転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第9話】-とある書物の空想逸話(フェアリーテイル)-【その1】

 学園都市の医療技術は、外のそれを凌駕する。

 そんな技術をもってしても、巴マミは集中治療室から出ることが叶わないらしい。

 未だに、面会謝絶の対応をとられ、私は結果的に門前払いとなってしまった。

 

 マミさんはあの事件以降、誰も彼女の様子をうかがえていない。適当に歩いていた医者に聞いてみたんだけど、懸命に処置してます、って当たり障りのない返答しか帰ってこなかった。

 

 私は病院を後にした。時間は昼をとうに過ぎ、太陽は傾き始めていた。初夏の日差しは日に日に強くなっていき、本格的な夏を迎えようとしていた。

 

 今日は夕方に、鹿目まどかと美樹さやかもお見舞いに来てくれるって言ってた。マミさんの件、夕方には好転するかもしれないし、特に伝えずにいよう。

 それに……美樹さやかは、マミさんの他に、もう一人のほうのお見舞いもあるでしょうし。

 

 うん、妬けるね。

 

「命短し、恋せよ乙女ってね」

 

 さーて、折角の非番だし。

 街のほうに行って、甘いクレープでも食べて帰ろ。

 夕飯はピザ頼んで、貯め撮りしてたアニメでも鑑賞しましょうかしら。

 

 なんて、したたかな幸せを望みながら岐路につこうとバス停に向かったのだが。

 それは、BABELの通信機から鳴り響く、緊急連絡によって打ち砕かれた。

 

 

 ****************

 

 

 既に炎は消え、煙が燻ぶっている程度だった。遠くからでも煙は見えたが、それ以上に、壁や本を焼いた焦げ臭さが辺りを覆っていた。

 

 学園の図書館が、何者かに焼き討ちされたのだという。

 運よく休館日だったこともあり、人的被害は報告されていない。

 

 問題なのは、火災の原因にあった。異能案件担当の私に直々に連絡があったということは、『その可能性』が十分あり得るためだろう。

 

 現場に急行するも、しかし、大きな問題が発生した。

 他の組織による規制線が張られていたのだ。最初は警備員(アンチスキル)かと思ったが、どうも様相が違う。周囲を取り囲む人間は、日本人ではなかった。

 

(……米国のエージェント? どういうこと?)

 

 こちらのもつ、BABELの身分証を見せてもダメだった。どうにもこうにも立ちいかなくなったので、皆本君に連絡を入れてみた。

 

『……ホワイトハウス襲撃犯が、関与している可能性があるのだそうです』

「なるほどね。自分の国の威厳をかけてるってところか」

『僕たちも、そちらに急行しています』

「よろしくね」

 

 通信を切った私は、現場に入れない以上、その場で呆けるしかなかった。

 

 ……ん? 

 その規制線に無理やり入り込もうとしては、米国のエージェントに阻止されている人がいた。

 私は彼女をよく知っている。『図書館の火災』というワードから、彼女の存在を思い浮かばなかったのは、私のうっかりミスでもあろう。

 

「……なにしてんだ読子さん」

 

 ****************

 

 

 焼け落ちた図書館の現場検証に入れたのは、白く眩しかった太陽が赤い炎のような夕日に変わっていたころだった。

 

 皆本君たちご一行(ザ・チルドレン)と合流した私は、再度、規制線を作っている所に向かった。

 私は、何度も焼けた図書館に違法進入を試みていた読子さんを説得し、BABELのメンバーとして正規に入り込むことを提案していた。

 彼女はしばらく口籠ったが、しかし、私の説得に応じてくれた。

 

「局長もこちらに向かっているとのことです」

「局長が!?」

 皆本君の開口一番に、つい私は声を荒げてしまった。

 学園都市とBABELでは、超能力者(エスパー)への扱いは根本的に異なる。超能力の個性を伸ばす英才教育か、無能力者(ノーマル)と分け隔てなく仲良く暮らすか。

 

 そんなBABELの局長を、学園内に招き入れることをするなんて。

 まあ、ポジティブに捕らえれば、学園都市側との信頼が築けたということとも考えられるが……そうはいかないだろう。何か、裏があるとみていい。

 

 そんな考えを巡らせながら、いざ規制線に近づいてみると……すでに、米国のエージェントは捌けていた。

 代わりに、アンチスキルの面々が現場の検証を行っていたのだった。

「なんか肩透かし食らった気分……ん?」

 

 その時、私たちの目の前に、男が立ちふさがった。体格は横にも縦にも大きく、がっちりとしていた。顔つきは白人特有の彫りの深さ。しかし仏頂面な強面で、不機嫌を前面に表していた。

 

「あー! ドレイクさん!」

 すると読子さんが彼に呼びかけた。しかし名前を呼ばれた当の本人は、読子さんを気にかけず、むしろ私たちを見ていた。

 いや、見ているのは、ザ・チルドレンたちか。

 

「……ん、なんだよオッサン!」

 その視線にいち早く気付いた明石薫が、少しケンカ腰に彼──ドレイクに食って掛かった。

 すると彼は目線を逸らし、ぽつりと呟いた。

 

「……こんな子供も、現場に出すのか」

 誰に対しての悪態であったかは明確ではないが、その後彼は、私と皆本君に目線を流した。

 皆本君はそれに気づき、一歩前に出て手を差し出した。

 

「お話しは伺っています、ドレイク=アンダーソン。BABELの皆本光一です」

 しかし、ドレイクは手を差し出すことなく、

 

「……オレは今朝、おみくじで大吉を引いた。だがすぐに、BABELのサポートに呼び出されたんだ。大凶だとどうなることやら……」

 ぼそりと、またしても不満を漏らしていた。

 

「……は?」

「こっちだ。ザ・チルドレンとザ・ペーパーも中に入って……他の迷惑にならないようにしていてくれ」

 彼はゆっくり踵を返し、火事の現場に向かっていった。

 

「……だいぶ、お疲れというか、ご立腹? のようね」

「そう……ですね」

 ドレイクの、いうなれば大人げない態度の中に、心労と疲れを読みとった私たちは、それ以上ことを述べることはできなかった。

 

「は?! いきなり何なのさあの態度!」

「せや! うちらを子ども扱いしおって!」

 そうはいかなかったのは、薫と葵だった。彼女らは、ドレイクの所作ひとつひとつに非常に神経を逆なでされていた。

 あんたらまだ子供でしょうに。と思う私であったが、彼女らの怒りに隠れて、紫穂は既に、冷静に現場を確認していた。

 

「紫穂! あんな言われて悔しくないのかよ!」

「私たちが子供なのは事実よ。だからこそ、大人をぎゃふんといわせるには、実力を見せつけるのが一番よ」

 おおう、想定以上に紫穂ちゃんがヤル気だ。いつもとなんというか、雰囲気が異なるというか、『負けん気』オーラが漂っている。

 

「紫穂、大丈夫か? 何か気負っていないか?」

 その異変に気付いた皆本君が、すかさず彼女のメンタルにサポートに入った。

「……大丈夫。言葉の通りよ。それに、ドレイクって人、エスパーを嫌っているって感じじゃなく、本気で子供の私たちを心配していたのが見えたの。悪い人じゃないわ」

 

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