「え、えええええええええええ?!」
「うおぉっ! かっちょえぇっ!」
「成功だ!」
皆さん、魔法少女リリカルなのはの誕生に各々の感想を述べつつ、なのはの回りに集まった。
「魔法の杖かそれ! 本当の魔法少女じゃん!」
「本当に服が光って一瞬にして着替えるのね……。アニメの中の話かと思ってたわ」
「はは……ええと、わたしも、何がなんだか……」
「せや! なんか魔法とかできんちゃうか? ほら、なんや掛け声と共にキラキラ~って!」
ええぃ! 小学生の休み時間か!
こちとら、黒い影を押さえ込むのにそろそろ限界きてんですけど!
ミシッ
あ、炎の塊が割れた。
「……ごめんっ! そっちいく!」
黒い化け物は炎の塊から解放され、勢いよくなのはたち小学生の集まりに向かって飛びかかった。
「危ないっ!」
「きゃっ!」
とっさに葵が
反応速度が小学生レベルを逸脱している。魔法少女になることで身体能力が飛躍的に向上したのだろう。
薫が叫んだ。
「あの化け物……あの子ばっかり襲ってるぞ!」
黒い影は、執拗になのはを襲った。体から黒い触手を伸ばし、なのはを捕まえようとするが、空中で素早く滑空し触手を避け続けた。
「だめだ! 当たる!」
最後の数本の触手は、なのはの動きを捉え突き刺さんと伸ばしてきた。
『Protection』
しかし触手は、ピンク色の光の壁に遮られた。
「想定以上だ……なのは! きみの魔力があれば、それを止められます! レイジングハートと一緒に封印を!」
「……! あぶない!」
なのはと黒い影の戦いに気を取られて、残り2体の動向を完全に失念していた。
プリキュアと戦っていたはずの2体のうち、1体が私たちの方を襲ってきたのだ。
「うおおおっ!」
薫がとっさに、
ズドン!!
派手な銃声が、聞こえた。
日本の警察が使うようなハンドガンではなく、もっと火薬を詰め大きく炸裂する仕組みの銃声だ。
その銃声の出所から飛んだ弾丸は、黒い影に当たり、吹き飛ばした。
ズドン!
ズドン!
ズドン!
ついぞ、銃声はリズミカルに鳴り、黒い影を連続して撃ち続けた。
「な、なんだぁ?」
せっかくシールドを張った薫が、驚きと不満の声を上げた。
「あら。苦戦してるようだったから、お手伝いにきたのよ。小さな『魔法少女』さん?」
「マミ、彼女たちは魔法少女じゃないよ。いわゆる
そこに立っていたのは、白いマスケット銃を携え、白と黄色を主にしたゴシック調デザインの服を身に纏った、金髪の女の子だった。
すこし大人っぽい雰囲気であるが、中学生くらいか。そして、彼女を『マミ』と呼んだ生き物は、先程、私が『誤って』焼き消した、キュゥべえだった。
「あら、ということは……あれは魔女……じゃないみたいね。似た雰囲気を感じてきてみたけど、残念」
そういうと、金髪の女の子……『巴マミ』は、銃を何処かに収納してしまった。
「えっ! こんな派手な登場までしといて、戦わへんのか?」
肩透かしを食らった葵が文句を述べた。
「あら、魔力がもったいないもの。それに……」
マミは、上を見た。
『『直射砲』ロックオンの瞬間、トリガーを』
「いっけーっ!」
魔法の杖を、キャノン砲の如く構えたなのはが、杖に備え付けられたトリガーを引いた。
杖からピンクのビーム砲が発射され、先程なのはと戦っていた影と、マミがマスケット銃で吹き飛ばした影の、合計2体に直撃した。
『ぐおぉぉぉぉ……』
黒い影は、まるで断末魔のような声を上げ、雲散霧消した。
(……さすが! これこそ魔砲少女!!)
「い、一撃で……『封印』した……」
「……ねえ、キュゥべえ。あの娘も『魔法少女』なの? ちょっと毛色が違うような」
「うん、彼女は僕らの『魔法少女』とは違う契約を結んでいるようだ。君たちの社会でいう『異業種』だね。僕らの魔女狩りには影響しないよ」
そして、消滅した黒い影の場所に、青白く光る、果物の種子のような形をした宝石が浮いていた。
「なのは! それが『ジュエルシード』! レイジングハートで回収して!」
「こ、こう?」
なのははユーノに言われるがまま、機械の杖──レイジングハートを、ジュエルシードに掲げた。するとジュエルシードは、レイジングハートの宝石部分に吸い込まれた。
「みんな! なのは! もう1体いるはずだ! 気を付けて!」
ユーノが声を張り上げ警告した。
そうだった。あの黒い影は、3体に分離したのだった。
たしか残りは、プリキュアたちが相手を……。
「「プリキュア! マーブルスクリューっ!!」」
ドォォォォン!
白と黒のマーブル模様のエネルギー波が、残り1体の影を貫いた。
すると、先程と似た感じで影が消滅し、中央にはジュエルシードが輝いていた。
「あ、あの二人も、なんて魔力の持ち主なんだ……。あんな強力な光の浄化魔法、初めて見る……」
ユーノが呆然と眺めていた。
あ、あれって浄化魔法だったんだ。
私たちも、プリキュアの技の威力に開口しっぱなしだ。ただ一人を除いて。
「……むう……」
明石薫はなぜか、少し……いや、かなり立腹のようだ。
私たちの視線に気づいたのか、プリキュアふたりは颯爽と姿を消し、いなくなってしまった。
封印されたジュエルシードは空中をゆっくり漂い、私たちが立つ場所から程近いマンション屋上に落下していった。
「なのは! あのジュエルシードの回収もお願いします!」
「う、うん!」
足から光の羽を発し、なのははゆっくりと近づいた。飛び方に疲労が見える。
……そりゃそうよね。普通の小学生が、急に
「キュゥべえ、ソウルジェムがあの宝石に反応してるわ。どういうことなの?」
「……へぇ、あれは『ジュエルシード』というのか。なるほど。理由はわからないけど、グリーフシードと何か関係があるのかもね」
巴マミが怪訝な顔で、キュゥべえに聞いていた。その会話が聞こえてきて、私は驚いた。
えっ? グリーフシードとジュエルシードが似ているって?
「まあ、今回はもう夜も遅いから帰りましょうか、キュゥべえ」
「そうだね、僕としては、ひとりスカウト出来なかったのが心残りだけどね」
それって、なのはのことだよね。
すると巴マミはキュゥべえを肩に乗せ、人間とは思えない脚力で跳ね、屋根伝いに消えていった。
「後でお話しましょう! 神之原さん!」
何故か私にメッセージを残して。
……え? 全く心当たりがない。
前世であなたの活躍を存じ上げてはおりますが(第3話の『あれ』含めて)、この現世で、彼女と以前に会ってたっけ?
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「お前ら! 心配したんだぞ!」
まるでお父さんのような第一声。皆本君らしいといえば、らしいな。
ジュエルシードを回収し終えたため、ユーノは結界を解いた。すると、すぐ近くに皆本君と、バベルのレスキュー部隊が現れた。
一緒に歩いていたはずのチルドレンたちが、いつの間にか消失したため、『何か敵の攻撃……パンドラの策』の可能性も考慮し、バベルに応援要請ののち、本人も必死になって血眼で探していたみたい。
そして、彼の第二声が、これ。
「な、な、な、なんじゃあこりゃぁ~~っ!!!」
切れた電線。
燃える生け垣。
穴の空いた地面。
崩れかかった建造物。
破壊されたブロック塀。
燃える車、そしてガス管。
捲れ上がったアスファルト。
まるで空爆にでも合ったような大惨事が、急に目の前に現れたのだから、そんな声もでます。
「お、お前ら! なにをしてたんだー!」
「ち、ちげーよ皆本! これは不可抗力だ!」
「せや! けど、説明が難しいさかい……」
「そうね、どこから話すべきかしら、イオナさん」
薫、葵、紫穂ときて、私に振られた。
「皆本くん。本件はかなり複雑なので後で詳しく。それより……」
私は、手と目で皆本くんの視線を促した。
そこには、フェレットを抱いて座り込んでいる少女……高町なのはがいた。
「一般人も巻き込まれていたのか……君、大丈夫かい? 怪我はない? 」
「あ、はい、大丈夫です……」
皆本くんは優しくなのはに接した。さすが、女の子の扱いは小慣れたものだ(皮肉)。
バベルのレスキュー部隊が慌ただしく動き始めた。電線や壁の修復、瓦礫の片付け、負傷者の確認……。やることは一杯だ。
ここで、私は思った。
高町なのはを、早くこの場から解放してあげないと、いろいろ詮索されて、彼女が『魔法少女』であること諸々が公になってしまう。
「あ、せや皆本はん! その子、実は魔ほむぐ」
私はとっさに、葵ちゃんの口を塞ぎ、人差し指で「しーっ!」のポーズをとった。
(だめよ! 魔法少女ってのは、みんなにはナイショにするルールがあるのよ! 薫ちゃんも、紫穂ちゃんも!)
(な、なるほど、せやな……)
(お、おう……)
(わかったわ)
「? どうした、葵?」
「な、なんでもあらへん!」
「……ねえ、皆本くん、チルドレンたちも疲れてるし、巻き込まれた子もいる。一旦私たちは引き上げたほうがいいと思うの」
「それもそうだな。詳しくは明日聞こう。……あと、この子は、警察に任せるのが一番安心か……可愛いフェレットだね?」
疲れて座り込んでいるなのはを安心させようと、皆本が笑顔で話しかけた。
そのとき、ずっとうつむいていたフェレット(ユーノ)が、皆本くんに向かって顔を上げた。何か決心を固めたような顔をしていた。まさか……。
「彼女たちの保護者のかたですね。折り入ってお願いがあります!!」
「…………ぅえええええ! フェレットがしゃべったぁっ!!」
まじか。ユーノ君は自ら正体を明かしにくるのか、この世界線!
「ゆ、ユーノ君?!」
「信じて貰えるかわからないけど、僕はこの世界の外……別の世界から来ました」
「ふぇ、フェレットがしゃべって……あ、でも兵部のモモンガもしゃべってたな……」
なんか前例を思い出し、急に冷静になる皆本くん。
そして、このフェレット(ユーノ)くん、私が持つアニメ情報では追い付けないことを言い出した。
「今回、多くの人を巻き込んでしまい申し訳ありません。ですが、これ以上問題が大きくならないよう、皆さんの協力を要請したい! もちろんお礼はします! 必ずします!」
【次回予告】
巴マミに呼び出され、デパートのフードコートにきた私。
私は思い出した。数年前、バベル入社前に対応した、あの交通事故のこと。
そして、助かった女の子のこと。
【???】
『助けて……助けて……』
【キュアブラック】
「今日はホワイトの大切な日なのに!」
【キュゥべえ】
「ザケンナーと呼ばれていたね。僕個人として、とても興味深い」
次回、「デパート、開戦」