上空からピンクの光を纏った、高町なのはが突っ込んできた。そのまま黒の獣に体当たりして、地面に叩きつけた。
この展開に私達以上に驚いていたのは、兵部京介だった。
「なにっ! なぜ彼女がここに!」
すると、兵部の横に金髪の女の子が
筑紫澪だ。非常に罰の悪い顔をしている。
「ごめんなさい少佐……なのはと話してる間に楽しくなっちゃって……夢中になってる間に、逃げられちゃった……」
『なんだよ澪! 彼女をジュエルシードに近づけるなって、それだけの命令すら出来ねーのか?! やっぱり、コレミツかマッスルとペアを組ませるべきだったんだ!』
「こらやめろ齧歯類!! ……起こってしまったことは仕方ない。ちゃんと反省し次に生かそうな、澪」
任務を失敗し、半分泣いてる顔をしていた澪の頭を、兵部が撫でた。
澪は半泣きの顔をあげ、再度謝罪した。
……うん、一連の行動を見て、私の認識は疑義から確信に変わった。
兵部京介は、ロリコン……というより、孫を可愛がるおじいちゃんだな……。
そんな、パンドラロリコン劇場を目の前で見せつけられてる間に、空中では大変なことになっていた。
先ほどまで戦っていた黒い獣は、フェイトの鎌による一閃で切り裂かれ、ジュエルシードが出現した。
それを巡って、今度はフェイトとなのはが争い始めた!
私は、この場の均衡を無理矢理崩してでも、なのはに加勢すべきと考えた。
「皆本くん! なのはちゃんに加勢するわ!」
「……ああ! ザ・チルドレン、出動だ!」
「そうはさせないよ、クイーン!」
やはり兵部が動いた。私たちに向かって衝撃波を繰り出した。
しかし、私はそれに対して、手袋から発火させ炎を出した。炎は衝撃波に乗って帯状に広がったが、私は炎を硬化させ、壁を作り目隠しにした。
「葵ちゃん! 薫ちゃん! なのはちゃんをお願い!」
「おう、まかせろ!」
「まかせてーや!」
葵の
「サイキックぅ……木の葉乱舞っ!!」
森の木々に映える新緑を根こそぎ取り、それをカッターのように硬化させフェイトに向かって打ち付けた。
「くっ!!」
フェイトは咄嗟に黄色いシールドを展開した。木の葉がシールドに弾かれるが、目眩ましには十分だ。
「いまや! なのははん! ジュエルシードの回収を!」
「あ、ありがとう! ……きゃっ!! な、何?」
宙に浮いているジュエルシードに向かおうとしたなのはの体から、『2本の腕』が生えて、彼女を拘束した。
筑紫澪の部分テレポートだ。澪の腕をなのはの体近くに
「ご、ごめん、なのはちゃん! お友達にならないかって言われたの嬉しかったけど……ごめん!」
「クイーンも少し、
「兵部……! くっ!!」
兵部が薫の目の前に
「薫ちゃん!」
「薫!」
紫穂と皆本くんが拳銃を抜いた。が!
『おっと、おいらをお忘れかい!』
モモンガの桃太郎が、衝撃波を発し、紫穂と皆本くんの拳銃が弾き跳ばされた。
「きゃぁっ!」
「くっ!!」
しかし、これで、私が完全に『フリー』になった。
必要なくなった炎の壁の硬化を解除し、残り炎で長剣を作りだした。
体制を低く、一気に、なのはを拘束する筑紫澪に駆け寄る!
彼女を捉えれば、なのはちゃんは自由になるし、兵部たちの人質としても使えると考えたからだ(この際、やれ『正義』だとかは置いておく!)。
……が、その作戦は失敗に終わった。
突如、赤毛の獣(セントバーナードくらい)が、茂みから飛び出し、わたしの右腕に噛みついた。
「……いってぇぇぇっ!!!」
あまりの激痛で、炎の長剣はたち消えた。
そのまま赤毛の獣は、右腕に噛みついたまま私に覆い被さり、マウントをとってきた。
「フェイトの邪魔はさせないよ!!」
若い女の声で、赤毛の獣が喋った。こいつ……!
(フェイトの使い魔!)
確か、アルフとかいう名前だっけ?
セントバーナード並みの大きさの彼女がのし掛かり、私は完全に動きを封じられた。牙が右手に食い込み、血が滲んだ。
アルフが、わたしの腕を噛みつきながら喋った。
「悪いね! こっちの世界の魔法使いさん! ちょっと黙っててもらうよ!」
そうこうしているうちに、木の葉カッターから解放されたフェイトは体勢を立て直した。
そして、澪の腕で身動きが取れないなのはに向かって、バルディッシュの光の刃をブーメランのように飛ばしてきた。
これに最初に驚いたのは、筑紫澪だった。
「ちょっ……危ないじゃない!! 何考えてるのっ!!」
澪は急いで腕をひっこめた。
『Protection』
自由を得たなのはは急いで防護呪文を張り、迫り来る電気の刃を受け止めた。しかし、刃の勢いは衰えない。
「くぅぅぅっ!」
『Saber explosion』
フェイトのバルディッシュがコードを発動。その瞬間、なのはが押さえていた光の刃が大爆発を起こした。
ドオォぉぉン!
「な、なのは君!」
「なのはちゃん!!」
爆発の煙の中から、なのはが落ちてきた。彼女は気を失っているようだ。
このままでは頭から地面に叩きつけられてしまう。
(くっ! 彼女を……なのはを助けないと!)
しかし私はデカ犬に押さえつけられ全く動けない。右腕の傷も案外深い(労災申請しよ)。
「うちに任せて!」
葵が飛び出し、落下中のなのはの所に
「……よしっ、これでとりあえず大丈夫やな……えっ!!」
地面についた葵が空を見上げると、フェイトが、さらに追い討ちをかけようとしていた。
「……ごめん」
ぼそり、と、フェイトが呟いた。同時に、フェイトの回りには帯電した雷球からビーム状の光が発射され、葵となのはを襲った。
「……あかんっ!! 間に合わんっ!」
「……葵っ!!」
「葵っ!」
「葵ちゃん!」
ドドドドドっ!
フェイトが放ったビームは、しかし全く直撃しなかった。
曲線状に曲げられ、葵となのはの周りの地面に着弾しただけだった。
彼女たちの前には、兵部京介が立っていた。
彼の
「ひ、兵部少佐……」
「危なかったね」
いつもの飄々とした銀髪の青年は、服についた土埃を軽く叩き、空に浮くフェイトを見上げた。
「……おいおい、さすがにちょっとやり過ぎじゃないか? クイーンたちを傷つけるのは許さないよ」
「……」
「君はお母さんになんて命令されているか知らないが……。それより、早くジュエルシードの回収をしたらどうだい?」
「……!!」
一瞬、『お母さん』という言葉に表情を暗くしたフェイトであったが、直ぐに元の顔つきに戻り、宙に浮くジュエルシードを回収していった。
「あ、葵っ! なのは君!」
「あおいーっ! なのはーっ! 無事かっ!」
「葵ちゃーん! なのはちゃーん!」
「おっと、クイーンに皆本が来ちゃうと、また面倒だ……さっさと帰ろう」
シュン!
瞬間移動で、澪の近くに現れた兵部。
そこに、空からゆっくりフェイトも降りてきた。
そして、私の腕を咥え込んでいた赤犬……アルフも、腕から口を離すとジャンプで兵部たちの近くに集まった。
『よいしょっと。これで目的は達成したな~』
ふわりとモモンガ……桃太郎が、兵部の肩に着地した。
「じゃあね、バベルの諸君と……高町なのは君。パンドラはしばらく、エスパー解放活動と平行して、ジュエルシード回収も行うよ。今回はほんの挨拶代わりさ」
兵部たちの足元が光輝く。
「ま、まて! パンドラの目的は何?! 何でジュエルシードを集めるの!?」
私は傷ついた腕を押さえながら叫ぶも、この質問は完全シカトされた。
……が、消える寸前に、兵部が意味深な一言を残していった。
「……今後、
えっ。
私の知る世界って……それって……
#################
その後、緊急要請を受けたバベルのレスキューによって、私と高町なのはは病院に担ぎ込まれた。
幸いにも、私の傷は腱や骨には達しておらず、後遺症になることはなさそう。
なのはも、直ぐに目を覚まし、念のため検査を受けた。
「なのは! ごめん! 到着が遅くなって……」
病室で検査待ちしている横に、フェレットが座っていた。ユーノくんだ。
「ううん、ユーノくん悪くないよ。私が、ユーノくんの制止を振切って、ジュエルシード回収にいっちゃったから……」
うつむくなのは。
私も、なのはと、それとユーノにも謝罪した。
「ごめん! 大人がついていながら、なのはちゃんを守れなかった……こんな怪我までさせてしまって」
「ううん! 私……あの娘が何か抱えてるような気がして……何かあの娘の力になりたい」
あの娘……フェイトのことね。
「なのはちゃん。ジュエルシード集めだけど、パンドラが裏で繋がってるのがわかった関係上、バベルに全部任せることも出来るわよ……?」
「いえ、私にもやらせてください。それに、あの娘も何で集めているのか、ちゃんと確かめたいんです」
でしょうね。そういうと思った。
なのはは、言葉を続けた。
「それには、私ももっともっと強くなりたい……。ユーノくん、もっと上手な魔法の使い方教えて!」
―続く―