「……どっひゃああああああっ!!」
ド派手にふっ飛ばされた地下書庫。
爆発はまるで噴火のごとく。地上にも届いた。
私はそうね、言う慣れば『高橋留○子飛び』状態で地上に飛び出したわ。
「……こんのっ!」
我ながら情けない格好であったが、しかし、油断などできない。ギャグ漫画よろしく地面に人型の穴は開くこと無く。私は体制を立て直して、地面に着地した。
薫ちゃんと葵ちゃん、それに読子さんは、無事かしら。
派手に舞う土埃。
地上には、バベルと
その刹那。
そこから飛び出してきたのは……小型の滑空マシンだ。
「はーっはっはっはっは!」
なんとも耳障りな高笑い。
「な、なんですのっ!」
白井黒子さんが、突然のことに一瞬呆気にとられた。
「爆発!? みなさん、一旦退避を……」
非常事態を察した皆本くんが、全員に退避の音頭を取った。
「みんなっ! 『
私は声を張り、この場全員の人物に警告を発した。
「……ちっ」
私の言葉にいち早く反応したのは、ドレイクさんだ。
彼は素早く、携えていた機銃を構え、ふわりと浮くその偉人──オットー・リリエンタールの
「きゃあああっ!! い、いきなり発砲だなんて! 非常識すぎますわ!」
近くに立っていた黒子さんが、マシンガンの音に驚いて耳をふさいでいた。
「……常識が通じない相手だ」
ドレイクさんが放った銃撃は、しかし、そのグライダーには全く当たらなかった。この葉が風に舞う如く、ゆらゆらとしかし機敏に、弾丸はすべて避けられた。
「はっ! 風が弾丸に当たるものかっ!」
そのグライダーから声がした。オットーの挑発だろう。さあ、もっと撃ってこいと言わんばかりに、焼けた図書館の上空を旋回していた。
さすが、『偉人』だ。通常武器では一筋縄では行かない。
……だけどさ、『この世界』では、あんたらの世界と違って、偉人並みの『異能力者』は山ほどいる。それこそ、いま眼科に据えている『私』なんかも……ねっ!
私は手袋で火種を作り出し、それを一気に燃え上がらせ……。
「……ドレイクんさああああああああん! 本を奪われましたっ」
それをぶっ放そうとした瞬間、爆発があった土埃から、彼女が目の前に飛び出してきた。
見事に砂にまみれていた。黒髪が土まみれた。
おおいっ! タイミングよっ!
「もう見えている、ザ・ペーパー」
半分泣きそうな読子さんのほうは全く向かず、ドレイクは空を舞う偉人から目をそらさなかった。
「こんおおおおおおおおおっ!」
次いで、読子さんが飛びだしてきたところから現れたのは、薫ちゃんと葵ちゃん。こちらも違わず土埃まみれ。
「逃がすもんかっ! サイキックぅ……トルネードっ!」
薫ちゃんが両手から再度、衝撃波が放たれた。しかし、オットーの乗る機械には当たらなかった。
ふわふわと、しかし機敏に動くオットー・リリエンタールを捉えるには至らなかったのだ。
「はっはっは! 風は滑空王の味方だ!」
私達をバカにするかのごとく、空中を素早く動き回る。そうね、いうなれば『五月の蠅』。
「くっ! 早すぎて捉えられませんわ!」
手に金属の矢を握ったまま、白井黒子が嘆いていた。
「ほな、これでどうや!」
すると、葵ちゃんが近場に転がっていた岩を転移させた。ただ、数は一個二個ではない。
大量の岩が、滑空王に襲いかかる……しかし、奴には当たらなかった。
なんてやつ。僅かな空気の流れを読んでいるのか!?
私も何か迎撃をしようと、
「まずい、逃げられる!」
私は、オットーの機械から異常な熱源を感知した。ブーストみたいのが作動するのだろうか。
すると、私の言葉にいち早く対応してくれたのが、皆本くん。
「薫っ! 物理攻撃は避けられる! 重力波だっ!」
「……オッケー、皆本っ! サイキックぅグラビティープレ……!」
なるほど、物理的な攻撃を読まれてしまう。なら、風が鑑賞しない重力攻撃ならっ!
多分、皆本くんの選択は正しかったのだろう……横から『邪魔』が入らなければ。
「おわっ!!」
「な、んだあっ!」
「きゃああっ!」
突然、巨大な氷の柱が生えてきた。と、同時に、凍てつく寒さが肌を刺す。
この能力には、嫌というほど覚えがあった。
「……あのパーカー女かっ!!」
私があたりを見渡すと、ソイツはいた。
両手をかざして、不敵な笑みを浮かべこちらに向いていた。
「オットー・リリエンタール、遊び過ぎだぞ」
「ふん!!」
すると、オットーのマシンから何か「ニョキ」と生えた。私が感知した熱源は、その筒状のものからであった。
(いけない! ブースターだ!)
その一瞬に、私は能力発現させた。
そして本来、ブースターによって一気に加速するはずだったエンジンは不発に終わり、停止した……『片方だけ』だが。
「だめ! 片方しか止められないっ!」
オットーは、さすがドイツの滑空王と呼ばれただけある。エンジンが片側だけでも、ブースターに点火しここからの脱出を試みたのだ。
(なら、これでっ!)
ブースターが点火し、奴はこの場から飛び出さんとした。そこを私は、咄嗟に、ブースターから上がる僅かな炎を『伸ばして掴んだ』。
私は炎を固くさせた。そのまま、炎を辿ってエンジン部まで固めるつもりだったんだけど……。
「あ、やべ」
紐みたいに伸ばし、駆動部のお尻部分につながる炎。私は、それに手が絡まった状態のまま、空に放り出された。能力が駆動部に干渉される前に、奴は飛び立ったのだ。
そして、私はさらに想定外のことを受ける。
「わたしの本!! 返してくださいっ!!!!!」
がしっ! と、私の足にしがみついた人物がいたのだ。
読子=リードマンの、本への執着の異様さを忘れていたわ。
(……むぐううううう! 肩がっ! 死ぬっ!!)
私は……私達は、オットーの滑空機に一本の紐で繋がれた状態で、高速移動する空に飛び立つことになった。
両腕、はずれる。死ぬ。
「何だ貴様らっ! ええい! 何処かに叩きつけてやる」
まずい! 流石に感づかれた。
そのままオットーは、超加速で移動した。
その場所は……学園都市の中央、商業施設の近く。
ビル群が立ち並び、その他に大きな建物も多い。
そうそう。例えば、発電用の風車とか。
その風車が、まさに眼下に迫ってきた。オットーは、ぶら下がっているだけの私達を、その風車に叩きつけるつもりだろう。
(万事休す!!)
両腕は塞がり、しかも足元には読子さんがしがみついている。
火種を使って炎の壁を作ろうにも、それができない構図。
なにより早すぎて、そんなこと構える余裕すら無い。
そして私達は、風車が回る中心に叩きつけられた。