「……! なのはちゃん!」
私はとっさに、いま現状で一番『やばそう』な状況の子の名前を叫んだ。
いま、フードの女は『力』を集めようとしている。だとすると、ここで一番の力が詰まっているものは──ジュエルシードだ。
暴走寸前のジュエルシードは、フェイトの決死の行動によって抑えられることを、私は
「なのはーっ!」
「なのははん!」
「なのはちゃん!」
ザ・チルドレンたちも、なのはちゃんに加勢しようと集まってきた。皆本くんの指導もあるのだろう。
するとそこに、激しい電撃が走る。
(……源内! もうこんなところまで!)
先程まで、
『いっただろ? 集めてるんだって』
「お前の仕業かっ!」
あのフード女の声が脳内に響く。神出鬼没なコイツの能力によるものなのだろうか。
「お姉さまっ! 危険すぎます!!」
「黒子っ!」
その平賀源内の出現と同時に、白井黒子のテレポートに乗って御坂美琴も現れた。いま平賀源内とは少し距離を取って、出方を伺っているといったところか。
「みんなっ!!」
私は、いまこの場に集まった能力者に大声で叫んだ。もちろん実際の声は聞こえないだろうが、いま、あのパーカー女のテレパス(正確には、ユーノくんの力を乗っ取られている)が様々な人に繋がっているはずだ。
「避難誘導をおねがい! 敵が多すぎる!!」
「……くっ! ザ・チルドレン! 聞いてのとおりだ、被害の拡大を抑えることを優先するんだ!」
私の声に素早く対応してくれたのが司令塔の皆本くん。こういうときに大人は助かる。
「じゅえるしーど……お、あれのことか?」
しかし私の懇願は、聞こえてほしくない奴にも聞こえていた。偉人、平賀源内だ。
そして、あの「生き物」にも。
『すごい、なんて魔力だ。あれがジュエルシード……興味深い』
「なあキュゥべえ! どういうことだよ! あんたの言う通りに逃げたんたぞ!」
「飛んでるあの子たち、
聞こえてきたのは、キュゥべえ、美樹さやか、そして鹿目まどかの会話だった。
「……危ない!」
聞こえた方角に私が目をやると、その刹那、彼女たちの近くの車が炎に煽られ……大爆発した。
距離も時間も、私の能力は間に合わなかった。なすすべなく、二人と一匹は炎に巻かれた……かに見えた。
だが驚くことに、気付いたら離れた場所に二人は立っていた。もう一人の魔法少女とともに。
暁美ほむらだ。
「え、え、何? 何?」
「ほむらちゃんが……助けてくれたの? あ、ありが……とう……」
「……」
鹿目まどかの感謝の言葉。暁美ほむらは、一度は不愛想な顔で鹿目まどかを望むも、すぐに炎に包まれた町並みを一瞥した。
そして彼女は呟いた。
そう、それは私の思いと全く同じであった。
「なに、これ……こんなの、知らない」
***
一方、別の場所からも声が聞こえてくる。その声の主たちも、私はよく知っている人物だった。
「なぎさ! ほのか! 逃げるメポ!!」
「でも! ハーティエルが!」
そうか。彼女たちは学園都市に呼ばれたクレープ屋『タコカフェ』の手伝いで、こちらに来ていたんだった。
しかし、返信していない彼女たちは、
そんな彼女たちに、無常にもビルの壁が剥がれ落ちてきた。
「あっ──」
「サイキック! シールドっ!!」
いち早く反応してくれたのは、明石薫だった。彼女の念動力がコンクリの塊を弾き返した。
「オネーチャンたち、無事かっ!」
「あ、ありがとう!」
「さあ、早く安全な場所に! ここはアブねぇ!」
まさにその真上だ。高町なのはと、フェイト=テスタロッサの魔力が激しくぶつかっていた。
ちょうど、3つのジュエルシードを中心として、魔法合戦が行われている。
「まずい! ジュエルシードに力が……」
異常な力の集合体のそれに、彼女たちの魔法がぶつかる。
私は、ジュエルシードの暴走が世界を滅ぼすほどの力を持つことを知っている。
そしてぶつかる力は、私の知る『原作』をはるかに凌駕することになる。
「なるほど、これが和尚の言っていたやつか」
激しい放電が、ビル群を抜けて走った。
「な、何している平賀源内!」
「直接頭に響く……うっさいのぉ」
「聞こえてるのね平賀源内! だとしたら止めなさい! あの石は……」
「なあ、『オレンジヘアー』。儂らの『目的』もしってるんだろ?」
その時私はハッとした。
そうだった。この「偉人軍団」の最終目的を考えれば、
さらに、最悪な事態にことは進む。
「こんの! 私を無視するな!」
御坂美琴だ。プライドが高い彼女が、平賀源内に向かって放電を放った。
だが、その標的は大きく外れ、御坂美琴の電撃は、ジュエルシードに吸い込まれていった。
「な!! なにこれ……吸われている!!」
(ジュエルシードが……力を、更に蓄えている!?)
傘下に繰り広げられる状況から、私はそう判断した。理由は判らない。何が起こるかも不明だ。だが、ジュエルシードが何故か力を蓄えている。
「お、いいね気づいた? もう少し暴れるか。ほれ」
あのパーカー女の声。
すると、地面から巨大な氷柱が召喚された。それはまっすぐ、御坂美琴に向かっていた。
今、彼女の力はジュエルシードに向かっていっているため、電撃を使った退避行動が行えない
「やめろー!」
「あぶねぇ!!」
そこに、明石薫が飛び込んできた。そして、彼女の衝撃波は大きく地面ごと、氷の攻撃を吹き飛ばした。
「ほい、これで十分かな」
すると、その発した衝撃波を介して、薫ちゃんの力もジュエルシードに向かっていった。
「な……力が、吸われる!」
「と、止められない!」
「力が吸われてる!」
そして上空では、本来争っていたはずの彼女たちにも異変が起きていた。
「なにこれ、魔力が……レイジングハートっ!?」
『Caution. Emergency』
「クッ……バルディッシュ!」
『Unknown event has occurred』
「ジュエルシードの……暴走!? フェイト、逃げてっ!」
地上でアルフが呼びかける。しかし、激しい雷鳴に強烈な衝撃波が飛び交う状況だ。まともに聞こえているとは思えない。
「あっはっは! やったぞ!」
そう、テレパスを通じ聞こえる、コイツの声を除いて。
「混ざれ! そして世界を──『この世界』を止める力を示せ!!」
テレパスでも、その声の方角はなんとなくわかった。私は、落下傘で無防備に落ちる状態ではあるが、体を捻り、そいつのいる方角を向いた。
『私』だった。
激しい強風吹き荒れる中、フードは外れていた。
真っ青な深い青の髪色ではあったが、そいつの顔は、私と全く同じ。
瓜二つのものであった。
「──えっ、どういう──」
そんな考察を行うスキなど全くなかった。
刹那、激しい光が周囲を照らした。ジュエルシードから発せられたその光は、
私達を一度に飲み込んだ。
私も、ぶら下がる読子さんも。
逃げ遅れたひとたちも。
ジュエルシードに向かっていた人たちも。
『関係者』は全て、光の中に吸い込まれていったのだった。