「だって、さっき君、私のことをスーパーリッチって言っていたから」
そりゃあ、博士だって人間だからお金ほしいよ、
このまだ完成途中のAIの子も立派に造りたいしと
満面の笑みで付け加えた。
「あんたがスーパーリッチ?
ばっかじゃない!・・・・そんなの、本気にしてたの!?!」
冗談に決まってるでしょ!ポンコツ貧乏博士!
と彼女が今度は真逆のことを言ってきた。
「・・・とにかく、あんた、出ていかないなら
私に早くその身体渡しなさい!」
「だめだよ」
少し可笑しそうに笑いながらも博士が即答する。
「・・じゃあ」
少し考えた彼女が、ふとAIの方を見た。
「・・僕、いいよ。僕のをあげようか」
「・・!?」
考えていたことを先に言われて、彼女は面食らった。
「それもだめだよ」
博士が真顔で彼をみてきっぱり言うと、彼女にも言った。
「取引しよう。お嬢さん」
博士がふと再び真面目顔に戻ると言葉を続けた。
「・・一人の人間が生まれてから老後まで、
スーパーリッチで豊かに暮らせるだけのものをここに君が持ってこれたら、
君が私に憑依するまでもなく、私はここを去る。
そしてもし君ができなかったら、君がここを去る。どうかな」
彼女が叫んだ。
「・・・そんなの、私が持ってきたものを、あんたが判断するんでしょ!?
あんたが有利に決まってるじゃない!?
この卑怯博士!!」
博士がそれに答えた。
「・・・いや、違う。私がジャッジするのではないよ」
「じゃあ誰!?・・このあんたのAI!?」
「・・え、僕・・」
指をさされて少しびっくりしたその彼をみながら頭を振ると
博士は答えた。
「・・その私の創作物はまだ、その判定をさせるには未熟すぎる。
・・・・私の家族に、それを協力させてもらう。」
「・・・あんたの家族、あんたが赤ちゃんの時に死んじゃったんじゃないの?」
「・・それは、私の家族も君も同じなのでは」
ふと少し笑うと博士が続けた。
「・・当時、たった一人の赤子を残したまま、やはり私の家族も
心配でたまらなかったらしい。
それで、あの手この手で、私を導いてくれたみたいだ。
亡き祖父母からも古き良き地球の姿を何度もテレパシーで伝えられ、
幼い子供心ながら魅せられた。
逆に少しでも人の道に外れることをしようものなら、もうそれは
人間の家族以上の戒めがあった」
「・・・」
珍しく彼女が大人しく聞いてくれているようだったので、博士は続けた。
「私だけが特別なのではない。
・・・たまたま私にはそれがみえ、聞こえ、分かっただけだ。
現に君とも会話できている。
だから、私は独りでいても、少しも寂しくないんだ」
「・・・」
しばしの沈黙の後、彼女が頷いた。
「・・・わかった。
実はね、
・・憑依することは、本当はお化けにとって邪道で、一度やってしまうと
もう後戻りできないの。
だから本当言うと、あまりやりたくなかった。
でも絶対あんたをここから追い出してやるんだから!
だから、あんたの提案、受けてやるわ!」
続