しかし、そこにワイルドハントの軍勢が現れた。
奴らの目的であるシリの姿はここにはないというのに。
疑問を抱きながらも、ゲラルトはまずアリスにここに来た理由を聞くことにした。
「さて、話があるんだが。」
ゲラルト達は大図書館に戻ってきた。
外来人に話しかけられたアリスは、別に驚くようなしぐさをするわけでもなく返事をする。
「魔法の森で俺の世界の化け物どもが現れたってのは知っているか?」
アリスはうなずく。
「ええ、知っているわ。だからここにいるのよ。幸い、最近あなたの世界の怪物に関する本が大図書館にたくさん流れ込んできたからね。参考にして森のやつらを皆殺しにしてやるわ。」
その幼く清楚な見た目からは発せられたとは思えない、汚い言葉がゲルトの耳に入った。
「そうか…だがそこまでする理由はなんだ?異変は今までこの二人が解決していたんじゃないのか?急に動き出すのは何か変だぞ。」
「自分の住んでいるところを荒らされたのよ。そりゃあ誰だって怒るわ。」
「なんかアリス、いつもと違くないか?」
魔理沙がアリスの様子をうかがう。
アリスをはっとした表情を浮かべた後、
「いいえ、何でもないわ。とにかく、私もできる限りのことは手伝うわ。」
「まあ、戦力が増えるのは悪いことじゃないが。」
「紅魔館のやつらはどうなんだ?」
魔理沙が紅魔館の一同に答えを求める。
「幻想郷を荒らすのなら喜んで協力させてもらうわ。性質的に昼間は活動できないけど、夜間ならばなんてことないわ。」
レミリアはどうも吸血鬼らしい。
こんなに精密に人の格好をしているのだから、優れた上級吸血鬼だとゲラルトは判断した。
自分の世界の吸血鬼を哀れに思いながらも、ゲラルトは話を続ける。
「それでも十分だ。俺は夜間の行動にも慣れている。何かあったら報告だけでもしてくれたらいい。」
「少しは戦力的に頼ってもいいのよ。」
「傲慢さが抜け落ちたらな。」
レミリアは挑発され、イラつきの表情をあらわにする。
他の者は笑みがこぼれないよう口元を隠していた。
少し間を開け、咲夜がレミリアに耳打ちする。
「お嬢様、妹様はどういたしましょう。」
「フランね…戦力的には歓迎したいけど、興奮しすぎて身を滅ぼさないか心配だわ…」
「では待機、ということで。」
「そうね。そうしましょう。」
耳打ちをしていたが、常人より何倍も感覚が研ぎ澄まされているゲラルトは会話は丸聞こえだった。
(この館にはもう一人いるのか。待機がいいと言っていたが、一応最後に会ってみるとするか。)
ゲラルトがそう考えた時、
「妹様!妹様!駄目です駄目ですそっち行っちゃぁ~!」
赤い髪の少女に追っかけられながら、金髪の少女が姿を現した。
「お姉さま~!フランもまーぜてっ♪」
金髪の少女がレミリアに抱き着く。
「ちょっとフラン…今大事なお話をしているんだからおとなしく座ってなさい!」
フランと呼ばれた少女は頬を膨らませる。
「え~嘘だ~。だってさっき遊んでいる音がしたも~ん。」
ゲラルトが拍子抜けする。
フランは、臆病でというわけではなく、言動があまりにも幼いから待機認定されたというわけだ。
たしかに、戦うには少し危険な気がする。
そう思ったとき、
「あなた見ない顔ね。もしかして外来人?」
フランに指をさされ、いい気はしないもののゲラルトは答える。
「ああ、そうだ。ここに迷い込んだ化け物を駆除するよう依頼されてここに来たというわけだ。」
正直に話したのがまずかった。
全員からやっちまったという目で見られ、フランは純粋に目を輝かせている。
霊夢がゲラルトに耳打ちする。
「何で言のよ!奴の性格を知らなかったにしろ、内容全部話すことないでしょ!」
どうやら、彼女のとても好戦的な性格らしい。
戦いに目がない、といった感じのようだ。
さっきの遊びといっていたのも、ゲラルト達がワイルドハント兵たちと戦っていた時のことらしい。
「やっぱり遊んでたんだ!私も入れてよ~!」
「ああ~…あ!こ、このおじさんが遊んでくれるみたいだぜ!よかったなフラン!」
魔理沙がゲラルトを差し出す。
「お、おい遊ぶとは一言も」
「あんたが起こした面倒だ!あんたが処理しろ!」
魔理沙がぐいぐいと背中を押す。
「わかったわかった…少しぐらいなら相手してやる。」
「やった~!」
フランは飛んで喜ぶ。
「ちょっと魔理沙⁉」
霊夢が止めようとする。
しかし魔理沙は
「だいじょぶだって!もしもの時は永琳とこに連れてけばいいんだし!」
「それでも万が一死んでしまったら取り返しのつかないわよ!“吸血鬼に生贄を捧げた魔女”とか言われるわよ!」
「きっとうまくいくって!」
喧嘩する二人をよそに、フランとゲラルトの遊びが始まろうとしていた。
「じゃ、いっくよ~!」
フランは手始めに“優しい”弾幕を展開した。