半信半疑なものの、人里の守護には徹底するという。
また里の者が惨殺されることは避けたいのであろう。
ゲラルトは紅魔館に帰り、大図書館に皆を集めた。
伝言のことをレミリア達にも話した。
だが、信憑性が薄いため、全員が他人事のように捕らえていた。
レミリアが口を開く。
「その…天人?幻想郷だから居てもおかしくは無いけれど…そいつも話もうさんくさすぎやしない?少なくとも、私は信じる気にはなれないわ…」
パチュリーも同じ意見のようだ。
「レミィの言うとおりね。それに、告げるだけ告げて、自分たちは何か対策を練ろうというそぶりが無いのもあるわ。」
「特段忙しいというわけでも無かったな。」
「ならなおさらね。」
メイド長に加え、自信の主人もこの場に居るというのに、平然の居眠りをする門番にはもう呆れしか出てこない。
しかし、その中でもしっかり制裁を加えたメイド長は、しっかり者だということを再認識できた。
「もしかしたら、自分たちが起こす異変を前もって伝えて準備させておく、みたいな連中かもしれませんよ?」
咲夜の肘がめり込んだ脇腹を押さえながら、寝ていたことを無かったかのように淡々としながら意見を述べる。
「わざわざそんなことする必要があるかしら?」
レミリアは疑問を抱く。
「いや、でも変にしっかりしているところがあるからね。ここの住民は。」
「これは、しっかりしていると捉えて良いのか?」
パチュリーのふわりとした返答に、ゲラルトは苦笑する。
「しかし、そうならあまり笑えないですよ。天人とか言ういかにもすごそうな人たちが異変を起こすなら、絶対こちらにも被害が出るはずです!多分、おっきな!」
小悪魔が若干子供っぽくなり語る。
「確かにそれは笑えませんね…」
美鈴は顔が引きつった。
フランとゲラルトが交戦したエントランスホールはというと、すっかり元どうりになっていた。
それは、紅魔館の門番である紅 美鈴が妖精メイドとはまた別の従者、ホフゴブリンとともに修繕したためである。
しかし、それは当然楽な仕事では無く、フランの異様な暴れ具合に加え、ゲラルト達が訪れる際の居眠りの分でそれを一日間(もしかしたら、咲夜が能力を使用したのかもしれないが)で済ますことになり悪化。
現時点で美鈴は疲労困憊なのである。
今度紅魔館が破壊されたら、本当に死んでしまうかもしれないと美鈴は思った。
事の重大さに気づき、美鈴は自然と背筋が伸びた。
後日
天人の話は、霊夢達にも話した。
偶然、魔理沙は博麗神社に遊びに来ていたのだが、第一に伝えるべきであろう紫がコカトリスの事件から一切見当たらないのである。
霊夢にも聞いてみるが、
「マヨヒガに住んでるというのは聞いたことがあるけど、どこにあるのかは紫とその式神しか知らないからね。再度現れるのを待つしか無いわ。」
と、のんきに茶を飲んでいる。
「あ、ちょっと。相談があるんだけど。」
神社を去ろうとした際、霊夢に呼び止められた。
「どうした。」
「いや、魔理沙とも相談していたんだけどね…」
霊夢が事情を話す。
「博麗神社の譲渡?」
耳を疑うものだった。
こんな稼ぎの無い神社を渡されても、困るのは自分らの方だろう、とゲラルトは思った。
土地が目的だとしても、ここには腐るほど土地が余っているでは無いか。
「なんか失礼なこと考えてるでしょ。」
「…いや何にも。」
この演技力のなさは、ノヴィグラド市街地で行った公演の一つを彷彿とさせる。
「後でシメるわ…。で、そのことなんだけど、どうしたら良い?」
なんにも考えていない奴の問いである。
「だから、もっかいそいつに会いに行けば良いだろ?もしもの時はぶちのめしゃぁいいんだし。」
魔理沙がうんざりした顔で解を出す。
「ずいぶんと乱暴なやり方だが、その方がお前もやりやすいだろう?」
「まあね…」
めんどくさいことが嫌いな霊夢は、話し合いに転するより殴り合いで解決した方が楽であった。
「しかし、幻想郷に居て霊夢の名前を知らないとは、ゲラルトと同じ外来人だったりな。」
「単なる目立ちたがりなのかもしれん。あの博霊の巫女を倒して神社を差し押さえたとなると、波乱は必須だろうな。周りからの注目も浴び放題だ。」
「そう考えると、なんか腹立ってきたわ。」
「じゃあ今すぐ行こうぜ。」
「せっかちだな。」
「善は急げ、だぜ。」
「伊達に本は読んでないな。」
「まあふぁ。」
魔理沙は最後の茶菓子を口に含んで、箒にまたがった。
霊夢も空を飛ぶ。
「…まて。俺だけ徒歩か?」
「そりゃそうでしょ。アンタ飛べないんだから。」
「箒はまだ乗せられるけど…悪い。一番早くそいつに会おうと思ってんだー。」
そう言っている間にも霊夢達の姿が小さくなっていく。
「クソ…」
相棒のローチを一緒に連れてこなかったことを後悔するゲラルトであった。