夜の病院に煌々と光る『集中治療室』の表示。
「ここは最先端の技術があつまる場所だもの、大丈夫よ」
「そうですね……」
「……」
私と、鹿目まどか、そして美樹さやかが、病院の待合室で椅子に座っていた。
いろいろと面倒なことになった、というのが、実のところ本音だ。
なぜなら、巴マミちゃんを緊急入院させたことで、私の素性が病院に知られ、そして、それは……『上』に伝達される。
「ねえ、美樹さん、鹿目さん、二人は帰ったほうがいいわ、夜も遅いし」
「……でも、マミさんが」
「集中治療室に入っていると、面談もできないでしょうし。悔しいけど、ここにいても何もできないわ」
「……くっ!」
悔しそうな二人を宥めていると、彼がやってきた。
皆本光一君だ。
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まどかちゃんとさやかちゃんをその後説得し、二人を帰宅させた。
夜の病院の待合室には、私と、皆本君、そして、巴マミの付き人ってことで、キュゥべえが同席した。
「皆本君、ごめん。グラビトン事件……」
「そちらは無事解決しました、神之原一尉」
「……ごめん」
「謝らないでください。そちらのほうが、特殊な異能案件だったと伺ってます」
これについては、反省文も始末書も辞さない。魔法少女案件を伝えず私たちが行動を起こした結果であるのだから。
「本件は改めて、BABELへの報告をお願いできますか」
「わかったわ、魔法少女については、わかる範囲で全て伝える……いいよね、キュゥべえ」
『僕としては不本意だけど、ここまで部外者に干渉されると仕方ないね』
念話で話し掛ける謎の生物に、皆本君が驚く……かと思ったが、桃太郎然り、ユーノ君然りで、皆本君は『喋るナマモノ』への耐性がついてきたようだ。
「君が、こっちの魔法少女のパートナーだね……なんの生き物だ?」
「……そういわれると、なんだろ、コイツ」
私が心配した、変にねじ曲がった悪い方向には、事は進まなそう。
巴マミさんは、生きてる。
意識不明の重体だけど、原作とは全然違う結末を、私が干渉することで持ってこれた。
そしてさらに、BABELを魔女狩りに巻き込む。そうすれば、さらに原作とは異なる展開になるはず。
ここまで来れば、半分はやけっぱち。
一気に、めちゃくちゃにかき乱してやろうじゃない。全部ひっくり返して、全部の悲劇を防いでやるわ。……ちょっと『不本意だけど』。
「……あの女の掌で、踊らされている気分」
青い髪のパーカー女が、未だ気がかりなのだ。アイツの目的は、どうも、いろいろな
私が、巴マミを助けたことが、奴の目論み通りだったとしたら非常に遺憾である。
「神之原さん、今回、僕がこちらに出向いたのは、また別の案件です」
「別の?」
今回の魔女案件以外に、わざわざここで説明されることなんて。
すると、皆本君がノートパソコンを開き、映し出された画面を私に見せた。どうやら、写真のようだ。
何かの建物が、炎に巻かれ、燃え落ちた写真だ。解像度があまり鮮明でないが、ぼやける絵から見えるオレンジの様相は炎を想起させた。
「BABELの予知課が出力した写真です。発生場所は、どうやら学園都市内のどこか、のようです」
「……これを私に見せるってことは。そういうことね」
「はい、この写真の解像度は、これが限界でした。予知課の力が干渉できない案件、つまり」
「異能案件、が関係するってわけか」
しかし、今回は今までとは少し異なる。予知課は、異能案件は『予知できない』のだが、今回ばかりは、惨事が起こることまでは予知できている。
そんなことを疑問に思っていたが、しかし、次に皆本君が見せた写真によって、そんな問題など頭の隅に追いやられた。
「こちらを見てください」
何枚かの写真だ。これも同じく、予知課の念写であるが、ここは……同じく学園都市だろうか?
ビルが建ち並ぶ場所、おそらく商業施設。周りの建物の感じから、写真の中央は、大通りの交差点と推察される。……なぜ場所がはっきりしないのか。
注目すべきは、その『被害の大きさ』だった。
道路の交差点……と思われる場所を中心に、巨大なクレーターができていた。それは爆発によるものというより、その場所が丸々『抉られたような』感じだ。
周囲の建物は多くが崩壊し、地面のアスファルトはひび割れ崩れていた。
「これも……?!」
「異能案件と思われます、やはりこちらも、明確な日時が判明しません」
「この写真通りのことが起こったら、大災害よ」
「はい。これらの事実は学園都市の上層部へ伝達済みです。併せて明日以降、BABELの一部部隊が入り込みます」
とうとう、本格的にBABELが学園都市に干渉し始めた。
『予知できるも、いつ起こるかわからない案件』に対して、私たちは備えることになってしまった。休日にゆっくり学園都市のショッピングモールで散策でも……などと思っていたのだが、それらの予定は全キャンセルだわ。
しかし、予知課が見せた写真。とくに2枚目以降は見覚えがない。
これは、私が
そして、青髪パーカー女の思惑通りになってしまったのか。
不満と不安は積もるばかりだ。
……桐壺局長も、なんだかんだいって学園都市に来るのかしら。賑やかになるわね。