「ちょっと困ります!」
早朝の病院。
先日の夕方に緊急搬送され、集中治療室に担ぎ込まれた女子校生の部屋の前では、看護婦と男性医師が、その部屋に入ろうとしていた女性を遮っていた。
「面会謝絶です! 勝手にこんなことされたら、患者の命に……」
「患者の移動許可は貰っています。電子ファイルで送付しますし……」
女性は手元のバインダを開き、書類を一式纏めて医師に渡した。
「こちら、紙の書類になります。手書きサインは偽装はできませんから」
医師は、はぁ、と、規約通りの書面に目を通し、それが間違いないことを確認した。
「しかし、急すぎます。昨日の今日で意識不明の重体ですし」
書面上では理解できているが、患者の状態を考えると、医師は移動に反対であった。しかし、その願いは女性によって断たれた。
「彼女は少々特殊な状態にあります。ですがご安心を。我々が誠心誠意をもって、的確な治療を施します」
医師の反対を他所に、彼女が連れてきた同じ制服の男性たちが、ICUの扉を開けて患者の移送手配を始めた。
患者……『巴マミ』には酸素マスクのほか様々な計器が繋げられていたが、男たちはそれらを手際よく解いていく。
(……長かったわ。やっと、やっと『生きた
昨晩、その女のもとに『タレコミ』があった。
「君は、『魔法』を知りたいんだろ? だとしたら、それに最適な『魔法少女』が、ちょうど入院しているよ」
最初は疑心暗鬼だったが、その女が発見された状況や、外の機関『BABEL』の関係者との繋がりから、その情報が非常に精度が高く、正しい情報である可能性がでてきた。
そして、ICUで彼女の状況を実際にみたことで、それは核心に変わった、
巴マミは、死んでいるのに生きている状態に見えた。
(超能力ではない、魔法……『魔法少女』の能力。解析が捗るわ)
ストレッチャーに乗せ換えられ、新たに別の機材を繋げられる巴マミ。呼吸は安定してるように見えた。
そのままそのストレッチャーは、ゆっくりと病室を出て、巴マミは運ばれていった。
搬送先には大きな緊急車両が止まっていた。
車の側面には部隊名が記載されていた。MAR……先進状況救助隊(Multi Active Rescue)。
女性は、職員が巴マミを搬送しようとしている光景を、入り口から眺めていた。時折、ずれたメガネの位置を戻す所作に併せて、口角が上がっていたことには、誰も気づかなかった。
そして、残された医師と看護師は、ただただ呆然と、その場を後にする女性の後姿を見送るしかできなかった。
医師が持つ書類には、その女性の名前……『テレスティーナ=木原』の名前がサインされていた。
【次回予告】
未明の深夜に、それは起こった。
燃える図書館。地下から出てきた、空を自由に飛ぶ偉人。狙うは、読子がもつ稀覯本。
ザ・チルドレンとジャッジメントが対応するが、街中に逃げられ、被害は拡大する。
……って時に、そのビル群ではジュエルシードをめぐって、なのはvsフェイトのバトルが勃発中!
戦いに巻き込まれまいと逃げる人々。……ユーノ君の結界が間に合ってない!?
逃げ遅れた人たちの中には、美墨なぎさに、雪城ほのか!?
それに、鹿目まどか、美樹さやかちゃんまで!?
【読子リードマン】
「本を……返してください!」
【御坂美琴】
「あの電撃……! 平賀源内!」
【???】
『役者はそろった! さあ! 混ざれ混ざれ!!』
次回、
「Certain book's fairytale -とある書物の