「少し聞きたいことがあるんだが。」
ゲラルトは近くの酒場に寄り、静かに飲んでいる二人に話しかけた。
「地霊殿という場所に用があるんだが…」
「何だっけ?聞いたことはあるぞ。」
「ほら、あのさとり妖怪が住んでる場所だよ。」
「よければ場所を教えてくれないか?」
「いや、場所までは分からないが…ここら辺の建物とは見た目は全く違うって姐さんが言ってたな。別のお国の建物みたいだとか。」
「そうか。それだけでもありがたい。よかったら足しにしてくれ。」
机の上に少しばかりの金を置いた。
「おほ~。あんがとさん。あそこに住むのはここ一番の嫌われ者とか言われているからな。何されるかわかんねえぞ。気を付けな。」
「ご忠告、どうも。」
ゲラルトはその酒場を後にした。
それからしばらく、霊夢と魔理沙も情報収集に勤しんだが、紅魔館のような「西洋風の建物」、「『殿』と付くだけあって大きな建物であること」、「旧都の中でもより嫌われている者が住まう場所」と言うことが分かった。
「皆が皆、おんなじ事ばっか言ってたぜ。西洋云々、嫌われ者云々って。」
「ここの中心にあるとか聞いたわ。ここは入り口近くみたいだから…あっちに向かって歩けば見えてくるはずよ。」
「歩くのめんどくせーなー。飛んだらすぐなのに。」
魔理沙が愚痴をこぼす。
「ゲラルトが歩きなんだから、仕方ないでしょ。あんたが迷子になってもらっても困るし。」
「ローチが居れば移動も楽だったんだがな…」
「ローチ?」
「誰それ?」
二人が問う。
「馬だ。口笛を吹くと即座に駆け寄ってきて、移動がとても楽だった。荷物も相当な量を預けることができて、それでいて風のように速かったぞ。」
ゲラルトはローチのことを自慢げに話す。
その話を聞いていた藍が口を開く。
(里に馬を管理している人がいたはずだ。その人と話し合って、ゲラルトが居る間だけ貸してもらうようにしよう。)
「自分の愛馬を簡単に貸すことは無いと思うが…」
「異変を解決するヒーロー様のための尊い犠牲だぜ。」
(犠牲って…。)
パチュリーが思わず口を挟む。
「お、あれっぽくないか?」
歩いてしばらく、聞き込みで得た情報通りの建物が見えてきた。
色の付いたガラスが光る建物に、霊夢と魔理沙は呆然とした。
「すっご…紅魔館にも引けを取らないくらい立派な洋館ね…。」
「さぞ、
(アナタこっちだけじゃ無くてあちらにも迷惑掛けるつもり?いい加減にしてよ。)
「冗談だって―の。さっさと入ろうぜ。」
魔理沙はノックもなしに『地霊殿』へと足を入れる。
「おお…ステンドグラス達が良い味出してるわね。」
「鮮やかすぎて、目がどうかなりそうだ。」
ゲラルトが目を細めながら言う。
(同感だ。慣れていないせいだろうが、私も余り好ましくない。)
藍も同様に目を細めていることだろう。
「可哀想に。この素ん晴らしい光景を楽しむことができないとは。」
魔理沙がゲラルトの肩に手を置く。
(駄弁ってないで、さっさと家主を訪ねなさい。)
「なんだ、紅魔館にこんな物が無いことに嫉妬してんのか?」
(別に。)
「パチュリーって意外とわかりやすいのね。」
(うるさい。)
(魔理沙、霊夢、人をおちょくるようなことを言うんじゃ無い。)
藍が止めに入る。
「へいへい。大妖怪様に言われちゃあね。」
「私おちょくって無くない?」
魔理沙は適当に返事をし、霊夢は異を唱える。
「えー…もしもし?そろそろお話に入ってもよろしいですかね?」
二階の声がする方向に顔を向けると、赤髪を左右で編んでおり、何より猫耳と尻尾が目立つ少女が手すりにもたれかけ頬杖をつき、こちらを見ていた。
「ここの家主…て感じじゃ無いわね。勝手に上がり込んで悪いけど、家主に会わせてくれないかしら?」
「ほんとに悪いと思ってんのかね…一応、さとり様から通すよう言われてるから案内するけど、もうちょっと態度を改めた方が良いよ。姐さん方。」
手招きして、少女は奥へ消えていく。
ゲラルト達は階段を上り、その少女について行く。