転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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あまりに執筆に時間がかかりすぎる+話が長いので、前後編に分けました。


【第5話】とある世界の異能案件(クロスオーバー)【前編】

「私と、ザ・チルドレンに特命!?」

 

 局長室に私の声が響いた。だって、そりゃそうでしょう。

 先日、高町なのはの大怪我を回避すべく行動をとったのにかかわらず、結果的には彼女の怪我を避けることに失敗……。それどころか、超危険なジュエルシードを、よりにもよって兵部京介率いるあのパンドラに奪われてしまったのだ。

 

 本件の任務不履行は、始末書どころか、下手すりゃ私は長期謹慎にもなりかねないミスだったはず。それなのに、ザ・チルドレンたちとの共同作戦を任命された。これにはなにか特殊な事情がありそうだ……。

 

「うむ……先の異能案件の傷もまだ癒えぬところ、大変申し訳ないのだが……」

 

 桐壺局長が、ばつの悪い反応を示した。やはり本件は、裏で大きな「何か」が動いていると考えたほうがよさそうだ。一体なんだ……? 

 

 そんな空気を察してか、それとも単純に任務だからか。同席していた皆本くんが返答した。

 

「いえ、昨日の任務は失敗に終わりました。本件にて挽回します」

 

 それを聞いて桐壺所長は安堵の表情を示した。

 

「いやぁ助かるよ皆本くん! ……本当は、こんな任務にザ・チルドレンたちを連れて行きたくないのだが……。先方の強い要望でね。すまないが頼んだよ」

 

 続いて柏木秘書官が、その任務について説明をしてくれた。

 

「本件は極秘任務となります。公言は控えますよう……先日、バベルの持つ『アンチ超能力装置』が、何者かに奪われました」

 

「ええ!! バベルのECMが?!」

 

 皆本くんも驚くのも無理はない。

 ECM……。こっちの世界では、Esp Counter Measures のこと。つまりは、超能力対抗装置。強力な電波などを用いて超能力を発現させる力を押さえつけたり、または能力者自体に影響がある音波などを脳波に干渉させるなどして、超能力を封じてしまうものだ。難しく言えば、AIM拡散力場を収斂または発散させ能力干渉させる……とか言われているが、まあ、結論としては「能力を抑制する装置」のこと。

 

 ……確かにそりゃ大事だ。

 曲がりなりにも、国家の大組織からそんなものが盗まれたと世に知れたら、非難轟々バッシングの嵐。連日報道陣が駆けつけゴシップ記事が世論を引っ掻き回す。

 なんてことになったら、バベルの信用は地に落ちる。

 

 ……そして私は、そのECMが盗まれる『事件(げんさく)』に、心当たりがあった。

 

「……『普通の人々』の犯行ですね」

 

 ええ、と、柏木さんが頷いた。

『普通の人々』。反超能力者思想のテロリストであり、超能力者を擁護するバベルは彼らを要注意組織として注視している……が、問題は奴らの素性だ。奴らは文字通り『どこにでも居る』。

 

「ECM保管倉庫の管理者の一人が、『普通の人々』の構成員だったわ」

 

 柏木さんは事実を淡々と述べた。奴らはあまりに『普通』すぎて、一見テロリストとは思えない人物が、構成員だったりする。

 柏木さんが話を続ける。

 

「そしてこのECMが搬送されたと推測される場所が……『学園都市』なの」

 

 ……まじっすか。そっちとのクロスオーバーは予想できなかった。

 バベルと学園都市。この2つの組織は、かたや超能力者と非超能力者の共存を。かたや、研究によるさらなる超能力者の能力発展、開発を目指している。まさに相反する思想を掲げた、犬猿の仲である。

 

「うむ……奴ら学園都市に協力を依頼するのは不本意であったが、背に腹は代えられぬ……。条件付きであるが、学園都市の協力を得られた」

 

「その条件が、薫たちザ・チルドレンへの特命ですね」

 

 皆本くんの指摘に、局長が大きく頷いた。

 

「そうだ。奴らは以前から、超度7のザ・チルドレンに興味を持っている。これを機会に、チルドレンたちのデータを取ろうとしているのだろう……。不本意ではあるがな」

 

 局長は何度も『不本意だが』と繰り返した。

 なるほどね、学園都市は高レベルの超能力者を集めて『何か』をしようとしてるって聞いたわ。それに、外部の高レベル超能力者なんて、喉から手が出るほどの格好な研究対象よね。

 

 そんなことをボンヤリ考えていたとき、ふと、疑問が浮かんだ。

 

 ……あれ? だとしたら、なんで私も同行なのかしら? 

 たしかに、私は超度6の超能力者ではあるけど。名指しで私である必要はない。

 考えられることとして、異能案件絡みか、もしくは、前回のミスの挽回チャンスを与えられた、ということなのかしら……。

 

「そして神之原くん。実は学園都市の要件に、君の同行も条件になっている」

 

「……ほへ?」

 

 局長から唐突に私の名前が出てきて、驚きで変な声が出た。

 

 ……え? 私が学園都市から直々のご指名なの??? 

 

「正確には学園都市側の依頼ではないのだが……君には、学園都市の図書館に荷物を届けてほしい」

 

 ##################

 

 

「と、いうわけで。急に学園都市に行くことになったの」

 

 私は電話で一報を入れた。相手は『巴マミ』。私と『魔女退治』の提携を結んだ魔法少女だ。

 バベルの特命によりこの町を離れ、暫くは学園都市から出られなくなる予定だ。そのため、見滝原市で魔女が誕生しても、私はすぐに駆けつけることが出来なくなる。

 

「急な出向なんですね」

 

「まあね、言っても一介のサラリーマンなのよ……。あなたも、アラサー独身勤め人になったら理解できるわ……」

 

「は、はぁ……」

 

 決まったことは仕方ない。前向きに勤めるとして。

 

「そういえばさ、巴さん。学園都市の中を担当している魔法少女とは面識はあるのかしら?」

 

 素朴な疑問を彼女に投げかけた。

 外から学園都市に入るには、数多くの手続きが必要になる。一般の車は進入禁止で、公共機関を使用して入ることが必須になる。

 そんな、外から孤立した世界において、人の心の弱みに付け込む『魔女』の存在は厄介極まりない。そんな魔女を狩る魔法少女は、必ず学園都市にもいる。と考えるのは自然な流れだろう。

 

「……。学園都市には、いま、魔法少女がいないんです。一番近いのは私ですね」

 

「え?」

 

 予想外の回答に私は驚いた。学園都市の魔法少女とコンタクトを取り、魔女の動向をチェックできないかと考えていたのだ。

 

「じゃあ、魔女が出たときは、マミさんがこちらに来るってことなのかしら」

 

 本当は、『何故、魔法少女がいなくなったのか』を尋ねたかったが、単に胸糞悪い返答が返ってくると思ったので、こちらの質問は飲み込んだ。

 

「そうなります。なので逆に、イオナさんにお願いです。グリーフシードを見つけたらすぐに連絡いただけませんか?」

 

「そういうことなら任せて。なんなら、来る前に魔女を退治までしておいてもいいわよ」

 

 私たち超能力者は、十分な休養で体力回復が可能であるが、魔法少女はグリーフシードによる魔力回復が必要不可欠。正に『生命線』である。

 少しでも、マミさんたち魔法少女に貢献してあげたい、という気持ちから自然に出た言葉だ。

 

「ふふっ。心強いですね。ありがとうございます……。魔女は、生命力を吸い上げます。ですので、心や身体が弱った人が多く集まる、病院などの近くに現れると最悪です。細心の注意を払ってください」

 

「ええ、分っているわ」

 

 あなたの命運が、その『病院に現れた魔女』に握られていることも、私は知っているのだから……。

 

 

 #####################

 

 #####################

 

 

 ここは、学園都市にあるAIM解析研究所。

 

「……」

 

 カッカッと、彼女が歩く靴音だけが廊下に響いた。既に時計の針は深夜2時を指していた。

 

「……ん?」

 

 彼女が研究所の自室に戻ったとき、違和感を覚えた。鍵がかかっていないのだ。

 

「……」

 

 彼女は一瞬戸惑った。が、一呼吸置いて自室の扉を開けた。

 

 六畳程度の広さの部屋。その中央に置かれた来客用のソファーには、不格好な顎髭を蓄えた小柄な瘦せ型の男が座っていた。

 その男は、人間の髑髏が付いた杖を携え、そして、寺の和尚が着るような袈裟を身に付けていた。

 

「やあ、夜分遅くまでご苦労様、木山さん」

 

「……? 君は誰だ?」

 

 女は、自室に不審者がいることには特に驚くことはなく、それよりその男が、自分の苗字を知っていることに興味をもった。

 目の下の隈が、彼女の目付きをさらに悪く見せた。

 

「おや? 木原幻生からの紹介なんだがな」

 

 男は髭を弄りながら、にたっと笑みを浮かべて答えた。

 

「ああ……そうか、君が『偉人』か。話は聞いてる」

 

 そういうと、木山と呼ばれた女は男の正面のソファに座り、男に話し始めた。

 

「『本』の上巻は、米国のワシントン図書館に保管されていた。そして、いまそれは、学園都市(こちら)に向かっている……どうやら、君たちの動向に気付いた組織があるようだ」

 

「ほう。んで、下巻は?」

 

「……インドの古物商が所有していたが、これも学園都市内に持ち込まれた記録がある。学園都市の図書館データベースでは見つけられなかったから、おそらく、個人購入か、もしくは物好きな古本屋が入手したか、だ」

 

「……ま、上出来だな。しかも全部こっちの中に来てくれるとは、海を渡る手間が省けた」

 

 すると男は袈裟の裾から、ケースに入った一枚の記録媒体ディスクを取り出し、女に手渡した。

 

「音楽を媒介にし、対象の脳波を変化させるプログラム。あんた、これが欲しかったんだろ?」

 

「ああ、感謝する。これで私の目的に大きく近づけた……。『本』の情報は渡した。君たちとの約束も、これが最後だ」

 

「ああ、感謝するよ『木山せんせい』。ま、オレらは学園都市には手を出さない、って、上と約束してるから安心しな。大切なものがあるんだろう? 」

 

 また男が、にやりと笑った。人を不快にさせるような笑みだった。『木山せんせい』と呼ばれた女は、その言葉に明らかに不満の表情を浮かべた。

 

 そしてその言葉を最後に、男はゆっくり立ち上がり、そのまま霞がかかったように姿が見えなくなった。

 しかし、錫杖に付いた金属の遊輪が、シャンシャンと鳴る音だけが廊下に響いていた。

 男は瞬間移動などではなく、ゆっくり廊下を歩いていた。肉眼で見えなくなっているだけであった。

 

(偏光能力、視覚阻害、もしくは、幻術使いか……?)

 

 女は、錫杖の音が響く廊下を見つめながら、『偉人』と呼ばれた男の超能力について思案を巡らせていた。

 が、そこから特に何も得られるものがないと結論付けると、自室に戻って扉を閉めた。

 

「……全く、やっかいなものに関わってしまった」

 

 そしてデスクの椅子に腰掛け、先ほど男から受け取ったディスクをパソコンに入れた。

 起動させたプログラムには、多数の脳波グラフが表示された。

 

(これで、音楽を媒体にした脳波調整が可能になった……微調整して……ネットワークを構築……)

 

 彼女は、元から組み立てていた他のプログラムと、先ほどのプログラムを組み合わせていった。深夜のPC作業は、彼女の目の隈をさらに深くさせた。しかし彼女は、何かに憑りつかれたかのように、キーボードをたたき続けた。

 

「私は、世界を犠牲にしてでも、あの子たちを守らなければならないんだ」

 

 誰とも聞かせるわけでもなく、彼女……『木山せんせい』は、ぼそりと呟いた。

 

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