紅魔館の長い散歩も終わりらしい。
レミリアが地下にある部屋の扉の前で立ち止まり、
「あなたの知りたい事はここにあるわよ。」
と言いながら扉を開ける。
とても古く、大きな扉だった。
それは魔理沙にとっては見飽きたものであった。
「パチェ、お邪魔するわ。」
そう言ってレミリアは整理整頓されてない机に向かい、本を読んでいる少女に話しかけた。
「そこの大泥棒は本当に邪魔だから追い返してちょうだい。」
と、少女は魔理沙を酷く睨み付けながら憎しみのこもった声で言う。
「そんなこと言うなよ~。それより、今本っ当に大マジに大変な事が起こっているからさ、参考程度にいくつか本貸してくれよ~。」
腰を曲げ、両手を少女の頭の上に置き、肘も肩に乗せながら魔理沙は懇願した。
だが、いつもの生意気な態度に加え、幾多もの本を盗みに盗んでまだ持ち去ろうとする彼女にその願いは届かなかった。
少女が読みかけの本を閉じ、角ではなく、あえて平面で魔理沙の顔をはたいた。
それは、見事に魔理沙の頬に激突し、真っ赤に染まっている。
「えーと、そろそろいいかしら。」
ええどうぞ、と少女が注目をレミリアに譲ったところでレミリアは少女を紹介する。
「彼女はパチュリー・ノーレッジ。この大図書館の司書を任せているわ。魔法も使えるわよ。」
「ほぼ居候みたいなものだけどね。ゲラルトさん、よろしく。」
またもや名乗らずとも自分の名前が出てくる。
「ほう。お前まで俺の名前を知っているのか。どれだけ世界は狭いんだか。」
「これには理由があってね。さっき、魔理沙が大変なことが起きているって言ってたじゃない?その解決方法をレミイの『運命を操る程度の能力』の応用で未来を見ていたわけ。そしたらあなたが幻想郷にやってきて、大事な戦力になるって聞いたからそのまま能力であなたを見ていたわけ。おかげであほ魔理沙とともにここに来ることも、これまでのあなたの力も分かってたってわけ。もちろん名前もよ。」
ゲラルトはそのレミリアの能力についていくつか質問したいところだが、まずは自分たちの用を済ませることにした。
「それより聞きたいことがある。詰問というわけじゃないから安心してくれ。ある人物を探しに来ている。魔法の森に住んでいるアリスという人物なのだが、ここに立ち寄っては来てないか?」
詰問はしない。
ゲラルトのその言葉に嘘はない。
たとえ口を割らなくても、ゲラルトは無理矢理正直に聞き出すことが出来るのである。
だが、あっさりと答えが返ってきた。
返ってくると言うより帰ってくるように、扉を開けてただいまと言わんばかりに肩と首を回し、椅子に座る。
「アリス!」
魔理沙が安堵の声を上げる。
さっきまでそっちのけで本を持ち去ろうとしてたくせに。
「あら、魔理沙。レミリアの言ったとおりね。外来人を連れてきたわ。」
アリスの発言に、レミリアはふんぞり返っている。
「要件は私の安否と強盗ってとこかしら。」
「だからこれは強盗とかじゃなくて~単なる本の貸し借りだって。」
その時パチュリーの暴力が降り注いだので、魔理沙はしゃべるのをやめた。
「知っていると思うが、自己紹介は礼儀だったな。リヴィアのゲラルト、ウィッチャーだ。主に化け物専門の掃除屋をしている。時には人も対象だが。」
「初めまして。アリス・マーガトロイドよ。そこの黄色とパチュリーと同じく魔法使いよ。魔法攻撃より人形操って戦う方が得意だけど。」
黄色と言われた魔理沙はショックと怒りの混ざった表情をしていた。
「それよりも。」
アリスが真面目な顔になる。
「あなた本当に力を貸していただけるのよね?」
さすがに疑うだろう。
腕前は一丁前で、化け物共と戦うのに慣れており、化け物についてよく知っているといえど、素性の知らない外国人なのだから。
それは、レミリアもパチュリーも同じのようだ。
「安心しろ。この異変に出来る限り力を貸そう。一度受けた依頼でもあるし、報酬をたんまりもらうことになっているからな。」
疑いは完全に晴れないようだが、ひとまず納得はしたようだった。
レミリア達がゲラルトに今持っている化け物の情報を教えてもらおうとした時、やっと口を開けた霊夢が、
「何か寒くない?」
と言った。
その時、実感的な寒さとは裏腹に、悪寒のようなものが全員に訪れた。