ユメミグサロンパ   作:24社長

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非日常③

あるむ視点

 

今までのユキちゃんとは違って、すごく静かで…すごく、怒ってるように見えたの。

 

違うの、聞いて、と慌てるえがきちゃんに優しく笑って、また何も無い、表情に戻る。

 

 

「ごめんね、もういいんだ。夢描ちゃんを苦しめるくらいなら、…僕は、諦めよう」

 

 

すとんと、何かを手放したみたいに悲しそうに笑って、下を向いて、…ゆっくり、また前を見た。

 

 

「…夢描ちゃんに見られちゃったんだよね。…視界に一瞬、君がいたの。でも夢描ちゃんは優しいから言わないでいてくれたんだ」

 

「それじゃあ宇留賀さんが…歌方さんのことを殺したって、そういうことになるよ」

 

 

小鳥遊は、分からなかった。

…どうしてユキちゃんが、歌方くんを殺すことになったのか…どうしてえがきちゃんが、それを庇うのか。

 

 

「うん。……もう、大丈夫だよ、ごめんね」

 

 

僕のことはいいから、本当のことを言ってほしいなってユキちゃんが優しい顔で言うの。

 

 

「一緒にいたのは、嘘じゃない…!でも、…途中で解熱剤を探しに行って…それで、帰ってこなくて……でも、でも、…」

 

 

「…………ほ、んとはね。宇留賀ちゃんを探しに行った時、…宇留賀ちゃんが、歌方くんを突き落とすの、見ちゃった……っ」

 

 

とても、苦しい決定的な証拠。

 

大人しく項垂れたユキちゃんを見て、モノクロックさんがあのうるさい木の音を立て始める。

ああ、そうか。投票が、ある…から。

 

 

「ん〜…ぷぷ、とっとと投票の時間にするよお!オマエラ、覚悟は出来た?」

 

 

超高校級のミュージカル俳優

【歌方奏瑛】を殺したクロは?

 ▶︎宇留賀ユキ

 

 

「まあ今回はクロが隠す気無かったからねえ…もういいか、はいセーカイ!すごいなあオマエラ」

 

 

がたん!……そんな、大きな音がして

 

 

「正解、…なんて、やっぱりきっと何かの間違い……嘘って、言ってよ宇留賀ちゃん…!」

 

 

えがきちゃんが、泣きながらユキちゃんに必死に訴えかける。手を伸ばして、届くように……でも。

 

 

「そう、…僕がクロです、だから…早く、僕をオシオキしてください」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ユキちゃんは、決してその手を取ろうとはしないの。

 

…小鳥遊、だったら。

お師さんに手を伸ばされたら、絶対取るのにな。

 

毎回クロの首を引っ掴んで引き摺る輪っかのようなものを怖がってるのか、ユキちゃんはぎゅっと目を瞑って震えていた。

 

でも…ソレは、来る気配がなくて。

 

 

「…お前の意志なんてどうでもいい、モノクロックの都合でオシオキに進む。死にてえなら動機の一つや二つ言ってから死ね」

 

「はぁ…終夜さん、どうして貴方はいつも……いや、やめましょう。宇留賀さん、お聞かせください。どうして歌方さんを殺害したのか…」

 

 

……ひとつ、ゆっくりと息を吐いて。

観念したみたいに口を開くの。

 

 

_____

 

 

 

はじまりのこと。その道中。そして、終わりを。

…フィナーレを迎えたのは、誰のおかげだったと思う?

 

 

歌方くんって、今までずーっと僕達の支えになってくれてたよね。

光だと、思ってた。それが…どうしようもなく。

 

 

でもあの瞬間、僕は目の前の人を見て、殺さなきゃって思ったの。

全てを終わらせるために…生きていちゃ、終わらないって、確信した。

 

 

蓋をしてあったものが飛び出すみたいに…一気に流れ出たそれに、きっと僕は正気を保てない。

 

 

悪だ。

 

 

彼は絶対的な悪だった。

 

 

悪は、倒さなければならない。

 

 

だって僕はヒーローなんだもん…。

 

 

一度重なったらもうダメだったの、僕は、勢いのままに歌方くんを突き飛ばして…そして、歌方くんは何度も小さく悲鳴をあげて、動かなくなった。

 

 

たくさんの怨恨と、ほんの少しの殺意。

 

 

…………なのに、

 

 

どうして…君を、…………

 

 

……僕は

 

 

ただ、全てを無駄にしただけ?

 

 

後悔ばかりだな、僕の人生は。

 

 

…あの日も…もっとよく考えていたら、僕は今もっと自由に、僕らしく生きていたのに。

 

 

_____

 

 

 

奏撫視点

 

 

「ねえ、ユキちゃん。オマエが奏瑛くんを殺したワケを教えてあげようか?」

 

 

くすくす、くすくす……やがて、ユキちゃんは頷いてもいないのに時計ちゃんは語り出す。

 

 

「ボクがはじめに言った言葉を覚えてる?」

 

 

「絶望エキス配合スペシャルプレゼントサプライズ……つまり、ユキちゃんもウイルスに感染してたってこと!」

 

 

「それも、オマエラとはぜーんぜん違う…お遊びなんかじゃない、ボクが本当に蔓延させたかった本気のウイルスさ!」

 

 

「ぇっ…!?」

 

「は…ちょっと何それ、な、…っねえ、宇留賀!宇留賀はそれ、知ってたの…?」

 

 

ユキちゃんは大きく目を見開いて、ぶんぶんと首を振る。

縦じゃなくて、横だから…否定、知らない、ということ。

 

 

「…な、んの。なにの、ウイルスなの…?…答えてよ、時計さん…!」

 

 

「その名も絶望病!…それもなんと、捨てられた記憶を思い出しちゃう絶望病だよお!」

 

 

ここに来て、知らない不穏な単語。

ユキちゃんは顔を歪めて頭を抑えてる……痛むのか、泣きそうな顔で時計ちゃんを見つめて。

 

 

「思い出す……ね。つまりそこのヒーロー気取りのヒーローはある意味、お前の思惑通りに俳優を殺したことになる」

 

 

「絶望病による絶望のための絶望的犯行!たまたま、奏瑛くんの何か悪〜い記憶について思い出しちゃったことがあるんじゃないかなあ?」

 

 

絶望病、だなんて。

悪い記憶…って、なに?奏瑛くんは恨まれるようなことはしてなかった、なのに、……ユキちゃんは、何を思い出したの…?

 

ユキちゃんは誰よりも前を向いて、一番先に行動で示した子で、そして今までもずっと私達のために……

 

 

そんな子が、絶望していたって!

 

 

「…っ、違う!僕は自分の意思で殺したんだ、そんな病気になんてかかってない!」

 

「その殺意は本当にオマエ自身のモノって言えるの?どうせ思い出さなかったら殺せもしないくせにさあ!」

 

 

じわじわと、這い寄る恐怖を突っ撥ねるように。すぐ足元にまで伸びた蔦を引きちぎるように。

 

連れていかれまい、と。

希望でいたいと、足掻くように。

 

 

「違う違う違う、全然違う…っ!」

 

 

「僕は絶望なんかに負けない!僕は…自分の意思で人を殺した、」

 

 

「僕は悪を倒しただけの、」

 

 

「正義のヒーローだ……っ」

 

 

そう、叫んで………………

 

 

「それは違うでしょお?」

 

 

お願い、

 

 

「絶望に負け悪に屈し、過去に囚われ人を殺した愚かな殺人者……それが、オマエ!」

 

 

やめて

 

 

「履き違えてんなよ、特撮ヒーロー」

 

 

想いを どうして踏み躙るの

 

 

✿ クロ が 特定 されました

 オシオキ を カイシ します

 

【動画はTwitterにて】

 

✿ オシオキ 完了

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

裁判が終わって、泣く彼女を見守って、……そして、眠って。…早く朝になれよ、って無理矢理眠って……

 

そして、人の声と足音で目が覚める。

 

見知った友人の声ときゃらきゃらとした高音が混じっていて、ああ誰かがモノクロックと話しているんだな、と。

 

 

……いや待って、なんでこんな夜中に?

 

 

キイ、と小さく音を立てるドアに焦りを抱きつつ、どうかバレませんようにと声を辿る。

 

 

声が、大きくなって 光が少し見えて

 

 

「_______……、あ?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

部屋にいたのは、モノクロックと小鳥遊と静野、…部屋の隅に、暁美。

 

 

「ボクがたまたま監視カメラでオマエラを見てたから良かったけどさあ?…そうじゃなかったら、自殺如きで裁判開く羽目になったよお」

 

 

ため息をついて、あいつを指さすモノクロック。

静野と小鳥遊は目を見開いて黙っていて、暁美は悔しそうに唇を噛んでいる。

 

その、中心で

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

……楪が、死んでいた。

 

 

「…寝てるヒトには、朝のアナウンスでお知らせするからオマエラはもう寝ていいよお?」

 

「……やだ!…たか、小鳥遊!こ、ここぃる……だめ…?」

 

 

イヤイヤと首を振ってその場にしゃがんで我儘を言う小鳥遊に、モノクロックは首を傾げて。

……放っておけはしないから、そんな小鳥遊の隣に俺もそっとしゃがみこむ。

 

 

「……ま、いいけどさあ。でも回収はするよお?空っぽの部屋にいても、意味ないんじゃない?」

 

 

いつだったか、小鳥遊の慕ってる人によく似てると話してくれたことがある。

だからきっと、ケジメを付けたいんだ。…小鳥遊も。

 

ズルズルと引き摺られる音が遠のき、やがて聞こえなくなった。

 

 

6章【フィナーレを夢見る役者達】

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

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