転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第5話】とある世界の異能案件(クロスオーバー)【中編-2】

「キャァァっ!!」

「な、なんだぁっ!!」

 

 先ほどまで子供たちの声で賑やかだった広場は、悲鳴に変わった。

 

「……っく! 皆本くんっ! 避難誘導!」

 広場から道路に飛び出す私。

 爆発でひしゃげたシャッターの奥から、黒革のバッグを抱えた若者の集団が飛び出してきた。バッグの口はわずかに空いており、そこからは多量のお金が見え隠れしていた。

 

 銀行強盗だ。

 

「へっ! どうだい俺の超能力はっ!」

「バカやろう! 派手にやりすぎだっ!」

 そんな会話が聞こえてきた。派手とか地味とか関係ないわ犯罪者どもめ。

 

「待て……」

「待ちなさいっ!」

 私が強盗たちを制止しようと声を出したが、それは他の人の声に重なった。

 

 ……っと、そうか。

 ここに『彼女』が来て、強盗を捕まえるんだったわ。

 

 

風紀委員(ジャッジメント)ですの!」

 

 

 左腕に緑色の腕章を備え、それを強盗たちに見えるように立ちはだかったのは、学生服を着た女の子。

 彼女のいう『風紀委員(ジャッジメント)』とは、ここ学園都市で風紀と治安を守るために組織された集団だ。志願した学生たちだけで形成されており、そのほとんどが能力者である。

 そして、いま目の前にいるのは、空間移動能力をもつ、風紀委員。

 

 白井黒子。

 

 彼女に捕まったが最後、心も体もズタボロになり再起不能にされるとかなんとか……。

 彼女がここにいるってことは、少なくとも私や、私たちB.A.B.E.L.が、無理にこの事件に首を突っ込む必要は……。

 

「サイキックっ! スーパー張り手っ!」

「うおおっ!」

 人間の『手』の形の衝撃波が飛んできた。スキンヘッドの銀行強盗の1人がその衝撃波に飲み込まれ、ビルの壁にめり込んだ。

 これには白井さんもビックリ。

 

「な、な、なんですのっ!」

 そして広場から、皆本くんが飛び出してきた。

 おい保護者っ!! 

 ちゃんと子供(ガキ)ども見とけ!! 

 

「皆本くんっ! 私たちは避難誘導だけやりましょう! 事件は学園都市の人たちに任せて!」

 できるだけ原作を崩したくないという気持ちもあるが、学園都市のトラブルに巻き込まれることほどリスキーなものは、そうそう無い。だから私は、避難を優先することを提案した。

 それは、皆本くんも解ってるはずなのだが……。

 

「わかってる! …… 待てお前らっ! 学園都市(こっち)のトラブルに不要に首を突っ込むな! ……てか、なんでリミッター外れてるんだ!?」

 

 ……えっ? リミッターが外れてる……? 

 

「へっ! なんか体が軽いと思ったんだ!」

 衝撃波を発した張本人、明石薫は、道路に停めてあった観光バス近くをフワフワ浮いていた。

 文字通り軽くなってるやん。

 

 じゃなくて。

 

 彼女が念動力で自身の体を浮かしているということは、リミッターが外れている確かな証明でもあった。

 

「なんだあのガキっ!」

 強盗たちが薫に釘付けになっていたが、その目線は、すぐ別の物。

 空から降ってくる『車』に移ることになった。

 

「ほいさっ」

「くっ、車がっ! 降ってくるっ!」

 

 ズドン!! 

 

 バベルの社用車が強盗達の頭上から降ってきた。葵が、瞬間移動で車を飛ばしたのだ。

 ……あれ、社用車よね。壊したら、皆本くんが弁償なのかしら。

 かなり早く車に気づいたのが幸いして、彼らはギリギリのところで散会し、車の下敷きになることはなかった。

 

「調子に乗りやがって!」

(うん、明らかに調子乗ってるわね)

 ずっと車のなかで体を動かしたかっただろうし、窮屈なリミッターから解放されたこともあってか、ザ・チルドレン達はイキイキとしてる。

 

 バシュッ!! 

 

「な、なん……グワァァァァっ!!!!」

 強盗達の1人の体に、ワイヤーが絡まった、瞬間、急に彼の体に電撃が走った。

 

「どう? 新装備の『ワイヤーガン』。スタンガン付きなのよ」

 紫穂が、新たに支給された武器を使ったのだ。

 しかし……本当にスタンガンか? 打ち込まれた相手、なんか少し焦げてないか……? 

 

「そして、このワイヤーからサイコメトリも可能なの……えっ!」

 紫穂が、痺れた(?)相手をサイコメトリしたのだろうか、驚いた表情を見せた。

 刹那、紫穂が叫んだ。

 

「そこのビルの影に、まだ強盗の仲間がいるわっ! しかも、武器も持ってる!」

「なっ……くそっ!」

「他に仲間がっ?!」

 

 強盗が動揺を見せた。

 そして、つい私も声をあげてしまった。

 ……だって、確か原作は、銀行の外には仲間は居なかったはず……。

 すると、ビルの影から、男が1人飛び出してきた 彼の手には、あまりお上品ではない、物騒な物が握られていた。

 

「う、動くなっ!」

 銃を構えた彼は、私たちのほうに銃口を向けてきた。

 が、すぐに彼の拳銃は、彼の手から離れることになる。

 

「 ほほいっと!」

 葵の瞬間移動だ。

 レベル7の彼女なら、ある一定の距離まで詰めれば、拳銃程度の物なら自在に別の場所まで『跳ばす』ことができる。

 葵の足元に、拳銃がゴトリと落ちた。

 

「て、テレポーター……」

 呆気にとられた強盗だったが、次の瞬間には地面に伏せることになった。

 白井黒子が、強盗の目の前に跳んだ。

 そして、再度姿を消し、強盗の後頭部にドロップキックをあて、派手に転倒させたのだ。

 

「拳銃は、やり過ぎですわよ」

 そして黒子は、長さ10センチほどの金属の棒の束を取り出すと、それを目の前で手品のように消して見せた。

 ……いや、『瞬間移動』させたのだ。

 転んだ強盗の服と、アスファルトの地面を、文字通り、縫い付けられるように、金属の棒が転移したのだ。

 

「な……お、お前らなんなんだっ!」

 まるで、理科で行うカエルの解剖(いまの子は知らないか)のように地面に張り付けられた強盗のひとりが、黒子に突っ掛かった。

 

「『お前ら』という表現は正確ではありませんが、私はお伝えしたはずですわよ。ジャッジメントですの」

「くらえっ!」

 まだ動ける強盗が2人。

 そのうちの1人が、捕まった仲間を助けるためか。

 黒子に向かって、右手から生じさせた激しい炎を投げつけてきた。

 

炎使い(パイロキネシスト)!!」

 炎から避けるべく体の向きを直した黒子であったが、しかし、その炎は黒子に届く前に『地面に叩きつけられた』。

 

 ……うん。

 やったのは、同じく『炎使い(パイロキネシスト)』の、私。

 もう、ここまで混沌(カオス)と化してしまったのだもの。このまま傍観者って訳にいかなくなったわ。

 

「ま、残念ながら相性の問題ね」

 私の能力……『炎を自在に操り変化させる』力で、相手が出した炎を叩きつけ、固め、それを返した。

 ヒモのように細くなった炎は相手に絡み付き、そのまま『炎を固め』て縛りあげた。

 即興の拘束ロープの出来上がりだ。

 

「な……こ、こんのやろうっ!」

(野郎じゃないわよ)

「お、思い出した……ジャッジメントには、捕まったが最後……」

 地面に縫い付けられた男が口を開いた。彼の声は震え、顔は青ざめていた。

 

「……心も体も切り刻んで再起不能にする、最悪の腹黒空間移動能力者がいると言う噂っ!!」

「誰のことですの?」

 黒子がムスっとした顔をした。どうやら、自覚はあるようだが……。

 

「ま、まさかそのテレポーターが、まだ小学生だったなんて……!」

 しかし男が見ていたのは、そう、ザ・チルドレンの『野上葵』のほうだった。

 

「ん? なんや?」

「……リアクションに困る間違いね……」

 なんてコントを間に挟んだけど、これで銀行強盗は全員捕まったかな……? 

 

 あれ、なんか忘れてるような……。

 すると、広場にいた女性……バスガイドの格好をした女性が、大きな声を上げていた。

 

「……すっすいません! 男の子を見ませんでしたか!」

 この騒ぎに巻き込まれ、男の子が1人迷子になってしまったようだ。

 

「ええっ! 」

 ガイド近くにいた皆本くんが驚き、周囲を探し始めた。一緒に、セーラー服を着た女の子達も、探索を手伝ってくれていた。

 

「……あっ、居た」

 彼女たちからちょうど死角な場所。男の子が、革ジャンの男……最後に残った銀行強盗に手を引かれ、連れ去られようとしているところを、

 

 セーラー服の女の子が必死に止めようとしていた。

 

「ダメーっ!!」

 その学生の決死の大声で、私含めほぼ全員が、男の子と強盗の存在に気づかされた。

 

「くっ! 邪魔だっ!!」

 そして大声のタイミングに被さり、強盗が彼女の顔を蹴り飛ばした。

 

「きゃあっ!」

 しかし、彼女は男の子から手を離さなかった。

 強盗は逆に、男の子から手を離し、逃走用に用意していた車──白いセダンに乗り込んだ。

 

「佐天さんっ!」

 蹴られた子と同じセーラー服の女の子が叫んだ。

 

「あいつ! 女の子の顔を蹴るなんて、男の風上にもおけないやっちゃな!」

「わたしが、超能力で吹っ飛ばしてやるっ! サイキックぅ……!」

 薫が両手にちからをこめ、念動力を発揮させようとしたその時。

 

「……まちなっ! あんたたちっ!!」

 

 誰の耳にも『怒っている』ことがわかる声が響いた。

 辺りの空気が、一気にピリついた。おそらく、これは比喩ではない。

 

「な、なんだよネーチャン……いてっ!」

 薫がその声の主に近づこうとしたら、静電気が走ったのか、バチッと音を立て薫の手を弾いた。

 

「こっからはわたしの、個人的なケンカだから……悪いけど、手を出させて貰うから」

 そして、声の主の女子高生は、車で逃走しようとする強盗の車に、真っ直ぐ向かっていった。

 

「……はあ? でも早くしないと、強盗に逃げられちまうぞ!」

「あ、それは大丈夫よ薫ちゃん。『さんざん俺たちをコケにしやがって。このまま引き下がれっかよ!』ですって」

「ほなら、車で突っ込んでくるんとちゃうか? あの女子高生、危なくないんか!」

 ザ・チルドレンたちが集まり、先ほどの学生の身を案じていたところに、私と、皆本くんも合流した。

 

「大丈夫だったか! お前たち!」

 皆本くんの第一声は、ほぼほぼ『これ』ね。

 

 そこに、『白井黒子』が、テレポートで飛んできた。

 

「あなた方、バベル特務エスパーの皆さん……ですわね。『上層部(うえ)』からお話は伺ってますわ」

 なるほど、どうやらジャッジメントには、私たちの話は伝わっているようだ。

 それなら助かる。……この状況に至ってしまったことについても、だいぶ話がスムーズに進んでくれそうだ。

 

「……特とご覧くださいませ」

 そういうと、黒子は、私たちに背を向けた。正確には、先ほど歩いていた学生のほうを向いた。

 

 

「あの方こそが、学園都市230万人の頂点。7人のレベル5の第3位……」

 

 

 一旦離れた白い車が激しくエンジンをふかした。

 

 そして、急加速によるホイールの摩擦音が響いた。

 

 急加速した車は、真っ直ぐ、『御坂美琴』に突進してきた。

 

 しかし彼女は避ける素振りを見せず、1枚のコインを取り出し、それを指で弾いた。

 

 刹那、雷のような轟音と共に、

 高圧電流の束が一直線に、地面を抉りながら突き抜けていった。

 その直線上にあったものは、例外なく、全て薙ぎ払われていった。

 

 そして、犯人の乗る車は表層の塗装を焦がし、ド派手な回転と共に、宙を舞うこととなったのだった。

 

 

超電磁砲(レールガン)、御坂美琴お姉さま。……常盤台中学が誇る最強無敵の電撃姫ですの」

 

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