『た、た、た、大変です!!』
脳内に響く男の子の声。
「ユーノくん、大変なのはわかってる!!」
遠くで、平賀源内と御坂美琴が交戦。
停電した街を、オットー・リリエンタールが我が物顔で旋回。
異常事態なのは自明である。
『いえ! そうではなく!』
「あ、そうだわ。なのはちゃん無事?」
ユーノくんの訴えを退けるかのように、なのはちゃんの安否を気遣う私。
しかし、その後のユーノくんの返答を聞いて、それは間違いであったことを反省した。
『ジュエルシードです!! ジュエルシードの反応がありました!!』
「……は??」
こんなときにっ!
寄りにもよってこんな時に!!
「マジ? ちょっとユーノくん、詳細を……」
『見つけたわよ、電気サムライ!!』
ん?
なにか別の声が混線してきたような……?
その刹那、まるで耳元で落雷が起こったような音が響いた。
それは実際に近くで起こったわけではない、言う慣れば、耳に付けたイヤホンから別の場所の雷を音を拾って鳴らしたような。そんな状況。
そう、いま、何故かユーノくんの
『小童が』
この声は、平賀源内。
いろんな音がガンガン聞こえてしまい、つい耳を覆ってしまう。もちろんテレパスなので、無意味では有るが。
どうやら読子さんも同じ状況らしい。耳を塞ぎ渋い顔をしている。
(くっそ! ユーノくんから、ジュエルシードの詳しい状況を確認したいのに!!)
しかしそれは、人づてに聞くこと無く。自分の目で確認することに至る。
「うそ、でしょ!?」
いま、ジュエルシードが視認できた。いや、正確には見えていない。力の圧と、流れが見えたのだ。
その力の流れは、魔力の流れだろうか。それとも、超能力を扱う際に発生すると言われる、AIM拡散力場か。
「……! フェイトちゃん!」
溢れ流れる力の流れ。その先に、ジュエルシードがある。そして、その流れの源流を辿れば、発生させている人物が分かる。
その流れの大本には、彼女──フェイト=テスタロッサがいた。
そうか、魔力流を打ち込んで、ジュエルシードを活性化させるとかなんとか、そういうやつかっ!!
『神之原さん! みなさん!』
『ユーノ君?』
『ユーノくんきてたんだ! なのはちゃんは!?』
ユーノくんの声がやっと聞こえた。と同時に、ザ・チルドレンの面々の声も混ざって反響してきた。
どうも、関係者の声が全部まぜこぜになってしまっているようだ。
しかし、逆にこの場では有り難いかも知れない。
「えええ、何ですかぁ?」
一部、困惑してどうにもならない人(読子さん)もいるようだけど……。
『ジュエルシードを確認しました、しかも3つ!』
「……うそでしょ」
嘘など誰がいうものか。
いま、学園都市のど真ん中に、ジュエルシードが存在している。しかも3つ。
1個でも『ヤバい』代物なのに……あまり洒落にならない状態だ。
「ユーノくん! このままでは人的被害が出る! 結界を!」
あの、なのはちゃんたちが戦う時に張る結界をお願いした。街はボロボロになってしまうかも知れないが、人への被害は最低限になる。
『はいっ! 広域結界を張ります……ぐああっ!』
すると、『ごんっ』と頭に響く音と同時に、ユーノくんの叫び声が聞こえた。
「どうしたの!」
『……あーあー。はーい、聞こえる?』
テレパスに乗って聞こえてきたのは、女の声。
──この声は、あのパーカー氷女!
一連の流れから、ユーノくんが結界を貼る寸前に、女に襲われたことが想像できた。
「ユーノくんに、何をしたっ!!」
『ん? モフモフ揉んでる』
もふもふて……。予想とぜんぜん違う方向の回答をもらって面食らってしまった私に、その女は警告した。
『目の前の惨事、どうにかしないと大変よ』
遠くで鳴る雷とは別に、上空の天候が荒れてきた。どうやらジュエルシードが雨雲を呼んでいるようだ。風が、明らかに強くなってきた。
なんとしても、アレを止めないと。
『私……いきます!』
「なのはちゃん!? ……分かったわ、そっちはお願い!」
そこに飛び出してきたのは、先程オットー・リリエンタールと交戦した、なのはちゃんだった。
ジュエルシードの特徴を考えれば、彼女が適任だ。
それに……。
『もう一度、フェイトちゃんとお話もしたいんですっ!』
ですよね。だからこそ、
「……さてと、じゃあ私達は……」
私は風車の上にたって、周囲を見渡した。
……見えた。いや、『感じた』。あのジェットエンジンが燃える炎の感覚。いま『奴』はビル群の隙間を旋回していた。
『どういうことだ! 話が違うぞ!』
すると、奴の声──オットーリリエンタールが頭に響いたのだ。未だに、ユーノくん起点のテレパスは生きている(混線状態ではあるが)。
どうも、奴は誰かと合流の約束をしていたようだ。その相手が未だに見つからないみたい。
「あら、ファーブルたちに裏切られたんじゃない?」
『な、なんだこの声はっ!!』
私は、意識してやつに声が届くように会話してみた。効果はあったみたいで、オットーの耳に私の声が届いた。
「ちょっと、暴れすぎよ偉人様。貴方を止めます」
テレパスで会話する間も、遠くで鳴る雷の小競り合いが近づいてきていた。
平賀源内と
このままだと、事態はさらに混沌を極める。
「読子さん、まずは偉人を捕まえるわ」
目の前のことを一個ずつ潰していこう。
「チルドレンは、逃げ遅れた人の避難を優先して!」
『はい!』
『任せや!』
『避難終わったら、私たちも手伝うぜ!』
ザ・チルドレンたちにも連絡を入れておいた。言われずとも、皆本くんが率先してくれるとは思ったけどね。
「さ、読子さん、行ける?」
「はい! 私の本! 取り返してみせます!」
ふんす、と気合を入れ直した読子さん。彼女の原動力は、本以外に何かあるのだろうか。そんなことを考えていたら、くすりと、つい笑ってしまった。
「ちなみにその本、まだわたしのですからね」
本の代金25万円の領収書は、まだ私の財布の中だ。