「タイヤ、外装とも問題ないわ」
「……ですが、ガソリンが心もとないですね。ハイブリッド車で良かった。しばらく電気で動かすことになります」
エンジンをかけながら、皆本くんが私に話しかけた。
眼の前に広がるのは、ただただ、だだっ広い草原だった。
私と皆本くんは、森林を背にして、一緒に『飛ばされた』BABELの車を点検していた。ザ・チルドレンたちが移動で使っている護送車だ。中には小さいながらも、休憩スペースが設けられている。
「人数確認しましたわ」
白井黒子さんが、車の中から出てきた。比較的怪我が無かった彼女にも、現状把握を手伝ってもらっていたのだ。
「ありがとう、白井さん」
「……お姉様と、薫ちゃんは、しばらくゆっくりさせて上げてくださいな」
「……」
あの時。
私達は強烈な光に飲み込まれた。
気づいたら『ここ』にいたのだ。
明石薫と、御坂美琴は、力を吸われたためか過労で動けなくなっていた。
「薫はん……」
野上葵は、二人を見ていてくれていた。身体の状態確認には、本当は三宮紫穂を頼りたかった。しかし、彼女は一緒でなかったのだ。
「レイジングハート……」
高町なのはちゃんは、赤い玉を握りしめていた。『レイジングハート』が、先の戦いでヒビが入ったのだ。
「大丈夫、自己修復機能は生きているから、数日で直るはずさ」
一緒に飛んできたユーノくんは、彼女を励ました。
美墨なぎさは、黙って、ぎゅっと、ぬいぐるみ(メップル)を抱いている。
一緒に飛ばされたと思われた雪城ほのかは、行方がわからなかった。
「さやかちゃん……私達、どうなっちゃんだろう」
「……わかんないけど……この人たちを信じよう」
鹿目まどか、美樹さやかは手を取りあって励まし合っていた。
そして、暁美ほむらも、見つからなかった。
「……」
読子=リードマンも、流石にこの空気の中で読書に勤しむことは出来ていない。周囲を目配せしながら、ただただ黙っていた。
「日が、暮れそうね」
日没までになんとかしたかったが、時間は止まってくれない。
車が動くことだけでも収穫と思うしかない。
夜になれば、何が起こるかわからない。少なくとも、ここは日本ではない。
鬼が出るか蛇が出るか、はたまた、ファンタジーよろしく、竜や魔物が跋扈するのか。
一体私達は、どこに飛ばされたのだろう。
フード女の目的は一体なんだったのだろう。
全く現状が理解できないまま、刻一刻と時は過ぎる。
「……くそ。無駄に輝きやがって……」
日没を待たずに、私達の頭上には、月が顔を見せていた。
しかしそれは、私達が望んだことのない月──。
この月が、私達が飛ばされた場所を、「異世界」だと知らしめていた。
紫と青に輝く、巨大な月が2つ。不気味に私達を見下ろしていたのだった。
【次回予告】
明らかに異世界。
日本の平和な治安が懐かしい。
面影などなんのその。夜には野党に襲われそうになる。
しかしそこに現れるは、『正義』を語る女の子と……赤ずきんを中心とした、3人組の少年少女……?
見覚えあります存じ上げます。
え、もしかしてこの異世界も……『多重クロス』ですあぁぁぁぁ!?
強烈な魔法は野党を退けるも…次々現れる、ファンタジーものでしか見たことない、敵、敵、敵……。
そして現れる、巨大な魔物。硬い鱗に覆われ、口から炎を吐くそれは、そう、ドラゴンだった。
【???】
「覚悟しなさい悪の手先め! 私の正義の拳、砕けるものなら砕いてみなさい!」
【???】
「これって、もしかして、『竜の血』?」
【???】
「黄昏よりも昏きもの……」
次回、
「二つの月が望む世界」
異世界編、開始。