万全では無い状態で向かったら、何が起きても文句は言えない。
霊夢も納得したようで、気を張りすぎていたと反省した。
魔理沙からレミリアの能力を使って未来を予知してもらおうとしたが、生憎吸血鬼の行動範囲外なのですぐに聞くことが出来なかった。
ゲラルトは人里へ降りてきた。
里自体に気にするほどの変貌は無いが、完全に溶けきっていない妖怪の山が元となり、里は騒がしくなっていた。
秋も訪れていない時期のその光景に人々は隣人と目を合わせ、山に視線を向けるの繰り返しだった。
そんな人々を見ながら里を歩いていると、
「ゲラルト。」
慧音から呼び止められた。
「もしかしてだが、アレは…」
「想像通りかは分からんが、アレはワイルドハント共の仕業だ。」
「やっぱりか…なんというか、そこらの妖怪に比べスケールが違うな。」
「慧音から子供じみた感想が出てくるとは思わなかったな。」
「仕方ないだろう…実際に山が凍る時を見たんだ。圧巻だったよ。」
異常すぎることから、昨日の寺子屋は昼前には全員帰宅という形になったそうだ。
「被害は出ずにすんだのか?」
「出た。大きいものと言って良いだろう。社会を築いている妖怪の兵が見ただけでも半壊。霊夢と魔理沙も重傷を負った。人間離れした体力でピンピンしているが、見つけた当時は相当まずい状態にあった。」
「むう…そうか…」
慧音が腕を組み、悲しい表情を浮かべるが、知ったことでは無いと言わんばかりに戸が叩かれる。
「ん?少し待っててくれ。」
慧音が駆け足で戸に向かう。
ゲラルトは気配を感じ取るが、それは人の気配では無かった。
「せんせー!聞いてよー!」
声は幼い子供の声だ。
「チルノ達じゃ無いか。どうした?というか、寺子屋以外で人里に来たらまずいだろう。」
「大丈夫だよ。皆して山に夢中なんだもん。」
ゲラルトはこの会話に耳を立てていた。
「性別は…声の高さからして女。もう一人居る。騒いでいる奴をなだめている様子だ…」
姿を拝もうとゲラルトも戸に向かう。
「あたいらの縄張りに変なや…お、おぉ…?」
子供は突然出てきた白髭親父に言葉をなくしたようだった。
「え、な、なんだお前!?先生に何のようだ!」
我に返り、ゲラルトを指さしながら警戒をする。
「何も怪しい者じゃ無い。先生とはちょっとした友達、だ。」
「嘘つけ!お前なんか幻想郷で見たこと無いぞ!目もなんか…猫っぽいし!」
「俺のことより、何か用があったんじゃ無いか?」
「まずお前の事全てを話せ!白髭!不審者!老け顔!」
埒が明かないと思ったゲラルトは、横に居るもう一人の子供に目を向ける。
「君から話してくれないか?」
「え、あ、はい。」
「チルノ、大丈夫だ。本当に怪しい人では無い。」
「せ、先生が言うなら、そうなのかも?」
「アハハ…えっと、私たちは、『霧の湖』という場所に住んでいます。最近、近くの森で妙に木の実などが見つからなくなってしまって、不思議だと思ったらあの…妖怪?は現れたんです。」
「出会い頭に『食い物を全部献上しろ』だとか、『ここは俺様の神聖な領地だ、出ていけ』とか言い出して、湖の妖精達をいじめ周っているんだ。」
「対峙してみたか?」
「退治?あー…あたいはさいきょーだからな!手加減なんてちょちょいのちょいよ!」
「チルノちゃんの攻撃は、あの妖怪の吹いた炎で無効化されてしまって…他の攻撃もまるで効いている感じはありませんでした…」
真実が明かされたわけだが、チルノという子供はそれでも自慢げな顔はやめていない。
「自分が最強と信じて止まないな。」
慧音が苦笑する。
「炎を吹く、いい加減な性格、ふむ…体躯はどうだった?」
「たいく?」
「体つきだ。」
「もう丸々太ってたよ!姿や仕草や態度に清潔感もないね。」
「おそらく、そいつの正体は『シルヴァン』だろう。俺の世界では希少生物なんだが、なんとも大事にしたくない態度を取る。ここでも例外じゃなさそうだな。」
「ん?俺の世界?」
「まあ、色々事情があるんだ。で、だ。」
ゲラルトは仕事の顔をした。
「それを俺への依頼として受けてやっても良い。報酬を払うことになるが、俺はこの関係のことには精通している。どうだ?」
「ほ、報酬…」
チルノは腕を組み悩んだ。
「ゲラルト、報酬は私が準備をしておこう。」
慧音が負担をすると言った。
「教え子が困っているのだ。無視するわけにはいかん。満足するだけの報酬を用意しておく。」
「わかった。それでいい。」
そのままゲラルトは慧音の家から出、霧の湖へと向かった。
サイドストーリーも考えているんですが、ほとんどが後に出てくるキャラクターと関係してて…想像力を高めて参ります…