君のことが嫌いになったから。」
「ありゃ〜、もしかしなくてもバチバチ系?あ、僕の番かなぁ?」
「僕は宇留賀ユキで〜す。名前くらいは聞いたことがあるんじゃないかなぁよろしくねぇ。」
「あら!ピンキーターボですか?私日本語のお勉強はそのanimationでしたんです!」
「皆様初めまして。私、アンジェリーナ・ウィステリアと申します!どうぞ親しみを込めて、アンジュとお呼びください。」
「次は私でしょうか?私はアンジェリーナ様の執事にございます。」
「私はラピス・ヴァイオレットと申します。どうぞお気軽にラピスとお呼びください。」
「……………はぁ…」
「終夜蒼太郎。超高校級の死刑囚。」
「ほう…死刑囚、ですか。…ああいえ、職業柄気になってしまっただけですよ?」
「私、超高校級の警察官、楪莎莎匁と申します。何か困ったことがありましたらどうぞ、御気軽にご相談くださいませ。」
「はいは〜い!次私良いれすか!好きなものは晴れの日、あとは飴〜!」
「わたし、雨野千晴!よろしくね!」
「……あ、俺の番ですか?…えっと好きなもの、は…甘いもの…?」
「…一ノ瀬です、よろしく」
「ふん…ここが何処だか知らないけれど、私は私のすべきことをやるだけね」
「超高校級のボディーガード、小山壱華よ。状況把握に優れているの。よろしく頼むわね!」
「ぁ…っ、ぁ、ぅ…す、好きな、もの!ぉ、ぉに、ぉ肉…」
「た、た、小鳥遊ぁるむ。く…空軍、っ、空軍、です!」
「……好きなもの。人形。」
「…うさみ。超高校級の人形師。」
「もう俺の番か。好きなもの言い合う流れか?筋肉とかスポーツが好きだな…」
「俺は超高校級の理学療法士、不知火流星だ!困った事があれば頼ってくれ、少しでも力になれるはずだ」
「お客様方に笑顔のプレゼント!ちなみに俺はトランプマジックが好きだよ、もちろんお客様のこともね♪」
「やぁやぁ皆さん、俺は静野未依葉。マジシャンだよ♪」
「明るい子が多くて何よりだわ。ええと…私は紅茶が好き。」
「わたしはレディグレイ。よろしく、ね?」
「アタシは…ビスクドールが好きよ。あと、雨の日かしら…」
「アタシはオレーシャ・ホーネット…仲良くしてちょうだいね…」
「へえ〜!あたしはね〜、機械が好き!あ、次はあたしの番?」
「ヤッホ〜!あたしは深作葉金!超高校級の機械技師だよ、よろしくね〜!」
「私は歴史が好き…なんて。ふふ、それじゃあ少しだけ、お時間ちょうだいしますね」
「私、東雲飛鳥と言います。皆さんどうぞよろしくお願いしますね!」
「あ〜…俺は芸能人が好き!って感じ。…推しがいる前で言うとか、マジ恥ず…」
「はじめまして〜、二藤まどかで〜す。女みたいな名前だけど男だから、よろしく」
「おまえたち好きなものあっていいね〜!あーしもバンドのみんなのこと好きなんだけどさ!」
「あーしは世子子きる!よろしくね〜!!」
「ええと…わたしは漫画全般が好き、かなぁ…あと、旅行とか」
「わたしは夢描えがき。えがきちゃんって呼んでくれたら……嬉しいかも……」
「あ、えっと…お、俺は…お、俺…子供とか…」
「あの、俺っ一条、琴梨…です」
「好きなもの…好きなもの、か…うーん…ハンバーグ…?」
「アッアー………えっと……星霰美織…です…ハイ……」