転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第9話】-とある書物の空想逸話(フェアリーテイル)-【その2】

「あら、BABELの皆さんではありませんか」

「こんにちは、白井さん」

 

 現場の主権が既にアンチスキルに移っていた時点で、彼女たちジャッジメントがいることは想定できていた。

 彼女たちと私たちBABELの信頼は、先の『普通の人々(スキルアウト)事件』と『グラビトン事件』を介して絆は深まったようだ(私は後半には居なかったが)。特に、紫穂ちゃんのサイコメトリ能力は、多くの人達に認知されている。

 既に彼女は、早速壁に手をかざし、サイコメトリーを実行していた。

 

「……はっきり見えたわ。ふざけたちょんまげ姿に、変な箱を背負った男」

「平賀源内、か」

「ヒラガゲンナイ……ホワイトハウス襲撃犯の偉人か」

「本の焼け方や、コンクリの壁の特徴的な爛れ方……。(わたくし)、何度も見たことがありますの。お姉さまと同じ、高電圧による焼け方ですわ」

 

 紫穂ちゃんのサイコメトリの答え合わせするかのように、皆本君、ドレイクさん、そして、白井さんが集まって会話している。

 

「ちぇっ、つまんねーの」

「現場検証となると、紫穂の独壇場やな」

「薫ちゃん、葵ちゃん。私たちは奥のほうを調べてみましょ。瓦礫をどけてほしいのよ」

 

 ヒマしてそうな二人に声をかけ、私たちが出来そうな仕事に誘った。ザ・チルドレンたちに『ヒマ』を与えると……何をしでかすか判ったものではない。

 

「ん? 読子はんは? どこいったん?」

「あれ?」

 そういえば、先ほどから読子=リードマンの姿が見えない。

 

「さっきまで、焼けた本を残念そうに眺めていたけど……?」

「あ! 葵! イオナねーちゃん!」

 すると、明石薫が何かを見つけたようだ。焼けこげた本棚に隠されたように、人一人が通れる隙間が開いていた。

 

「奥に続いてるわね」

「これ、隠し部屋ってやつじゃないか!?」

 どうやら、地下に続いているようだ。

 

「貴重な本、それこそ、稀覯本なんかを置いているかもね。皆本君たちを呼んで……っておーい!!」

 私の意見など何のその。

 新たに見つけた秘密の部屋の入り口を目の前に、好奇心が先行してしまうのは小学生の(さが)か。

 私が気付いた時には、狭い隙間に二人がまるで吸い込まれるように、いつの間にか入り込んでいってしまっていた。

 

「んもう!」

 二人が勝手に動くこと(イコール)トラブル発生の火種になりかねないので、私もすぐに後を追ったのだった……。

 

 

 

 

 外は火事で本棚が崩れ、壁が歪んでいたが、稀覯本が保管されている地下の書庫は、被害を被ることなく殆ど無事であった。

 そんな書庫に入り込むと、古本特有の黴臭さが鼻についた。

 

「そうか、本来は空調もしっかりしているはずだけど、火災で電気が死んで動いてないのか」

 そんな事を思いながら、奥へ進む。すると、彼女がいた。

 

「はあ~っ……、はあああああ~っ……」

 法悦の表情を浮かべ、蔵書に囲まれながら、まるでバレエダンサーのように舞っていた。

 

「なんだあれ」

「……うーん、なんだろうね」

 薫ちゃんのド直球な感想に対して、私も別段フォローをすることが出来なかった。

 

 そんな、読子=リードマンは私たちの存在などお構いなしに、さらに奥へと進んでいった。本を眺めるその眼差しは、純粋な少女のそれそのものであった。

 

「ちょっと、読子はん!」

「流石に止めよう……ザ・ペーパー! 任務中よ!」

 結果的に私たちは、彼女についていく格好となった。

 

「イオナねーちゃん、あの人本当に、英国のエージェントなのか?」

「まあ、腕は確かなのよ、腕は……ん?」

 私はその時に、違和感に気付いた。

 

 風だ。

 

 蔵書庫に、僅かに風を感じたのだ。

 空調によるものかとも一瞬頭をよぎったが、いやそれは違う。停電で空調は止まっているはずだ。

 

 刹那、その風は暴風と化し、私たちを襲った。

 

「うわっ! なんだっ!」

「か、風っ!?」

 強風はあたりの本を吹き飛ばし、ばらけたページが周囲に舞った。

 

 そして風かと思った『それ』は、重量を持ち、私たちの横を一気に抜けていった。

 強烈な空圧が私たちを押し退け、壁に吹き飛ばされた。

 

「本は貰った!」

 響く男の声。『それ』の正体は、超小型の機械のグライダーを纏った、偉人軍団が一人。

 

(滑空王、オットー=リリエンタール!!)

 

 背中を本棚にしこたま強く打ち付けてしまい、私は一瞬、息が出来なくなっていた。

 

「ああっ! 本がっ!」

 オットー=リリエンタールの狙いは、読子さんが持つ稀覯本だ。一瞬の隙をついて、奴は読子さんが抱えていた本を掠め取っていた。

 

「か、返してください! 私の本!!」

(……まだ……私の所有物よ! 領収書切ってない!)

 

 そして、薫ちゃんと葵ちゃんも同じく吹き飛ばされた。しかし彼女たちは、崩れた本がクッションになったみたいで、すぐに立ち上がっていた。だが、現状が理解できていないようだった。

 

 蔵書庫の入り口付近に飛ばされた、薫ちゃん。

「邪魔だ!」

 そこに向かって、オットー=リリエンタールが突撃してきた。おそらく外に出ようとしているのだろう。

 

「……薫ちゃん! そいつは偉人だ!」

 私は無理やりに声を絞り出し、持ちうる情報を伝えた。すると彼女は瞬間的にそれを理解してくれた。

 

「にゃろ! ここは通すもんか!」

 手を構え、薫はサイコキネシスによる衝撃波を連続して放った。

 しかし、

 

「風が衝撃波に当たるものか!!」

 オットー=リリエンタールは、狭い部屋の中であっても木の葉のようにヒラヒラと揺れ動き、薫ちゃんの衝撃波を避けていた。

 

(マズイ! このままだと逃げられる!)

 そう思った瞬間、薫ちゃんは次の手に出ていた。しかし、それは正直、悪手だった。

 

「ならこれで! サイキックぅ……!」

「な……おバカ!」

 

 小ぶりな衝撃波が避けられる、なら、広範囲の攻撃なら……。

 薫ちゃんなりの考えなのだろう。けど、それをやるには部屋が狭すぎる。

 

「……トルネード!!」

「蔵書庫が、崩れ……!!」

 

 静止するのが、ちょっと遅かった。

 

 激しい振動とともに、蔵書庫が一瞬のうちに吹き飛んだ。

 

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