転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第9話】-とある書物の空想逸話(フェアリーテイル)-【その6】

 彼女が引いていたトランクには、大量の紙が入っていた。それを蹴り開けたため、周囲には紙が散乱していた。

 しかし、それらは一点に集まっていく。

 ──『紙を自由に操る能力』

 

 さらに紙は生き物のように動き、うねり、束ね、その形を作り上げていく。

 

 巨大な紙飛行機の出来上がりだ。

 

「……大丈夫かなぁ」

「いけます!」

「……」

 

 フラグなのよねぇ。

 

 でも、私も腹を決めた。がっしりと作り上げた紙飛行機の間に挟まるように、私と読子さんが乗り込む。

 そして、紙飛行機の後ろには、残った紙を筒状に固めてもらった。

 

 そう、私……神之原イオナの炎を操る能力を使って、紙を燃やして推進力にしようと考えたのだ。

 

「それよりイオナさん、本当に、紙飛行機に引火しないんですよね」

「そこは私の能力を信じて頂戴、折り紙付きよ」

 

 3、2、1。……ファイア。

 紙の筒から燃える炎が上がる。筒の部分だけ燃やさずに──そして、紙飛行機が強く前に押し出され、風車の上から飛び立った!! 

 

 ──まっすぐ垂直落下なう。

 

「び、尾翼を忘れてましたぁ」

 ばっ! と、尾翼が形成されると、今度は勢いよく体制が立ち直り、紙飛行機は空を舞った。

 

 離陸成功。

 墜落かと思った。

 

「追いかけるわよ」

 私は炎のイメージを形作り、紙飛行機を加速させる。向かうは、あの蚊トンボ偉人だ。

 

 

 ***

 

 

 捉えた。

 

「……ありえん! 馬鹿な飛び方を! 私は認めない!」

 紙飛行機一つで、自慢のグライダーに追いつかれたのだからそういう感想も漏れるか。

 

「本を返してください!」

 手を伸ばす読子さん。

 

「ブースター、止めさせてもらうわ!」

 奴の機械の機構はわからないけど、『火種』を一気に爆発させるイメージを思い描く。すると、滑空王のブースターから火が出て、機能を停止させた。

 

「甘く見るな! 滑空王たる所以、思い知らせてやるっ!」

 ブースターは機能停止しているのに、グライダーの機構だけで奴はヒラヒラと空を泳いでいた。

 

 ぐるりと、紙飛行機の下に回り込まれる。

「こんなもので空を飛ぶなど……おこがましい! あつかましい!」

 

 取り付かれたっ! 

 すると、奴は紙飛行機の下になにか貼り付けたようだ……あ、爆弾だ。

 

「やば、間に合わない!」

 能力で打消そうにも、咄嗟のことでそちらに気が回らなかった。

 

「えいっ!」

 読子さんがそれに気づいて、その部分の紙だけ外して放り捨てた。

 と同時に、爆弾が爆発。爆風が私達の紙飛行機を襲った。

 

「うわああぁつ!」

「きゃあっ!」

「ふん! 堕ちろ堕ちろ!」

 

 それだけでは飽き足らず、オットーは紙飛行機にかなり近づいてきた。そして。

 

「拳銃!?」

 気がついたときには、銃口は私に向いていた。

「あっ!」

 とっさに機転を聞かせた読子さんは、紙飛行機の一部を崩し、それをオットーに向かって撒いた。まるで紙吹雪みたいかと思ったけど、しかし一枚一枚の紙は硬質化されていた。

 鋭利な刃物が、オットーのグライダーごと切り裂いた。

 

「うおおおっ! ……おのれ魔女がっ! 魔女なら箒で飛べええ!!!」

 

 グライダーからばらまかれる大量の爆弾。一個一個を処理しようと身構えてしまった私は、そこで足を踏み外してしまう。

 

「やばいっ!」

「イオナさんっ!!」

 

 無常にも爆発する爆弾。

 爆風と炎に巻かれる紙飛行機。燃える主翼。

 

 だが。

 読子=リードマンは、紙を球体に組み上げ、爆発から難を逃れていた。

 そのまま、その紙の球体がグライダーに体当たりする。

 

「ぬおおおっ!」

 予想外な動きで戸惑うオットー。

 グライダーにしがみついた読子さんは、オットーの目前にまで迫っていた。

 

「本を……返してくださいっ!」

 こんな状況下でも、まずは本。流石である。

 

(あぶないっ!!)

 

 パンっ!! 

 

 銃声だ。

 オットーは、躊躇無く、迫る読子さんの顔面目掛け拳銃を発砲した。

 

 パンっ! パンっ! 

 

 何発も鳴る銃声。いずれも、読子さんに向かって放たれた。

 

 が。

 

(うそ……すごい)

 すべての弾丸は、読子さんの目の前で止まった。いや、正確には読子さんが手前にかざした『一枚の紙』を隔てて、弾丸は止まっていた。

 

 彼女の能力の真価である。

 薄っぺらな紙が、銃の弾丸を容易に弾くまでに硬質化させる力。

 

「本を……返してください」

 のんぼり呆けの彼女はもういない。

 本の奪還という使命に燃え、彼女の眼光は恐ろしいほど鋭かった。

 

(ただ本の続きが読みたいだけでは、という可能性は否定しないけどね)

 

 これで、オットーが観念するかと思ったが、そうは問屋が降ろさなかった。

 

「死ねぇ! 死ねぇ!」

 半ばヤケクソ気味に、奴はグライダーの羽を動かしバタつかせた。読子さんを振り落とそうとしているのだ。

 

「わあああ! わあああああっ!」

 先程の眼光とは打って変わって、読子さんの情けない悲鳴がこだまする。

 しかし実際、かなり危険な状態だ。

 

 しかたない。

 

「……プランBに変更するわ」

 

 私は、炎のイメージを作り上げた。

 振り落とされたかにみえただろう私は、実は、ずっと付いてきていた。

 読子さんが紐状に紙を束ねて、オットーのグライダーから垂らしていた。私はそれにしがみついていた。

 

 オットーの爆弾で、紙は燃えていたが、私がその炎を制御していた。そして今から行うことは、この炎と、読子さんの紙を使った、『一本釣り』。

 

 私は、紙の上でくすぶる炎を成長させた。垂れ下がる紙からさらに炎が伸び、固まった。

 

 先端をフック形状に硬めた。あとは、ここ学園都市に無数に設置されている『アレ』を使うだけ。

 

(あんたの空は、ここで行き止まりだよ)

 

 フックの先端を投げ込んだ。すると羽に引っかかった。

 そう、引っかかったのは『学園都市名物、発電用風車』の羽根部分。

 

「死ね! 死ね!」

 オットーが暴れる。いまにも読子さんは振り落とされそう! 

 だが、それより先に、オットーの動きが止まった。強く牽引され、彼は大きく旋回することになる。……自身で想定していなかった、遠心力を伴って。

 

「ま、まわるうううう」

「読子さん、飛び降りて!」

「私の、本っ!!」

 

 三者三様の様相が相まみえる。読子さんは、オットーから本を強奪し、グライダーから飛び降りた! 

 

 そしてオットーは、激しく振り回されながら……風車にくくりつけられた紐(炎と紙製)から逃れられること無く。風車に巻き取られ撃墜した。

 

 どおおおおぉん! と、ド派手にグライダーが爆発した。中に入っていた燃料に引火したのだ。

 

 私は、『それを待っていた』。

 

 激しく燃える炎を、キャッチするイメージ。そこから粘土細工で捏ねるイメージ。

 出来上がるは、大きめの落下傘。

 

 そこには、私と、読子さんが捕まっていた。

 

「炎の落下傘なんて、初めてみました」

「作った本人が、初めての挑戦なのよね」

 

 炎の厚みを極限まで薄くし、伸ばす。思ったよりも形状維持が難しく、集中が切れると一気に崩壊しそう……。

 申し訳ないけど、地面到達まで、集中させてくれないかしら。

 

「ああ……本が無事で良かった」

 スーリスリと、本に頬ずりする読子さん。

 何度もお伝えしますが、その本の所有者は私です。

 

「……薫ちゃんか、白井さんあたりが助けてくれるといいんだけど……」

 

 と思うも。それは今のところ難しそうであった。

 

 空から見下ろす学園都市。

 いま、そこは混沌となっていた。

 

 

 ジュエルシードを取り合い、なのはちゃんとフェイトちゃんのバトルが始まっているようだ。

 人の避難は終わったのか、応援に来たザ・チルドレンたちは、アルフと何やら戦っている。

 

 そして、先程まで遠くで鳴っていた雷……平賀源内と、超電磁砲(レールガン)こと御坂美琴の戦闘が、こちらの市街地に移動してきている。

 白井さんも、御坂さんと合流したのだろう。

 

 いろいろな『力』が、ここに集まってきている。

 

 何故か、そんな予感がした。

 

 そしてその予感は、当たることになる。

 

 

 

『おー、生きてるね』

「! パーカー女!」

 脳内に響くテレパス。聞こえてきたのは、氷使いのパーカー女の声。

 

『フェレットのテレパスを借りてるよ〜』

「今回の一件、あんたが黒幕か!」

『うん、ほぼ正解。これで役者は揃ったよ』

 

 すると、更に私の脳内に響くのは、他の人の声。先程と同じく、いろんな声を混戦させているのだった。

 

「え──」

 

 私は、聞こえる声に、信じられないと絶句した。

 

 まだ、逃げ遅れた人がいる。しかも、その人たち……。

 

 

『──言っただろ? このクロスオーバー世界の『力』を集めてるって』

 

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