「……異能案件、ですか」
ここは超能力支援研究局B.A.B.E.L.局長室。
目の前には、桐壺局長と、柏木秘書官。
「うむ。今後は、
指を絡め肘を机についた格好の、桐壺局長の発言だ。
「そこで、神之原くん。君には『異能案件』の特任担当になってほしい」
そうきたか。
どうりで、呼び出されたのが私だけな
……うーん、極力
「えっと、では『高町なのは』の経過観察も、私が一任するってことですか?」
これについては、柏木さんが手元の書類を見ながら答えてくれた。
「そのとおりです、神之原少尉。今後、高町なのは は貴女の管理下に置かれます」
「神之原くん。今回と前回の『異能案件』に遭遇しているのは、君とザ・チルドレンだけだ。そして君の報告書で確認された、残り4人の『魔法少女』の存在もある」
プリキュアふたりとシャイニールミナス、あと、巴マミの計4人ね。
「お言葉ですが局長、本件はザ・チルドレンも関わっています。彼女たちと皆本中尉のほうが適任かと……」
「バッカモーン! チルドレンたちを、得体の知れないものに近づけさせるわけにはいかん! 彼女らは日本の宝だぞ!」
……局長、ほんとチルドレンには甘いし、チルドレンの事になると見境無くなる。
顔を真っ赤にしてる局長を、柏木さんが止めてくれた。
「局長、落ち着いてください! ……コホン、神之原少尉、そういうわけで貴女に白羽の矢がたちました」
まぁ、そうなりますよね。これだけ『異能案件』に触れちゃってるんだし。
できるだけ穏便に
それに私は、バベルの
「今後、特任となる上で手当てが発生します。こちらの書類を確認してください」
柏木さんから手渡された書類を一読した私は、一つの大きな疑問が生じた。
「柏木秘書官、すっごい重要なことをお尋ねしますが……」
「はい? どうしました?」
「……この任務って、残業と深夜手当ては出ますよね……?」
###################
ジュエルシード事件のあと、ユーノくんは全ての事情を説明した。
今回発掘された遺産、ジュエルシードの搬送中に事故があり、地球に落ちてしまったこと。
そして、ジュエルシードの危険性のこと。
「単体でも非常に大きなエネルギー体です。また他の生物を取り込むこともあり、とても危険です。なんとしても、封印をしなければならないんです」
実際に私たちは、そのロストロギアの異相体と戦って、危険度は十分理解した。
そしてその『封印』が問題で、ユーノ曰く、
「魔法によって封印します。今回、急を要して彼女……なのはさんにお願いして、魔法少女になって貰ったのですが、彼女は僕の想定以上の魔力の持ち主でした」
つまりは、高町なのは に封印を手伝ってほしい + 我々バベルの協力要請がほしい。という。
彼の提案は、私と皆本くんを介して、バベル上層部まで持っていくことなり、結果、先ほどの勅命を私が受けることになったのだった
そして高町なのはちゃんの今後の所存についてだが、彼女を『
……私が、ご両親へ説明に伺ったのだけど、まあポジティブな親御さんたちでよかったよ。
バベル側としても頓痴気な『異能案件』に一般人が巻き込まれるわけにはいかない。
全力で、ジュエルシード回収をサポートする、とのことだ。
……担当、私一人なんだけどね! (・ωく)
##################
さて、時と場所が変わって、ここはデパートの中のフードコート。
異能案件特任となってから、目立った事件は発生してない。
一度ジュエルシード案件があったけど、私が現場に到着する前になのはとユーノだけで解決しちゃって、私たちバベルの面目が立ってない。
なお、その時判明したトンデモ仕様……異能案件は、バベルの
予知で現場に事前入り出来るのがバベルの強みなんだけど……いやぁ。バベルの良さ0。丸つぶれね。
……結構私、デカイ貧乏くじを引かされたのかも……。
「大丈夫ですか? 神之原さん。だいぶお疲れみたいです」
向かいに座ってる『巴マミ』から心配の声がかけられた。
私は、巴マミに呼び出され、休憩がてらデパートのフードコートでお茶してた。
「だ、大丈夫よ、ゴメンネ巴さん」
「マミでいいですよ。……神之原さん、お仕事お忙しいのですか?」
私が何故ここで、巴マミ……『魔法少女まどかマギカ』の魔法少女とお話ししているのかを説明しよう。
────────
数年前、私はまだ高校生だった頃。
就職か大学か、はたまた、母親の手伝いか。
私は進路にスゲー悩んでた。
超能力を使った仕事も考えたが、転生者ということもあり、あまり現世で目立った活躍は控えようと思い、ごくごく一般人としての生活を目指していた。
……んだけど、ESP検査(超能力検査)でうっかり超高得点を出しちゃって、バベルから監視対象になったり、学園都市からスカウトが来たりと、私の思惑とは真逆の進路になりかけていた。
そんなときだった。
気分転換にツーリング(二輪免許持ち)をしていたら、ちょうど自動車事故の現場を通りかかった。車体は派手にひしゃげており、中の人の命は絶望的だった。
誰かが「レスキューは未だ来ないのか!」なんて叫んでるけど、これだけ潰れた車内に生存者がいるとは考えにくい。
そうこうしているうちに、運悪く車から漏れだした燃料にエンジンの火花が引火したのか、爆発音と共に激しく車が燃えだした。
私は、咄嗟に体が動いていた。
そのお陰で、車体はほとんど燃えることはなかった。
そしてそんな車内に、中学生くらいの女の子が生きているのを見つけた私は、炎を操りながらその女の子を車外に引っ張り出した。
あの事故で無傷だった女の子。正に『奇跡』だった。
私はその後、この事故をきっかけに超能力を使った人助けに興味をもち、結果、バベルの門を叩いた。
──────────
「いやあ……まさかその時の女の子が、マミちゃんだったとは……」
今思えば、助けた女の子は巴マミの面影があったけど……。
救助者、救援者の各々の個人情報なんかは通常伏せられる。なのに何故、『巴マミは私のことを知っているのか』。
「その髪の毛ですよ。私が助けられたときにも、オレンジ色の髪をしてましたし」
なるほど。能力発動時のみ変色する髪なんて、滅多にいない。そして特色のあるオレンジカラー。どうしても目立つし印象にも残りやすい。
「あのときのお礼を、改めて言いたかった、というのもあるのですが……本題は別にあります」
そういうと、マミは自分の右肩を指差しこう聞いてきた。
「私の肩になにか見えますか?」
私は、ホイップクリームが乗ったアイスコーヒーをストローで啜りながら答えた。
「……白い、赤い目の、謎の動物のぬいぐるみ」
「ふむ、どうやら魔法少女以外に、高レベルの超能力者にも見えてしまうみたいだね」
赤目の動物が話しかけてきた。いや、正確には
「……そいつ、マミちゃんが『魔法少女』をやってるのに深い関係が有りそうね」
私の追加回答に、マミは心底驚いたようだった。一方、赤目の動物……キュゥべえは『話が早い』と喜んでいた。
……まあそりゃそうですよ。だって前世で視聴してたもん。毎週放送時間まで正座待機してたもん。
「神之原さん、単刀直入に言います」
「イオナでいいわ」
「……では、イオナさん。お願いです、私のパートナーになってくれませんか?」
えっ。
私はてっきり、
『魔法少女なこと、内緒にしてて!』
みたいな話になるものと。
「私がマミちゃんのお手伝いをするってこと?」
「いいや、あくまで協力関係さ」
先ほどまで巴マミの肩に乗っていたキュゥべえが、テーブルの上に降りていた。
「君たちの機関……バベルの
「……! 何故それを……!」
この件はバベル上層部と、一部の担当者しか知らされていない。
「君たちの超能力は、脳の演算能力を極限まで高め能力を付随するものだからね。常識を逸脱した出来事は予見できないんだろう」
「最近、不審死や自殺、動機不明な事件が増えてますよね。本来、バベルが予知出来るような事件も、察知できてないのでは?」
「……図星よ」
ここまで知られているのなら、隠す必要はない。私は正直に答えた。全て事実だ。
「おそらく、予知できない事件の多くが、魔女を発端とするものだろうね」
「魔法少女なら、ある程度魔女を感知できます。私がバベルに協力できる部分です」
なるほどそれは有難い。しかしそうすると、
「私は何をすればいいのかしら?」
「魔女狩りの手伝いをお願いしたいのです」
紙コップのお茶を飲み、彼女は続けた。
「私達魔法少女は、消耗した魔力を回復させるのに、魔女のもつグリーフシードが必要なんです」
「なるほど。できるだけ魔力消費を抑え、効率よくグリーフシードを集めたい、ってことね」
「話が早くて助かるよ。最近は、魔女と気配が酷似したものが現れて、困ってたんだ……先日のジュエルシードみたいに」
「……」
異能案件の担当者としては、この提案は願ったり叶ったりだ。
予知できない事情に対して、魔法少女が味方になってくれると心強い。
「……わかったわ、巴マミちゃん。手を組みましょう!」
ブツン!!
突然、デパート内部の電源が落ちた。
真っ暗になった店内では、非常口を示す淡緑のライトだけが弱々しく輝いていた。
警備員らしき人が機械トラブルによる停電だと説明し、店内のお客を非常口に誘導し始めた。
「……ねえ、マミちゃん。これって……」
私は『嫌な予感』がした。
巴マミは、黄色く光る卵形の結晶──ソウルジェムを取り出した。ジェムは何かに呼応するように淡く光っていた。
「はい、魔女の気配を感じます……こっちです!」
こうして、私は巴マミと手を組むこととなった。そして早速の初陣。
……今後の、巴マミの運命が変わる可能性がある選択だ。私は、やるだけのことを、やってみるだけだ。
―続く―