日常①
手元の小さな画面に現れたのは天真爛漫な明るい女の子。
からからと笑うその笑顔はとうの昔のものだった。
【やったやった!あははっ!】
これを彼らが見たらどう思うんだろうか。
この笑顔を削ぎ落としたのは此処にいる全員なのに。
ただでさえ桜の散り様を儚げで美しいと評するほど能天気な国だ。例え目に見えて動いたり話したりはしなくとも桜だって生きている。命があった。命が絶たれたその瞬間にいちいち感動を覚えるようなバカな国!
ぷつ、と途切れる音が聞こえて手元の画面に意識を戻す。先程の女の子が今度は画面に向かって笑っていた。
【…あーしは世子子きる!よろしくね〜!!】
ぷつ、
【やくそくらよ!】
【…わたし、雨野千晴!よろしくね!】
ぷつ、
【泣き虫な男はだ、だめだよね…】
【…あのっ、俺っ一条、琴梨…です】
ぷつ、
ひたすらに流れていく24人分の動画。
それはいつから保存されていたのか。
誰が保存していたのか。
きっと自分ではないんだろう。
いつの間にかここにあった。
しかし、それでも。そうだとしても、
ただ何も言わずに___はそれを眺めていた。
目を、口を、月のように歪ませて。
流星視点
寂しい、寂しくない、で表すとするなら寂しいが答えなんだろう。
でも寂しさよりも勝るのは息苦しさだった。
安心して息が出来ていたのは幸運がいたからだ。
ストレートな物言いにはいつだってヒヤヒヤしていたし、時として注意だってしてきた。
それでも、その真っ直ぐな言葉に助けられていたのも事実で。
目の前に倒れているのは血塗れのまま動かない幸運。
今まで見たどの顔よりも幸せそうで、満ちていて!
…なんて、今まで何人もの友人が死んできているのに、自分の大切な人が死んだ途端これだから…。
俺は存外、酷い男だった。
ぼんやりと、ただその血溜まりを眺めているだけだったから気が付くのが遅れてしまった。
幸運の遺体が無くなってること。
幸運の遺体をモノクロックが引き摺っていること。
何とか繋がっていた首が、床に擦れ続けたことによりぷちりと切れてしまう。一寸の間、胴体と首が離れた状態を見てしまった。
そんな様子に嘔吐く人もいるし見てられないと顔を背ける人だってるのに、アレはああいけないと独り言を呟きながら頭を持ち、尚も足を引き続ける。
怖い。怖い。モノクロックが怖い。
本当に子供か?
干渉してはいけない生き物だ、これ以上は。
ああでも、でも……。
『待ってくれ!…どこに連れていくんだ?今まで連れていかれた人はどうなったんだ?』
「え?なあに、急に…まだヒミツ!壱華ちゃん達も、もちろん幸運くんも、いるべき場所に戻ってるだけだよお」
分かってはいた。
聞いたところで素直に教えてくれるわけがないと。
でもだからといってああそうですかと引きたくなかった。はじめて俺は、モノクロック相手に食い下がることをしたと思う。
『頼むモノクロック。どうせ最後になるなら、せめて、丁寧に埋葬してやりたい。後で掘り返してもいい!だから今はまだ、幸運を連れていかないでくれ…』
自分より頭何個分も低い相手に頭を下げる。
ぱちり、と幸運と目が合う。
何度見てもその顔は、幸せそうだった。
「……仕方ないなあ!ヘンなコトしないでよお、終わったらちゃあんと回収するからね!」
『!ありがとう、じゃあ…少しだけ、もう少しだけ一緒にいよう、幸運……』
モノクロックは持っていた幸運の足から乱雑に手を離し、頭を抱えて少し離れた壁際にしゃがみこむ。
その近くに立っていたユキが話しかけたような声が聞こえてきた。
その後の会話は知らない。
少しの時間を貰って、幸運を弔っていたから。
「幸運。……幸運、俺、……………なんて、……んだ。…本当に…どうして、俺は…」
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