「始まってしまいましたね、またしても殺人は」
「そう…だね。時間は限られているし、まず、二人の死因から話していかない?」
奏撫ちゃんが裁判を進行しているのを見て、琉霞くんが頷きながら口を開く。
「確か、レディさんは頭をぶつけたことによる失血死…だったよね?」
「ええ。LadyGreyの上に大きく血がついていたし、打ちどころが悪かったんじゃないかしらね」
「理学療法士も同じなのかよ」
「ううん、不知火はまた別。なんて言えばいいんだろアレって…」
「し、不知火くんはね、こ、こう…く、首!首から、脳みそぐ、ぐちゃ、ぐちゃ…って…」
「うぅ〜、小鳥遊ちゃんの説明、生々しすぎるよ…脳損傷、ってやつなんじゃないかなぁ」
「脳損傷…なんだか、レディさんの殺し方に比べて不知火さんの殺し方は酷いね」
「そうだね、でも…なんだか、穏やかに見えた気がするの。…私の気のせいなのかな?」
「いや、不知火は確かに穏やかだったよ。対して、レディグレイは穏やかじゃなかったから…多分、不知火は受け入れたんじゃないの?」
「不知火さんは背丈の大きい人ですから、男性であってもあの方法で殺害するのは難しいでしょうけど…彼直々の協力の元でなら、不可能ではありませんね」
確か、流星くんは192cmだったはず。
俺とでさえ16cmも差があるんだから、俺よりも大きい…それこそ、普通ならユキちゃんや蒼太郎くんを疑うんだろう。
でも流星くん自身が殺害を受け入れ、クロに協力してわざと殺させたなら誰であったも犯行は可能になる。だって流星くんがしゃがみさえしてくれれば、どれだけ背の小さい人にも殺せてしまう。いやそうなればきっと背なんて関係なくなるんじゃないか?
「で、でも、れでぃちゃんは?れ、れでぃ、ちゃ…ぃ、痛そ、だったよ?」
「確かに!そもそもグレイちゃんと不知火くんで殺し方が違うのも気になるよねぇ…」
「レディさんの髪も衣服もすごく乱れてたから、きっと沢山抵抗したんだと思う」
「あ、そういえばね、グレイちゃんの遺体のすぐ傍にダイイングメッセージ残ってたんだけど…みんな、見てる?」
「確か6、それか9とも見れる一文字のものでしたね。…申しわけないですが、私はあの文字に意味を見出すことが出来ませんでしたね」
「6…9…ええ、なんだろう。誰かの誕生日とか?なわけないか、これから死ぬってのに…」
「ねぇねぇ静野くんとホーネットちゃん!数字の意味のこと調べに行ってたよね、なにか分かったりした?」
ユキちゃんのその問いかけに、未依葉くんとオレーシャちゃんは揃って首を横に振る。
数字に込められた意味は分かってもグレイちゃんが込めた意味までは分からかなかったって。
ちょっぴりだけガッカリした様子のユキちゃんをちら、と見ながらえがきちゃんは首を傾げた。
「そんなに、じっくり見たわけじゃないんだけどね」
「そもそもあの文字って数字…なのかな?」
「ぅ、じゃ、じゃぁ…ぇがきちゃんは、ぁ、なんて見ぇ、見ぇた?す、数字…じゃなく、って」
「う、うーん…なんとなく、アルファベットのb…に見えるなあって」
「b?…bでも、分からないね。レディさんは一体何のことを表したんだろう…?」
「分からないついでで申し訳ないんだけれど、流星くんの殺害方法はかなり…酷いものだったでしょう?それって、簡単に思いつくものなのかな」
「あ!それ、それねぇ図書室にある漫画を参考にしたんじゃない?って夢描ちゃんが言ってたよぉ」
「………は?漫画?ああ、だから俳優はあの場所を……」
「漫画…へぇ、図書室にそんなものも置いてあったんですね。それはどなたかが確認されたんでしょうか?」
『あ、うん。俺と…あと、蒼太郎くんと未依葉くん、オレーシャちゃんで見に行ったよ』
本当は未依葉くんとオレーシャちゃんはほとんど合流に近かったし、蒼太郎くんがなんで着いてきたのは今でも分からないけど。
「でも、■■の11巻は無かったの。…きっと誰かが借りてるのね」
「え?でも夢描ちゃんと僕、最後まで図書室いたけどぉ…誰も借りになんて来なかった、よねぇ」
「……そうなの?夢描と宇留賀がいたときは11巻あった?」
美織くんがそう聞いて、ユキちゃんとえがきちゃんがうん、と頷くと美織くんとあるむちゃんは困惑したように顔を見合わせている。
「ぁ、ぇと…ぇ?ほ、星霰く、ん…ど、どぅ、どぅぃぅこと…?な、の?」
「…多分、ソウイウコトなんじゃないの?だってほら、あの二人、アナウンス鳴る直前まで居たって言ってたし…」
あのさ、と美織くんは声を出す。
「俺と小鳥遊、捜査中に見つけてんだよね。その11巻、…………オレーシャの部屋にあったん、だけど?」
驚いて、パッとオレーシャちゃんの方を見るとオレーシャちゃんもまた目を丸くして驚いていた。
「…え、オレーシャちゃん…の部屋で見つけたの?それって、本当?美織くん、あるむちゃん」
「ぅ、ぅん…み、みんなの部屋、見て…め、めぼし、ぃの…そ、それ?くらぃだっ、たよ」
「でもオレーシャさんがクロなら、bの意味も分かる気がする。君ってビスクドール作家…でしょ?ビスクドールのbだったんじゃないの…?」
「…今の話、本当?オレーシャさん。違うなら、ちゃんと違うって言わなきゃ」
オレーシャちゃんは黙り込む。
ぐるぐると瞳を回らせ、ただ困惑しているようだった。
その姿はプレ裁判の時のようであり、前回疑われたときのようであり……今回も、また嵌められたんじゃないか?
そう思って、聞こうと思ったら。
「墓穴掘ったんじゃねえの?ドール作家」
「…?どういうことですか、墓穴とは…今までのオレーシャさんの発言になにかおかしなところがあったと?」
「フン、警察ともあろう人間が情けねえな。教えてやろうか?そもそもな、タイトルを知ってんのは別として…」
「そこの俳優が探してたのが■■の11巻だって、なんでお前がそれを知ってんの?」
「だ、って…アタシ、図書室に一緒にいたじゃない。奏瑛が11巻を探してたって、それくらい分かるわよ」
『あれ?俺、それオレーシャちゃんに言ってたっけ…?』
「ううん。歌方さん、そんなこと言ってなかったし俺は今この裁判ではじめて知ったよ。漫画を探してるんだろうな〜ってのは分かったけど…」
「でも、あのときなかったのは11巻だけだったでしょう」
「えっ違うよぉ1巻と2巻もないよ、だって夢描ちゃんが借りてったんだもん!しかも何巻〜とか話してるとき、もうホーネットちゃん先に図書室行ってて聞いてなかったはずじゃない?」
話せば話すほど、騙りが剥がれていくようで。
それが分かったのか、オレーシャちゃんはそれ以上口を開くことを止めた。
「…だんまり、ですね。そうですか…ですが決めつけるわけには行きません。他に証拠や手掛かりはありますか?あるのなら、それを見てからクロを決めてみても遅くはないでしょう」
「…。……グレイちゃんのね、手を見たらかなりはっきりと何かの跡が残ってたの。時間が経っても消えないくらい…。多分、何かを強く掴んだときに普段身につけてるオペラグローブのシワが食いこんじゃったんだと思う」
「でもグレイちゃんが死んでいた場所付近に、グレイちゃんが咄嗟に掴めそうなものはなかった。…だから、グレイちゃんはきっとクロの…例えば腕とかを掴んで抵抗したんじゃないかな?ね、オレーシャちゃん。…腕、見せてもらえる?」
「……。…………ぃゃょ」
「ォ、ォレーシャ…ちゃん、…ど、どぅして?…み、見せて?クロ、じゃ…なぃなら……」
「…ねえオレーシャさん。知らないなら、教えるね。この状況での拒否は、ただ自分の首を絞めるだけ」
「あの場で夢描さん達の会話を聞いてなければ関係してるとも思わない漫画の、しかも探している巻数を知ってたり…何も無いなら見せられるはずの腕を見せようとしない。誰も、君をクロじゃないなんて思うわけがないよ」
「ねぇ…クロは君なんでしょ?超高校級のビスクドール作家のオレーシャさん」
シン、とした空間に響く木槌。
「そろそろ投票に移行しても大丈夫そうかなあ?…うぷぷ……さあ、マホウの力でクロを決めよう!」
超高校級の理学療法士 【不知火流星】
超高校級のブライダルモデル 【LadyGrey】
を殺したクロは?
▶︎オレーシャ・ホーネット
「だ〜〜〜〜〜〜い!正解!素晴らしいねえ凄いねえ、ここまで全問正解だよお才能あるねえ!」
「…そうね、アタシがクロよ」