転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第5話】とある世界の異能案件(クロスオーバー)【後編】

警備員(アンチスキル)への通報は?」

 

「は、はい! すでに連絡済みです。もう来るころかと……少し遅いですね」

 

 銀行強盗団を適当に拘束しながら、私は風紀委員(ジャッジメント)の構成員の1人『初春飾利』に尋ねた。

 

 初春さんは、先ほど強盗に顔面を蹴られ怪我をした『佐天涙子』の介抱をしていた。

 

 彼女、佐天さんのとっさの勇気がなければ、子供を人質に取られた可能性もある。こうやって強盗を無事に拿捕できた功績は、彼女にあると言っても過言ではないだろう。

 

 ……しかし、気になる。

 彼女にあってから、ずっとずっと気になっていた。

 直接彼女に聞けば問題ないのだろうが、しかし、なにか深い事情があるのかもしれない。安易に話しかけるのは危険だ。

 

 私はこの気持ちを、心の奥底にしまっておくことにした。いつか機会が来たら、向こうから直接話してくれると信じて。

 

 初春さんの『お花』。

 いったい、なんなんだろう……? 

 

 

 

 地面からは未だ、溶けたアスファルトの臭いが漂っていた。

 電撃姫、超電磁砲(レールガン)こと、御坂美琴の超能力による焼け跡だ。

 

「これだけの威力の攻撃を、直撃()()()に打ち込めるのね」

 

 たとえ直撃がしなかったとしても、少しでも車に当たれば、ガソリンに引火して爆発の可能性もあるだろう。

 また、強力な電磁波が運転席に届けば、中で簡易電子レンジ状態になってドライバーが『チン』されるのも、容易に想像できる。

 

「痛ぇよ……足が折れてるよぉ……」

 

 だが、吹っ飛んだ車のドライバーは無傷……ではないにしろ、意識もあるし命に別状はなさそう。

 

 車体が歪んで、出られなくなってるみたいだけど。

 

「……『本当はあんまり痛くない。泣いておけば許してくれるかも』ですって。あと、脚も折れて無いわよ」

 

 紫穂が、車に触れサイコメトリした。

 前言撤回。ドライバーも元気だわ。

 

「なんやねん! 心配して損したわ! ほいっ!」

 

 葵の掛け声と共に、車に閉じ込められていたドライバー、もとい、強盗犯の1人が車外に瞬間移動した。

 

 その葵の『瞬間移動(テレポート)能力』をすぐ後ろで見ていたのは、『白井黒子』。

 

「物体に触れず、移動……座標を転移させてる? それに、車ほど重量のある物体も、易々と転移させられるなんて……」

 

 やはり、同じ『空間転移』能力者として、葵のことが気になるのね。

 

「お! おだてても何もでぇへんで! でも、お姉さんの瞬間移動も中々のもんや! あんだけ繊細に連続で、服だけピン留めなんて、うちも上手く出来るかどうか……」

 

「こ、こら葵っ! ……すいません、なにか気に触るようなこと言いませんでした?」

 

 調子に乗ってる葵を、保護者こと皆本くんが注意し、白井さんに謝罪した。

 

「い、いえ! ……でも小学生でこの能力。実際に見るまで、にわかには信じられませんでしたわ。超度7のエスパー、将来有望ですわね」

 

 あら。案外落ち着いた対応ね。

 私はてっきり、高能力者同士のマウントの取り合いに発展するんじゃないかと内心ヒヤヒヤしてたわ。

 

 

「黒子。この人たちは?」

 

「おっ、お姉ぇさまぁぁん♡ お怪我はございませ……アババババ」

 

 御坂美琴が、私たちの前に来た。そして彼女に抱きつこうとした黒子は、電撃使い(エレクトロマスター)の発する電気を浴びることとなった。

 

「……黒子、私ちょっと機嫌が悪いの」

 

「はああん、お姉さまの痺れる愛……しかと受け取りましたわ……」

 

 見た目、結構な電撃っぽかったけど……。

 彼女は体を痙攣させながら、法悦の表情を浮かべていた。

 

「……むう」

 

 ? 薫? 

 どうも、薫も機嫌が悪い。

 

「ご挨拶遅れて申し訳ないわ。私たちは『内務省特務機関超能力支援研究局』、通称『バベル』の特務エスパーよ」

 

 とりあえず、社会人の嗜み、最初のご挨拶。私は、名刺を差し出しながら話しかけた。

 

「聞いたことあるわ、『外の』アンチスキルみたいな人たちでしょ? なんでこの学園都市に来てるのよ、まさか銀行強盗でも捕まえに来たの?」

 

「いや、この件は偶然居合わせただけで……」

 

 すごい不機嫌な御坂美琴は、名刺を受けとることもしなかった。

 

「やい! ビリビリネーチャン! さっきは痛かったぞ!」

 

 そこに、急に薫ちゃんが食って掛かってきた。

 

「なによ、わたしは離れてっていったわよ、聞き分けの無い子供ね!」

 

「なっ、なにいいいっ!」

 

「なによ!」

 

 ちょ、ちょっとまちなさいっ! 

 レベル5と超度7が全力でケンカなんか始めたら、この一角がどーなっちゃうか簡単に予想できる。

 

 冗談じゃない。なによりそうなったら……。

 

(もう報告書に悩みたくないわよっ!)

 

「薫ちゃん。すこし落ち着こ。深呼吸よ~」

「薫! どうしたんだ、少し落ち着け!」

 

 皆本くんも一緒になって薫をなだめている。

 

「お、お姉さま! ちょっと落ち着いてくださいまし!」

 

 そして御坂美琴のほうも、白井黒子が説得してくれている。

 

 まったく、二人ともどうしちゃったのよ……。

 

 

 

 

「まだ、足らない」

 

 

 

「もっと、もっと」

 

 

 

 ……??? 

 

 なにか今、聞こえたような……。

 

 

 

「もっと、混ざれ、もっと、混ざれ!」

 

 

 

 

 頭痛。

 

 

 一瞬めまいがした、程度の軽いものだが。

 

 

 この頭痛に、私たちは身に覚えがあった。

 

 

「っ……へっ?」

「んっ!」

 

 御坂美琴も、白井黒子も、この違和感を覚えたようだ。

 

「え、またかよ!」

「ちょ、この感じ!」

「ええ、これは……」

 

「ど、どうしたお前ら?」

 

「皆本はん! 『あのときの頭痛』や! 神保町のときの!」

 

 ザ・チルドレンたちも理解したみたい。

 

 あの空間に入り込んだ、嫌な感じ。

 

「初春っ!」

 

 白井黒子が、初春さんと佐天さんのところに駆け寄る。

 先ほどまで佐天さんを介抱していた初春さんは、道の端で2人とも倒れていた。

 

「初春っ! さ、佐天さんも! ……気を失ってる……」

 

 2人の安否を確認した黒子。

 

 周囲を見回すと、やはり前回と同じ状況になっていた。

 どうやら発生源から離れた人たちは、この空間に干渉できなくなるようだ。いま、この空間の外では、いつも通りの日常が進んでいる。

 そして、不運にもこの空間に残っていた人の多くは、意識を失う。

 銀行強盗たちも、昏睡してしまっている。

 

 私たちのような『例外』を除いて。

 

「みんなっ! 周囲の警戒を怠るなっ! また前みたいな『化物』が出てくるかもしれないっ!」

 

 皆本くんが、みんなに警戒を促した。

 

 

 

 ズン……ズン……

 

 

 

 例えるなら、三国志の武将。

 

 黒を基調としたタイツに、武将の鎧。

 赤い縁取りが映える。

 その巨体は3メートルほどだろうか。

 

 その男はどこからともなく現れた。そして、男は大股で歩んできて、白井黒子の前までやってきた。

 

「あの女を渡して貰おうか、プリキュア!」

 

「……? プリ……なんですの?」

 

「あれ? お前プリキュアじゃないのか」

 

「ちょっと、一般人は下がっていてくださいませんか……」

 

 いけない! 

 白井黒子はアイツを人間だと思っている! 

 ……いやいや! 違和感! そこは感じ取って! 

 

「白井さん! そいつは危険だ!」

 

「ふん!」

 

 私が叫ぶとほぼ同時に、ソイツは白井黒子に殴りかかった。

 

「……っと! 急に殴ってくるなんて!」

 

 が、直前に白井黒子は、佐天さんと初春さんを抱き抱えてこちらに瞬間移動してきた。

 

「皆離れろっ! あれは報告にあった異能案件だ!」

 

 皆本くんがみんなに警告した。

 

(ドツクゾーンの幹部、ウラガノス!)

 

 異様な雰囲気を醸し出したアイツ……ウラガノスに、全員が身構えた。

 

「まあいい、プリキュアに会う前の準備運動だ……はあっ!!」

 

 ウラガノスが、その巨体を震わせ、叫んだ。

 そして一緒に、大きく空気が震えた。

 

 ウラガノスは一旦大きくかがんで、そして、一気に膝を伸ばしこちらに向かって体当たりしてきた。

 一直線に飛んでくる巨体。ソレは想定より素早かった。が、

 

「させるかっ! サイキック! メガトンパーンチっ!」

 

「薫ちゃん!」

 

 明石薫が、右手に超能力の衝撃波を纏い、ウラガノスの体当たりに立ち向かった。

 

 両者が激突した瞬間、激しい爆音と衝撃波が周囲に走った

 

「むむっ! なかなかやるな!」

「うっそだろ?! こっちも結構全力なんだぞ!」

 

 バシィッ! 

 

 鼓膜が破れそうなくらい大きな音をたてて、お互いが弾かれた。

 ウラガノスは空中で体勢を立て直し、相撲の四股のポーズで着地した。

 

 一方、薫は砂ぼこりをあげながら派手に転がりながら吹っ飛ばされ、広場の生け垣に突っ込んだ。

 

「か、薫はん!」

「大丈夫?」

「薫!」

「薫ちゃん!」

 

「いちちちち……」

 

 よかった、大事には至らなかったようだ。私と皆本くん、あと葵と紫穂。バベルのみんなが、薫に駆け寄った。

 

 そんな薫を、ウラガノスが見ていた。彼は薫の攻撃に満足していたようだ。

 

「やるな小わっぱ。 少々見くびってたぞ」

 

「なんなんですのっ! ああんもう! 通信機は使い物にならないしっ!」

 

 白井黒子は、現状の異常さを理解し、通信機で連絡をつけようとしたのだろう。

 外界とは遮断されてしまっているこの空間ではまったく無意味だったようだ。

 

「次は、全員まとめて、吹き飛ばす!」

 

 またしてもウラガノスが突っ込んできた。

 先程よりも勢いがある! 

 

「よけて!」

 

 私はみんなに向かって叫んだ。

 相手の速度は速いが、単調な体当たりである。

 力任せで単純だからこそ、避けやすい。

 

「くっ!」

「ほっ!」

 

 瞬時に、2人のテレポーターがテレポートした。

 

 白井黒子は、御坂美琴と佐天、初春さんを連れて。

 野上葵は、いつものメンバーに私を含めて。

 

 が。

 

「きゃっ!」

「うわっ!」

 

 避けることはできたけど、白井さんたちは公園の砂場に落下した。

 私たちは、駐車場の誰かの車のボンネットに派手に落ちてきた。

 

 着地が少々荒っぽくない?? 

 

「いつつ……あかんっ! テレポーターの力が干渉して……」

 

「くっ! 思いどおりに飛べませんわっ!」

 

 そんなことあるのか。

 どうやら同時に高レベルの空間転移能力を使うと、演算が混線する? みたいね……。

 

 なんてことを考えている余裕は、なかった。

 

「なによ……あれ……」

 

 砂場で砂まみれになった御坂美琴が、ヤツ……ウラガノスの起こした惨状に驚愕した。

 

 ウラガノスは単なる体当たりで、駐車場の車を次々と吹き飛ばし、ビル一棟を貫通し、裏手の建物を崩壊させていた。

 

「ふいぃ……。おかしいな、目測を誤ったかな……」

 

 崩れたビルから、ウラガノスがのそりと現れた。砂ぼこりを纏っていたが、本人は気にしていないようだ。

 

 ウラガノスの圧倒的なパワーに、たじろぐメンバー。私も、ヤツがこれほどの力を持っていたとは知らなかった。

 

(こんなに……強かったっけ?)

 

 怯んで動けない中、彼は冷静に指示した。

 こういうときに、冷静で正確な指示を出せる、皆本くんは、頼りになる。

 

「葵! 白井さん! まずは人の避難だ! 気を失っている人や、あそこで横になってる強盗たちも、できるだけ遠くへ!」

 

「りょ、了解しましたわ!」

「りょーかい!」

 

 さっきの銀行強盗。うっかり忘れてたわ。

 

「薫と、イオナさんは、その間ヤツの動きを止めておいてくれ! 紫穂と僕は両方のサポートだ!」

 

「そうね、それが賢明ね!」

「……お、おう皆本! 任せろ!」

 

 白井さんと葵は、お互いに能力が干渉しない距離を保ち、気を失っている人たちを遠くへ運び始めた。

 さすが能力の『プロ』ということか。能力が影響しない距離を十分熟知している。

 

 白井さんは初春、佐天組を運び、薫は銀行強盗を飛ばそうとしていた。

 

「ほおおお、瞬間移動ってやつか、それでオレの体当たりをよけたのか。なるほど、じゃ次は、避けられないようにしないとな」

 

 一般人を待避させている2人をみて、ウラガノスは感心した。

 

 これで、こちらに『テレポーター』がいることがヤツに知られた。手の内を見せてしまったが、人命救助が最優先。背に腹は代えられぬ。

 

「いくぞ! ぬぅぅぅぅん……!」

 

 ウラガノスが、またしても力を溜め始めた。ビルを軽々崩壊させた、あの攻撃がまたやってくる! 

 

 薫と、私とが、身構える。この中で戦闘員はこの2人だけ……。

 

「さ! お姉さまも待避を! …… お姉さま?」

 

「……黒子。私が、こんなのに巻き込まれて、おいそれと尻尾を巻いて逃げると思った?」

 

「……まあ、ですわよね」

 

 ですよね。

 ありがたいことに、学園都市第3位も手を貸してくれるとのこと。

 

 

 

 ……そして、遅れて『彼女たち』もやってきてくれた。

 

 

 

「まちなさいっ! 」

 

「これ以上、町を破壊させないっ!」

 

 黒と白の衣装を纏った、光の戦士たち。

 

「「ふたりはプリキュアっ!」」

 

「闇の力の僕たちよ!」

「とっととおうちへ帰んなさいっ!」

 

 彼女たちはちょうど、ウラガノスを挟んで私たちの反対側に現れた。

 ちょっと高い位置から放たれるキメ台詞。うん、やっぱカッコいい。

 

「ああんもう! 次はキラキラコスプレ大会ですのっ?」

 

「大丈夫よ、白井さん! 彼女たちは『味方』よ!」

 

 ますます現状について行けず混乱を来している白井さんに、とりあえず彼女たちは害がないことを伝えた。

 

 すると、さっきまで力んでいたウラガノスは、いったんプリキュアのほうに体を向けた。

 

「きたかプリキュア! さあ、あの娘をだせっ!」

 

「あの娘……?! ルミナスのこと?!」

 

「とぼけるな……! でろっ! ザケンナーっ!」

 

 ウラガノスの呼び掛けに応じ、ザケンナーが現れた。そいつは、広場にあった遊具に乗り移り動き始めた。

 

『ザケンナー!』

 

 滑り台付きジャングルジムだったそれは、独特な雄叫びをあげながら、私たちのほうに向かってきた。

 

 プリキュアのほうに向かうんじゃないのかよ! 

 

「またかよっ! サイキックっ! つむじ風っ!」

 

 薫が衝撃波を放った。

 いったんは吹き飛ばされそうになったザケンナーだが、すぐに体勢を立て直し、改めてこちらを標的とした。

 

「わ……訳がわかりません……なんですのっ? 公園の遊具が化け物に? あれも『味方』ですの?????」

 

「黒子っ! しっかりしなさい! あれはどうみても敵! あっちの可愛い服の子が味方っ!」

 

 頭の中が大混乱している白井さん。御坂が黒子の肩を揺さぶって活をいれた……つまり電気を流した。

 

「ふベベベベっ……はっ! お姉さまっ! こいつは一体!」

 

 なんか少し、記憶が飛んでないか? 

 

 すると、ウラガノスがザケンナーに命じた。

 

「ゆけザケンナー! こいつらの相手をしてやれ。 俺はプリキュアをたおす」

 

「くっ! 標的はこっちか! ……薫! 葵! 紫穂! イオナさん! 目の前の化け物を何とかするぞ!」

 

「おう! 人間じゃないなら、手加減いらないな!」

「あの化け物の心、なんとか覗けないかしら……」

「ガンガンいてこますでぇ!」

 

「ええ! まずは、目下のザケンナーをなんとかする!」

 

 これは逆に助かった! 

 あのウラガノスの強大な力は、プリキュアになんとかしてもらって! 

 ザケンナー1体なら私たちで対処できる! 

 

 こっちには超度7と、レベル5の能力者がいるのよ! (他力本願)

 

「黒子、私も加勢するわ」

「お姉さま……本当なら、一般人の介入はご法度ですが、状況が状況ですものね」

 

 このパーティーの相手は、一人(?)。

 まさに、多勢に無勢ね! 

 

 

 

「多勢に無勢、ね」

 

 

 

 また、声がした。

 

 

 

 すると、ウラガノスの横に『誰か』がやってきた。

 

 どこからきたのか、まったくわからなかった。

 しかし、この場面において、ウラガノスの横に付けるということは、少なくとも味方ではない。

 

「……多勢に無勢。手伝うわよ、ウラガノス」

 

「ふん、好きにしろ」

 

 ……あいつはっ!! 

 青髪のパーカー女! 

 

 あいつ! やっぱ敵なの?? 

 

「ねえ、バベルの人。あれはどうみても、普通の人よね。あの化け物の仲間に見えないんだけど?」

 

「い、いや……人間が絡んでるとは、報告されてないぞ……?」

 

 御坂美琴の問いかけに、皆本くんは答えられなかった。

 そりゃそうよ、報告にはこんなこと無かったもの。

 

 が、すぐに現実はやって来た。

 パーカー女がこちらに手を出してきたのだ。

 

「ほれ、当たると痛いよ? 寒いよ?」

 

 パーカー女は両手をこちらに向けると、大量の『氷のつぶて』を発生させた。細かい氷の粒はまるで雪山の吹雪のように、私たちに襲いかかった。

 

「うわっふ! ふ、吹雪かっ!」

 

「しまった……前が見えない! みんな! 近くに固まれっ!」

 

「あのパーカー女! 氷使い(クリオキネシスト)かっ!」

 

「いけませんわ! この吹雪の中だと、さっきの化け物の位置が……!」

 

 氷のつぶてで、視界が遮られ周りが見えなくなった。

 

「いけ、ザケンナー。叩き潰せ」

『ザケンナー!』

 

 パーカー女の声と、ザケンナーの雄叫びが聞こえた。

 吹雪でまったく周囲の状況がわからなくなっているところに、ザケンナーが突っ込んでくる! 

 

「……っ! 紫穂ちゃん!」

 

「ええ! ……化け物、3時の方向! あと、4秒……2、1!」

 

 紫穂が瞬時に、辺りをサイコメトリーした。私たちが見えなくても、彼女には『見えている!』

 

「サイキックシールドっ!」

 

『ザ、ザケンナー!!』

 

 紫穂のカウントダウンに合わせて障壁を張った薫。ジャストタイミングで、ザケンナーの攻撃を退けた。

 

「なあ、イオナねーちゃん! あの女、氷使いだろ! 炎なら効果抜群なんじゃないか?!」

 

 そんな某ゲームみたいに……

 

 けど、今のこの状況下では、それが最適解かもしれない。

 

 ザケンナーの攻撃は薫ちゃんが引き付けている。

 

 あのパーカー女の所まで、瞬間移動するには、吹雪が邪魔して正確に飛べない可能性がある。

 

 レールガンによる直射攻撃では、やはり目視できない環境下では外す可能性もあるし、なにより、私たちが密集してるため、安易に高圧電流を放出するのは危険すぎる。

 

「やるしかないか! イオナ、行きます!」

 

 私は両手の手袋に仕込んだ特殊燃料を燃やし、作った炎で『傘状』の盾を作り出した。

 これを構え、ヤツの発する『氷のつぶて』の嵐に突っ込んだ。

 

 右手には、同じく、能力で炎を硬化した『炎の剣』を携えた。さしずめ、即興で作り出した『炎の騎士』といったところか! 

 

 氷の粒が瞬時に炎の盾で蒸発する。

 ……いける!

 私は確信をもって、パーカー女のほうに駆け寄った。

 

 しかし、パーカー女も迎撃に出た。

 

「ほい」

 

 地面に、薄い氷を張ってきた。

 キラキラと光を反射しながら、氷が私の足元に襲いかかった。

 

「なん……っ!」

 

 とっさに、走ってくる氷をジャンプし避けた。が、パーカー女までの道のりは遠く。その間には、ヤツが張った氷の床で覆われていた。

 

(足場をアドバンテージとられてる……そのまま着地はマズイっ!)

 

 薄く地面に張る氷。この上に乗るということは、氷使いの相手の思う壺だ。

 

(……それならっ!)

 

 私は、炎の塊を作り出し、それを着地する寸前の地面に投げつけた。氷の上を、私の炎が這う。

 

「ふぅん……? 氷を溶かして、蒸発させる気か。一辺倒な動きだね」

 

 さも残念そうに、パーカー女が言った。もっと別のことを期待してたみたいね。

 

 なら、ご期待に添えてあげる! 

 

「炎を……『固める』!」

 

 氷の上に広がった炎は、それ本来の持つ熱を一旦失い、私の能力で『固まった』。

 ヤツが張った氷の上を、さらに私が固めた炎で押し付けた。

 

「ほう! そんなことできるのか!」

 

 感心した女の、その一瞬の油断を見逃さなかった。

 

 私は、自身が作った炎の床に着地すると同時に、右手に握った炎の剣を、再度能力で柔らかくして伸ばした。

 それはゴムのように伸びていき、パーカー女の目の前まで伸びた。

 

(剣で切るんじゃなく、しなるムチで拘束する!)

 

 さらに、私に操作された炎のムチは、相手を縛り付け拘束した! 

 

 どうだっ! 

 

「ふむ、面白い能力ね……まるで『矛盾を具現化』したような、けどね、まだまだだね?」

 

「は? なにを言っているの?!」

 

 女の両手を縛ったことで、能力を押さえ込むことができた。吹雪がおさまり、視界が晴れた。

 

 そして、炎と氷が同時に解除されることになる。

 

 そう、『炎の固まり』も、『炎のムチの拘束』も、解除されることとなった。

 

「そこにいると、『痺れるよ』」

 

 電撃が走った。

 正直、女の警告がなければ。

 そして、近くに街灯が無かったら、直撃だったかもしれない。

 

 とっさに体を捻り、その『攻撃』から極力距離を取ろうとした。

 

 直撃とまではいかなかったが、おそらく超高電圧の電撃。幸いにも、街灯が避雷針替わりとなった。

 

 

 ……目の前に雷が落ちたのだ。

 

 

「うっ……ぐあああっ!!」

 

 直撃しなかったといっても、落雷が目の前で起こったのだ。大音響で脳まで震え、そして落雷の一部は、私の体を通過していった。

 

「神之原さん!」

「イオナっ!」

「か、雷っ! いったいどこから?!」

 

 吹雪がおさまった瞬間の出来事だったため、どこからその電気が来たのかは、すぐに分からなかった。

 

 が、雷の出所は、ご丁寧にもご本人から登場してくれた。

 

 

 カラン、コロン

 

 舗装された道に響く、下駄の音。

 

 その男は、散切り頭に髷を結い、くたびれた和服を着ていた。

 口にはキセルを加え、そして、特徴的な形をした、ヘンテコな『箱』を背負っていた。

 

「氷の。なんだこの空間は?」

 

 その男は、風貌も侍のようだが、しゃべり方も侍のような古風な語り口だった。

 

「さあね、あまり気にしない方が、長生きできるわよ」

 

 パーカー女は答えた。

 

 おそらくだが……。そのパーカー女はジョークを言ったのだ。その男は本当ならもうこの世にいないのだから。

 

 私は電気を浴びて、体がしびれて動かなかった。

 

 わずかに動かせる頭を上げて、その侍の背負う箱をみた。……やはり、それは『エレキテル』の箱だ。

 

 最悪だ。なんで『偉人』がここにいるのよ! 

 

「ひ、平賀源内……!」

 

 その男のキセルからは、青白い電流が漏れ出ていた。

 電気を溜め込むエレキテルの箱以外にも、その男の体にも電気を溜めているようだ。

 

「まったく。オレは図書館にいくつもりだったんだがな」

 

「平賀源内。図書館はもういいから、一旦退きましょ。十分混沌(カオス)になったわ……ザケンナー、あなたは、もう一仕事よ」

 

『ザケンナー!』

 

 薫のサイコキネシスでザケンナーの攻撃を押さえているところに、パーカー女の号令で、さらにザケンナーの力がこもった。

 

「ぐっぐぐぐぐ! お、重いんだよっ! そりゃっ!」

 

 が、吹雪が止まり周囲が十分見えるようになったため、薫も力を出し惜しみすることはなくなった。

 

 掛け声と共に、ザケンナーを押し返した。

 

『ざ、ザケンナー!』

 

 巨体が倒れ、砂ぼこりが舞った。同時にサイキックシールドが解除され、後ろにいたメンバーが飛び出してきた。

 

「葵! イオナさんの介抱! 薫は化け物に警戒を! 紫穂は葵の援護だ!」

 

 皆本くんの的確な指示で、ザ・チルドレンが素早く展開した。

 

 しびれて動けない私の横に、葵が瞬間移動してきて声をかけた。

 

「ほい! ……大丈夫か、イオナはん!」

 

(……だ、だめだ。口まで痺れて、会話ができない……)

 

 そして、紫穂が平賀源内に向かってワイヤーガンを発射した。

 

 ワイヤーは源内の腕に絡まり、そしてスタンガンの電撃が走った。

 

「あなた、拘束させてもらうわ……え?」

 

(い……いけない、紫穂ちゃん! そいつに電気は効かない!)

 

 痺れが、全身に回り声すら出せない私。

 ヤツの情報を伝えられないもどかしさ。

 

 ワイヤーガンから流れる電気は、その男の体を通り、背中の箱に貯められていった。

 

「結滞なカラクリだな、ガキの玩具にはちょうどいい」

 

「ウソ、スタンガンが効かない……」

 

「すこし、悪ガキには仕置きが必要だな……『返すぞ』」

 

 平賀源内の腕に絡まったワイヤーを伝い、電気が逆流した。

 

 このまま紫穂が、ワイヤーガンを握ったままであったなら、自身の電気で感電していたところだ。

 

 しかし、そのワイヤーの途中に、『御坂美琴』が立っていた。

 彼女は、ワイヤーの根元をつかみ、そして流れる電流を操作し自身に溜め込んだ。

 

「……っざけんな!!」

 

 御坂は不機嫌だった。

 

「おっさん、あの化け物の仲間?! 勝手にしゃしゃりでてきて、訳の分からないことに巻き込んで!」

 

「紫穂さん、あとはお姉さまに任せて、こちらは下がりましょう」

 

 瞬間移動で、黒子が紫穂に近づき、撤退を促した。

 

「えっ! でも……」

 

「大丈夫ですわよ。 ここ学園都市で、同じ電撃使いなら、お姉さまと肩を並べるものはおりません。それに。今のお姉さま、とても虫の居所が悪そうですの。『巻き込まれ』ないようにしませんと」

 

 そう言いながら、紫穂を皆本くんのほうまで下げた。

 

「しかも、私の目の前で電撃ですって?! なかなか挑発的じゃない! いい! 私はいますこぶる機嫌が悪いのっ! ……ゲコ太のキーホルダーは手に入らなかったし!!」

 

 瞬間。彼女から強大な電気が放電した。

 

 が、

 

「そうれっ!」

 

 その電撃を待っていたかと言わんばかりに、源内は両手を広げて、その電気を背中の箱に『納めて』いった。

 

「なん……でっ……!」

 

「お、お姉さまの電気! 吸われている!!」

 

「ふっ、ふざけんじゃないわよ!」

 

 御坂は、放電を止めた。

 地面を走った電気が、アスファルトの表層をわずかに焦がしていた。

 

 一方、バチバチと音を立てて、源内のエレキテルには電撃が吸収され溜め込まれた。

 

「……女、お前さんが『れーるがん』か」

 

 源内が口を開いた。

 コイツは、目の前の女の子が『常盤台の超電磁砲《レールガン》』と知ってて、そこに立っているのだ。

 

「……くっ!」

 

 さらに不機嫌になる御坂。

 自分の放った電撃が吸われるなんて経験なかっただろうし。

 

「源内。引き際を間違えるなよ? 目的は達しているわ」

 

 そこに、パーカー女が割って入ってきた。平賀源内に撤退を申し出ていた。

 

「……まあいい、とりあえずオレの目的は全部達した、じゃあな」

 

 そして、パーカー女と平賀源内は、我々に背中を向けた。

 

「……待ちなさいよ! 『コケ』にされて私が黙って帰すと思ったの!」

 

 御坂美琴に、再度電気が集まる。

 バチバチと激しい電気音は、彼女が突き出した右手の親指に収束していった。

 すでに彼女の親指には、ゲーセンのコインがセットされていた。

 

 しかし、源内は止まらなかった。

 パーカー女も歩みを止めず、顔だけ振り向き、こう命じた。

 

「思ってない。だから、こうするわ。『ゆけ、ザケンナー』。相手をしてやれ」

 

『ザケンナー!』

 

 薫の念動力で吹っ飛ばされたザケンナーが立ち上がり、御坂とパーカー女の間に立ちはだかったのだ。

 

「アブねぇ! ビリビリのネーチャン!」

 

 だが、薫の警告は無用の長物であった。

 

「ほっんと、あんたらイライラするっ!」

 

 超電磁砲(レールガン)が発射され、ザケンナーを一撃で撃ち抜いた。

 

 しかし、ザケンナーの体に遮られたのか、それとも距離を取られたためか、はたまた、これも平賀源内のなせる業なのか。

 逃げる二人組には電束は届かなかった。

 

 パーカー女は、再度振り向いた。振り向きつつも後ろ歩きで、歩みは止めていなかった。

 

「一極集中の超破壊力。まさに電撃姫(エレクトロマスター)ね、また会いましょう。私の望みのために」

 

 そう彼女が言い残すと、スッ……と、霧の中に消えていった。

 

「さっき銀行強盗を吹っ飛ばしたやつより、明らかに威力上がっていやがる……」

 

 薫が、ただ呆然と、超電磁砲(レールガン)をみていた。そして、「くっ!」と、悔しそうな顔をした。

 

 それをみていたのか、横にいた皆本くんは、薫がなにを思っていたのか察したようだ。

 

「薫。僕がもらった資料によると、超電磁砲(レールガン)の射程は50メートル。それと、金属を弾丸にする必要がある。薫の念動力(サイコキノ)なら、もっと広域に攻撃できるし、弾丸も必要ない」

 

「……」

 

「自信を持て、薫。日本が誇る超度7のエスパーだろ、いつもの元気は……」

 

「!! みんな避けてっ!」

 

 紫穂が叫んだ。

 

「ふぬぅぅっ!!」

 

 しまった! ……まだ、この『空間』は解除されていない! 

 つまり、ウラガノスはまだ……! 

 

 直後、近くの地面が大きく抉れた。

 ウラガノスと、プリキュアたちの戦いの余波だ。彼女たちの戦いが、すぐ近くまでやって来ていたことに気づかなかった。

 

「うわぁぁっ!」

「きゃぁっ!」

 

 ものすごいパワー。ビルを倒壊させ、町を壊滅させただけのことはある。

 戦いで発生した衝撃波が私たちに襲いかかったのだ。

 

 麻痺して動けない私は、葵ちゃんと一緒にテレポートして難を逃れた。

 

 白井黒子と御坂美琴も、テレポートで避けたようだが、

 

 皆本くんと、薫と紫穂が、巻き込まれていた。

 

「み、皆本っ!」

「皆本さん!」

 

「だ……大丈夫かお前たち……ありがとう薫。とっさにバリアを張ってくれたんだな」

 

 舞い上がる土にまみれて砂だらけな3人であったが、どうやら無事なようだ。

 

「お姉さま! 大丈夫ですの?!」

「……くっ、能力を使いすぎたわ……しばらく電池切れね。頭に血が上りすぎて、アイツのこと忘れてたっ」

 

 しかし、そんな攻撃を受けながら、プリキュアたちは戦っていた。

 

 やっぱ、光の戦士は化け物か。

 

 が、

 

「「キャァッ!!」」

 

 二人がウラガノスの攻撃を受け、吹っ飛ばされた。

 

 その方向には、皆本くんたち。

 まずい! 今度はぶつかる! 

 

「サイキック! 低反発クッション!」

 

 薫が念動力《サイコキノ》で、柔らかめの衝撃波を展開させ、吹き飛んできたプリキュア二人を受け止めた。

 

 こういう芸当をとっさにできるのは、超度7の明石薫のスゴいところよね。

 

「き、君たち大丈夫かっ!」

 

 そんな異常な物理攻撃を受けた二人を、ナチュラルに心配する皆本くん。

 彼は基本みんなに優しい。

 

「くっ! いったーいっ! なんてパワーなの! 動きも早すぎる!」

「受け止めてくれてありがとう! けど、早く逃げてください!」

 

「逃げてくださいって言われても、奴さん、見逃してくれるとは思わへんて!」

 

 葵が皆本くんたちの近くに飛んできた。

 もちろん、私も一緒に。

 

 だいぶ、痺れが治ってきた。声を出すことくらいはできそうだが、しかしまだ体はまともに動かせそうにない。

 

 薫ちゃんも結構体力の消耗が激しそう。ハァハァと肩で息をしている。

 そして、幾度となくテレポートを繰り返した葵ちゃんも、だいぶ疲労が見えてきていた。

 

 すこし離れたところに転移した、白井黒子と御坂美琴。

 彼女ら……とくに御坂さんは『電池切れ』。

 白井さんは、敵の出方を伺っているが、超絶な破壊力とスピードに対処することができるのか。

 

 とにかく、プリキュアをサポートできるような、こちらの『戦闘力』が減りすぎている。

 

 

 ズン……ズン……

 

 

 穴が空いた地面から、ウラガノスがゆっくり現れた。

 

「プリキュア……トドメだ!」

 

 くっ! 

 

 また、あの巨体を震わせ体当たりを仕掛けて来るつもりだ! 

 

 プリキュアたちも、結構ダメージを受けている。

 

 

 万事休す! 

 

 

 

 

「ダメーっ!!」

 

 

 

 

 その時、彼女が遅れてやってきた。

 

 金髪長髪、派手なピンクのフリフリ服。

 

 シャイニールミナス!! 

 

「きたか娘っ! お前の力、見せてもらおう!」

 

 シャイニールミナスは、私たちの目の前。ウラガノスに対峙するように立ち塞がった。

 

「あなたに……私の大切な友達に手出しさせない!」

 

「はっ! そんな感情、我々ドツクゾーンにとってなんの価値もない!」

 

 ウラガノスが、今にも突進せんと身構えた。

 

「ま、不味いですわ……金髪のあなた! 逃げますわよ!」

 

「くっ! 葵! みんなを飛ばせられるか!」

 

「結構、きっついお願いや! でも、やるしか無いな!」

 

「はあっ!」

 

 ウラガノスの突進だ。

 

 だが、その攻撃は、目映い光の壁に遮られた。

 

「な、なにいっ! オレの攻撃が受け止められたっ!」

 

 光の壁……それはルミナスからドーム状に発生し、プリキュアや私たち、そして、白井黒子たちを優しく包んだ。

 

「す、スゴい……あの威力を防ぐなんて」

 

「……くぅっ!」

 

 でも、ルミナスも結構踏ん張ってる。

 なんとか持ちこたえているって感じ。

 

 みんながルミナスの光の壁に気を取られていた。

 

 私は、この場面で、ウラガノスに一番のダメージを与えることができる彼女たちに希望を託した! 

 

「 いまよプリキュアっ! ぶっぱなせっ!」

 

「……ホワイトっ!」

「ブラック!」

 

 二人のプリキュアが光の壁から飛び出し、ウラガノスの懐に飛び込んだ! 

 

「「プリキュア、マーブルスクリューっ! MAX!」」

 

「う……うおおおおおっ!!!」

 

 黒と白の稲妻が回転しながらウラガノスに放たれた。膨大なエネルギーの渦は、ほぼゼロ距離で、ウラガノスを飲み込み、そして、ウラガノスは光の中に消えていった……。

 

 

 *******************

 

 

「し、白井さん大丈夫ですかっ! それに御坂さんも!」

 

「泥だらけじゃないですか! 何があったんです?!」

 

 みんな一斉に目覚めて、さもなにも無かったかのように活動を始めた。

 彼女たち……初春さんと佐天さんも、すぐに公園に駆けつけてきた。

 

「な、なにって、この町の状況をみて何も思わない……あれ?」

 

 御坂美琴が、先程のウラガノス戦で崩壊したビルを指差したが、そこには、整然と並ぶビルが何事もなかったかのように建立していた。

 

「ど、どういうことですこと……?」

 

 吹き飛んだ駐車場の車。抉れた公園の舗装。

 

 全て、何もかもしっかり元通りになった。

 

 これが、原理不明な『ドツクゾーン』が展開する空間。

 敵を退ければ基本全て元通りだ。

 

 あまりに、非科学的な現実を目の当たりにした二人に、皆本くんが話をはじめた。

 

「詳しくは、アンチスキルの支部に着いてから話そう。あの異能案件が、学園都市にも絡んでしまったからには、この件はしっかり伝えた方がよいだろう」

 

 私も、それに乗った。

「そうね、それが賢明ね」

 

 やっと痺れが消えてきた。体をゆっくりストレッチしながら、調子を戻そうとした。

 

「そうですわね。ジャッジメントとして、詳しくお話を伺いたく思いますわ」

 

「……ねえ、黒子、バベルの人。今回のその話、巻き込まれた私も聞く権利あるわよね?」

 

「……皆本くん、この場合も、特例でお話しすべきよね?」

 

「そうですね……」

 

 とりあえずこっちは、話が纏まりそう。

 

 一方、ザ・チルドレンたちは、『プリキュア』たちに逃げられたことを悔しがっていた。

 

「また逃げられた! あのフリフリ服の魔法少女!」

 

「なんか敵さん、『プリキュア』とか呼んで無かった? 紫穂、なにかサイコメトリで読めなかったん?」

 

 ……え、すご、まさかあのドタバタの中で、プリキュアの心を読もうとしてたの! 

 

「うん……私たちに近づいた時、読もうとしたのだけど……超能力とは違う形でプロテクトが掛かってたわ。でも、あの白黒の人も、金髪の子も、『みんなを護る』って想いが感じられた……」

 

 よかった。少なくとも『正体』はバレてないわね。

 

「少なくとも、彼女たちは敵じゃないわ」

 

 紫穂は自分のサイコメトリを分析し、そう結論付けた。

 

「……あの電気の人は、ノイズが酷すぎて、心を読むこっちの頭を引っ掻き回されそうだった。悔しいけど」

 

 ……そうか、平賀源内は読めなかったか。

 

 ヤツが『何故』ここに現れたのか。

 ドツクゾーンとの関係。

 そして、『パーカー女』について。

 

 特にパーカー女は、全く私の知り得ない人物だ。

 これほど情報が無いキャラクター。あまりに、不可解な行動。

 せめて、ヤツの目的さえ分かれば……。

 

 

 エンジン音が鳴り響いた。

 

 

 皆本くんが、社用車のエンジンをかけたようだ。

 そういえば、葵ちゃんに飛ばされ落下してから、完全に放置されてたわね。

 

「よし、車は大丈夫なようだ」

 

 車は……ん? 

 

 ……あっ!! 

 

 私は、その車に置きっぱなしにしていた『特殊任務』を思い出した。

 

「アタッシュケース!」

 

 大慌てで、車に駆け寄り、ケースが置かれているはずの、わたしが座っていた座席をみた。が……

 

「無くなってる」

 

 そして私は、あのとき『パーカー女』が言った事の重大さを、今になって気づかされることになった。

 

『平賀源内。図書館はもういいから、一旦退きましょ』

 

 

 

 ……あいつ、『これ』が目的だったのか! 




【次回予告】

任務失敗の責任を取って、実質的な謹慎になった私は、母「神之原サイファ」の研究室で不貞腐れていた。
そこに『ジュエルシード』を感知したという、高町なのは。
学園都市を案内してると、今度は『ザ・チルドレン誘拐』の緊急連絡!
ECMを使った超能力狩り?

【???】
「我々は、普通の人だよ」

【高町なのは】
「ディバイン……バスター!!!」

【レオナ】
「あ、あれ……? 能力が……」


次回、『普通の人々(スキルアウト)
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