転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

21 / 38
【第7話】偉人軍団、動く【前編】

 ホコリまみれ汗まみれな身体をシャワーで流し、わたしは湯船に浸かった。

 時計は午前6時を指していた。

 

 昨夜は遅くまで仕事。

 結局、あのあと学生一行にはご帰宅願って、大人たちで現場対応と現場検証が行われた。それで深夜までかかって、ホテル帰宅後即寝てしまった。

 そのため、今やっと念願のお風呂タイムってわけ。

 

 ちゃんと湯船が付いているホテル、とっておいてよかったわ。

 

「……」

 

 湯船に浸かりながら、わたしは能力を使ってみた。操れる炎はないが、髪がオレンジに染まる。

 

 揺れ動く炎を纏め、動かし、捏ね、固めるイメージ。その通りに炎を動かすことが出来る。

 

「……」

 

 わたしは昨日の事を思い出していた。

 

 皆本くんとザ・チルドレンは、アンチスキルと一緒に来た救急車に、否応なしにすぐ乗せられた。

 あまりの手際のよさに、図らずとも『仕組まれていたのでは?』と勘ぐってしまう。

 

 これで、ザ・チルドレンたちも適当な理由をつけられて、病院で精密検査(という名前のデータ採取)を受けさせられることになるだろう。

 事実上、皆本くんを人質に取られたようなものだ。

 

「……」

 

 もちろん彼らのことも心配だが、BABELの後ろ盾がある以上、変なことを行うことは無いだろう。

 

 

 ただ、実は私は今、その事を気に病んでいる訳ではない。

 

 

 あの時。

 ECMが動いていた最中。

 暴走した、明石薫の力。吹き飛ぶECM。

 ギリギリのところで、私の炎の壁が間に合い皆を助けられた。

 

 

 あの時。

 私はECM稼働中でも、炎が使えたのかもしれない。

 

 ECMで超能力が使えない、と先入観があり、稼働確認してから私は能力を使おうとしてなかった。

 けど、あの時とっさの行動に出たとき、まだ装置は『動いていた』。つまり、炎を使えたのだ。

 

「……何でよ」

 

 なのはちゃんたちの『魔法』とも、

『超能力』とも違うということになる。

 

「……」

 

 この能力は……いったい何なんだ? 

 

 オレンジ色の髪の『私』が、鏡から覗いていた。

 

 

 **********

 

 

 今日こそは本屋巡り。

 

 早速、母に『アレ』が認可されたか聞きにいったが、結局NG。特別な検索は出来なかった。

 

 あと、昨日借りた車の件は、こっぴどく怒られた。

 吹っ飛んで転倒してウィンドウ砕けてた。すまん、母よ。

 

 そこで、私は彼女の力を借りようと考えた。

《初春飾利》さんだ。

 彼女のデータベースになら、それっぽいものがあるのではないか。

 

 平日なこともあったので、私はケータイにメールを入れた。

 

「まかせてください! 都市伝説にはかくも沢山の怪しいお店がいっぱいあります!!」

 

 メアド間違えた。

 そして速攻折り返しで直電話掛かってきた。

 間違えた。これ《佐天涙子》や。

 

 が。平日で授業があるというのに、彼女の対応は想定以上に早かった。

 

『認可されていない古物商や古本屋! それに合わせて、都市伝説サイトや掲示板の情報を、集めに集めました! リストに纏めましたのでメールでお送りしまっす!』

 

 あ、この情報の速さ。初春さん使ったな。

 

 ありがとう、超危険収集能力(さてんるいこ)さんに花飾りの電子妖精(ういはるかざり)さん。

 データが重すぎて、ダウンロード中にフリーズしまくりだよ。

 

 そしてダウンロード中に電話してくるな佐天涙子っ。

 

「イオナさん、でも気を付けてください。最近、本屋に関してやばいウワサがあるんですよ」

「へえ、どんな?」

 

 89%ダウンロードを中断されて少し不機嫌な私。

 

「本を食べる妖怪です。夕方になると現れ、書店にある本を丸ごと……ペロリ。全部食べられてしまうそうで!」

「非現実的ね」

「それが! 目撃者もいるんですよ! 長い髪の女で、常にキャリーケースを引いているそうです! 被害にあった小さな書店は、本という本すべてその女に持っていかれて、店員さん廃人になってお店潰れたんですよ!!」

 

 

******************

 

 

 さて、教えてもらった一件目。

 なんとこの書店、秘密の地下への入り口があるとのこと。

 

「えーと」

 

 佐天さんから貰ったリストに、その地下室への行き方が載っていた。

 といっても、インターネット掲示板に載っている噂話レベルの内容ではあるが。

 

「……リストが重い」

 

 一度閉じてしまうと、再度開くのに異常に時間がかかる。

 

 なんとか開けられたデータを見ながら、半信半疑でエレベータのボタンを押す。

「1」「1」「2」……で、図書カードを……はさんで。

 

 本当にこれで地下に行くのだろうか。

 

「ガタン」

 

 地下に落ちていくエレベーター。

 ボタンには地下表示はない。

 

 まじか。佐天涙子すげぇな。

 

 

 

『チン』

 

 エレベータの扉が開くと、そこはかなり古い書店であった。

 日本の本以外に、見たことない国の本が沢山ある。

 意外と、こういった所に埋まっているのかもしれない。

 

「読子さんに出会ったりして」

 

 ふと、BABEL非常勤エスパー『読子=リードマン』のことを思い出した。

 この本探しは、元を正せば大英図書館のエージェントの仕事ではないのか。

 ただ、この日本、しかも『学園都市』という特殊な場所であるため、大英図書館が手を拱いた。

 そう推測される。

 

 日本在住かつ、今は非常勤講師として、学園都市側に来ているはずの読子さんにも、この本の探索は伝わっているはず……なのだが、あの人の性格から、任務すっぽかしている可能性も否めない。

 

 何より、学園都市は文字通り『知恵、知識』も多く集まる。それこそ壁の外とは比べ物にならないレベルで。

 今いるこの場所なども、もしかしたら非合法な手段……『暗部』が集めた本を扱っているのかもしれない。

 こういった場所が、本当に点在している(By 佐天ファイル(6GB))のだとすれば。

 本に目がない彼女は、必ず、目ざとく場所を突き止め、大英図書館の意図と関係なく、この案件に突っ込んでくるはず。

 

 それにしても、佐天涙子が言っていた「本の妖怪」か……。

 小さな書店は元々廃業寸前。そこに来た妖怪が、本をすべて買って帰った。

 書店は売るものすべて売ったおかげで、店員は心置きなく店を閉めた。

 

 というのが……まだ現実的かもな。

 

 そう、この人みたいに。

 

 赤い表紙の書籍。書店員に法外な値段を告げられ、

「あのう……月末払いで……」

 などと言う女性。

 

 そう、こんな感じで。

 

 いた。

 

 読子さんや。

 

 ***********************************

 

 

 外に出た読子さんは超絶ホクホク笑顔。

 彼女は早速、本を歩きながら読み始める。

 ちゃんと周りは見えて……なさそう。

 

 心配なので、そのままついていく。

 

 本は、私が買った。……は語弊があるが。

 読子さんは持ち合わせがなく、危うくその本を買うことができないところだった。

 そこで私が、クレカで買ったのだ。

 

「おいくら?」

「25万」

「……ぶ、分割で……、あと領収書は「BABEL」ね」

 

 いてぇ出費。このBABEL宛ての25万の領収書。死んでも離すものか。

 

 そんなことつゆ知らずか。もくもくと本を読む。

 

「ねえ、読子さん」

「……ふふっ……ふへらっ」

 

 なんか一人笑いに非常にイラついたので、彼女のほっぺをつねる。

 

「はひ! いたひじゃないですかぁ!」

「その本は、あくまで「BABEL」のもの! それは肝に銘じておいてください」

「判ってますよぉ、だから会社にお渡しする前に、なんとしても読んでおきたいんです!」

「最終的には、大英図書館の蔵書になるから、その時に読めばいいのに……」

「いま、ここで出会えたことが奇跡なんです、だからこそ今のこの時間で、読んでしまいたいんです! ……はあ。素敵なお話……」

 

 そう、この本、大英図書館が血眼になって探していた本そのものだった。

 まさか、都市伝説の書店におかれていたとは。佐天涙子侮りがたし。

 

 本来なら、一刻も早く本を大英図書館に持っていきたい……。

 念のため、大英図書館には連絡を入れておいた。読子さんも同行している旨も一緒に。

 

『……読子さんも一緒ですか……はぁっ……』

 

 電話先の男性が、軽いため息をついたように思えた。

 

「はい、それで彼女、全然本を手放してくれなくて……」

『でしょうね。判りました。私が直接、ザ・ペーパーを説得しますよ』

 

 っと。

 近況を報告しつつ、読子さんの動向チェック! 

 

 すると、

 道の先(少し路地に入ってしまった)から女性の叫び声。

 

「きゃぁぁっ!! 女性が服を脱がされてるっ!!」

 

 ! 白昼堂々と変態か! 

 

 私はダッシュし、声の方角に向かった……あれ? 

 

 そこにいたのは、

 服を脱がされた半裸の女性と、

 服を持つ男子校生。

 あと、御坂美琴。

 

「し、シャツをきてください!」

「と、とにかく服を着て! 見られてますっ!!」

 

 ……。

 見方によっては、

 女の人が、男女の学生に服を奪われ襲われてるように、見えなくもないが……。

 

 違うか。

 

「炎天下の中、歩き回ったんだ……汗びっしょりだ……」

 

 確かに今日の気温は、5月なのに真夏日になるってテレビで言ってた。

 アスファルトからの照り返しは、殺人的な暑さだ。

 

 だからって、暑いから服を脱がされて(?)、そこから服を着ないってことは無いだろ。

 この女の人、脱ぎたがりか? 

 

「ふ、ええええ、どういう状況ですかぁ?」

 

 本に夢中だった読子さんも、声が気になって一緒に来てくれた。けど、目に飛び込んできたのは異質な空気感だった……。

 

 どういうこと、と聞かれても、説明しようがない。

 

「ご、ごご、誤解だぁぁっ!!!」

 

 シャツ(たぶんその女の人の)を、御坂美琴に押し付け、男子校生が駆け足でその場から逃げ出した。

 

「あ、君っ!」

「ちょっと!」

 

 私と御坂が、その男性を止めようよしたが、

 

「なあ、服を持っていかれると困るんだが」

 

 裸の女性が制してきた。てか、そりゃ服を持っていかれるのはマズい。

 

 ん……? 

 あれ、この女性……てか、このキャラどこかで……あれ? 

 

「おや、その本……」

 

 裸女が、読子さんの稀覯本に興味を示した。

 

「! この本、興味あります? ご存じなのですか! うわぁ! 嬉しい! 素敵な恋のお話なんですよね……」

 

 読子うっとり。

 

「いや、知り合いが探していた本に似ていたのでね」

 

 なんだ、と、項垂れる読子さん。

 本について語り合える仲間を見つけたのだと思ったのだろう。

 

 まてよ。知り合い……あれ? 

 この人の知り合いって、だれだ? 

『思い出せない』。

 

 

 わたしの転生において、大きな欠点のひとつだ。

「物語のクライマックス」は思い出せないのだ。

 

 この人……裸女のことを上手く『思い出せない』ということは、何か、この先、この人が仕出かすのではないか。

 そんな心配が頭をよぎる。

 

「しかし。暑いな、こうも暑いと服など着ていられない……」

 

 忘れてた。

 まずはこの公衆猥褻物陳列罪をどうにかしないと。

 

 せめて、日陰につれていこう。

 ついでに、色々と話を聞き出せ、私! 

 

「と、とりあえず涼しいところに!」

 

 適当な喫茶店……! 

 ちょうど、近くにカフェが見えた。

 

「皆、あそこに行きましょ! あそこなら涼しいし、お話も伺えます!」

 

「でもわたし……もう手持ちがないんですけど」

 

 眼鏡本女! ここで話の骨を折るな! 

 

「……奢るわよ!」

 

 私は叫んだ。

 カード残高きっついけど……。

 もちろん、請求書はBABELで切るつもりですけどね!! 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。