筑紫澪……パンドラ構成員で、推定レベル 5かそれ以上の
……うっかりしていた。彼女の存在を忘れていたわ。
なのはやザ・チルドレンと同年代。学童に混ざっても違和感なかった。
…… 予知課の『兵部が接触』に意識を引っ張られ過ぎた!
「皆本くんっ! 高町なのはちゃんが持ってる通信機の、GPS信号を送るわ!」
異能案件担当の私は、魔法少女であるなのに、事前にバベルの通信機を渡していた。
この通信機の所存を追えば、なのはの居場所がわかる!
GPS信号は瞬間移動を繰り返しているのか、街中を抜け、郊外の公園の方角に向かっているようだった。おおよその場所しかわからないが、無いよりはマシだ。
『くそっ! 兵部め、澪くんを使うとは……! 僕らもすぐ追いかけます!』
通信機の向こうでは、皆本くんとザ・チルドレンたちが慌ただしく動き始めたのが感じ取れた。
私も急いで、GPS信号を追って……と、通信機を確認しようとしたら。
急に電話がかかってきた。
相手先は『巴マミ』。もうなんか嫌な予感しかない。
……ここは、電話に出るしかない。パンドラ案件も問題だが、魔女案件は直に死人が出かねない。
「もしもし! 魔女がでたの?」
『あ、巴です。いえ、魔女の感覚に近いのですが、なんか違和感があって連絡しました』
どういうことだろう。なんとも煮えきらない内容だ。
「魔女ではない?」
『初めてお会いした時の、あの感覚です。魔女……グリーフシードに似てるのですが、もっとこう、純粋な感覚。あのときは『ジュエルシード』と呼んでいました』
つまり巴マミさんは、グリーフシードではなく『ジュエルシード』の感覚に呼応したということか。
初めての出会いの時も、彼女はジュエルシードの異相体を、魔女と勘違いしていた。
「……マミちゃん、情報ありがとう。この案件はバベル持ちにするわ。場所はどの辺りかしら?」
魔女とは関係ないのなら、巴マミに出向いてもらう必要はない……魔力の消耗は避けてもらいたい。
『わかりました。場所は、海鳴市藤見町の郊外の公園……丘の上の森のほうだと思われます』
オイオイオイオイ
待て待て待て待て。
改めて、なのはのGPSを確認したところ、公園に向かって進んでいた。
これは……鉢合わせあり得るな……。
『……? どうかされました?』
「いえ、なんでもないわ。ちょっと偶然が出来すぎて、運命のロジックがちんぷんかんぷんなだけよ」
私自身も理解不能な返答をしたのち、通信を切った。
「……不味いわね。ロストロギア異性体に、兵部京介、そしてバベルの、三つ巴の戦いなるのかもしれない!」
私は、なのはの通信機とジュエルシードの反応が導く場所……公園の丘に急行せんと、エンジンを吹かした。
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ロストロギアの異相体と思われる獣(長い牙とコウモリの翼をもつ、トラのような生き物)と対峙していたのは、ザ・チルドレンと、黒をベースにした服に赤黒が裏表のマントを身につけた、金髪の女の子……『フェイト・テスタロッサ』だ。
私がこの場に到着すると、ザ・チルドレンと皆本くんは、空を飛ぶ一人と一匹……フェイトと異相体を見上げていた。
「皆本くん! なのはちゃんは!?」
「わ、わからない! 発信源を追ってきたら、急にあの獣に教われそうになって……」
「あの獣はロストロギアの異相体……ジュエルシードが原因よ!」
「な、なんだって! あれが報告書にあった化け物か……まるで怪獣映画だな……」
空中に浮かぶ黒い獣は、低い唸り声で威嚇していた。
現状を理解した皆本くんは、ザ・チルドレンたちに命令を下す。
「あんなのが街中に出たら大変だ! ここで押さえつけるぞ! ……特務エスパー、ザ・チルドレン、解禁!」
「おう! 任せろ皆本!」
「……! まって薫ちゃん! 誰か来るわ!」
飛び出そうとした薫を、紫穂が止めた。
その瞬間、私たちの前に『やつ』が突然現れた。
「たとえクイーンでも、彼女の邪魔はさせないよ」
「兵部!」
「な、なんで京介が止めるんだ!?」
まさか、エスパー犯罪組織『パンドラ』が、フェイトと手を組んだのか……!?
そんな一抹の不安は、兵部の一言で現実となった。
「異世界から飛来した『ジュエルシード』……あれはかなり危険な代物なんだろ? 彼女……フェイト君から聞いたよ。だからパンドラは回収を手伝ってる、ただそれだけさ?」
「それは異能案件として、バベルが処理するわ!」
私は兵部京介に言い返した。なお、彼の顔を見た瞬間に昨日の電波ジャックの件を思い出し、私怨を多分に含まれていることは否定しない。
兵部は、あぁ知ってるさ、と短く返答した。
「だから、別目的で集めてる彼女に手を貸してるのさ。ま、バベルが嫌がることをするのは、僕の小さな趣味みたいなものだからね」
『まあ、あと恭介はロリコンだからね! 女の子をほおっておけ……むぐぐぐぐ!!!』
「おっまえはまたそーいゆ誤解を招くことを!」
『いってーな京介! そんなに怒るってことは図星か!?』
「……こんの齧歯類め……」
兵部と、肩に乗ってるモモンガ『桃太郎』による夫婦漫才が始まった。
こんな緊張感がある場面で漫談を始めるなんて、余裕じゃない。
……でも、奴らの警戒心は全く解けておらず、こちらから仕掛けるのはほぼ不可能だった。
そして、この様子だとパンドラ……もとい、兵部京介は、ジュエルシードの危険性と、フェイトたちの目的まで知っているということか!
その時、上空で動きがあった。
『Scythe form』
「……はぁっ!」
自身が手に持つ武器に光の刃を鎌状に纏わせ、フェイトが、黒い獣に切りかかった。
獣は避けようとしたのだろうが、コウモリの翼を根本から切り裂かれた!
びちゃっ!!
「うわっ! きったねぇ!」
裂かれた翼が、こちらの目の前に落ちてきた。紫色の血液(?)が辺りを濡らす。
「……?! 皆! 油断しないで!」
私はその弾けた血液が、ウネウネと動く様を確認した。
突如、千切れた羽やそこから流れる血液が、ヒルのような生き物に変質し、私たちに襲いかかった!
「うおおおっ! あぶねぇ!」
とっさに、薫が
「な、なんや! とんでもない生き物やな!」
そして上空では、フェイトの攻撃は続いていた。
黒の獣は、切断された翼はすぐに再生しており、フェイトと激しい空中戦を繰り広げていた。
私たちも加勢しようか考えていたが……。
目の前には兵部京介。下手に動くことは出来ない。
それに、彼女と獣の空中戦は、薫の
……私達みたいな、自由に空を飛べないエスパーは空中戦に分が悪い。
こんなとき自由に空を飛ぶ、なのはちゃんがいてくれたら……!
そんな戦場を、一陣の光が突き抜けた。
それは強烈な魔力を纏い、ピンク色に輝いていた。
「たぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!」
高町なのはが突っ込んできたのだ。ピンクの光に包まれたまま、そのまま黒の獣に体当たりして、地面に叩き伏せたのだった。
―続く―