ユメミグサロンパ   作:24社長

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非日常①

きっときっと、きっとね罰が当たってしまった

だって一番大切な人の一番大切な日を

見届けられなかったんだから

 

誰も悪くない

でもこのままじゃ誰も救えないの

 

夢は夢であるように叶えられなかったものの叶えた先の未来なんて捏造でしかない、想像でしかない

所詮は再現、もう分かってたの知ってたの

 

痛い、痛い…頭が、割れていく。

ああ、ごめんなさい、でもお願いもう逃げさせて、…虚空の中耐え続けたことの意味なんて、なかったのかもしれない

 

無数にある幸せの象徴を演出するわたしが、たった二人の幸せだけを思い描いて生きていたから…神様もきっと、怒ってしまったのね

 

わたしにやり直せる権利は、渡されなかった

 

 

 

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覚悟して、受け入れてはいた。

 

コロシアイで助かることはあまり考えなかった。

 

ただいずれは訪れる死を、たった今まで。

 

感じたことといえばやっと虚勢から逃げられる、ただそれだけ。

 

自殺なんて出来やしない。そんな度胸は生憎無い。

それでも口先だけの虚勢は留まることを知らなくて、ただただ、誰かが終わらせてくれるのを願っていた。

 

死こそ絶対の救済、なんてよく出来た言葉だ。

 

グチャグチャと、頭の中が響く。

響いてるだけで実際は音なんて何も無いのかもしれない。

 

そんな事を考えていたら、いや、もしかしたら思うよりも早く…俺は一人静かに呼吸を止めた。

 

俺、後悔していることなんて、ないんだ。

本当に…どうして、俺はこんな所で、こんな事に巻き込まれてしまったんだろう。

 

俺の方こそ、不運だったな

 

 

 

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……きっと、以前よりは素早く捜査に切り替えることが出来ているんだと思う。それはきっと良いことなんかじゃないんだけど。

 

凭れ掛かるようにして冷たく項垂れているグレイちゃんにそっと触れ、彼女が息絶えていることを確認する。

傷付いたあの日よりも遥かに量のある血液が流れ出ているから、止血してみたところでもう遅いんだ。

 

 

「レディさんの服、乱れちゃってるみたいだね?クロに殺されそうになって抵抗したのかな」

 

「これ…ねぇ未依葉くん。これ、何かしら…」

 

 

俺と一緒にグレイちゃんの遺体を調べていたオレーシャさんが、未依葉くんの名前を呼びながら彼女の傍らに添えられた血文字を指さす。

 

彼と一緒に指の先を見ると、グレイちゃんが残したんであろう何かの文字が書かれていた。

 

 

「6…?それとも、9かしら」

 

「う〜ん…何の事かさっぱりだね。数字にも意味があるって言うし、博識なレディさんだからそれを伝えようとしてるのかも」

 

 

未依葉くんはどうやら図書室に向かってみるようだ。

6、それか9の意味が分かればいいんだけど…

そもそも、数字かも分からないんだけどね。

 

グレイちゃんの頭の少し上には血の塊が。

少し頭を傾けて、グレイちゃんの後頭部を触ってみるとかすかに血に濡れたような感触がした。

 

どうやら、クロと揉み合って…それか、クロに抵抗して、此処に頭をぶつけてしまったらしい。

打ちどころが悪かったんだろう、グレイちゃんは苦しそうにも悔しそうにも痛そうにも見える表情のままだった。

 

そのまま椅子に座ったまま息絶えている流星くんの方へと向かう。

 

近付いて分かったことに、俺は驚きに小さく声を上げてしまう。

素人ながらにも死因は別だと瞬時に察する。

 

首に刺したような跡があり、血液の中に何か…異物のようなものが浮遊物として点々と混ざっていた。

 

 

「っ…ち、小さぃので、さ、刺した…?のかな…首、か、かん…貫通、してない、し…」

 

「うん…それか、首から差し込んで中の何かを傷付けたか…って言ってもさ、普通に生きてたらまず思いつかないし非現実的だよねそんなの」

 

「あ…ううん、あのね星霰くん。思いつくことはなくても、そのやり方を知る方法ならあるかも」

 

 

心配そうに見つめるユキちゃんの横からひょっこりと顔を出すと、えがきちゃんは人差し指を立てながら教えてくれた。

 

 

「アナウンス鳴る前に漫画の資料探しに図書室に行ってみたらね、漫画が置いてあったの。で、その中の…何巻だったかな、10巻か11巻に首から棒状の凶器を刺し入れて脳を素早く掻き回して殺す…って描写があったよ!」

 

「え!?グロ!ていうか夢描ちゃん、チラ見だったのによく覚えてたねぇ」

 

 

ナイス記憶力だと褒めるユキちゃんにはにかんだえがきちゃんはだから、とそのまま続ける。

 

 

「クロももしかしたらそれを参考にしたのかも…どうしてかは分からないんだけどね」

 

 

図書室には確か未依葉くんとオレーシャちゃんも向かったはず。しかし二人はとっくに部屋を出ているため、俺もその漫画を見に図書室へ向かうことにした。

 

 

「あ!確認しに行くの?その漫画…えっと、■■って言うんだけど、1巻と2巻はわたしが借りてるからその分空いちゃってると思う」

 

『うん、分かった。ありがと、えがき先生!』

 

 

……部屋を出て直後、真後ろから声をかけられる。

 

 

「おい、お前…」

 

 

蒼太郎くんだった。

 

何処に行くと聞かれたから素直に図書室を捜査しに、と答えると彼は少し黙って自分もついて行くと俺の斜め後ろに立った。

 

急な事にさすがに動揺を隠せず、平常でいようと思いいつも通り話しかけた声は震えている。

これまでの彼を見ていても集団行動はおろか、特殊な場面を除いて自ら話しかけることはなかったから。

 

 

「………死刑囚相手に緊張してんなよ。ああ、それとも俺が死刑囚だからか?犯罪者が背後取ってんだもんな。……期待してるとこ残念だろうけど安心すれば?別にアンタにいちいち興味なんて持たない」

 

 

自傷気味に笑うような声で皮肉を垂れる蒼太郎くん。

違う、そういうわけじゃない、それを伝えたところで睨みつけられるだけだろう。

 

図書室に向かうまでの間、酷く気まずい無言の時間が流れる。

わけもわからず体が緊張し始めて、不意に此処に来た当初のことを思い出す。そういえば始まりのあの日もこんな気持ちだったな、なんて。

 

無限ループでもしてるんじゃないかと思うほど長く感じた廊下がようやく終わりを見せた。

図書室の灯りが漏れ出しているのが分かってホッとするのと同時に蒼太郎くんから再度声をかけられる。

 

 

「別に超高校級共が揃ってどうなろうと知ったこっちゃねえよ。ただお前のお人好しもそこまで言ったら悪意そのものだな。今じゃなくたって身を滅ぼす、お前のせいで絶対に」

 

 

…その言葉の意味が、はじめは分からなくて。

何を言われたんだろう、どんなことを伝えたかったんだろう。…噛み砕いて飲み込むうちに、ああ嫌味を言われているんだと。

 

俺のせいで、絶対に。

そう言った蒼太郎くんの目は射殺すほど鋭いものかと思ったけれど、そこまでの強靭さは持ってなく、むしろただぼんやりと眺めるように曖昧な目だった。

 

ほとんど無意識の行動だったんだと思う。

 

多分、あの言葉にそっか、とかうん、とかとにかくそんな感じの返事をして図書室に入ったんだ。

俺達が一緒にいるのを見た未依葉くんがちょっと驚いてたのだけははっきりと覚えている。

 

 

『どうだった?数字の意味分かった…?』

 

「残念だけど収穫無し!数字の意味が乗ってる本なら見つけたんだけどね」

 

「6のページも9のページも、特にそれらしいものは無かったわ。だから…もう帰ろうと思っていたのだけど」

 

「でもお客様方もここに来たってことは別のものを探しに来たってことでしょ?俺達を迎えに来てくれたわけでも無さそうだし!」

 

「探すなら早く探せよ、時間が惜しい」

 

「あら……いつの間に仲良くなったのかしら?」

 

 

ふざけてんのかとオレーシャちゃんをじとりと見る蒼太郎くんだけど、オレーシャちゃんは気にも止めていないのか、本棚の薄いホコリを指でなぞっていた。

 

えがきちゃんの言っていた漫画は…ああ、もしかしてこれかな。

 

一箇所にぽつんと置かれた漫画コーナー。

少女漫画や童話絵本、ファンタジーな内容の中に1シリーズだけグロテスクな内容のものが入っていた。

 

題名は…うん、■■!これで間違いない。

 

彼女が言うには10巻か11巻だと言っていたけれど…どうしてか10巻までしか置かれていないみたいだ。

1、2巻も無いけれど、さっきえがきちゃんが借りたと言っていたから、今は気にしなくていいだろう。

 

次の漫画との間にある不自然は一冊分の空白が、あるはずの11巻の存在を匂わせていた。

えがきちゃんの話では、彼女は死体発見アナウンスが鳴る直前まで此処にいた。だから、きっとあるはずなのに…

 

 

と、そのとき。

 

 

__待ち疲れちゃったよお、そろそろ始めちゃってもいい?

 

 

__オマエラお待ちかねの【学級裁判】を!

 

 

__【裁判場】に集合してください!

 

 

…ああ、まただ。

捜査をもう少ししたい、という時に限って流れるお決まりのアナウンスにくらくらと目眩がする。

 

あと何回、繰り返せばいい?

この、悲劇を。

 

 

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