エーアイ   作:政人

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博士

 

 

 

  古き良き地球時代から持ち越したと言われる、この緑の木々が風になびく。

 

 

 

 

  この異惑星の大地に降り注ぐ、その日光はもはや危険でしかないが、

 

 

  それらを優しく遮るその木漏れ日が、

 

 

  この安全な室内から、そして頑丈なガラス越しからの

 

 

  遠巻きの眺めとしては、とても気に入っている。

 

 

   

 

  

 

  かつて読み漁った無数の書物によれば、

  

 

  私が住んでいるこの土地の環境・私の家は、

 

 

  かつて我々人類が住んでいたという、

 

 

  その理想郷、古き良き地球環境にとても似ているらしい。  

 

 

 

 

 

  

 

   まあ、幼い時、かつて地球に住んでいたという私の祖父母に

 

   

   そのことを聞かされていて、

 

 

   憧れて購入したんだけどね。

 

 

   私の世代、同じような理由で憧れている者が多く、

 

 

   手に入れられたのはラッキーだった。

 

   

 

 

   だけど、案外あっさり手に入れられたのは、なぜか。

 

 

 

 

 

   ・・・いや、もう深く考えず、自分が幸運人間だったと思っておこう。

 

 

 

    

  そう思ったところで、博士がふと優しく笑った。

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 

ふと、窓の外からの視線を感じた。

 

 

 

 

「・・・」

 

 

少し離れた

 

その木漏れ日のたった今まで誰もいなかったはずの樹の影から、

 

女の子が私を見ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・何かな?」

 

 

 

思わず呟くように声が出たが、

 

頑丈なガラス越しの、少し離れたその子にそれが届くはずがない。

 

 

 

 

 

しかし、瞬時に彼女がそれに答えた。

 

 

「・・・・私、迷子なの」  「・・!」

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、私があの子の声まで、聞こえたのだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく沈黙が続いたが、

 

 

 

その存在が何たるか理解した博士が、先に再び声をかけた。

 

 

 

 

 

「・・・こんにちは。せっかく来たなら、ゆっくりしていって。

 

 

 

 ここには木と堅苦しい本しかないけど。

 

 

 

 あと私は、子供には人間も含めてそんなに興味ないけど、

 

 

 

 適当に、満足したら出て行ってね」

 

 

 

 

 

 

「子供?」

 

 

彼女が聞き返した。

 

 

 

 

「こう見えて、ここで幼い時に没してもう何百年よ、もう大人よ」

 

 

 

彼女が笑った。

 

 

 

 

 

「・・・ここ、環境がいいのに安い訳がわかったでしょ。

 

 

 

 わたしを見て、もう何人も逃げて行ったわ。

 

 

 

 あなたって、変わり者ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博士がふと笑って答えた。

 

 

 

 

「普通の人から変わり者をみたら、変わり者だけど、

 

 

 

・・・変わり者が変わり者を見たら、その人は普通になるはずだよ、お嬢さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘?」

 

 

 

案の定、

 

今、私の目の前にいるエーアイの子が、真剣な眼差しで尋ねてきている。

 

 

 

 

 

「ねえ、博士。嘘、それはすなわち悪い事なの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・いいや」

 

 

 

 

博士が答えた。

 

 

 

「・・・嘘も方便というからね。一概に悪いことだとは思わない。

 

 

 

 ・・・あの子にも何かしら、理由があったのかもね」

 

 

 

 

 続

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