「一週間前から、連続
犯人につながる情報があまりが少なく、彼らは手を
「無差別テロにしても、何か目的があるはずですわ」
白井黒子がぼそりとつぶやく。今この会議室に集まっている全員が、同じ思いのはずだ。
(連続グラビトン事件……か)
私こと、神ノ原レオナは、本事件の内容をよく知っている。前世で得ている『とある科学の超電磁砲』のアニメ知識が残っているからだ。
だからこそ、そのまま我々が手を出さなくても、自然と解決の糸口が開かれ、事件は
というわけで、私は基本、『だんまり』を決め込んでいた。変に口を挟んで、原作の話があらぬ方向に進むことがないよう。
「──そこでっ! 私たち『ザ・チルドレン』の出番ってわけ!!」
しんっ……と静まり返った会議室の沈黙を破る、明石薫の第一声。
ま、いろんな作品がクロスオーバーしていると、他のキャラが他の話に土足で踏み入ったりするので。
私の考えなどは虚空の彼方だ。
「こら、薫! ……し、失礼しました」
薫を叱りながら、皆本光一くんが謝罪した。うーん、つい先日に退院できて、すぐに働き始めるあたり立派な社会人。そしてりっぱな保護者だねぇ。
そんな薫の一声は、アンチスキルの大人たちも、ジャッジメントの学生たちも、不満顔にさせた。
(
(レベル5と同等? 未だ信じられない……)
(我々だけで十分だ……)
ひそひそ声が漏れてる漏れてる。わざとかな?
まあ、超能力研究の権威があつまり、訓練まで施された人たちを越えた力が、特に訓練など行っていないはずの小学生が持っているって言われたら、学園都市の学生としてはプライドが傷つくのもしょうがないわね。
「……」
そんな声を、黙って見つめる学生が一人。白井黒子だ。
彼女の表情を伺うと、少し曇っているような、不満顔ではあるが、それは、ザ・チルドレンたちに対しては無い。彼女たちへの不満を募らせている、他のジャッジメントやアンチスキルたちに対してだった。
(白井さん、共闘してくれたから、私たちの実力をよく見てくれている)
先日の
実力を持っている人を蔑む態度が気に入らないのだろう。
「──本題に入ります。我々BABELの特務エスパー、三宮紫穂のサイコメトリー結果をご報告しますと……」
すると、すっと、明石薫の横に黙って座っていた紫穂が立ち上がった。
「皆本さん、本件、私から直接お話ししていいですか?」
「あ、ああ、わかった」
紫穂ちゃん、顔がむすっとしてる。多分、会議室内のいやーな空気を直に感じちゃったのね。
「えー、では単刀直入に……犯人の狙いは
おお? いきなり核心を突いてきた。
これには、会議室がざわついた。どういうことだ? みたいな会話も聞こえる。
「全遺留品をサイコメトリーしたところ、情報の拡散がみられ正確な犯人特定には至れませんでした。ですが、全ての遺留品から、『憎悪、醜悪、妬み、恨み』……。いずれも、
「ジャッジメントへの無差別テロってことですの!?」
「かなり、その傾向が強いです。そしていずれの証拠品から見受けられた、強い思念。『僕を救えなかった世界はいらない』」
「紫穂のサイコメトリー結果を受けて、我々BABELは本事件を、無差別テロに見せかけた
最後にビシッと、皆本君が締めた。
会議室の空気が一気に引き締まったのが肌でわかる。
「なあ、一つ聞いてもいいじゃん?」
そんな中、アンチスキルの女性が手を挙げた。非常に語尾に特徴がある、黄泉川愛穂だった。
「そこまで読めてて、犯人の特定に至らないって、違和感じゃん?」
確かに。ここまで思念を読み取っていれば、紫穂ちゃんなら、犯人の顔くらい見れそうなのに。
すると、紫穂本人がこの質問に回答した。
「その通りです。こんなこと今までありませんでした」
「どういうことじゃん?」
「……非常に、酷い『ノイズ』が入るんです」
「ノイズ? 音楽?」
つい、私が発言してしまった。相手の思念に重なる『ノイズ』というワードに、つい
「はい、音楽……もそうなのですが、どちらかというと、沢山の人間の思念が大量に混ざっている、そんな感じです」
「犯人は複数犯って事も考えられるじゃん?」
「いえ、そうではなく……確かに犯行は一人ですが、感じ取れる思念は大人数という。私も初めての感覚なんです」
なんとも煮え切らない、紫穂ちゃんの回答ではあったが、黄泉川さんはさらに詮索しても何も得られないと感じたのか、それ以上の質問は無かった。
「だとすれば、早く見回りをしているジャッジメントに緊急連絡をいれましょう、今単独での対応は危険すぎますわ」
白井さんの的を得た意見に、他のジャッジメントたちもあわただしく動き出した。
(原作と違うわね……)
私は、会議室の椅子に座ったまま、少し考え事をしていた。
本来、この話の顛末は、この会議を終え半日後くらいに、ジャッジメントが狙われていることを白井黒子が気付き、初春さんに連絡をして……っていう内容だったはず。
先にジャッジメントたちが狙われているという事実を知ってしまうと、その方向へ話は進まなくなってしまう。
自分が手を出さなくとも、変わっていくストーリー。
なんとももどかしい。やはり原作を大事にしたいという思いが強い私にとって、この流れはあんまり望んでいない。
すると、そんな心配事など一気に吹っ飛ぶことが起こった。
「重力震源を感知しました!」
会議室に、一本の緊急連絡が届いた。グラビトンによる爆発が起こる際に発生する、重力が圧縮するポイントが感知されたというのだ。
(原作より、早い!?)
そして私がアニメで見たことがある、セブンスミストというデパートが画面に映し出された。
「……初春!? 初春!?」
併せて、白井さんが大きな声で通信機に呼び掛けていた。
「どうしました!?」
皆本君が白井さんに声をかけた。
「初春が、重力元の現場に近いから避難誘導を始めると言って……まだ、ジャッジメントが狙われていることが伝わってないんですの!」
「……これはまずいぞ。特務エスパーも、本作戦に参加します。意義はありませんね!?」
皆本君が、会議に来ているアンチスキルとジャッジメント全員に向かって言質を取った。だれも反対する人はいなかった。
(なんか話がごちゃごちゃしてきたけど、結末はあまり変わらなそうだ)
そんな事を思いながら、私も出動の準備──といっても、椅子から立ちがるだけだが──をした。
「皆本君、私も一緒に──」
しかし、ここで私の通信機が鳴り始めた。先ほど一斉に送信された緊急連絡とは異なる、一般回線による、いわゆる電話だ。
「一体誰? こんな時に!」
ちょっとタイミングが悪い連絡に少し機嫌を損ねながら、発信源の名前を見た。変な奴だったら怒鳴り散らかしてやる。
「──えっ」
通信機に表示された名前は……『鹿目まどか』。
確か……彼女には何かのときに、名刺を渡していたことを思い出した。
夜にお話しをするような特段な仲ではないため、連絡を寄こしたということは、何かよっぽどこのことが有ったのだろう。
私は、会議室の雑音が入らないよう、壁に向かって通信機を取った。
「あ、イオナさん! 鹿目です、鹿目まどかです!」
電話先の鹿目まどかは、酷く焦っていた。
「どうしたの、落ち着いてお話しして」
私は、彼女をあまり刺激しないよう、極力優しく語り掛けた。だが、次の彼女の言葉に、今度は私が取り乱しそうになるのだった。
「学園都市で、グリーフシードを見つけて……私、マミさんの連絡先を聞いてなくて……」
「おちついて、場所はどこ?」
「病院なんです。さやかちゃんが見張っているから、マミさんとイオナさんに連絡をって……」
―続く―