温かい目で見てください…
ノヴィグラドのどこか、鬱蒼とした森の中で、二つの陰が戦いを繰り広げていた。
片方は、複数のオオカミとカラスを従えているトナカイの頭骨のような頭部をし、かかしのような姿格好をしているモンスターである。
もう片方は、ルーン文字の浮かび上がっている銀剣と魔法の印を駆使してそのモンスターと対等に渡り合っている魔物退治の専門家であるウィッチャー 名をゲラルトという。
「リヴィアのゲラルト」と自称しているこの男は、現存する最後のウィッチャーの一人であり、おそらくは最も熟練したウィッチャーである。
ゲラルトは、今日も変わらず化け物相手に剣を振るい、依頼者から報酬をもらうはずだった。
町の酒場で依頼者から報酬を受け取ったゲラルトは、早速その金で酒を飲んでいた。
大分酔いが回ってきたときに、突如「あなたがゲラルトさんですか?」と見慣れない服に身を包んだ女性に話しかけられた。
仕事後の楽しみを邪魔され、少しムッときたゲラルトは、
「風呂にでもドラウナーでも出たか?」と返す。
そんなゲラルトの言葉を女性は無視し、
「実は、私の愛する故郷にいきなり複数のモンスターが現れて…」
故郷ということは離れたところから訪ねてきたのだろうか。
「故郷を離れてまで探しに来るとは、モテる奴はつらいね。」
女性はゲラルトの冗談に耳を貸さず続ける。
「被害は今のところ出てはいないんですが、いつ出てもおかしくない状況なのでご助力をと思いまして…報酬は幾分か上乗せします。」
そうか、それならばその依頼を受けようとゲラルトは言ったが、考えてみると少しおかしい点がある。
まず一つは、モンスターが出ているのにもかかわらず、被害が出ていないこと。被害が出る前に発見したとなれば納得できるが、見つけたそいつも無事であること。常人なら腰を抜かすなどしてその隙に襲われるだろう。
二つ目は、助っ人としてウィッチャーを雇うということ。
仇討ちや捜索、協力などを依頼されることが多いのだが、戦闘の助っ人で雇われるということはあまりなかった。
三つ目は、モンスターの被害を出さずに食い止めることができる一般人がいるということ。
常人なら、力の面でも技量の面でも不可能に近いし、大人数で相手したとして、複数のモンスターに対し、食い止めきれるのか。
いつものゲラルトならその不可解な点について言及するのだろうが、いかんせん今は酒が回っているので、そこら辺が緩くなっているのである。
かまわず、依頼を受けたゲラルトは、勘定を済ませ、女性に故郷の場所を尋ねるのであった。
酒が抜けてからでいいのに。
すると、女性がいきなりこちら側を向き、「それじゃあ頼みますよ、フラビゲンの殺し屋、リヴィアのゲラルトさん♪」
そう女性が言うと、無数の目玉がこちらを凝視する裂け目へと落ちていった。
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