転生先は超能力少女たちの多重クロス世界でした   作:黒片大豆

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【第3話】デパート、開戦【前編】

「……異能案件、ですか」

 

 ここは超能力支援研究局B.A.B.E.L.局長室。

 目の前には、桐壺局長と、柏木秘書官。

 

「うむ。今後は、非能力者(ノーマル)とも能力者(エスパー)とも分類できない事件、いわゆる『魔法少女』案件を、『異能案件』と呼称することとした」

 

 指を絡め肘を机についた格好の、桐壺局長の発言だ。

 

「そこで、神之原くん。君には『異能案件』の特任担当になってほしい」

 

 そうきたか。

 どうりで、呼び出されたのが私だけな理由(わけ)だ。

 

 ……うーん、極力厄介事(メンドクサイ)には関わりたく無いんだけど。

 

「えっと、では『高町なのは』の経過観察も、私が一任するってことですか?」

 

 これについては、柏木さんが手元の書類を見ながら答えてくれた。

 

「そのとおりです、神之原少尉。今後、高町なのは は貴女の管理下に置かれます」

 

「神之原くん。今回と前回の『異能案件』に遭遇しているのは、君とザ・チルドレンだけだ。そして君の報告書で確認された、残り4人の『魔法少女』の存在もある」

 

 プリキュアふたりとシャイニールミナス、あと、巴マミの計4人ね。

 

「お言葉ですが局長、本件はザ・チルドレンも関わっています。彼女たちと皆本中尉のほうが適任かと……」

 

「バッカモーン! チルドレンたちを、得体の知れないものに近づけさせるわけにはいかん! 彼女らは日本の宝だぞ!」

 

 ……局長、ほんとチルドレンには甘いし、チルドレンの事になると見境無くなる。

 顔を真っ赤にしてる局長を、柏木さんが止めてくれた。

 

「局長、落ち着いてください! ……コホン、神之原少尉、そういうわけで貴女に白羽の矢がたちました」

 

 まぁ、そうなりますよね。これだけ『異能案件』に触れちゃってるんだし。

 できるだけ穏便にこっちの世界(クロスオーバー)を過ごしたかったけど、土台無理な話しか。

 それに私は、バベルの特務エスパー(サラリーマン)。上司からの命令には従わなければならない運命……。

 

「今後、特任となる上で手当てが発生します。こちらの書類を確認してください」

 

 柏木さんから手渡された書類を一読した私は、一つの大きな疑問が生じた。

 

「柏木秘書官、すっごい重要なことをお尋ねしますが……」

「はい? どうしました?」

 

「……この任務って、残業と深夜手当ては出ますよね……?」

 

 

 ###################

 

 

 ジュエルシード事件のあと、ユーノくんは全ての事情を説明した。

 

 地球(ここ)とは違う世界からきたこと。

 魔法技術の遺産(ロストロギア)を発掘調査を生業としてること。

 今回発掘された遺産、ジュエルシードの搬送中に事故があり、地球に落ちてしまったこと。

 そして、ジュエルシードの危険性のこと。

 

「単体でも非常に大きなエネルギー体です。また他の生物を取り込むこともあり、とても危険です。なんとしても、封印をしなければならないんです」

 

 実際に私たちは、そのロストロギアの異相体と戦って、危険度は十分理解した。

 

 そしてその『封印』が問題で、ユーノ曰く、

「魔法によって封印します。今回、急を要して彼女……なのはさんにお願いして、魔法少女になって貰ったのですが、彼女は僕の想定以上の魔力の持ち主でした」

 

 つまりは、高町なのは に封印を手伝ってほしい + 我々バベルの協力要請がほしい。という。

 

 彼の提案は、私と皆本くんを介して、バベル上層部まで持っていくことなり、結果、先ほどの勅命を私が受けることになったのだった

 

 そして高町なのはちゃんの今後の所存についてだが、彼女を『超能力者(エスパー)疑いあり』として一旦バベルの管理下に置き、それを口実に、バベルの通信機を渡した。これで彼女とユーノとの連絡を取れるようにした。

 

 ……私が、ご両親へ説明に伺ったのだけど、まあポジティブな親御さんたちでよかったよ。

 

 バベル側としても頓痴気な『異能案件』に一般人が巻き込まれるわけにはいかない。

 全力で、ジュエルシード回収をサポートする、とのことだ。

 

 ……担当、私一人なんだけどね! (・ωく)

 

 

 ##################

 

 

 さて、時と場所が変わって、ここはデパートの中のフードコート。

 

 異能案件特任となってから、目立った事件は発生してない。

 一度ジュエルシード案件があったけど、私が現場に到着する前になのはとユーノだけで解決しちゃって、私たちバベルの面目が立ってない。

 

 なお、その時判明したトンデモ仕様……異能案件は、バベルの予知能力(プレコグ)で予見できないことがわかった。

 

 予知で現場に事前入り出来るのがバベルの強みなんだけど……いやぁ。バベルの良さ0。丸つぶれね。

 

 ……結構私、デカイ貧乏くじを引かされたのかも……。

 

 

 

「大丈夫ですか? 神之原さん。だいぶお疲れみたいです」

 

 向かいに座ってる『巴マミ』から心配の声がかけられた。

 

 私は、巴マミに呼び出され、休憩がてらデパートのフードコートでお茶してた。

 

「だ、大丈夫よ、ゴメンネ巴さん」

「マミでいいですよ。……神之原さん、お仕事お忙しいのですか?」

 

 私が何故ここで、巴マミ……『魔法少女まどかマギカ』の魔法少女とお話ししているのかを説明しよう。

 

 ────────

 

 数年前、私はまだ高校生だった頃。

 就職か大学か、はたまた、母親の手伝いか。

 私は進路にスゲー悩んでた。

 

 超能力を使った仕事も考えたが、転生者ということもあり、あまり現世で目立った活躍は控えようと思い、ごくごく一般人としての生活を目指していた。

 

 ……んだけど、ESP検査(超能力検査)でうっかり超高得点を出しちゃって、バベルから監視対象になったり、学園都市からスカウトが来たりと、私の思惑とは真逆の進路になりかけていた。

 

 そんなときだった。

 

 気分転換にツーリング(二輪免許持ち)をしていたら、ちょうど自動車事故の現場を通りかかった。車体は派手にひしゃげており、中の人の命は絶望的だった。

 

 誰かが「レスキューは未だ来ないのか!」なんて叫んでるけど、これだけ潰れた車内に生存者がいるとは考えにくい。

 そうこうしているうちに、運悪く車から漏れだした燃料にエンジンの火花が引火したのか、爆発音と共に激しく車が燃えだした。

 

 私は、咄嗟に体が動いていた。

 

 炎を操る能力(パイロキネシス)を最大限使って、車から炎を遠ざけ続けたのだ。

 そのお陰で、車体はほとんど燃えることはなかった。

 そしてそんな車内に、中学生くらいの女の子が生きているのを見つけた私は、炎を操りながらその女の子を車外に引っ張り出した。

 

 あの事故で無傷だった女の子。正に『奇跡』だった。

 

 私はその後、この事故をきっかけに超能力を使った人助けに興味をもち、結果、バベルの門を叩いた。

 

 ──────────

 

「いやあ……まさかその時の女の子が、マミちゃんだったとは……」

 

 今思えば、助けた女の子は巴マミの面影があったけど……。

 

 救助者、救援者の各々の個人情報なんかは通常伏せられる。なのに何故、『巴マミは私のことを知っているのか』。

 

「その髪の毛ですよ。私が助けられたときにも、オレンジ色の髪をしてましたし」

 

 なるほど。能力発動時のみ変色する髪なんて、滅多にいない。そして特色のあるオレンジカラー。どうしても目立つし印象にも残りやすい。

 

「あのときのお礼を、改めて言いたかった、というのもあるのですが……本題は別にあります」

 

 そういうと、マミは自分の右肩を指差しこう聞いてきた。

 

「私の肩になにか見えますか?」

 

 私は、ホイップクリームが乗ったアイスコーヒーをストローで啜りながら答えた。

 

「……白い、赤い目の、謎の動物のぬいぐるみ」

 

「ふむ、どうやら魔法少女以外に、高レベルの超能力者にも見えてしまうみたいだね」

 

 赤目の動物が話しかけてきた。いや、正確には精神感応(テレパシー)による念話になるのか。

 

「……そいつ、マミちゃんが『魔法少女』をやってるのに深い関係が有りそうね」

 

 私の追加回答に、マミは心底驚いたようだった。一方、赤目の動物……キュゥべえは『話が早い』と喜んでいた。

 

 ……まあそりゃそうですよ。だって前世で視聴してたもん。毎週放送時間まで正座待機してたもん。

 

「神之原さん、単刀直入に言います」

「イオナでいいわ」

 

「……では、イオナさん。お願いです、私のパートナーになってくれませんか?」

 

 えっ。

 私はてっきり、

『魔法少女なこと、内緒にしてて!』

 みたいな話になるものと。

 

「私がマミちゃんのお手伝いをするってこと?」

「いいや、あくまで協力関係さ」

 

 先ほどまで巴マミの肩に乗っていたキュゥべえが、テーブルの上に降りていた。

 

「君たちの機関……バベルの予知能力(プレコグ)では、魔女の存在に気づけない。違うかい?」

「……! 何故それを……!」

 

 この件はバベル上層部と、一部の担当者しか知らされていない。

 

「君たちの超能力は、脳の演算能力を極限まで高め能力を付随するものだからね。常識を逸脱した出来事は予見できないんだろう」

 

「最近、不審死や自殺、動機不明な事件が増えてますよね。本来、バベルが予知出来るような事件も、察知できてないのでは?」

 

「……図星よ」

 

 ここまで知られているのなら、隠す必要はない。私は正直に答えた。全て事実だ。

 

「おそらく、予知できない事件の多くが、魔女を発端とするものだろうね」

 

「魔法少女なら、ある程度魔女を感知できます。私がバベルに協力できる部分です」

 

 なるほどそれは有難い。しかしそうすると、

 

「私は何をすればいいのかしら?」

 

「魔女狩りの手伝いをお願いしたいのです」

 

 紙コップのお茶を飲み、彼女は続けた。

 

「私達魔法少女は、消耗した魔力を回復させるのに、魔女のもつグリーフシードが必要なんです」

 

「なるほど。できるだけ魔力消費を抑え、効率よくグリーフシードを集めたい、ってことね」

 

「話が早くて助かるよ。最近は、魔女と気配が酷似したものが現れて、困ってたんだ……先日のジュエルシードみたいに」

 

「……」

 

 異能案件の担当者としては、この提案は願ったり叶ったりだ。

 予知できない事情に対して、魔法少女が味方になってくれると心強い。

 

「……わかったわ、巴マミちゃん。手を組みましょう!」

 

 

 

 ブツン!! 

 

 

 

 突然、デパート内部の電源が落ちた。

 

 真っ暗になった店内では、非常口を示す淡緑のライトだけが弱々しく輝いていた。

 

 警備員らしき人が機械トラブルによる停電だと説明し、店内のお客を非常口に誘導し始めた。

 

「……ねえ、マミちゃん。これって……」

 

 私は『嫌な予感』がした。

 巴マミは、黄色く光る卵形の結晶──ソウルジェムを取り出した。ジェムは何かに呼応するように淡く光っていた。

 

「はい、魔女の気配を感じます……こっちです!」

 

 こうして、私は巴マミと手を組むこととなった。そして早速の初陣。

 ……今後の、巴マミの運命が変わる可能性がある選択だ。私は、やるだけのことを、やってみるだけだ。

 

 

―続く―

 

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