激しい激突音が脳内に響く。
体が強く壁に当たり、即死級の衝撃を受けることになる。
はずだったが。
その衝突の寸前。私達は、『紙の球体』に包まれた。それは固く、風車の中央に叩きつけられるも、壊れたのは風車側だった。
「た……助かった」
読子さんの能力だ。彼女はあの瞬間、紙で私達を包み、守ってくれた。
紙でできた壁はほどなく、サラサラと崩れ、散らばった。
私達は、折れた風車の上に立っていた。命綱なしで立つには少々冷や汗ものであるが、正直、そんなこと言ってられない。
「くっそ!」
やつに逃げられたことも悔しかったが、いま私達の眼下では大騒ぎである。
なんせ、風車が一本折れて落下したのだから。
「一般の人、巻き込まれてないかしら」
「私の本〜〜(泣」
……まあ、この人は、そっちよね。
しかし、遠目で見てみると、まだ奴は学園都市の上空を旋回していた。
本を持ってすぐ逃げられるとばかり思っていたが、どうも、何かを待っているようだ。
フード女の命令かしら。
すると、「バババババ」と、風を切る音。どうやら、自衛隊か何かのヘリが応戦にきたらしい。
「……えええええっ!!」
いきなり彼ら、機関銃をぶっ放してる! ちょっとちょっと、市街地よここ!?
しかも、明らかに周りの建物を巻き込んでいるじゃない!
なんとか止めたいけど。けど、そんなことこの位置では不可能だ。
……ああんもう! しかも小回りがきくオットーに翻弄されて、ただただ周囲に被害を被っているだけじゃない!
くう、飛翔系の能力を持っている人がほしい!
という私の粗末な願いは、叶えられた。
「ディバイン……バスターっ!」
私の視角から桃色の光が放たれた。しかし、初撃はオットーに紙一重で避けられてしまう。
『イオナさん!』
「なのはちゃん! ……そうか。今日もあなた
「ふええええっ! なんですかこれ、声が頭に……」
なのはちゃんのテレパスだ。私の頭……と、ついでに読子さんの頭に響いてきた。
同時に、私は、ビル群を縫うように空を飛んでいたなのはちゃんを視認した。
『いきなり攻撃が始まっちゃって……私、なんとかしてみます!』
「だめ! そいつは大振りな攻撃は当たらない!」
私の警告が届いたのかは解らなかったが、なのはちゃんとオットー・リリエンタールが空中戦をおっぱじめた。
しかし、彼女の動きはぎこちなく、結果、直ぐにオットーに取り付かれた。
やはり、『人間』を相手取れるほど、なのはちゃんも覚悟が出来ていない。
『おのれ魔女め! そんな飛び方、許せん!』
『きゃあああっ!!』
なのはちゃんのテレパスに乗って、オットーの声も脳内に響いた。
あいつ! 子供だろうが、お構いなしかっ!
「あぶないっ!」
ここで叫んでも無意味なことはわかっていたが、叫ばずにはいられなかった。
だが、それは杞憂に終わった。
「サイキックうう! ブイの字切りっ!!」
Vの字型の衝撃波が、オットーを襲った。彼はそれにいち早く反応し、ひらりと避けられてしまったが、しかしそれによって、なのはちゃんが開放された。
……BABELのヘリだ! 皆本くんたちが来てくれた。
そしてそのヘリに追従して、米国のエージェントのヘリ軍も向かってきていた……いやいや、飛んでる機数よ。
一個師団分くらい来てないか? 夜の空に、ヘリのライトが眩しい。
「大丈夫ですか!」
BABELのヘリが私達に近づいた。扉から、
「皆本くん、私達の救助は後で大丈夫! それより、民間人の退避を!」
「……はい、判りました!」
そういって、BABELのヘリはいったん私達から離れ、下方に降りていった。
そのとき、なんか頭に、「情景」が浮かんだ。
何かしら違和感。
数多の米軍のヘリが向かってくる。そのとき、『何が起こったか』私は知っているはず。
……! まずい!
既に時は遅かった。
米軍ヘリが向かってきているが、途中の建物の上に、アイツがいた。
平賀源内だ。
激しい、紫色の雷鳴が轟いた。
周囲の電気が、平賀源内に吸収されているのだ。辺り一帯が停電になるとともに、轟音に合わせて米国のヘリが爆発していった。
またたく間に全て轟沈したのがわかった。
そして、BABELのヘリもそれは例外でなかった。
……けど、流石は『彼女たち』。そういうことには、慣れている。
『僕達は大丈夫です!』
通信機から、彼女たちは無事の連絡が入った。私は胸をなでおろした。
「今のは多分、平賀源内ね」
安否の通信のついでに、私の意見を伝えた。
『ですね……くそっ! 電気がないと、偉人が暗闇に紛れて逃げてしまう』
そう、やつのせいで町中の電気が死んでいる。そのため、今現在、オットーの位置も、なにもわからない。
かろうじて、未だ「バリバリ」と電気を帯びたサムライ……平賀源内が、遠くで紫色に光っている。
「……む??」
すると、その光に動きがあった。
いや、『動かされた』が正しい表現だ。
やつが立っていた場所に、電撃が浴びせられた。それは青白く、彼の電撃とは少し性質が異なっているように思えた。
私はその光り方を知っている。
常盤台の
御坂美琴と、平賀源内の交戦が始まったのだった。