転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第6話】普通の人々(スキルアウト)【前編】

「……以上が、今回の異能案件のご報告です」

 会議室に映し出されたスライドを背に、皆本浩一が説明を終えた。プロジェクタの明かりが消え、ブリーフィングルームの照明が点灯した。

 

「……にわかには信じがたいじゃん? そんな非科学的なこと」

 会議の内容については、この場の警備員(アンチスキル)全員が、理解しがたいといった表情を浮かべていた。

 黄泉川愛穂も、そのひとり。

 

 銀行強盗を捕まえた後、突然、別の空間に転移し、関係者以外は昏睡。

 体当たりでビルが倒壊し、公園の遊具が突然化け物になったかと思ったら、

 レベル5の電撃を吸収するちょんまげ男に、謎の氷使いの女が登場。

 フリフリ服の正義の味方と協力して、一緒に悪者退治。

 すると、確かに崩壊した街が、何故か何事もなかったように元に戻っている。

 

 話だけ聞いたら、できの悪い作り話。まるでマンガのような内容だ。

 

「ですが、本当に起こったことですわ。いまだに私も、狐につままれた気分ですが」

 そこに、実際に事件の現場にいた当事者である、白井黒子の意見が加わる。

 レベル4の風紀委員の言葉に嘘はないし、偽りを話す理由もない。

 

「……例えばじゃん? 集団幻覚……」

「催眠とかの類いじゃないわ。私のサイコメトリで確かめました。はっきりと現実に起こったことです」

 

 黄泉川の言葉に被せ気味に、三宮紫穂が答えた。学園都市の外から来た、超度7のサイコメトラー。超能力組織BABELの誇る、エスパーチームの一員。

 

「……わかった。本件は引き続きアンチスキルも注視するようにするじゃん」

 

 当たり障り無い回答。

 黄泉川を先頭に、ここにいるアンチスキルが皆、往々にして疑心暗鬼と行ったところか。

 

 今、風紀委員然り、警備員然り、全く人手が足りていないのだ。

 黒子もその事は重々承知だ。

 

「普段から人員が足りてないと言うのに、ボマー……重力爆弾による爆発テロが、ここ数日で何度も発生してますの。それに便乗してか、不良集団による暴行事件も多発。とても、異能案件まで手を出すことはできませんわ」

 

「それに、本題はまだ別にあるっていうじゃん?」

 

「そんな時期に大変申し訳ないと思ってます。我々BABELの失態ですが、皆さんのご協力無くては解決できない」

 

 事情はよくわかっている。だが、わざわざ『外』から学園都市に来た本題を解決しなければ、意味がない。

 

「ECMねぇ……そんな大それたもの、正規の手続き無しに、学園都市に通すのはそれこそ不可能じゃん」

 

 エスパー……もとい、超能力を抑制する装置。すでに特殊な場所(刑務所など)で実用化されており、効果は折り紙付きだ。テロリストに奪われたECM。悪用されることだけは、BABELとしてはなんとか未然に防ぎたい。

 

「ですが黄泉川さん。銀行強盗たちは、拳銃を持っていました。学園都市でも銃の携帯は違法ですよね。強盗達は、どこから入手したのでしょう」

 

「……」

 

 皆本の反論に、ぐうの音も出なかった。アンチスキルでも完全に把握できていない「暗部」が、学園都市には多すぎる。治安を守るといっても、表層だけで、深い部分には全く手が出せていないことは、当の本人が誰よりも痛感していたところだ。

 

 

(……ツマンナイなぁ……)

(せやな……アクビがでてまうわ……あふぅ……)

 

 このブリーディングには、明石薫、三宮紫穂、野上葵の小学生3人も同席していた。が、彼女らはとっくに(特に薫と葵が)大人たちの退屈な会議にうんざりしていた。

 そろそろ刺激が欲しいと思っていたところだった。

 

 しかし、彼女たち高レベルエスパーは、この学園都市の『異常さ』をいち早く体感していた。

 

(私、学園都市(こっち)に来てから、ぜんぜん本調子じゃない。発生しているAIM拡散力場の量の影響? 『外』とは能力者の数が違うから、すぐ透視にノイズが入るの)

 

 小声で三宮紫穂が呟いた。

 

(うちも。黒子ねーちゃんの瞬間移動と重なったら、えらいところに跳ばされそうになったわ……)

 

(悔しいよなー! せっかく私たちの実力を披露できると思ったのにっ! 何とか私たちの本気の実力を見せつけてやりたい!)

 

 小声で唸りながら、薫はこの会議が早く終わることを切に願っていた。

 

 なにかそろそろ刺激がほしいな……。

 薫の願いは、直ぐに叶えられた。

 

 

 ビーッ! ビーッ! ビーッ!! 

 

 

 刹那。突然の警報が鳴り響いたのだ。

 

 アンチスキルやジャッジメントたち、そして、皆本が持つ通信機への、一斉の緊急速報の入電だった。

 

 突然の報告に、内容を確認するメンバーたちであったが……。

 

「……河原で、能力者同士のケンカ?」

 

「なんですの、全く下らない。その程度で緊急警報だなんて」

 

「しかもレベル2程度の小競り合いっぽいじゃん。巡回の警備員に任せましょう」

 

 アンチスキルもジャッジメントも、その程度と評した内容の事件だった。

 

 が、それを良しとしない人物がいた。

 

「私たちの出番じゃないか皆本!! こんなとこに居るのも飽きてきたところだし、さくっと解決させてこようぜ!!」

 

 明石薫の一声に、他のザ・チルドレンも賛同した。

 

「こうも堅苦しい場所、あたしらには向かへん!」

「もう少し、この学園都市の犯罪者の精神を覗いてみたいわ。能力のウォーミングアップも兼ねてね」

 

「お、おいおいおいおい! お前らっ!」

 

 皆本がザ・チルドレンたちを制する。

 が、毎度のことだが、それはあまりにも無意味だった。

 

「ほい、ほな華麗に解決させてきます!」

「絶対可憐! だから負けないっ!」

「さ、皆本さんも覚悟決めてね」

 

 葵が手をかざすと、皆本と一緒にチルドレンたちが瞬間移動で消えてしまった。

 

 唖然、呆然とするアンチスキルの面々。

 

 黒子もあきれ顔だ。

 

「お子さまには、会議は窮屈でしたかしら。……あの薫って子は、結構プライド高そうでしたし」

 

 なんとなく、彼女たちの気持ちが解った。

 能力を持っているにも関わらず、本領を発揮できず、回りに認められないもどかしさ。

 

「ま、サポートはして差し上げますわ」

 

 

 *******************

 

 

「……というわけで、ここに居るワケ」

 

 緊急警報が大した内容ではなかったのを確認して、アラームを停止させながら私は話を続けた。

 

 ここは、『神之原サイファ』が勤務するエネルギー研究所の一室。

 

「だからって、朝からソファに横になってることは、無いでしょ」

 

 コーヒーポットからコーヒーを注ぐ、この人は私の母。『神之原サイファ』。

 

 ほい、と、母は私にマグカップを渡した。淹れたてのコーヒーではあるが、そこにはたっぷりのミルクと砂糖が入っていた。

 

 これは私の好きな味。ミルク砂糖多め。

 なんなら、ミルクたっぷりのカフェオレくらいしか飲まない。

 

「サンキュー。まあ、実際は謹慎中ってより、別任務ね。本を探してる」

 

 ズズズ、と音を立ててコーヒーをすする私。ミルク多めでも、思ったより熱くてちょっと飲み方が汚くなってしまった。少し反省。

 

「本?」

 

「そ。稀覯本」

 

 私は先日の事件(前話参照)により、本の輸送任務失敗の報告を、大英図書館のエージェントに報告することになった。

 第七学区の図書館で、本を「偉人」に取られたことを伝えると、まるでそれが「判っていた」ことのようにことが進み、私は謹慎処分……という名前の、他の『稀覯本』の調査に任命されたのだ。

 

 なお大英図書館は、今回の『偉人襲撃』を想定していたようだったが、別次元に飛ばされたことや、プリキュアのこと。あと、氷使いの女については、こっちは寝耳に水だったようで。全部をご理解はしていただけなかった。

 

 

 私は、母にメモを渡した。

 鋭い狐目をさらに細くし、母はメモに目をやった。真っ赤な髪の毛が、私の手にかかる。

 

 染めてるんじゃないかってくらいの、赤い髪色。でも本人曰く『地毛』なのだそうで。たぶん、私の能力発動時のオレンジヘアーも、この母親譲りだろう。

 

「大英図書館の連中、このタイトルの本の行方を探してる。そこで、『私たち一般人では、到底アクセスできないようなデータベース』を使いたいの」

 

 ああ、なるほどね、といった表情の母。

 ちょっと険しい感じになったけど、

 

「……ま。いいわよ、適当な理由で申請は出してみるわ。でも私もそこまで権限ないから、あまり期待しないでね」

 

 今では珍しい禁煙パイポを取り出し、母は微笑んだ。

 端から見ればキツめの容姿(いわゆるド○キの化粧品売場にいそう)ではあるが、私は母の笑顔が好きだ。

 

「そういえばあんた、約束あるんじゃない?」

 

 メモをパソコンのキーボードの隙間に挟みながら、思い出したかのように私に問いかけた。

 

「そ。いまはそれの時間潰し」

 

 約束ってのは、本探しではない。

 もちろん任務として、本探しは継続するが、もうひとつ別の急用も片付けなければならない。

 

 すると、私の通信機に着信が入った。

 どうやら彼女は無事に、『学園都市』に入れたようだ。

 

「よし、行ってくるね、コーヒーご馳走さま」

 

 残りのコーヒーを一気に飲み干し、私はソファから立ち上がった。

 

「行ってらっしゃい」

 

 マグカップを受け取った母は、また笑顔で、娘の私を送り出してくれた。

 

 

 *******************

 

 

「あーっ! 確かBABELの人!」

 

 待ち合わせの場所に着いたはずだが、そこには想定外の人物が、追加で二人もいた。

 

「少し道に迷っちゃって……てへ」

 

 高町なのはが照れ笑い。

 ユーノ君は、彼女に抱かれた状態でおとなしくしていた。

 

 本来の待ち合わせ相手は、『高町なのは』ちゃん。

 

 彼女が、学園都市の方角で《ジュエルシード》の力を感知したのだ。

 学園都市に入るのは初めてとのことで、急遽、私が道案内をかって出た。

 

 が、なぜか一緒に学生が居る。

 

「ええと、BABELの『神之原イオナ』さんですね? ジャッジメントの『初春飾利』です」

「そして私は、佐天涙子ですっ!」

 

 若草色の腕章……ジャッジメントである身分を示しながら、初春さんが挨拶した。

 もう一方の子は、佐天涙子。超一般人なんだけど。なんかいつも、初春さんと一緒にいるイメージ。

 

 どうやら、道に迷ったなのはちゃんを、二人が助けてくれたらしい。

 

(イオナさん遅くなりました。改めてよろしくお願いします)

(うん、よろしくね)

 

 フェレット風姿のユーノくんが、テレパシーで話しかけてきた。

 ジャッジメントにも、なのはちゃんのことは伝えてないので、しばらくはテレパスの会話が良さそうだ。

 

(ユーノくん、イオナさん。実はさっきから、ジュエルシードの気配をうまく探せないの)

(なのは、君もか。僕も、この町に来てからノイズが酷く、うまくサーチできないんだ)

 

 無言で私たち三人の念話が進む。

 ユーノくんが、その長い胴体をさらに伸ばし、学園都市の建物を指した。

 

(あのビル……あそこには近づきたくないな、魔力が掻き乱れる感覚がする)

(ああ、なるほどね)

 

 あの『ビル』か……心当たりがありすぎて気持ち悪い。

 

「……?? 探し物、ですか??」

 

 ふいに、初春さんが話しかけてきた。

 

(え、どうして?)

 

 驚くユーノくん。私たち三人だけ用のテレパシーのはずなのに……? 

 

 あ、と、私は仮説を立てた。

 

(もしかして、拡散力場が入り乱れる学園都市では、うまくチューニング出来ないと念話は断片的に漏れちゃう??)

 

「さっき、なんか『探し物が』みたいな声が聞こえた気がして」

 

 たぶんそうだ。

 この、学園都市の独特の『力場の流れ』に慣れないと、テレパシーなんかは能力者に漏れ聞こえるみたい! 

 

「え、なに?! お困りごとですか?! そういうのなら早くいってくださいよ~」

 

 聞こえていないはずの佐天さんが、前に出た。

 

「ここ、学園都市はいろんな不思議な話があって、探し物の都市伝説なら任せて下さい!」

 

 なにをどう任せるのだろう。

 

「え、ええと……ありがとうございます」

 

「なのはちゃん、涙子お姉さんが、すぐに探し物見つけてあげますからね!」

 

 とてつもなく不安だ。

 私の知る限りでは、『佐天涙子』は能力無し(レベル0)でありながら、その好奇心旺盛さが災いし、追ぞ危険な箇所へ突入してしまう。さしずめ『危機召集(トラブルメーカー)』とでも形容しようか。

 

 今回、なにやら手伝ってくれるとは言ってくれているが……。

 

「ちょっと佐天さん!」

「簡単な探し物でしょ? 特に変なことはしないわよ、初春~」

 

 すると佐天さんは、タタタ……と、飲食店の立ち並ぶ一角の角のほう。

 建物と建物のスキマに向かっていった。

 

 いや、まだ『何を』探しているかとも言ってないんだけど……

 

「いいですか! ここ学園都市は高性能なお掃除ロボットが街を縦横無尽に動いてます。なので、探し物が残っているとしたらこういった場所です! 都市伝説『遺失物が集まる路地裏』!」

 

 うん、まあ、ある程度理にかなっている気もしなくもないけど。

 

「例えば、こういった建物の間の……人のあまり入らない路地……あ、あれ」

 

 ……? 何か変だ。

 こう、ちょっと、『違和感』を覚えた。

 

 気になって、私も覗いてみた。

 一緒に、初春さんとなのはちゃんも、路地裏に向かってきたが。

 

「お二人、ストップ」

 

 私は二人を制した。

 その路地裏には、いかにも粗暴が悪そうといった感じな人間たちが集まっていた。そして、まあ下品な笑い声をあげていた。

 で、大切なのはソイツらの足元。

 そこには、女性が一人倒れているのが確認できた。学生服の女性だった。

 

「……ああん? なんだおまえら!」

「ひいっ!」

 

 いかにも下っ端風な不良男性が、私たちにメンチ切ってきた。おもっくそ怯え、蛇に睨まれた蛙状態の佐天さん。

 

「……倒れている女の子を囲んで、大の男たちが集団でなにしてんのよ」

 

 メンチ切られたのでメンチ返した私。佐天さんの前に出る。

 

 ちょうどその時、後ろにいた初春さんの声が聞こえた。通信機で、異変を察して通報してくれているようだ。

 

「はあ? うっせえ、てめえには関係ないだろ!」

 

 すると男がひとり私に向かってきた。

 

 ……うん、能力(ほのお)を使うまででもない、か。

 

 

 

 

 と、思った矢先。

 

 

 バチバチっ!!!! 

 

 

 強烈な『電撃』が、路地裏の反対側から放たれた。

 

 

「大勢で女の子を襲うとか、男として最低じゃない!!」

 

 

 *******************

 

 

「正当防衛、でいいわよね」

 

 

 男どもの半分は、御坂美琴の電撃を浴びて感電していた。

 

 残りの半分は、私が拳でぼっこぼこにしておいた。

 うん。ひっさびさに、人間を殴ったから拳が少し痛いわ。

 

 

「ほええ……」

「……BABELのお姉さん、強いんですね……」

「まあね、外では『暴徒鎮圧』とかも受け持ってるし。これでも機動隊の訓練受けてるのよ」

 

 私の強さにびっくりしたのか、なのはちゃんと佐天さんが、同じような顔で呆然としていた。

 

 それよりも、

「倒れている人の介抱をしないと……ねえ、大丈夫?」

「……ううっ……え、ええ、なんとか大丈夫ですわ……」

 

 私は先ほどまで倒れていた女学生の顔を見て驚いた。相手側は知らないだろうけど、私は彼女を知っている。

 

(婚后光子やん)

 

「全く……大能力者(レベル4)の婚后光子が、こんな奴ら相手に何してんのよ」

 

「……くぅ、急に頭が……耳鳴りがして、うまく能力が使えなかったんですわ」

 

 御坂美琴の悪態に対しても、婚后光子はまだ頭痛が残るのか、苦しそうに答えただけだった。

 

 ん? 「能力が使えない」。それって……。

 

「あなた方のECMか。もしくは、それ以前から問題になっていたものか」

 

 白井黒子が眉をひそめながら、口を開いた。

 

 初春さんはアンチスキルへの通報ではなく、直接白井さんに連絡を取っていた。

 そのほうが、のちの処理(私や御坂さんの正当防衛についてなど)がスムーズになると思っての判断だった。

 その思惑は的中し、私たちが不良集団をボコボコにしている間にすぐ現場に来てくれた。

 

「白井さん、『それ以前』って何?」

 

 私は、先ほどの白井黒子のセリフで引っかかるところを質問した。

 

「実は、外からECMが持ち込まれた報告より前から、『レベル0による能力者狩り』が行われていたんですわ。ジャッジメントもほどほど手を焼いていたんですの」

 

「だったら、今回の件は「そっち」案件ね。ECMは無関係」

 

 能力者狩りの話と、婚后光子の症状を見て、私は確信した。

 

「どういうことですの?」

 

「ECMは、能力発生の主管部に作用して止める、いわば、水道を元栓で締めるイメージ。強烈な波長を出してはいるけど、脳に後遺症を残すような調整はされていないわ。一方今回に関しては、能力の演算ポイントを無理やり抑え込んでいる。だから頭痛のような副作用が発生する。まるで、蛇口の先端にゴム栓を詰めて無理矢理止めるような」

 

「なるほど、大脳基底核への緩やかな干渉か、海馬への直接作用か、の違いですわね」

 

 いやその辺の詳しいとこは全然わかんないんだけど……この子ら、本当に中学生?? 

 まあ納得していただけたらよかった。

 

「うちのECMなら、装置はもっと大がかりになるはずよ。その辺の説明、皆本くんから無かったかしら?」

 

 確か朝方に、アンチスキルとジャッジメントを集めてブリーディングしているはずよね。

 報連相が全然なってないじゃない。

 

「その件ですが、打ち合わせ中に、ザ・チルドレンが皆本さんを連れて迷惑能力者を捕まえに行ってしまったんですの。それから全く連絡ないので、詳しい説明を聞けずじまい」

 

 うわ。あの子たち『らしい』といえばらしい行動をしちゃったのね。

 でも、一瞬納得し掛けた案件ではあるが、ある疑問が浮かんだ。

 

「ねえ、白井さん。そのあと皆本くんたちから連絡あった?」

「え? そのあとアンチスキルのかたから、対応が終わって『あなた』と一緒に行動しているって聞いていたのですが……!?」

 

 ……なんだ? 何かがおかしいぞ。私はそんな話、全く連絡を受けていない! 

 一緒に行動!? 何のこと!? 

 

 私の表情をうかがってか、白井さんも事の重大さに気が付き、顔がこわばった。

 

「初春っ! アンチスキルへ通報、『ザ・チルドレン』が行方不明!」

「え、えええっ!」

 

 私は小さな可能性に掛けて、地べたに這いつくばっている奴らを尋問しようとした。

 が、それは『彼女』がすでに行っていた。

 

「第10学区のストレンジ。こいつらの根城みたいね、行ってみましょう」

 

 バチバチと右手を感電させた状態で、意識を取り戻していた無法者を脅して御坂美琴が聞き取りをしていた。

 

「お姉さまっ! 脅迫的尋問はいけません! それに、この件とは全くの無関係の可能性もあり得ますのよっ!」

 

 そう。全く関係ない可能性もある。だが、御坂美琴が行わなくても、私が多分やっていた。

 手がかりが少しでも欲しい状態になってしまったのだから。

 

「だって、手がかりがないんでしょ? それに、それと関係なく、私はただこいつらがムカついたからぶっ潰してやろうかなって、思っただけだし」

「お、お、お姉さま! そういうことはいけません! 全く何をお考えに……」

 

「待って二人とも。まだザ・チルドレン達が危険な目にあっているとは決まってないし、いったん、アンチスキルの協力を得てからでも遅くはないわ」

 

 二人の痴話喧嘩を見て、少し冷静になって大人の対応を行うことができた。

 焦りは禁物だ。この件は持ち帰って、対策本部なり立ててから順を追って解決すべき案件だ。

 

 

 が、そんな悠長なことは、私の通信機が許さなかった。

 

 

 突如鳴り響いた、私の通信機。通話を求めるランプが光っていた。

 相手は『皆本浩一』

 

「……!」

 

 通話を開始したが、私からは声を発しなかった。そして、周りに『静かに』のジェスチャーをした。『最悪の事態』からの通話を想定したのだ。

 

『……い! おい! やめろ! 貴様らの目的はなんだ!』

 

 そしてそれは最悪の事態と想定された。

 遠くから聞こえるのは皆本くんの声だった。

 

『ふん! 簡単なことだ。君のパソコンのロックを解除してエスパーの機密情報をいただく』

『全く手を焼かせるな! このECMでガキどもの超能力を封じられ、何もできないくせに』

 

 犯人と思われる二人の人物の声。そいつらが口を滑らせてくれた。

 私は、白井さんと顔を見合わせた。彼女も驚いた表情をしていた。

 

(ECM……! こいつらまさか!)

 

『我々《普通の人々》は、どこにでも居る。たとえそれが学園都市の『アンチスキル』だったとしてもな……』

 

 つまりはこいつら、ECMを使ってザ・チルドレンを誘拐したのか! 

 そして、アンチスキルの中にも『普通の人々』が進入していたとは。うかつだった。

 

『貴様ら……そうか、アンチスキルを偽って、ECMを《第10学区のストレンジ》に隠してたのか!』

 

 !! ナイス皆本くん! 相手に気付かれないように、現在地を教えてくれた! 

 

(……すぐに乗り込みますわよ! 初春は片っ端からアンチスキルに連絡を。誰が敵だか判りませんからね)

(まって白井さん! これはBABELの問題……)

(いいえ、アンチスキルに『普通の人々』がいたことが明白になりましたわ。これは、我々学園都市の落ち度でもありますわ、協力させてくださいまし)

 

『はん! 我々はエスパーや超能力者を、人間だとは思っていない! 奴らは異形の力を持つ魔物だ! 人類の天敵なんだ!』

 

 こいつ! 言うに事欠いて……! 

 

 この一言が、『彼女』の導火線に火をつけた。

 

「黒子……私も行くわよ、ここまで侮辱されたのは初めてかもしれないわ」

 バチバチと周囲に電気が漏れている。だいぶお怒りのようだ。

 

『……ン、何の音だ……っ! 貴様! これは通信機!』

 

 

 ぶつん。

 音声が途切れた。

 

 

「……お姉さま?」

「ば、場所はわかっているのでしょ! 急ぐわよ黒子!」

 

 場所と、敵勢力は判った。あとは、時間との闘いになってしまった。

 くそっ! アンチスキルにも敵が紛れている可能性を考えると、うかつに救援要請ができない! 

 

 誰かもう一人くらい、強力な助っ人がいてくれれば……

 

 

「ねえ、ユーノくん。本来はこういうことに使っちゃダメなんだけど……」

「……なのは!?」

 

 つい、ユーノ君が声を上げてしまった。

 

 しかしすでに、高町なのはの左手には、メカニカルな魔法の杖『レイジングハート』が握られていた。

 

「力があるのに、困っている人を見過ごすなんて。私そんなことできない!」

 

 

 

 ~後編へ続く~

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