転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

12 / 38
【第4話】敵?それともお友達?なの【中編】

 筑紫澪……パンドラ構成員で、推定レベル 5かそれ以上の瞬間移動能力者(テレポーター)。体の一部のみをテレポートさせる『部分テレポート』を得意とする、齢10歳(推定)の女の子。

 ……うっかりしていた。彼女の存在を忘れていたわ。

 なのはやザ・チルドレンと同年代。学童に混ざっても違和感なかった。

 

 …… 予知課の『兵部が接触』に意識を引っ張られ過ぎた! 

 

「皆本くんっ! 高町なのはちゃんが持ってる通信機の、GPS信号を送るわ!」

 異能案件担当の私は、魔法少女であるなのに、事前にバベルの通信機を渡していた。

 この通信機の所存を追えば、なのはの居場所がわかる! 

 GPS信号は瞬間移動を繰り返しているのか、街中を抜け、郊外の公園の方角に向かっているようだった。おおよその場所しかわからないが、無いよりはマシだ。

 

『くそっ! 兵部め、澪くんを使うとは……! 僕らもすぐ追いかけます!』

 通信機の向こうでは、皆本くんとザ・チルドレンたちが慌ただしく動き始めたのが感じ取れた。

 

 私も急いで、GPS信号を追って……と、通信機を確認しようとしたら。

 

 急に電話がかかってきた。

 相手先は『巴マミ』。もうなんか嫌な予感しかない。

 

 ……ここは、電話に出るしかない。パンドラ案件も問題だが、魔女案件は直に死人が出かねない。

 

「もしもし! 魔女がでたの?」

『あ、巴です。いえ、魔女の感覚に近いのですが、なんか違和感があって連絡しました』

 

 どういうことだろう。なんとも煮えきらない内容だ。

 

「魔女ではない?」

『初めてお会いした時の、あの感覚です。魔女……グリーフシードに似てるのですが、もっとこう、純粋な感覚。あのときは『ジュエルシード』と呼んでいました』

 

 つまり巴マミさんは、グリーフシードではなく『ジュエルシード』の感覚に呼応したということか。

 初めての出会いの時も、彼女はジュエルシードの異相体を、魔女と勘違いしていた。

 

「……マミちゃん、情報ありがとう。この案件はバベル持ちにするわ。場所はどの辺りかしら?」

 魔女とは関係ないのなら、巴マミに出向いてもらう必要はない……魔力の消耗は避けてもらいたい。

 

『わかりました。場所は、海鳴市藤見町の郊外の公園……丘の上の森のほうだと思われます』

 

 オイオイオイオイ

 待て待て待て待て。

 

 改めて、なのはのGPSを確認したところ、公園に向かって進んでいた。

 これは……鉢合わせあり得るな……。

 

『……? どうかされました?』

「いえ、なんでもないわ。ちょっと偶然が出来すぎて、運命のロジックがちんぷんかんぷんなだけよ」

 

 私自身も理解不能な返答をしたのち、通信を切った。

 

「……不味いわね。ロストロギア異性体に、兵部京介、そしてバベルの、三つ巴の戦いなるのかもしれない!」

 私は、なのはの通信機とジュエルシードの反応が導く場所……公園の丘に急行せんと、エンジンを吹かした。

 

 

 

 #################

 

 

 

 ロストロギアの異相体と思われる獣(長い牙とコウモリの翼をもつ、トラのような生き物)と対峙していたのは、ザ・チルドレンと、黒をベースにした服に赤黒が裏表のマントを身につけた、金髪の女の子……『フェイト・テスタロッサ』だ。

 

 私がこの場に到着すると、ザ・チルドレンと皆本くんは、空を飛ぶ一人と一匹……フェイトと異相体を見上げていた。

 

「皆本くん! なのはちゃんは!?」

「わ、わからない! 発信源を追ってきたら、急にあの獣に教われそうになって……」

「あの獣はロストロギアの異相体……ジュエルシードが原因よ!」

「な、なんだって! あれが報告書にあった化け物か……まるで怪獣映画だな……」

 

 空中に浮かぶ黒い獣は、低い唸り声で威嚇していた。

 現状を理解した皆本くんは、ザ・チルドレンたちに命令を下す。

 

「あんなのが街中に出たら大変だ! ここで押さえつけるぞ! ……特務エスパー、ザ・チルドレン、解禁!」

「おう! 任せろ皆本!」

「……! まって薫ちゃん! 誰か来るわ!」

 

 飛び出そうとした薫を、紫穂が止めた。

 その瞬間、私たちの前に『やつ』が突然現れた。

 

「たとえクイーンでも、彼女の邪魔はさせないよ」

「兵部!」

「な、なんで京介が止めるんだ!?」

 

 まさか、エスパー犯罪組織『パンドラ』が、フェイトと手を組んだのか……!? 

 

 そんな一抹の不安は、兵部の一言で現実となった。

 

「異世界から飛来した『ジュエルシード』……あれはかなり危険な代物なんだろ? 彼女……フェイト君から聞いたよ。だからパンドラは回収を手伝ってる、ただそれだけさ?」

 

「それは異能案件として、バベルが処理するわ!」

 

 私は兵部京介に言い返した。なお、彼の顔を見た瞬間に昨日の電波ジャックの件を思い出し、私怨を多分に含まれていることは否定しない。

 

 兵部は、あぁ知ってるさ、と短く返答した。

 

「だから、別目的で集めてる彼女に手を貸してるのさ。ま、バベルが嫌がることをするのは、僕の小さな趣味みたいなものだからね」

『まあ、あと恭介はロリコンだからね! 女の子をほおっておけ……むぐぐぐぐ!!!』

「おっまえはまたそーいゆ誤解を招くことを!」

『いってーな京介! そんなに怒るってことは図星か!?』

「……こんの齧歯類め……」

 

 兵部と、肩に乗ってるモモンガ『桃太郎』による夫婦漫才が始まった。

 こんな緊張感がある場面で漫談を始めるなんて、余裕じゃない。

 ……でも、奴らの警戒心は全く解けておらず、こちらから仕掛けるのはほぼ不可能だった。

 

 そして、この様子だとパンドラ……もとい、兵部京介は、ジュエルシードの危険性と、フェイトたちの目的まで知っているということか! 

 

 

 その時、上空で動きがあった。

 

 

『Scythe form』

「……はぁっ!」

 

 自身が手に持つ武器に光の刃を鎌状に纏わせ、フェイトが、黒い獣に切りかかった。

 獣は避けようとしたのだろうが、コウモリの翼を根本から切り裂かれた! 

 

 びちゃっ!! 

 

「うわっ! きったねぇ!」

 

 裂かれた翼が、こちらの目の前に落ちてきた。紫色の血液(?)が辺りを濡らす。

 

「……?! 皆! 油断しないで!」

 

 私はその弾けた血液が、ウネウネと動く様を確認した。

 突如、千切れた羽やそこから流れる血液が、ヒルのような生き物に変質し、私たちに襲いかかった! 

 

「うおおおっ! あぶねぇ!」

 

 とっさに、薫が念動力(サイコキネシス)で、紫ヒルを叩き潰した。

 

「な、なんや! とんでもない生き物やな!」

 

 そして上空では、フェイトの攻撃は続いていた。

 黒の獣は、切断された翼はすぐに再生しており、フェイトと激しい空中戦を繰り広げていた。

 

 私たちも加勢しようか考えていたが……。

 目の前には兵部京介。下手に動くことは出来ない。

 それに、彼女と獣の空中戦は、薫の念動力(サイコキネシス)を使った浮遊では追い付けない早さで展開していた。

 ……私達みたいな、自由に空を飛べないエスパーは空中戦に分が悪い。

 

 こんなとき自由に空を飛ぶ、なのはちゃんがいてくれたら……! 

 

 

 そんな戦場を、一陣の光が突き抜けた。

 それは強烈な魔力を纏い、ピンク色に輝いていた。

 

「たぁぁぁぁぁぁぁーっ!!!」

 

 高町なのはが突っ込んできたのだ。ピンクの光に包まれたまま、そのまま黒の獣に体当たりして、地面に叩き伏せたのだった。

 

 

―続く―

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。