転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第2話】不思議な出会い、動き始めた物語【後編】

「え、えええええええええええ?!」

「うおぉっ! かっちょえぇっ!」

「成功だ!」

 

 皆さん、魔法少女リリカルなのはの誕生に各々の感想を述べつつ、なのはの回りに集まった。

 

「魔法の杖かそれ! 本当の魔法少女じゃん!」

「本当に服が光って一瞬にして着替えるのね……。アニメの中の話かと思ってたわ」

「はは……ええと、わたしも、何がなんだか……」

「せや! なんか魔法とかできんちゃうか? ほら、なんや掛け声と共にキラキラ~って!」

 

 ええぃ! 小学生の休み時間か! 

 こちとら、黒い影を押さえ込むのにそろそろ限界きてんですけど! 

 

 ミシッ

 

 あ、炎の塊が割れた。

 

「……ごめんっ! そっちいく!」

 

 黒い化け物は炎の塊から解放され、勢いよくなのはたち小学生の集まりに向かって飛びかかった。

 

「危ないっ!」

「きゃっ!」

 

 とっさに葵が瞬間移動(テレポーテーション)で緊急回避を行ったが、それより速く、なのはは高く飛び上がり避けていた。

 反応速度が小学生レベルを逸脱している。魔法少女になることで身体能力が飛躍的に向上したのだろう。

 

 瞬間移動(テレポーテーション)で、私の横に飛んできたザ・チルドレンたち。

 薫が叫んだ。

「あの化け物……あの子ばっかり襲ってるぞ!」

 

 黒い影は、執拗になのはを襲った。体から黒い触手を伸ばし、なのはを捕まえようとするが、空中で素早く滑空し触手を避け続けた。

 

「だめだ! 当たる!」

 

 最後の数本の触手は、なのはの動きを捉え突き刺さんと伸ばしてきた。

 

『Protection』

 

 しかし触手は、ピンク色の光の壁に遮られた。

 

「想定以上だ……なのは! きみの魔力があれば、それを止められます! レイジングハートと一緒に封印を!」

 

「……! あぶない!」

 

 なのはと黒い影の戦いに気を取られて、残り2体の動向を完全に失念していた。

 プリキュアと戦っていたはずの2体のうち、1体が私たちの方を襲ってきたのだ。

 

「うおおおっ!」

 

 薫がとっさに、念動力(サイコキネシス)で壁を作ってくれた。黒い影は壁に遮られたが、グイグイと体を押し込んできた。

 

 ズドン!! 

 

 派手な銃声が、聞こえた。

 日本の警察が使うようなハンドガンではなく、もっと火薬を詰め大きく炸裂する仕組みの銃声だ。

 その銃声の出所から飛んだ弾丸は、黒い影に当たり、吹き飛ばした。

 

 ズドン! 

 ズドン! 

 ズドン! 

 

 ついぞ、銃声はリズミカルに鳴り、黒い影を連続して撃ち続けた。

 

「な、なんだぁ?」

 

 せっかくシールドを張った薫が、驚きと不満の声を上げた。

 

「あら。苦戦してるようだったから、お手伝いにきたのよ。小さな『魔法少女』さん?」

 

「マミ、彼女たちは魔法少女じゃないよ。いわゆる超能力者(エスパー)だね」

 

 そこに立っていたのは、白いマスケット銃を携え、白と黄色を主にしたゴシック調デザインの服を身に纏った、金髪の女の子だった。

 すこし大人っぽい雰囲気であるが、中学生くらいか。そして、彼女を『マミ』と呼んだ生き物は、先程、私が『誤って』焼き消した、キュゥべえだった。

 

「あら、ということは……あれは魔女……じゃないみたいね。似た雰囲気を感じてきてみたけど、残念」

 

 そういうと、金髪の女の子……『巴マミ』は、銃を何処かに収納してしまった。

 

「えっ! こんな派手な登場までしといて、戦わへんのか?」

 

 肩透かしを食らった葵が文句を述べた。

 

「あら、魔力がもったいないもの。それに……」

 

 マミは、上を見た。

 

『『直射砲』ロックオンの瞬間、トリガーを』

「いっけーっ!」

 

 魔法の杖を、キャノン砲の如く構えたなのはが、杖に備え付けられたトリガーを引いた。

 杖からピンクのビーム砲が発射され、先程なのはと戦っていた影と、マミがマスケット銃で吹き飛ばした影の、合計2体に直撃した。

 

『ぐおぉぉぉぉ……』

 

 黒い影は、まるで断末魔のような声を上げ、雲散霧消した。

 

(……さすが! これこそ魔砲少女!!)

 

「い、一撃で……『封印』した……」

 

「……ねえ、キュゥべえ。あの娘も『魔法少女』なの? ちょっと毛色が違うような」

「うん、彼女は僕らの『魔法少女』とは違う契約を結んでいるようだ。君たちの社会でいう『異業種』だね。僕らの魔女狩りには影響しないよ」

 

 そして、消滅した黒い影の場所に、青白く光る、果物の種子のような形をした宝石が浮いていた。

 

「なのは! それが『ジュエルシード』! レイジングハートで回収して!」

 

「こ、こう?」

 

 なのははユーノに言われるがまま、機械の杖──レイジングハートを、ジュエルシードに掲げた。するとジュエルシードは、レイジングハートの宝石部分に吸い込まれた。

 

「みんな! なのは! もう1体いるはずだ! 気を付けて!」

 

 ユーノが声を張り上げ警告した。

 そうだった。あの黒い影は、3体に分離したのだった。

 たしか残りは、プリキュアたちが相手を……。

 

「「プリキュア! マーブルスクリューっ!!」」

 

 ドォォォォン! 

 

 白と黒のマーブル模様のエネルギー波が、残り1体の影を貫いた。

 すると、先程と似た感じで影が消滅し、中央にはジュエルシードが輝いていた。

 

「あ、あの二人も、なんて魔力の持ち主なんだ……。あんな強力な光の浄化魔法、初めて見る……」

 

 ユーノが呆然と眺めていた。

 

 あ、あれって浄化魔法だったんだ。

 

 私たちも、プリキュアの技の威力に開口しっぱなしだ。ただ一人を除いて。

 

「……むう……」

 

 明石薫はなぜか、少し……いや、かなり立腹のようだ。

 

 私たちの視線に気づいたのか、プリキュアふたりは颯爽と姿を消し、いなくなってしまった。

 

 封印されたジュエルシードは空中をゆっくり漂い、私たちが立つ場所から程近いマンション屋上に落下していった。

 

「なのは! あのジュエルシードの回収もお願いします!」

「う、うん!」

 

 足から光の羽を発し、なのははゆっくりと近づいた。飛び方に疲労が見える。

 

 ……そりゃそうよね。普通の小学生が、急に超能力者(エスパー)やら魔法少女に囲まれ、初陣で3体の化け物を相手にしたんだもの。

 

「キュゥべえ、ソウルジェムがあの宝石に反応してるわ。どういうことなの?」

「……へぇ、あれは『ジュエルシード』というのか。なるほど。理由はわからないけど、グリーフシードと何か関係があるのかもね」

 

 巴マミが怪訝な顔で、キュゥべえに聞いていた。その会話が聞こえてきて、私は驚いた。

 

 えっ? グリーフシードとジュエルシードが似ているって? 

 

「まあ、今回はもう夜も遅いから帰りましょうか、キュゥべえ」

「そうだね、僕としては、ひとりスカウト出来なかったのが心残りだけどね」

 

 それって、なのはのことだよね。

 

 すると巴マミはキュゥべえを肩に乗せ、人間とは思えない脚力で跳ね、屋根伝いに消えていった。

 

「後でお話しましょう! 神之原さん!」

 

 何故か私にメッセージを残して。

 

 ……え? 全く心当たりがない。

 前世であなたの活躍を存じ上げてはおりますが(第3話の『あれ』含めて)、この現世で、彼女と以前に会ってたっけ? 

 

 

 ##################

 

 

「お前ら! 心配したんだぞ!」

 まるでお父さんのような第一声。皆本君らしいといえば、らしいな。

 

 ジュエルシードを回収し終えたため、ユーノは結界を解いた。すると、すぐ近くに皆本君と、バベルのレスキュー部隊が現れた。

 

 一緒に歩いていたはずのチルドレンたちが、いつの間にか消失したため、『何か敵の攻撃……パンドラの策』の可能性も考慮し、バベルに応援要請ののち、本人も必死になって血眼で探していたみたい。

 

 そして、彼の第二声が、これ。

 

「な、な、な、なんじゃあこりゃぁ~~っ!!!」

 

 切れた電線。

 燃える生け垣。

 穴の空いた地面。

 崩れかかった建造物。

 破壊されたブロック塀。

 燃える車、そしてガス管。

 捲れ上がったアスファルト。

 

 まるで空爆にでも合ったような大惨事が、急に目の前に現れたのだから、そんな声もでます。

 

「お、お前ら! なにをしてたんだー!」

「ち、ちげーよ皆本! これは不可抗力だ!」

「せや! けど、説明が難しいさかい……」

「そうね、どこから話すべきかしら、イオナさん」

 

 薫、葵、紫穂ときて、私に振られた。

 

「皆本くん。本件はかなり複雑なので後で詳しく。それより……」

 

 私は、手と目で皆本くんの視線を促した。

 そこには、フェレットを抱いて座り込んでいる少女……高町なのはがいた。

 

「一般人も巻き込まれていたのか……君、大丈夫かい? 怪我はない? 」

「あ、はい、大丈夫です……」

 

 皆本くんは優しくなのはに接した。さすが、女の子の扱いは小慣れたものだ(皮肉)。

 

 バベルのレスキュー部隊が慌ただしく動き始めた。電線や壁の修復、瓦礫の片付け、負傷者の確認……。やることは一杯だ。

 

 ここで、私は思った。

 高町なのはを、早くこの場から解放してあげないと、いろいろ詮索されて、彼女が『魔法少女』であること諸々が公になってしまう。

 

「あ、せや皆本はん! その子、実は魔ほむぐ」

 

 私はとっさに、葵ちゃんの口を塞ぎ、人差し指で「しーっ!」のポーズをとった。

 

(だめよ! 魔法少女ってのは、みんなにはナイショにするルールがあるのよ! 薫ちゃんも、紫穂ちゃんも!)

(な、なるほど、せやな……)

(お、おう……)

(わかったわ)

 

「? どうした、葵?」

「な、なんでもあらへん!」

 

「……ねえ、皆本くん、チルドレンたちも疲れてるし、巻き込まれた子もいる。一旦私たちは引き上げたほうがいいと思うの」

 

「それもそうだな。詳しくは明日聞こう。……あと、この子は、警察に任せるのが一番安心か……可愛いフェレットだね?」

 

 疲れて座り込んでいるなのはを安心させようと、皆本が笑顔で話しかけた。

 

 そのとき、ずっとうつむいていたフェレット(ユーノ)が、皆本くんに向かって顔を上げた。何か決心を固めたような顔をしていた。まさか……。

 

「彼女たちの保護者のかたですね。折り入ってお願いがあります!!」

 

「…………ぅえええええ! フェレットがしゃべったぁっ!!」

 

 まじか。ユーノ君は自ら正体を明かしにくるのか、この世界線! 

 

「ゆ、ユーノ君?!」

「信じて貰えるかわからないけど、僕はこの世界の外……別の世界から来ました」

 

「ふぇ、フェレットがしゃべって……あ、でも兵部のモモンガもしゃべってたな……」

 

 なんか前例を思い出し、急に冷静になる皆本くん。

 

 そして、このフェレット(ユーノ)くん、私が持つアニメ情報では追い付けないことを言い出した。

 

「今回、多くの人を巻き込んでしまい申し訳ありません。ですが、これ以上問題が大きくならないよう、皆さんの協力を要請したい! もちろんお礼はします! 必ずします!」

 

 

 

 

 





【次回予告】

 巴マミに呼び出され、デパートのフードコートにきた私。
 私は思い出した。数年前、バベル入社前に対応した、あの交通事故のこと。
 そして、助かった女の子のこと。

【???】
『助けて……助けて……』

【キュアブラック】
「今日はホワイトの大切な日なのに!」

【キュゥべえ】
「ザケンナーと呼ばれていたね。僕個人として、とても興味深い」


次回、「デパート、開戦」
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