夜回りをしていたところ、またしても『謎空間』に入り込んだ。本来なら当事者以外を排除できるのだが、今回も不思議と、部外者とならずに受け入れられた。
するとどうだろう。
既に、何かしらの『バトル』の火蓋は切って落とされていた。
「はぁぁぁっ!」
「だぁりゃりゃりゃりゃ!」
黒と白の伝説の戦士、プリキュアのお二方だ。
彼女らが、黒い毛玉のような影のような、よくわからない怪物を蹴り殴り倒してる。
なお、途中参加の私から見ても、明らかに押していた。めちゃくちゃ優勢だ。
しかし、私は電信柱の影で頭を抱えていた。
だって、今プリキュアと戦ってるのって、ジュエルシードから生まれた『ロストロギアの異相体』とか言うやつ……。多分。
魔法少女リリカル☆なのは劇場版で見たことあるわ。
それを、なんの因果か、プリキュアがボッコボコにしている。このまま倒しちゃったら、なのはさんが魔法少女にならないんじゃないか説。
「ねえブラック! これって本当にザケンナーなのかしら!?」
「わっかんない! けど邪悪な気配は感じるし、倒しちゃっても大丈夫でしょ!」
すると彼女たちは手を繋ぎ、何やらブラックサンダーホワイトサンダーと叫び始めた。
あ、とどめ演出来ちゃった。
「「プリキュア……マーブルスクリューっ!!」」
強大なエネルギーの渦が、黒い化け物に向かって飛んでいった……が、
その化け物は、着弾前に『三つに分離』し、マーブルスクリューを避けた。
「なっ!」
「えっ?」
「うそっ!」
つい私も声を出してしまった。
ゲ○ターじゃあるまいし、その避け方はズルい。
そうこうしてるうちに、分裂したうちの1体が、私の方に向かってきた。
「やば! いるのがばれた?!」
いや、違った。
私の近くに停めてあった自動車の影に、
高町なのはとフェレット(ユーノ)が隠れていたのだ!
「きゃぁぁぁっ!!」
黒い化け物が車を押し潰し、なのはたちの目前に迫っていた。
「こんのっ!」
私は、とっさにライターに火をつけ、黒い化け物に向かって投げつけた。炎が膨らみ、火球となり、化け物にぶつかったが、本命はそれじゃない。
壊れた車から漏れ出していたガソリンに引火させ、炎の壁を作り出した。黒い化け物は炎の壁に体当たりを仕掛けるも、私の能力で『固くなった炎』を壊すには至らなかった。
「大丈夫!?」
「は、はい!」
「君たちいったいどうやって、この封時結界に入ってきたんだ!」
フェレット(ユーノ)の言い分ももっともだ。私にもわからん!
黒い化け物が、堅くなった炎の壁を叩き続けている。あんまり長く持ちそうにない。
「ちょっとお二方! あんまり持ちそうにないから、さっさと逃げるか、魔法少女になっちゃってくれない!?」
あっ、やべ。口が滑った。
なのはは「へっ?」という顔をしてるし、
フェレット(ユーノ)は、
「どうしてそれを?」
と聞いてきた。
「い、いやそれは、その。なんか、最近、魔法少女のスカウトが、流行ってるらしくて、だから、その」
いいわけが適当すぎた。
「そうだね。魔法少女へのスカウトが増えたのは、本当だよ」
突然、塀の上から声がした。
そこには、ウサギともネコとも言えない、白いぬいぐるみのような生き物が、紅い目を光らせ座っていた。
「やあ、僕はキュゥべえ。なのは。君には素質がある。魔法少女に」
「うぉっと! 手がすべったぁぁぁぁ!!」
キュゥべえ、焼失。
私は、『つい』炎の壁をキュゥべえに被せてしまった。
いくらクロスオーバー世界だとしても、高町なのはを『そっちの』魔法少女にしてはいかんでしょ!
「あっ、炎の壁」
「あっ」
炎の壁をキュゥべえに動かしたことで、目の前に黒い化け物がこんにちはした。
やっべ。防御間に合わないかも。
「サイキックぅ! コンクリートブロック塀っ!」
黒い化け物に無数のブロックが突き刺さり、吹っ飛んだ。
「危なかったな、イオナはん!」
「後ろの子も大丈夫?」
ザ・チルドレンだ。彼女らが、この結界の中に入ってきた。
「な、な、なんで、こんなに入ってこれるんだ!?」
まあ、一番ビックリしてるのは、フェレット(ユーノ)だろうな。現世界と隔離して事を大きくさせないための結界が、全く意味を成してないのだもの。
「うわぁ! フェレットがしゃべった!」
「薫ちゃん、これは
「なんや、兵部少佐の桃太郎と同じカラクリやん」
そしてしゃべるフェレットをすんなり受け入れるチルドレン達。
いや、いまそのフェレット、リアルに会話してたような……。
「で、でも本当に、どうやってこの結界の中に?」
私が、ユーノの代わりにチルドレンたちに聞いた。
「へ? いや? バベルから急に呼び出しがあって、皆本と一緒に近くまで飛んできて。で、その後フツーに歩いてたら、イオナが黒いのに襲われてたから吹っ飛ばしただけだけど」
「まってな、薫。そういえば皆本はんがおらん!」
「途中まで一緒にいたのに……どこ行っちゃったのかしら」
どうやら皆本くんは、この封時結界(?)というものには入ってこれていないみたい。
「そうか、君たちは超能力者なのか。この結界は魔法使い以外を遮断する力があるけど、超能力者を『魔法使い』と認識してしまったのかも……」
「そういう考察は、後の方が良さそうよ」
黒い化け物は、まだピンピンしている。完全にこちらを『敵』と認識したようだ。
遠くでは、残り2体を相手にしているプリキュアたちが見えた。ブラックとホワイトが分断されているためか、先程とは異なり劣勢みたい。
「なんだかよくわかんねーけど、つまりはアイツをボコボコにしちゃえばいいんだろ?」
薫が、フェレット(ユーノ)に聞いた。しかしユーノは首を縦に振らなかった。
「物理的な攻撃で押さえつけることは可能です。ですが、最終的には『封印』の必要があります……」
「なんだ! つまり力でねじ伏せればいいんだな!」
話をちゃんと聞かない筆頭、明石薫が
「サイキックぅ! アスファルトアターックっ!」
黒い化け物は、アスファルトの欠片の嵐の前に、あまり怯まず、こちらに突っ込んできた。
が、私は、抉られた地面から覗くガス配管を見逃さなかった。
「ナイス! 薫ちゃん!」
残り火を操り、相手の足元のガス配管にぶつけた。爆発的に炎が相手を包み、私は能力で、『炎を固めた』。
がっちり固めた炎は、相手の身動きを封じた。私が能力を放出している間は、しばらく動かないだろう。
ユーノは、改めて、なのはを見た。
当のなのはは、あまりに沢山の環境の変化についてきていないようだった。
「なのは、君には魔法少女になって貰いたい」
「え、えええ!」
「えっ!! なになに?! 魔法少女っ?!」
明石薫。目の前に集中して、ちょっと手伝って。私一人の力(レベル6)だと、結構シンドイ。
「これをもって目を閉じて、心を澄ませて」
「う、うん」
ユーノは紅く丸い玉を、なのはに渡した。
「管理権限、新規使用者設定機能、
「「風は空に、星は天に、不屈の魂はこの胸に、この手に魔法を」」
「「レイジングハート、セーット、アップ!」」
すると、なのはをピンク色の光が包んだ。その光は巨大な柱となった。
「うわっ! なんや!」
「す、すごい力を、感じるわ」
「なんて……魔力だ……」
しばらくすると光の柱は消失し、そこには、白を基調とした衣装に着替え、メカニカルな杖状の火器を携えた、高町なのはが立っていた。
―続く―