転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第6話】普通の人々(スキルアウト)【後編】

 第十学区ストレンジ。

 その中から少し離れた廃工場。

 敷地はかなり広く、大きな緑地が完備されていた。

 その中程にたたずむ、ボロ倉庫。

 倉庫といっても、元々は飛行機でも組み立ててたの? ぐらいに巨大なものだ。

 

 さ、時間がないわ。強行突破よ。

 

 私は、見張の青年を投げ飛ばし気を失わせた。

 そいつが塞いでいた少し重そうな金属の扉は、彼女の電撃によって激しく吹き飛ばされた。

 

 

 ドォォォォ……。

 

 

 つかつかと、三人並んでの入庫。

 

「お邪魔するわよ」

 バチバチと周囲に放電させながら、御坂美琴。

 

「ジャッジメントですの」

 右手の腕章をちゃんと広げて見せつけ、白井黒子。

 

「特務エスパー、『オレンジヘアー』よ。ちょっとお話よろしいかしら」

 BABEL身分証を開示しながら、私、神之原イオナ。

 

 昔こんな映画が有ったような。気もしなくもない。

 

 突然の訪問に呆気にとられる、不良軍団。まあ、パッと見で『素行』の悪そうな青年達。

 

 でも、ざっと見回しただけで、一概に何かしら「エモノ」を持っていた。まるで襲撃を予想していたようだ(正面突破と、少人数だったのは想定外っぽいが)。

 

「な、なんだてめえら!」

 

 うーん。ありがちなセリフありがとう。でも自己紹介はすでに終わっているわ。

 

 一斉に、拳銃を突きつけられる。懐からナイフを出した人もいた。

 

「よし、正当防衛と公務執行妨害が成立ね、一気に確保よ」

 

「う、うてぇ!」

 

 私の『確保』って言葉に過敏に反応しちゃったのか、牛耳ってそうなリーゼント男が声を荒げた。

 

 そして数名が、それにつられて拳銃の引き金を引いてしまった。

 

 ただ、なんとなく持ち方や打ち方がたどたどしく、多分まともに使い方を講習されていない素人だなってのが感じてとれた。

 

 念のため、事前に打ち合わせしておいた通り、この弾丸は御坂美琴に受け止めてもらうこととした。

 

 バチバチィッ!!! 

 

 鉛玉が、強烈な磁場により偏向し、また、焼け落ちた。

 

「う、うわぁっっ!!」

 

 さらに激しい放電が、一部の不良に襲いかかった。倉庫の壁に電気が走り、建屋の電源がショートし停電した。

 

 すぐ補助電源だろうか。が作動し電気はすぐについた。が……その時点ですでに、拳銃には金属の棒が撃ち込まれていた。

 

「おとなしくしないと、次はあなた方の体内に撃ち込みますわよ」

 

「う、うおおおおおっ!」

 

 今度は銃ではなく、鉄パイプやスタンガンや、ナイフなんかを持った男たちが、接近戦に持ち込もうとした。

 

 けど、それは問屋が卸さない。

 私を襲ってきた二人は鳩尾一発と、特殊手袋の火薬で寝てもらった。

 

 御坂美琴のほうは……。ダメよ彼女を金属の武器で殴っちゃ。フレミングの法則モッカイ勉強し直してね。

 振り下ろした武器は全部変な方向に流れ、あとは感電して終わり。

 

 さ、これでざっくり半分くらいかしらね? 

 あっという間に殲滅……、とならないのが難しいところ……。

 

「こ、これでも食らえっ」

 

 倉庫の外から声が聞こえたと同時に、『激しい異音』が、私たちの頭の中を掻き乱した。

 

 

「こ、これがっ……」

「くっ……だ、ダメですわ跳べません!」

「こんのっ!! くっ、うまく電撃が制御できないっ!」

 

 

 やはり出てきたか、学園都市の能力潰し。

 

 

「どうだ能力者! このキャパシティダウンがあれば、お前らはただの人間(ノーマル)以下なんだよ!」

 

 能力が使えなくなった私たちはピンチに陥った。

 が、これはある程度は計算の内。

 

 もうちょっと相手が調子に乗ってくれるといいんだけど……。

 

 倉庫の壁の大きなシャッターが開いた。

 

「見てみろ! これがお前ら能力者を……」

 

 助かる。私たちにキャパシティダウンの正確な位置を見せてくれた。

 

「……いまだ!」

 

 私は、手袋を投げつけた。

 普段私が付けている手袋は、特殊な火薬で炎が大きく立つように調整している。

 ある程度の爆発はするけど、手りゅう弾みたいな爆発は起こらない。なので、軽自動車ほどのその装置を破壊するには不十分。

 

 けど、今回の手袋は『それ』目的じゃないわ。ちょっと追加でマグネシウム入れておいたの。

 

 キャパシティダウンに向かって投げつけられた手袋は、小さな爆発と共に、激しく発光した。

 

「今よ! なのはちゃん!」

 

 私は通信機に向かって叫んだ。

 

 

 ++++++++++++++++

 

 

 数刻前。

 

 皆本くんたちの詳しい場所は、通話の逆探知を利用し、さらに、誘拐犯に切られていたGPSを無理矢理起動させ、判明した。

 

『BABELの機密通信機を触らせてもらえて光栄です! でも意外と、簡単なセキュリティですね……はい、逆探知と、あとGPSも復帰させておきました』

 

 ……うん、この娘は敵には回さないほうがいい。

 

 そして、問題の工場倉庫には、白井黒子の瞬間移動で……全員が一斉に向かうには人が多すぎるし距離もある。

 なので、急遽私を、母の研究所に跳ばしてもらい、母の愛車(でっかいバン)を拝借した。

 

 私と、中学生二人、小学生一人と、フェレット一匹を乗せて現場に急行した。その車の中で、『ザ・チルドレン奪還作戦』を練っていた。

 

「私の全力で、建物ごと吹き飛ばそうか」

「お姉さま、今回は人質いますし、正確な敵の数も不明です」

「ECMもあるからね……。ECMの稼働半径は『約50m』。その中に入るのだけは避けないと」

 

 しかし、皆本くんたちの場所はわかっても、ECMの場所はわからない。それに、ECM以外にも、能力潰し……おそらく『キャパシティダウン』を、併せて所有している可能性がある。

 

 50mという範囲もかなり厄介だ。

 

「軍事にも転用できるよう、かなり丈夫に作られてるの。だから本当は、近距離で超能力ブチ込みたいんだけど。矛盾した話ね」

 

 超電磁砲(レールガン)も、それだけ距離が離れると威力はかなり落ちる。

 ECMを使われている限り、超能力では解決が難しい。

 

「……。そのECMは、僕らの魔法にも効果があるのでしょうか」

 

 フェレットもといユーノくんが、御坂美琴にナデナデされながら。

 素朴な疑問を口にした。

 

 

 あ、皆様ご安心(?)を。

 彼が人語をしゃべることは既に周知されています。

 

 

 路地裏でバレたときは、みんな一様に軽くパニックになりましたが……。

 

 

 なお、今ユーノくんは、御坂美琴に抱かれております。本人(御坂)たっての希望です。さっきからだいぶ悦に入ったお顔をしております。

 

「今調べるには危険よね、データがない。あなたたちもあまり近づかない方法を……あっ」

 

 運転しながらだけど、あの子の『異名』をすっかり忘れていた。協力してくれるならなおさら忘れちゃダメでしょ……『魔砲少女』

 

「なのはちゃん。50m圏外から、大型トラック1台分くらいの大きさの装置なの。狙える? 最悪、かすめるだけでも……ううん、牽制になるだけでも大丈夫だから」

 

「はい、やってみます」

 

 御坂美琴も白井黒子も、あっさり言い放った彼女にびっくり。

 

「信じられませんわ……でも、目の前で空を飛び、念話(テレパス)を見せられ、そして破壊能力も持っている。魔法とは、かくも、多才能力(マルチスキル)ですわね」

 

「正直、羨ましいわ。そこまでの力を『ひょい』と貰っちゃうなんて」

 

 ユーノくんを撫でる手に、つい力が入ってしまった御坂美琴。

 しかし、それについてはユーノくんがしっかり否定した。

 

「ですが、御坂さん。なのはの潜在的な魔法力があっての結果ですし、一度、他の魔法使いに負けたあとは、彼女はいままで必死に修行してきました。今の力は、努力無く得たものではありません!」

 

「ユーノくん……」

 

 ちゃんとパートナーのカバーもできるユーノくんカッコいいわ。

 

「……しかも、魔法少女に変身できて、お洋服もかわいい……」

 

 ぼそりと、誰に聞かせるわけでもなく、御坂美琴は呟いた。

(なお全員聞こえていたが聞こえないふりしていた)

 

 

 さて話を本題に戻してと。

 作戦はこんな感じ。

 

・なのはを除いた3人で敵陣に飛び込む。この際、御坂美琴に常に電撃を出しておいてもらう。

・やつらがECMを使用したかどうかは、御坂さんの電気の出方で判断。

・ECM範囲50m。超電磁砲が十分届かない可能性があるし、軍用に丈夫に作られている反面、「電気をかなり消耗する」ので、おそらく有線で電源供給されている。

・ビリビリで、部屋の電源を全部いったん落とそう。

・電源を落としてしまえばバッテリー駆動は数分しか持たないはず。非常用電源も、そこまで持たない計算だ。

・ECMや、不良たちが持っている別の能力消しが出てきた際には、なのはちゃんに超長距離から打ちぬいてもらう。なお、この際に目立つように、私の手袋を発光仕様にしておく。

・光り輝く手袋と、私の通信機の合図を頼りにしてもらう。

 

 

 ……。

 うん、付け焼刃な作戦だけど、刃がないよりマシでしょ。

 

 

 +++++++++++++++

 

 

 どおおおおおおおおおっ! 

 

 

 ピンク色の光が、倉庫横を突き抜けていった。想像以上の力だ。

 軽自動車ほどの装置『キャパシティダウン』は、直撃こそ出来なかったが、なのはの『ディバイン・バスター』の余波で簡単にひっくり返り、派手に転がっていった。

 

 装置が転がって壊れたのだろう。

 あの『音』が、止まった。

 

「よし、いけるっ!」

 

 能力が使えればこっちのもの! 

 さ、残党狩りといきますか! 

 

 しかし、私のその意気込みは空振りになった。

 

「おとなしくしてもらおうか!」

 

 倉庫の奥から、ぞろぞろと追加の人たちが出てきた。

 しかし、来ている服や年代なんかはみんなバラバラ。老若男女千差万別。

 

 でも一概に言えることは、みな「普通」だった。

 スーツ姿だったり、エプロン姿の主婦だったり、学生服だったり。

 

 ほんと、パッと見は普通の人々。唯一のおかしいところは、皆一様にサングラスをかけているのと、手に武器を持っているところか。

 

「……! 皆本くん! それにザ・チルドレン達!」

 

 ザ・チルドレンと皆本君が、一緒に連れられて出てきた。

 みんな両手を縛られており、特に、薫は気を失っているのか、大柄の男性に首根っこを捕まれぐったりしていた。

 

 そして拳銃は、薫に向けられていた。

 

「こちらには人質がいる。最も、いまならお前達も能力が使えないはずだかな!」

 

 ……ちょっとまって、確かに。

 電源を落としてしばらくたつが、今だこの工場は予備電源が作動している。

 私の見立てでは、もう予備電源は落ちてると思っていたのだが。

 

 そんな疑問は瞬時に氷解した。

 

 建屋の後ろのシャッターが開いた。

 大型トラックほどの装置。ECMはやはりその中にあった。遠くで青白い光が灯っている。

 

「く、あれ?」

 カラン、金属の棒が黒子の足元に落ちた。跳ばした『つもり』で、全く跳ばなかったのだ。

 

「え、で、電気が出ない!」

 御坂も、この状況を打開しようと能力を発現させようとしたのだろう。

 いつでも電撃を使えるよう準備をしたのだが、全く電気が出なかった。

 

 装置は目視できてはいる。

 でも、私たちも馬鹿じゃない。

 当初の『50m』の距離には十分注意しているつもり。今もかなり離れているのに。

 ……なんでここまで効果が広がっている?! 

 

「驚いたか? こちらの学園都市の研究者にも普通な人がいてね。装置の技術供与の代わりに装置を改造してもらったよ」

 

 黒スーツの男が得意気に話し始めた。

 

「範囲が2倍以上で、電源効率も大幅に上げさせてもらった。バッテリー制御でも数時間は動かせるのさ」

 

 最悪。見立てが外れた。

 

 これはかなりヤバい。背水の陣だ。

 

「アンチスキルに偽の緊急連絡を流し、来たジャッジメントを捕らえる手筈だったが、予想以上の大物がゲットできた……おっと、不審な動きをしたら……」

 

 普通の人々は、私たちにも拳銃を向けてきた。

 拳銃どころの話じゃない。連中、サブマシンガンも用意してやがる。

 

 背水の陣ってレベルじゃない。

 これは『絶体絶命』っていうやつだわ。

 

「さて皆本二尉、そろそろパスワードを教えてほしいのだがな、これだけ人質がいるのだ。一人や二人……」

 

 そんな黒スーツの口上は、

 

 ピンクの光に遮られた。

 

 今の私たちにとって希望の光だ。

 

 

「ディバイン……バスター!!!」

 

 

 その光は、ECMを直撃した。

 派手な音を立てて砂ぼこりが舞った。

 次いで繋がっていた予備バッテリーだろうか、電気系統の爆発音がした。

 

 靴からサクラ色に光る羽を生やし、学生服に似たデザインのライフジャケットに身を固めた、高町なのはが、文字通り飛んできたのだ。

 

「なのはちゃん! 後方待機でしょ!」

 

「ごめんなさい! じっとしていらなくて! 通信機も途切れちゃってて、 テレパシーで会話しようとしても届かないからっ!」

 

 しかしこの行動には助けられた! 

 ECMがぶっ壊れてくれれば、こちらに分がある! 

 

 でも、そこまで上手く行かなかった……。

 

「あれ!? ……きゃあっ!」

 

 突然、なのはちゃんのバリアジャケットが解除され、普段着のパーカー姿に。もちろん羽も消え、派手に尻餅をついて落ちてしまった。

 

「れ、レイジングハートっ???」

 

 彼女が利き腕に持つ魔法の杖も、本来なら宝石の形に戻るのだが、杖のままフリーズしていた。正確な手順を踏まず主電源を落としたような感じ。

 

 これ、まさかECMがまだ生きている! 

 てーか、ECM(こいつ)、『魔法』も封じるのかっ! 

 

 砂煙に目を凝らしてみてみると、まだECMの青白い光は続いていた。

 まだ、動いている。軍用にも使い回せるよう設計を丈夫にしたというが……ガチのカッチカチやん! 

 

 あと、多分なのはちゃんも、ディバインバスターの出力をだいぶ絞ったようだ。魔法が普通の人々を巻き込まないように加減してしまったのだろう。

 

「このガキ、能力者か! ふざけやがって!」

 

 躊躇なく、尻餅付いて無防備ななのはちゃんに、奴らは銃をむけた。

 

「きゃぁぁっ!!」

 

「「「やめろっ!」」」

 私と皆本くん、それにその場にいた子達がみんなとっさに叫んだ。

 

 叫んだからといって何も出来ない、というのが本音だが、叫ばずにはいられなかった。

 

「……ふん」

 

 黒スーツは引き金を引かなかった。

 代わりに、皆本くんへの元々の要求を繰り返した。

 

「やっとわかったかね? 皆本二尉」

 

「……わかった。パスワードを言う……」

 

「皆本さん!」

「皆本っ!」

 

 BABELの特務エスパー全員のステータスのほか、ジャッジメントやアンチスキルの構成員の情報も入っている、皆本くんのパソコン。そのパスワードを、皆本くんはとうとう奴らに教えてしまった。

 

「『……SAVETHECHILDREN』」

 

 パスワードを打ち込む、普通の人々。

 最後のキーを入力し終えると、しかし、パソコンは予想だにしない動きをした。

 

『エマージェンシーコード確認。データデリート……』

 

「な……なんだこれは! データ消去だとっ!」

 

「ああ、緊急時に全データを消すパスワードだよ!」

 

「き、貴様ふざけた真似を!」

 

 拳銃が皆本くんに向けられた。

 が、皆本くんはそれも予想済みだったのか、まあまあ余裕の表情だ。

 

「人質から銃を離したな!」

 

 その瞬間、パソコンはデータ消去と併せて『隠し球』プログラムを走らせた。

 

 

『カウンターECM、発動します』

 

 

 みんなの耳にも聞こえるボリュームで、パソコンの音声が鳴り響いた。

 さらにその音よりももっと大きい声で皆本くんが叫んだ。

 

「今だみんなっ! こいつらをぶっとばせっ!」

 

「能力が……戻ってるっ!」

 

 そこからのみんなの行動は早かった。

 

 薫は衝撃波で周囲を吹き飛ばし、

 黒子は跳躍して拳銃やらマシンガンに鉄芯を打ち込み無効化。

 美琴は電気を一気に放出し普通の人々たちを感電させた。

 私もちゃんとお仕事。銃を打つ際の爆発の火花を操作して暴発させた。

 

 ものの数秒。

 一瞬のうちに形勢逆転、鎮圧成功と合い待った。

 

「ほえ~」

 

 再起動が始まったレイジングハートを抱き抱えながら、なのはが感嘆の声を上げた。

 

 そして、後ろ手を縛られている皆本くんを解放した。結構な暴行を受けていたみたいで、近くでみるとかなり痛々しかった。

 

「皆本、大丈夫かっ?!」

「皆本はん……」

「……骨にも少しヒビが入っているわね、早く病院に!」

 

 ザ・チルドレンたちが皆本を囲う。一段落っぽく見えるが、まだ解決していない問題が残っている。

 

「みんな本当にすまない……。ECMの場所もわからず、犯人の人数も把握できなかったから、迂闊に動けなかった。君たちが来てくれて助かった」

 

 そして、先ほどのノートパソコンを拾い上げた。バッテリー表示は心もとない値を示していた。

 

「これはカウンターECM。いわば、『アンチアンチ超能力装置』。ただ、試作品でバッテリーはあと数秒だ。それまでにECM本体の停止を」

 

「面倒臭いわ、さっさとぶっ壊しましょ」

 

 ポケットからコインを取り出し、御坂美琴がぶっきらぼうに答えた。

 

 ただ、今回については、その意見に賛成。

 黒子も「やれやれ」といった表情だが、反対はしなかった。

 

 すると、

 

「あら?」

 

 工場の外から、車が入ってきた。

 警備員(アンチスキル)のマークを着けたバンだった。

 

「初春の連絡が間に合ったようですわね、こちらヘトヘトですから、助かりましたわ」

 

 ぞろぞろと出てくる警備員。

 

「よかった~。これでひと安心……」

 なのはが安堵の表情を浮かべた。

 レイジングハートはまだ再起動が終わっていない。

 

 ……ん? なんとなく、『いやな』雰囲気なんだけど? 

 

 三宮紫帆ちゃん、その『違和感』に気づいて地面経由で奴らをサイコメトリしていた。

 

「……違う! あいつら『普通の人々』よ!」

 

 銃を構えるアンチスキル(ふつうのひとびと)

 こいつらもいつの間にか、お揃いのサングラスを着用していた。

 

「……! サイキック! イージスシールドっ!!」

 

 サブマシンガンが掃射される寸前に、明石薫がみんなを囲むシールドを張ってくれた。

 弾丸が念力の壁に弾かれる。

 

「……うそ! 迷いなく撃ってきた!」

「きゃぁぁぁっ!!」

 

 奴ら……原作ではちょっとギャグよりキャラだけど……実際は相当やべー奴らだわ、再認識。

 

「まずい! カウンターECMのバッテリーが……」

 

「みんな! ECMを盾に!」

 

 私は、みんなをECMの後ろに誘導した。

 

「ちっ! 打つな! ECMに当たる!」

 

 予想通り。奴らはこの装置を壊したくないらしい。

 

 が。

 

『カウンターECM、終了します』

 

「くそっ!」

 

 バッテリーが限界に達し、カウンターECMが落ちた。

 薫のバリアも消えてしまった。

 

 それに気づいているのか、警備員スタイルの『普通の人々』が、じわりじわりと近づいてきた。もちろん、マシンガンや拳銃を携えて。

 

「くっ!」

 

 ECMの後ろに隠れたけど、能力を使えない丸腰の人間だと知られてしまっている。

 

 どうする……どうする……!? 

 

「黒子っ、他のジャッジメントに通信出来ないの?!」

「アンチスキルのジャミングが使われてますわ! なんて姑息な……!」

 

 どうする……

 

「ユーノくん……ユーノくん……ダメっ! 念話も使えないっ!」

 

「み、皆本はん……」

「皆本さん……」

「ちっくしょう……ちくしょう……」

「お前ら、俺から離れるなよ……」

 

 

 どうす……る……っん? 

 

 

「死ね」

 

 

 ECMの影から出てきた普通の人々が、私たち……手前にいた明石薫に向かって、引き金を引いた。

 

「やめろっ!」

 

 皆本くんが、薫の前に出た。

 

 パンっ!! 

 

 大きな発砲音。

 発射された弾丸が、皆本くんの体に触れるその瞬間。

 

 

「皆本ーっ!!」

 

 

 周囲を赤い衝撃波が走った。

 

 

 この衝撃は凄まじく、発信源の周りのもの全てを吹き飛ばさんとした。

 

 薫の超能力の暴走だ。

 

 警備員スタイルの普通の人々も、

 気を失っていた素行の悪そうな青年たちも、

 建物の壁も、柱も、吹き飛ばした。

 

 そして、ディバインバスター直撃すら耐えたECMも完全にぶっ壊した。

 

 全てが吹き飛ばされた。

 

 

 私の『炎の壁』を除いて。

 

 

 ほんと、ギリギリのところで、私は炎の壁を作り出していた。なんとか主要メンバーだけは、助けることに成功した。

 

(あっぶな……なんとか間に合った……)

 

 原作をある程度知っているからこそ、私は、直前で壁を作ることが出来たのだ。

 

 けど。

 彼女の超能力、原作越えの威力を発揮してないか?? 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 かなりの力を放出したためか、薫ちゃんは肩で息をしている。私たちの目の前、赤い光を発しながら浮いていた。

 

 そして、先ほど皆本くんに発砲した奴も、薫ちゃんの目の前に浮いていた。いや、念力で浮かされていた。

 

「お前も皆本と同じ目に……」

 

 薫ちゃんが手をかざすと、みしみし、ベキベキと、骨が歪み折れる音が聞こえた。

 あ、これは『良くない音』だわ。

 

「ぐ、ぎゃぁぁぁぁっ!!!」

 

「やめろっ薫! もう終わった!」

 

 皆本くんが止めに入る。

 

「こいつらは、能力を理由にかこつけて、自分で何も成そうとしない、ただの負け犬だ! こんなやつのことで、お前の手を汚す必要なんてない!!」

 

 はっ。

 

 一瞬だが、薫が意識をこちらに向けた気がした。その時、

 

 キン……。

 

 金属が弾かれる音。

 それはすぐに、

 コインが弾かれた音だと理解した。

 

 

 ドゴオオオオオオっ!!!!!! 

 

 

 強烈な電気収束とそれに伴う高速物体の飛翔。

 周辺を巻き込み、ただただ一直線に。

 薫と、犯人の男の間を、ぶち抜いた。

 

 激しい衝撃に、薫と男の距離が大きくなり、男は地面に落ちた。

 

「うあっ!」

 

 爆音と爆風で、

 薫も弾かれ落ちてきた、が、

 

「薫!」

 

 そこは皆本くんナイスキャッチ。薫ちゃんを抱き抱えることに成功した。

 

「ねぇ、話半分で聞いて欲しいんだけどさ」

 

 周囲の地面は電気で焦げ、いまだに余剰な電気が漏れている、御坂美琴。

 彼女が、明石薫に語りかける。

 

「こいつら自分が出来ることすらやらず、現実から逃げ回ってる……人生において超能力以上の価値を見つけられなかった、可愛そうな人たちなのよ」

 

 薫ちゃんの肩が小刻みに震えている。

 きっと、本人も自分の力が抑えられなかったことに恐怖しているのだ。

 

「そんな奴のためにさ、自分の人生に蟠りを残すことはないわ。あんたたちは幸せよ、理解ある大人がこんなにも近くにいるんだもの」

 

 赤い光が落ち着いていく。

 

「う……うわぁぁぁぁん!!」

 

 皆本くんの胸の中で、大きな声で泣き始めた。

 いろいろ感情が沸いてしまい、それが決壊したんだろう。

 

 ……よかった。これで本当に一段落っぽいわね。

 

 白井さんも、やれやれといった感じで二人を見守っている。

 なのはちゃんも、ユーノくんと念話出来たみたい。

 紫帆ちゃん、葵ちゃんも、今回はいいかな、みたいな表情を浮かべてる。

 

 

 さて、と、私は、周囲を確認。

 

 

 先ほど『ヤバい音』を体から出してた奴を見に行く。

 よかった。生きてるわ。

 

 ほかの普通の人々や、不良たちも、さっと見たところ、激しく吹き飛ばされたわりには奇跡的に死者はいなさそう。

 

 無意識に力加減が出来ていたのか。

 それとも、何か他の力が働いたのか。

 

 そこを深く考察するのは、まだ後で良さそう。

 

 ……直近は、『私の力』について、どこかで再確認が必要かもなぁ。

 

 

 あ、そうだ忘れてた。

 

 

「御坂さん」

 

 えっ? と、御坂美琴がこちらを向いた。

 このタイミングで名前を呼ばれたことに驚いていた。

 

「ごめんね、御坂さん、こんな時で申し訳なんだけどさ」

 

 私は、ポケットからキーホルダーを取り出した。『これ』は本来なら、彼女が持っていなければならない。

 

「ゲ……ゲコ太っ!」

 

 ゲコ太のキーホルダー。タコカフェのオマケで先着順に貰えるものだが、私たちが学園都市に入ってアカネさんのタコカフェに並んじゃったから、原作では佐天さんから譲って貰えるはずのキーホルダーを、私たちが貰ってしまっていたのだ。

 

「い……いいんですか……あ、いやそういうのアンマ私に似合わないというか」

 

「受け取って。クレープのオマケだけど、なんとなく、あなたに持っていて欲しい」

 

「あ、はい。じゃあ遠慮なく……」

 

 少し照れくさそうに美琴はゲコ太を受け取った。

 一瞬だが、彼女の顔が綻んだのを、私は、見逃さなかった。

 

 

 外が少し騒がしくなってきた。

 

 

 さすがにあの爆発を聞いて、通報されないことはないか。けど、今度来たのは、ちゃんとした『警備員(アンチスキル)』。

 

 本当に、ひとまずこれにて。

 一件落着だわ……。

 

 色々な疑問や問題が山積みだけどね。

 

 誰がECMを改造したのか。とか、

 そもそも何故、ECMを盗んだのか。とか。

 

 その辺りはまたの機会に、何とかしましょ。

 今日はとりあえずは……。

 

 

「風呂入りてぇ……」

 

 

 砂ぼこりだらけの髪を弄りながら、心底、私は、心底、そう思った。





【次回予告】
皆本くんの入院に併せて、ザ・チルドレンたちも強制的に検査入院させられた。
なんか、都合が合いすぎて勘ぐってしまうわ……。
私は、街に出て古本探し。正式に登録されてない古本屋を当たってみると……。
都市伝説『脱ぎ女』?!
そして、襲来するハチの大群!

【御坂】
「あの、例えばですよ、能力を打ち消す能力、みたいのって有ったりします?」

【読子】
「あのう……月末払いで……」

【木山】
「あれは……ファーブルか」

次回
『偉人軍団、動く』

読子さん、出番です。
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