ユメミグサロンパ   作:24社長

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日常編②

__五番目の人達、どうぞ!

 

 

待っていましたと言うようにはじめから二人並んで道なりに沿って歩いていく。

周りの生徒は何か珍しいものを見たかのような顔をして見送っているようだ。

 

元より仲の良かった間柄だったにしろ、これまでよりも更に親密度の上がったような…お互いを見るお互いの目や雰囲気が、どことなく違いを醸し出す。

 

 

「じゃあ、行こっか…まどか」

 

「ん…懐中電灯はおれが持ちますよ、…かなさん」

 

 

奏瑛をかなさんと呼び、まどかをまどかと呼ぶ姿は慣れているものではなく、ぎこちなさは残りつつも満足そうにしていた。

 

奏瑛の耳に何かの音が入り込む。

 

 

「…ね、まどか。何か…聞こえない?」

 

「え?…ああ、確かに。なんだこれ?聞いたことはあるけどいろんな音が混ざってて分かんねえな…」

 

 

その音は前に進むにつれて大きく響くようになり、どうやら音の正体は先に進めば分かるらしい。

手招きされているような感覚に陥りながらも二人は他愛のない話を挟みつつ、出処を探ることにした。

 

やがて叢の中に置かれた茶深い四角形を見つける。

 

 

「あ!オルゴールから流れてたみたいだね、随分年季の入った物だけど…凄いなぁ、まだ音が流れるなんて」

 

「きっと誰かにとても大切にされてたんでしょうね。ほら、ここ…掠れてて読めませんけど名前書いた跡みたいなのがありますし」

 

 

どこ?と奏瑛がオルゴールを持ち上げると、ガチャガチャガチャガチャ!!!ガンガンガンガン!!と突如不協和音を掻き鳴らし、音もなく壊れてしまった。

 

驚いたまどかは思わず懐中電灯を地面に落とす。

拾うまでの間、お互いの姿が視認出来ないほどの暗闇が確かに存在していたわけだが、そんな少しの間でこんなことが起きるとは誰が予想できただろうか?

 

 

「…うわぁっ!な、なになに…どうなってんの、これ!さっきまでは無かったよね…?気配も音もしなかったんだけど…!?」

 

「……。…、かなさん怖かったらおれ、前に行きますよ。推しを守ってこそオタクだし」

 

 

二人とオルゴールを囲むように大量に投げ出されているのはマーチングバンドの人形。どれもご丁寧に首やら足やら腕やらがない、人形好きの人が見たらある意味発狂物の趣味の悪い嗜好品。

 

体を強ばらせ固まりながら進む奏瑛とは違い、まどかは涼しい顔をして奏瑛を気遣っている。

しかしまどかも怖くないわけではないのだ。その証拠に先程から反応がワンテンポ遅れたり、会話に少々のタイムラグが生じている模様。

 

その後もなんとか恐怖をやり過ごし、肝も冷えたところでもう少し出口だ、ちら、と後ろを振り返ると、

 

 

「わーっ!ちょっとこれ後ろ着いてきてるんだけど!…えっもしかして本物の怪奇現象…?」

 

「…いや、仮に本物だとしても、ほら、向こうには物理的に強そうな人いるからきっと大丈夫、多分…」

 

「目が泳いでるよまどかく…まどか!…走ろう!うん!」

 

「……ですね、よし…っ、ああ、そこデカめの石があるので躓かないように気を付けてください!」

 

 

ぞろぞろと着いていったのか、はたまた、紐で引き摺られて来たのか、至る所が欠損しているマーチングバンドの人形達が初々しい二人を見送る。

 

その更に向こう側に、五体満足に笑っているマーチングバンドの格好をした…………………。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

奏瑛・まどか CLEAR!

 

 

 

 

__六番目の人達、どうぞ!

 

 

あからさまに嫌がる男をなんとか宥め、入口へと連れていく男。

怖いわけではなく、単純に面倒だから嫌がっているのだということも分かっていて尚、そうしているんだからタチが悪い。

 

 

「ほーら、行くぞ。大丈夫だ、きっとすぐ終わるから…」

 

「はぁ…仕方ないね。こういうのも不運故なのかな、つくづくツイてない」

 

 

ため息混じりに了承した様子の幸運を見て、流星は安堵の息をつく。

イレギュラーなイベントに何か違う幸運が見れるのかもしれないという淡い期待を抱きながら、流星は幸運の背を押し、中に入っていった。

 

 

「うわっ、何の音だ…?」

 

「何かの声を逆再生にしたんじゃないかなぁ」

 

 

「んー…あ。そこ、仕掛け役いるよ流星。ああ違うそこじゃなくて…右の方の草むらね」

 

「お。…って、何してるんだきみらは…。それにしてもよく見てるな、ドンピシャだったぞ」

 

 

期待を裏切り続ける幸運だが、流星はそんな事微塵も気にせず、むしろ至って冷静な幸運にいつも通りだと安心感すら抱きつつある。

 

一方で、流石の観察眼を持つ幸運にいとも簡単に居場所をバラされてしまい、ムードもクソも無くなってしまった奏瑛とまどかは複雑そうな表情で草むらの中からひょっこり顔を出した。

 

どうやら、自分達の番が終わった後に仕掛け役に回ってみたらしい。有りなのかは置いといて、仲睦まじげで良いんじゃないだろうか。

 

と、そこまで進み、流星はある事を思い出す。

すっかりバックグラウンドミュージックとなってしまってはいたものの、先程から微かに赤ん坊の泣き声が木霊しているのだ。

 

 

「そう言えば、今更なんだけどどっかから子供の泣き声しないか?えーん、えーんってやつ」

 

「するけどどうせ録音なんじゃないのかなぁ?在り来りだしさ。それより、流星____」

 

 

ちょん、と幸運が流星の服の裾を摘んだ瞬間だった。

流星は一本だけ伸びた草に手が触れてしまい、小さく、しかし深く指先を傷付けてしまう。

 

滲むビビットカラーを目にした途端、幸運はサッと顔色を変えて流星から距離を取ろうと二歩、三歩と後ろへ後ずさる。

 

気にする間もなく元通りとなり、先へ進もうと促してくる幸運は違和感の何者でもなく、流星は道中何度も彼に質問を投げかけた。

その答えが返ってくることはなかったけれど。

 

 

「…待てって!もしかして、俺がさっき草で指切ったのを気にしてるのか?あんなの、ただの偶然だって!」

 

「……分かんないじゃん、もしかしたら僕のせいかもしれない」

 

 

ひとつ、ぽそりとか細く返ってきた言葉といえば、そんな自分を危惧するかのような、寂しい言葉。

 

 

「アンタが傷付くのは……嫌みたいだから。どうしようもなく、」

 

 

「……大切な人を、これからも僕の不運に付き合わせるのは……とても、見るに堪えないし…」

 

 

赤ん坊の咽び泣く声が響く中、珍しくしおらしい様子の幸運が酷く愛おしいもののように見える。

 

控えめに背中に顔を埋める彼を後ろ手で撫でたいのを抑え、どうにか安心させようと言葉を選びながら足を動かしていると、あっという間に出口へとたどり着いてしまった。

 

 

「あ…。幸運、ほら、出口みたいだ」

 

 

何が、あったっけ。

肝試しという名目なのに全く怖くなかったな、なんて思いながら灯りの漏れる広場に顔を出した。

 

何処へ行っても、どれだけ進んでも、赤ん坊の泣き声が一定の距離を保っていることには気付かなかった。

 

ゴールしたというのに未だ反響し聞こえ続けていることさえ。

 

 

幸運・流星 CLEAR!

 

 

 

 

__七番目の人達、どうぞ!

 

 

「あ。私達の番みたいだよ、行こう?」

 

「…………………」

 

 

差し出された細くしなやかな手に見向きもせず、ペアを置いていきさっさと入っていってしまうその男は蒼太郎だ。

 

置いていかれてしまった女は奏撫。

なろう、組もう、と声をかけあったわけではなく、ただ自然とペアになってしまっただけなのだが、奏撫は蒼太郎とも仲良くなれるチャンスだと気合いを入れその後を追う。

 

 

「わっ…びっくりしたぁ…風で葉っぱが落ちてきただけだったのね」

 

「どんくさ、そんなんでいちいちビビってんなよ」

 

 

怯えすぎず、怯えなさすぎず。そんな絶妙なバランスでリアクションをする奏撫とは違い蒼太郎は何が起きても我関せずと先を進んでいく。

 

小走りで奏撫が追いかけるのがこの二人の肝試しの形となってしまったわけで…彼女も彼女でギミックに反応することよりも見失わないようにすることで精一杯だった。

 

 

「!……え、あ、やばいっ…かも…」

 

「………………おい、何…」

 

 

足元への注意を疎かにしてしまい、つい、何か固いものに足を取られて転げそうになってしまう。

運も悪く、何かの驚き要素も出てくる地点だったようでこのままだと奏撫はどこかを怪我するだろう…

 

蒼太郎も足を止め眉を顰めている。

…すると、突然突風が吹き、奏撫は何故か転ぶことなくその場に立っていた。

いくら突風といえど人を支えるほどの力はないのにも関わらず!

 

 

「…?あ、あれ?私…蒼太郎くん、私の事助けてくれたの?」

 

「は?此処から動いてないのは見て分かんだろ」

 

「だよね…?うーん………」

 

 

もしかして守ってくれたのかな、なんて、そんな才能を持つ一人の女の子のことを想うと不思議と恐怖は感じず、ほわほわと温まる心があることを実感する。

 

ほわほわ、ほわほわ、ふわふわ……そんな心意気を表すのにぴったりな薄ぼんやりとした柔らかな明かりが目に付いた。

 

ついでに、その明かりの少し上に浮き出ている能面の顔も。

 

ついビクリと肩を揺らしてしまい、奏撫と蒼太郎の肩が僅かに触れる。

あからさまに顰める蒼太郎の顔に反射的に謝った後、奏撫は蒼太郎にこう聞いた。

 

 

「怖くないの?」

 

「あ?」

 

 

軽く奏撫を見ると、

 

 

「怖くねえ。怖いと感じることすらねえよ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

その声に他意がある音は聞こえたが、それ以上は聞くことなく、ただそっか。と頷くことにした。

 

怖いと感じることすら無い、と断言した蒼太郎のその堂々たる態度に多少感化されたのか、奏撫もあまり恐怖に怯えることは無くなったように思う。

肝試しに対しても、蒼太郎に対しても。

 

 

「…………。…、……。…何笑ってんだよ」

 

 

ニコニコと笑みを浮かべる奏撫に薄気味悪さを感じたのか、その無表情を少し崩し、睨みとも顰めともまた違う表情を浮かべる蒼太郎。

 

しゃんとしなさいよなんて、どこからか呆れた声が奏撫の耳を掠めるも、鼓膜の奥に響くことは無かった。

 

 

奏撫・蒼太郎 CLEAR!

 

 

 

 

__八番目の人達、どうぞ!

 

 

最後の三人はもう既に森の中にいた。

カラスやフクロウの鳴く声や風の吹く音、草葉の擦れる音が木霊する中、三人は世間話を交えて進む。

 

 

「いやぁ、此処が箱庭でなければ貴方のその細い手首に手錠でも掛けているんですけどね」

 

「あなたから誘ってきたくせによく言う…性格悪いですよ。そう思いますよね?一ノ瀬も」

 

「え?うん…?とりあえず、喧嘩はしないで」

 

 

啀み合う(片方はにこやかだが)二人を交互に見つめ、困ったように頬を掻く琉霞と、依然として不仲全開な莎莎匁と夏月。

 

警察官といえど無様に怖がるんでしょうね、と煽る夏月の言葉ににこりと笑い、

 

 

「ふふ、お言葉ですが私はこんな状況でも全然大丈夫ですよ。寧ろ楽しいので」

 

 

と煽り返す。

琉霞はその姿を見て凄いな、と思ったことだろう。

口から流石だ…と呟きを漏らしながら。

 

ザクザクと踏み潰すリズムは一切のズレがなく、これまでもいくつかは驚き要素が施されていたのにも関わらず三人はほとんど動じることなく受け流す。

…と、その時。

 

 

ガサガサッ!

 

 

盛大に登場したのは先程から身を潜めていた奏瑛とまどか。

仕掛け役になっていたといった流星のあの言葉は嘘ではなかったんだと莎莎匁はぼんやりと思い出す。

 

 

「!」

 

「ぅっ…!」

 

 

見知った顔とは言え、唐突な出来事だったからか驚き慣れていない琉霞の思考と体は一瞬固まってしまう。

そして夏月もまた、ビクついたかと思えばびたりと固まってしまった。

 

 

「あぁ、いたんですね。まぁそういうこともあるでしょう」

 

 

莎莎匁だけが至極冷静に佇んでいる。

奏瑛達はというと、久しぶりにきちんと驚いた様子を見せてくれる人が来たと喜び、満足したようだった。

 

我に返り恥ずかしそうに目を伏せる夏月を見つけ、声をかけようと莎莎匁が一歩踏み出すと。

 

 

_______ガチャンッ

 

 

何故だか周りに投げ捨てられていたティーカップが一度浮き、そして全てが莎莎匁の足元で砕け散る。

 

 

「あ…っぶな、あなたよく生きていましたね」

 

「楪さん、大丈夫?」

 

「…え?今、なんか…え?」

 

 

どう考えても人の手なしに物が浮くのはおかしい。

割れたティーカップの上を手で仰いでみても、吊り糸らしき感触はどうにも味わえなかった。

…と、いうことは?

 

 

「す、凄い…初めて見ました…!怪奇現象!」

 

「……一ノ瀬、先行ってましょう」

 

 

キラキラと目を輝かせてどうしてか感動している様子の莎莎匁。そんな彼に琉霞と夏月は心配をして損した、と言いたげに一度ため息をつくと、破片を踏まないよう気をつけながら前へ出る。

 

 

「うわ……っ!!!??」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ブン、と気色の悪い独特の羽鳴らしをしながら夏月の顔面に迫るのは比較的大きな体の虫。

虫が嫌いだという夏月は驚き、二人を置いて走って逃げてしまった。

 

 

「ひ、柊さん…走って行っちゃったね。飛んできた虫…?に驚いちゃったのかな」

 

「まぁ…こういうのが苦手な方もいるでしょうね。世間話でもしながら追いかけますか」

 

「うん…今のは、モノクロックが用意した仕掛けじゃ無い気もするけど…」

 

 

ぺちゃくちゃと何やら話をしながら二人は、暗闇に溶けてしまった夏月を探すべく肝試しコースの中をさまよった。

 

 

夏月・琉霞・莎莎匁 CLEAR!

 

 

 

 

「あぁ、怖かったけど楽しかったねぇ夢描ちゃん」

 

「ね!こういうのも、新鮮で良かったかも…」

 

「…さ、3秒ルール…だよ、星霰くん…ジャムパン…」

 

「いやダメだから。3秒か分かんないじゃん」

 

「……そこじゃないと思う」

 

「なんていうかさ、彼らも参加してたのかなって思うよね♪」

 

「…そうね。アタシもそう思うわ、だって、話を聞くに彼ららしいものばかりだったもの」

 

「そういえばわたしと飛鳥ちゃんが見たカメオの女性も…」

 

「そう…ですね?…そうですね!今思うと、似てる気がします!」

 

 

肝試しを経て、各々が各々らしく楽しめたようで俺は安心した。やっぱり、こういう時間はある方が気持ち的にも余裕が出てくるものだから。

 

 

「オマエラお疲れ様!いいもの見せてもらっちゃったあ、アオハルだねえ!今日はこれで解散だよお、また明日、会おうね!」

 

 

モノクロックがそう言うと、俺達は箱庭を後にする。

心做しか弾んだ声で手を振るモノクロックにいつものような感情は感じず、たまには良いこともするんだな、なんて見直してみたりね。

 

 

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