転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第7話】偉人軍団、動く【後編】

 パラソルで日陰を担保しているテラス席。

 本当は室内のほうが涼しいのだけれど、運悪く混んでいた時間帯だったから外で話を伺うこととなった。

 

「ここならまだ、涼しいな」

 

 先ほどまでの裸女、暑さも和らいだためか、やっと服を着てもらえた。

 

「コーヒーでよかったかしら?」

 私は、人数分のアイスコーヒーを確保して席に持ってきた。ミルクとシロップは適当に。

 

「あ、ありがとうございます」

 成り行きで、御坂美琴にも同席してもらうことになった。

 

「そういえば、君たちは一体何者なんだ」

 目の隈を一段と深くして、元裸女が口を開いた。

 

 私は粛々と自己紹介を始めた。

 

「私は特務機関BABELのエスパー、神之原イオナです。外の機関ではありますが、さすがに日中裸になる人をほおっては置けず、こうやってお話を──」

 

「神之原……神之原サイファ氏の親族か? 超能力の論文でよく目にする名前だ」

 

 珍しい苗字だから、母のことを特定したようだ。

(てーか、禁書の方は皆様珍しい苗字ばかりですが)

 

「論文? てことは、学者か何かです?」

 アイスコーヒーをひとくち飲んだ御坂美琴が、質問した。

 

「ああ、大脳生理学を専攻している。AIM拡散力場の応用の研究さ。神之原サイファ氏の、拡散力場の特殊収斂増幅法の考察には、非常に興味があってね」

 

 おお、意外と有名人なんだな。難しいことはよくわかんないけど。

 娘の私としては少し鼻が高い。

 

 裸女が話を続けた。

「それがなにか?」

 

 御坂美琴が立てつづけに質問した。

 

「あの、例えばですよ、能力を打ち消す能力、みたいのって有ったりします?」

 

 ふうん、と、元裸女が少し少し悩んだ後、

 

「高レベルの電撃などは、避雷針のようなもので受け流したり、あとは高効率な蓄電池の原理で貯めこむ事はできるかもしれないな」

 

「い、いえ、そういうのも気になるんですけど、それとも少し違うというか……」

 

 ああ、『彼』のことか、と、私はピンときた。上条当麻だったっけ。❘幻想殺し《イマジンブレイカー》。

 

 彼のことを上手い具合に説明できない美琴。

 あの能力は異質すぎるし、原作知ってる私もちゃんと説明できないよなぁ。

 なんて思ってるときに、

 

 ふと、

 

『私の能力』は幻想殺しで打ち消せるのか。

 という疑問が沸き上がった。

 

 先の事件では、ECMで消されていなかった私の能力。

 彼の右手で検証できれば、また新たな知見が得られるかもしれない。

 

 なんとか機会に恵まれないだろうか。

 

「……はぁ……えへへへ……」

 

 そんな中、頬を赤らめながら読書にいそしむ読子さん。

 少し照れながら読むその本のタイトルは『不滅の恋』。なるほどそういったシーンをちょうど読んでいるところかな……。

 

 裸女と御坂美琴の会話にも我関せず。

 そして、私の買ったコーヒーにも全く口をつけず。

 

 うん。この子友達いねーな。

 

「……」

 

 ん? 

 てっきり、御坂さんと話していると思っていた裸女。

 時折、こちら……いや、読子=リードマンを見ている。

 

 ちがう、見ているのは『本』だ。

 本を見て、何か『焦っている』ような。

 木山春生は、何かこの本について知っているような。

 

 

 

 あ、思い出した。

 この人の名前、木山春生(きやまはるみ)だ。

 

 

 ブォォォ──

 

 

 そのとき、

 目の前を暴走トラックが横切った。

 

 車の正面に『何か』が張り付き、前が見えない状態だったようだ。

 

 そのトラックは、喫茶店の前で派手に横転した。

 

「う、うわ、何? 事故!?」

 御坂美琴が立ち上がる。

 私も立ち上がり、運転手の安否を気にした。

 

「ちょっと、見てくる!」

 

 が、その折、遠くで叫び声が聞こえた。

 多くの人が驚き逃げ惑う声。

 

 そして、雑踏というより、羽音。

 

 ──ハチの大群だ。

 

 倒れたトラックのフロントガラスに付いていたのもハチだった。

 大通り方面からも多量のハチがこちらに雪崩れ込んできた。

 

「うわぁぁっ!!」

「な! 危ない!」

 

 とっさだったが、御坂美琴は電撃を繰り出し、こちらに突進してくるハチを焼いた。

 私も炎を繰り出し、ハチを焼いた。

 あまり良い臭いではない。

 焼け焦げたハチが地面にぼとぼとと落ちた。

 

「ビックリした! 何よ!」

「うわぁ、なんですかぁ?」

 

 木山は御坂さんの後ろにいたため無事だった。

 読子さんも、私の影にいたため何事も無かったようだ(働け)。

 

 が、安堵するも束の間。

 

 

 ……ブーン……

 

 

 ハチの群れとはまた違う羽音。

 今度は、もっと大きな何かが近づいてくる──

 

 

 ズドン!! 

 

 

 目の前にバッタが着地した。

 ただ、その大きさは規格外。人の背丈の数倍はある。

 

(……えっぐい!!)

「な……」

 

 私も御坂さんも、絶句。

 ワキワキと触手が動き、口もモゴモゴしてた。

 虫嫌いが出会ったら心臓止まるんじゃないかしら。

 

 そしてさらに奇怪なことに。

 バッタの口からゴツゴツとした触手が伸びてきたのだ。

 

「あ、え、あれっ!」

 

 その触手は私の後ろにいた読子さんの本に掴みかかった。

 

「あ、だ、だめです……きゃあ!」

 

 バッタは物凄い力で、読子さんごと本を引っ張り持ち上げた。

 

 ブン! 

 

 が、しっかりと本を持っていた読子さんを、バッタの前肢が払いのけた。

 読子さんが激しく吹っ飛ばされ、先ほど事故を起こしたトラックの荷台に突っ込んでいった。

 

「……へ?」

 

 一方、棒立ちの御坂美琴。

 正直、今目の前で何が起こっているのかを理解するのに、脳みその演算が間に合っていないのだろう。

 

 私もおんなじ感じだが、何とか現状を理解し始めた。

 

「読子さん! ……あっまずい! 本も!」

 

 本を奪ったバッタの上に、人がいた。

 茶色を基調とした、昔の探偵映画にいそうな服を着た老人だ。

 

「……ファーブル、か」

 

 ──! 

 ボソリ、と、裸女がつぶやいた。

 私は、それを聞き逃さなかった。

 

 だが、その言葉の真意を確かめる前に、バッタが動いた。

 本を老人が受け取ると、バッタの後ろ脚が大きく曲がった。

 

 そして、その巨体が跳ねた。

 

「うわっ!」

 

 これだけの大きなモノが飛び跳ねたのだ。周囲にはヘリコプターが飛び立つ時くらいの衝撃が走った。カフェのパラソルは宙を舞い、窓ガラスは砕けた。

 

 が、

 

 バッタは、空中で止まっていた。正確に表現すると、何かが『引っ掛かって』いた。

 老人が驚き叫んだ。

「な、なにごとだ!」

 

 

 常盤台中学女子寮『盛夏祭』。

 

 

 そう書かれた紙が舞っていた。宣伝用の広告ビラか、ポスターか。

 他にも、出店の木材やテント。パイプのほか、飾り付け用のだろうか、紙テープやカラー用紙が一緒に散乱していた。

 

 そう、そのトラックは、紙素材満載だった。

 

 ピーン。

 

 バッタの後ろ脚と、地面が繋がっていた。

 アスファルトに深く突き刺さっているのは、なんの変哲もない紙テープだった。

 

 

「……本を、返してくださいッ!」

 

 

 バッタと繋がった高硬度と化した紙テープを、読子さんが上っていく。

 そして瞬く間に、本を持つ初老の老人と取っ組み合いを始めた。

 

「危ない! 私も加勢を──」

 

 その時、老人は首から下げた虫かごを開けた。先ほどのハチの群れだった。

 

 多量のハチが、読子さん含め、周囲を襲った。

 

 が、それを許さない人物。

 御坂美琴がやっと状況を理解して、ハチを焼かんと放電した。

 

「あ、危ないでしょうが! なんなのあんた!」

 

 バリバリバリ! 

 電撃が周囲のハチを焼きつくす。そして電撃は地面を走り。

 

 紙テープを焼いた。

 

「あ、やば」

 

 ぶちん……ブゥゥゥゥン!!!! 

 

 鎖から一気に解き放たれたバッタが、その勢いを抑えることができず、ものすごい勢いでぶっ吹っ飛んでいった。

 

 が、

 

 読子さんはちゃっかり、本を取り返していた。

 結構な高度から落下しているが、先ほど舞っていた『盛夏祭』が書かれたビラをパラシュートにして、ゆっくりと、落ちてきた。

 

 本にほおずりしながら。

 

 ただの紙を自在に操り、超硬度に変質させる。読子=リードマンこと『ザ・ペーパー』。

 彼女の本当の恐ろしさは、『本』への異様な執着なのかもしれない。

 

「ああ……よかった、私の本……」

 

 BABEL(会社)のね。しかも今は私の。

 

 

 どごおおおおおおおん!! 

 

 

 激しい衝突音。

 先ほどの巨大バッタが、勢いを落とすことができずビルの看板に突っ込んだ。

 激しく壊れた看板が地面にも一部落下し、さらにビルの外壁も多数はがれ、通りの車を数台巻き込んでしまった。

 

「……やっば……」

「やばいわね」

「あらあぁ……」

 

 三者三様の惚け方をしてしまったが、共通して言えることは『やばい』。

 一刻も早くここから逃げたかったが、一応私は『公務員』なので……はい、いろいろと覚悟しております(報告書始末書など)。

 

 一方、読子さんは驚きの声をあげたが、すぐに取り戻した本を開き読み始めた。

 この人の性格はどうなっているのだ。

 

 んで、御坂美琴は、また思考が少しフリーズ気味。ひきつった笑顔で固まってしまった。

 

 その時。

「おい! どうしてくれんだ!!」

 

 ひとりの男子学生が、私たちに近づいてきた。

 手には、粉々に砕けた卵パックに、破けボロボロになったスーパーの袋が握られていた。

 

 は? 卵? 

 

「このビックリドッキリ人間! 昼の限定タイムセールでギリギリ買えたんだぞ! 貴重なたんぱく源を、安く手に入れる事ができるかどうか! 貧乏学生には死活問題なんだ!」

 

 いきなり啖呵切ってきた。この青年は『上条当麻』じゃないか。

 

 どうやら、特売で買えた食品もろもろを、先刻吹っ飛んでいったバッタの勢いに巻き込まれ全部台無しにされたらしい。

 それで、バッタを吹っ飛ばしたと思われる私たちのところに来て、クレームを入れたというところか。

 

「あ……ああ!! さっきはよくも! 自分は逃げてお買い物!? こっちは大変だったのよ!」

 

 御坂が即座に反応した。

 

「やっぱお前かビリビリ!! なんか電気走ってるなって思ったんだ! やい! 金持ちの常盤台のお嬢様にはわかんないかもしれないけど──」

 

「勝負しなさい! 今すぐ!」

 

 いきなり話題を変えてきた。

 

「し、勝負? おまえの全戦全敗じゃないか、どうしたいんだよ」

「そりゃ私が勝つまでよ! さ! 周りに迷惑かかんないところ行くわよ!!」

「は? え、ちょおっとどういう……」

 

 なんかあれよあれよと、御坂は上条を連れてこの場を後にした。

 あれ? 

 もしかして適当な理由つけて逃げられた? 

 

 

 ……。

 

 

 

 ……!! しまった! 木山がいない! 

 

 この混乱に乗じてか、いつの間にか居なくなっていた。

 

 先ほどの独白……なぜ奴が『ファーブル』なのを知っているのか。

 真意を聞きたかったのだが……

 

 

 と、そうこうしているうちに、アンチスキルやジャッジメントが集まってきた。

『巨大バッタが街を闊歩している』なんて、そりゃ大ごとになるわよね。

 ビルの壁一枚ぶっ壊してしまったし……。

 

 すると目の前に、車が止まった。

 アンチスキルとも違う、英国の古い映画に出てきそうな外車だ。

 

 出てきたのは、金髪オールバックの英国紳士風男性。

 

「ミスタージョーカー」

 大英図書館の、特殊工作員だ。

 私はこの人に本の探索を依頼されていた。

 

「オレンジヘアーに、ザ・ペーパー。あなた方が絡んでいるとは」

 

 いきなりのあきれ顔なのか困り顔なのか。

 この人は、正直、表情から感情が読みにくい。

 まかりなりにも特殊工作員ってことか。

 

「……ふむ、そうですか」

 

 ジョーカーが、読子さんの持つ赤い表紙の本を見ながら、凡そ悟った。

 

「ジョーカーさん、あのバッタ何だったんですか?」

「ミスタージョーカー、私にも説明をお願いできますか」

 

「ええ、説明は後で。お二人はいったんご同行を」

 

 すっ、と、読子さんの持つ赤い本と……一緒に、いつの間にか読子さんがあのバッタ老人から奪っていた古いノート(本に挟まっていた)を、読子さんから抜き取った。

 

「少しお借りします」

「えええ、まだ読み終わってないんです!」

「世界の危機です。解析が終わればお返しします」

「ちょっとまって! それまだBABEL──ってか、私の本よ! 25万!」

 

 25万の本を人質に取られたので、私もジョーカーに同行することを拒否できなくなった。

 

 

 大通りは野次馬で人があふれてきた。

 アンチスキルも、怪獣映画よろしくこんな事態初めてだろう。対処の方法に戸惑っているように見えた。

 

 

 私と読子さんは、ジョーカー氏の車に乗せられ、そのまま第七学区の図書館──大英図書館の支部──に連れられて行くことになった。

 

『なぜ、木山春生が、偉人の名前を知っていたのか』という、非常に深い疑問を残したまま──。





【次回予告】

半ば強制的に英国図書館の仕事を継続する羽目になった私。

そこで、偉人軍団に付与された能力の秘密を知らされることになる。

そして翌日。
私は、皆本君が入院する病院で、一つの大きな運命に立ち会うことに。


【白井黒子】
「あの侍の電撃と、お姉さまの能力が同一……!?」

【キュゥべえ】
『まだ大丈夫、すぐに孵化する様子はないよ』

【巴マミ】
「もう――何も怖くない」

【暁美ほむら】
「貴方がいても、何も変わらない……いえ、貴方のせいで何もかも解決できない」

【フェイト】
「やっぱり、ジュエルシードはこの街にある」


次回、第8話
『正しい運命、違える命運』


【青髪のフード女】
「もう、傍観なんてできないだろ?」
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