モンスターハンター〜伝説の邂逅〜   作:奇稲田姫

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記念すべき第1話です。

何はともあれ本編どうぞ


再開
1.鬼と鬼の再開


ドンドルマ近郊砂漠地帯。

 

その見渡す限り砂に覆われた地帯全域に空気をも震撼させるような特大の咆哮が響き渡った。

 

 

 

 

ギャアオオオオォォォォォォオオ!!!!!!

 

 

 

 

その衝撃波によって近くを泳いでいた数匹のガレオスがたまらず地上に飛び出してくる。

当の本人たちが何が起きたかすら理解出来ずに右往左往している中、咆哮の主はゆったりとした動作で体の向きを変えてとある一点に視線を集中させる。

グレーというより黄土色に近い皮膚は堅牢な鎧がごとく全身を覆い、2本の足に巨大な翼。

極めつけは頭部に大きくねじれるように伸びる2本の巨大な角が印象的な飛竜種に分類される大型モンスター、【角竜】ディアブロス。

 

既にガレオス達は自分よりも強大なモンスターの存在を察知してどこかへ身を隠してしまっていた。

 

しかし、そこで1点不審なことに気づくことが出来る。

 

()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()ということだ。

 

もちろん自然に折れる可能性も大いにある、が、今回はそうでは無い。

 

 

 

 

サクッ……サクッ……。

 

 

 

 

この砂漠地帯にディアブロス以外の足音が響く。

 

フィールドは広いが邪魔する輩のいなくなった砂原は時折吹く熱風の音以外思いのほか閑散としていてその足音は何故かよく響いた。

 

重量感の感じられない軽い足音は女性が纏う『依巫(よりまし)(いのり)』装備の緋袴(ひばかま)に合わせて規則正しい音を奏でている。

 

「追い詰めました。【角竜】ディアブロス」

 

サラリとした黒髪は後ろで綺麗に纏められており静かにそして鋭く光る鋭利な視線は既に角竜を収めていた。

 

そして挑発でもするかのように肩に乗せて担いできた『角』を見せるようにしてから自分の前に投げる。

 

それだけでもディアブロスの頭に血が上っていく様子が雰囲気で感じ取れた。

 

「決着の刻が来たようです。日照り散陽、熱波の舞台。貴方の意地と私の刃。雌雄を決するのはどちらでありましょうか。いざ、尋常に」

 

そう言いながら背中に背負う武器をゆっくりと外し、左腰辺りで構えた。

左手で鞘を握り、右手を柄に軽く添える。

それが居合の構え。

 

ディアブロス(暴君)も向こうで準備万端と言わんばかりに突進の準備をしている。

 

最後の決戦に合図は不要。

 

グンと力強く地面を踏み込んだディアブロスが突進を開始する。

それは自分の前に立ちはだかる敵を、自分の角をへし折った狩人を、そして自身をここまで追い詰めたハンターを真正面から討ち滅ぼさんとするような。

そんな巨大なプレッシャーにもものともせず女性は携えた武器、太刀『たまのをの絶刀の斬振』に手をかけてゆっくりと瞳を閉じて神経を研ぎ澄ます。

 

ディアブロスの突進のスピードと破壊力は凄まじい。

あんな装甲(筋肉)の塊のような巨体が猛スピードで衝突してくるとしたら当然まともに受けたらいくら装備を着ていようが関係ないだろう。

ましてや彼女が纏う依巫・祈装備のようにほぼ布に近い素材が大半を占めるものであれば尚更。

一撃でお陀仏になりかねない。

 

それでも彼女にとって居合を待つと決めた以上既に後戻りは出来ないでいた。

外せば終わり。

 

しかし、彼女の口からは不安の言葉は一言たりとも出ることは無かった。

 

「手傷を負い、追い詰められてもなお真っ向から。真正面から私を討とうとするのですね。その誇りと勇姿、しかとこの目に刻みつけました。良き好敵手、【角竜】ディアブロス。お命、頂戴します!」

 

相手が真っ向から来るのであれば自分も正面から切り伏せる。

彼女にしては珍しい立ち回りといえばそうなのだが、今ここには1人しかいないゆえいつものような立ち回りは出来ないに等しいのだ。

 

激しい地響きと共にディアブロスが猛スピードで迫る、同時にカッと目を見開いた彼女も体勢を低くして地面を蹴った。

 

 

 

ブオオォォォォォオオオオオオ!!!!!

 

「流れる刃流水の如し!居合抜刀…………」

 

 

 

両者が真正面から急接近し、そして『キン!』という金属音を残して一瞬ですれ違う。

 

居合抜刀斬りによって水平に振り抜いた彼女は俯くようにしながら片膝をつき、ディアブロスも突進の勢いを殺すために両足でブレーキをかけていた。

 

「…………気刃斬り」

 

とはいえディアブロスの方は何事も無かったかのように威嚇をしながら振り返り再度突進の準備をし始めている。

 

しかし女性の方はと言うと、静かに一言呟くように言葉を漏らしながら後方を確認することなく刃についた肉片を血とともに振り払っていた。

 

そして鮮やかな刀捌きでスルスルと腰の鞘へゆっくりと戻していく。

 

「…………『会者定離(えしゃじょうり)』。生きとし生ける【モノ】に訪れる無常の別れ。餞別は彼岸を渡る片道切符。…………………………………どうか安らかに、お眠りください。南無……」

 

パチン。

その言葉と共に太刀が綺麗に鞘の中へ収まった。

直後。

 

 

 

ヒュオッ!。

バシッ!!

 

 

 

女性の背後で風切り音が鳴り響く。

 

同時にディアブロスの断末魔が快晴の空へ消え、ドスンと巨体が地面へ倒れ伏す音が木霊した。

彼女の最後の一撃によってディアブロスの息を繋いでいた最後の糸がプツンと事切れる。

 

居合抜刀気刃斬り。

 

太刀が誇る見切り技の中で納刀した状態から繰り出すことが出来る抜刀居合斬りで、タイミングよく放てば攻撃の間に出来る僅かな隙間へ身体を潜り込ませて回避と同時に相手にダメージを与えられる技である。

 

研ぎ澄まされた刃は流れるように相手の攻撃を潜り抜け、的確に弱点へヒットする必殺の一撃。

それほどまでに彼女は一般に言われる『見切り斬り』の力を昇華させていた。

 

「…………ふぅ。ようやく倒せました。さすがに1人では苦戦も強いられますか…………熱っ……袴を着てても膝が焼けてしまうとは、砂漠、恐るべしですね」

 

ゆっくりと立ち上がり、膝に付いた砂を払い落としながらポーチの中身をチェックしてアイテム類の使用した個数を確認していく。

 

「閃光玉が4個………………シビレ罠に落とし穴。回復薬グレートを何個か使いましたね。今回は1人でしたので粉塵類は使いませんでしたか。あぁ、そうだ、角角。せっかく折りましたのでありがたく使わせて頂きましょう」

 

その後、1度ディアブロスに向かって手を合わせてから素材の解体を行い、使えそうな物だけを選別してポーチへ詰め込んだ。

 

「さて、こちらは片付きましたが………………()()1()()()()は大丈夫でしょうか」

 

クーラードリンクを飲み終えて、再度ディアブロスの亡骸に向かって手を合わせてからゆっくりとその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

彼女の名前はヤクモ・ミナシノ。

偶然が重なったことで集合し、数々の伝説を打ち立ててきたいわゆる【伝説世代】の一角を担う太刀使いの女性であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンドルマ大衆酒場。

 

ついでにこの大都市ドンドルマにおける近郊地帯のモンスター出現情報や討伐依頼等のハンター御用達になっているこの場所に、本日はとある男性が1人ふらりと現れる。

 

見たところ20代前半と見える青年は防具でがっちりと固めており背中にはハンターらしく武器を背負っていた。

 

纏う装備はこの辺り、つまりドンドルマ近郊ではまずあまり見かけることが無いような装備故に誰も彼の事を好機の目で見るような輩は居なかった。

《ゴシャ・S》装備と呼ばれる装備はその全身の特徴から一言で言い表すのであれば『青鬼』であろう。

ドンドルマから遠く遠方の地である『カムラの里』近郊の氷雪地帯でよく出現報告が相次いでいる【雪鬼獣】ゴシャハギの素材を主として使用されているため、全体的に寒色で統一されているのが特徴だ。

あとはメイルの肩部に揺れる白銀の毛皮と鬼のような形相をしたブルーのヘルムだろうか。

 

武器は盾斧(チャージアックス)

装備同様【雪鬼獣】ゴシャハギの素材を使用した盾斧『ゴシャガガシャ』。【雪鬼獣】武器派生の最末端に位置するその武器は一撃必殺の榴弾ビン爆発に、凍えるような氷属性が特徴的な武器だった。

 

男はカタンとカウンター席に座ると麦酒(ビール)を注文し、はぁと大きなため息を漏らしてから頬杖をつきだした。

 

それから運ばれてきた麦酒を受け取ると、カウンターの向こうでせっせとグラスを拭いていた女性に向かって探し人がいるんだけどと話を切り出した。

 

「なぁ、知らないか?ここにすげぇ腕の立つ太刀使いがいるって聞いたんだけど、そいつどこ?あー、そうあれあれ、【伝説世代】とかなんとか言われてるって言う」

 

男の突飛も無い一言に一瞬だけ目を見開いた女性であったが、すぐに理由を察知してにこやかな笑顔に戻した。

 

「あ、もしかして依頼ですか?」

 

「え?あぁ、いやそういう訳じゃ…………」

 

「それならそうと早く言ってくださればいいですのに。そろそろ訓練クエストから帰還予定ですのでその時に直接頼むとよろしいですよ」

 

「いやだから………………って、()()クエスト!?」

 

最初の突飛な一言に続いていきなり驚いたように声を出したかと思うとカウンターをバンと叩いて勢いよく立ち上がった彼の元に大衆酒場内の視線が一気に集まる。

 

その視線に気づいたのか男はこほんと1度咳払いをしてから席に座り直した。

それからずいっとカウンターから身を乗り出すと声のボリュームを絞りながら質問を投げかける。

 

「…………ちょ、ちょっと!?あの『伝説世代』がなんで訓練クエストなんかやってんの!?え、もしかして1から自分を鍛え直します!とか言ったの!?言っちゃったのか!?……………………言いかねないけど

 

「はい?」

 

「こっちの話。なんでもない。で?文字通り1から鍛え直し始めちゃったわけ?そいつ」

 

「い、いえ、そういう訳ではなく。恐らくお探しの方は【ヤクモ・ミナシノ】という人だと思うのですけど。今はこのドンドルマの新人教育のために教官職に就いていただいているのです。まぁ、あの方の()()()()()()は少し…………と言うかかなりハードなものだとは思いますが、弟子入志願であれば頑張ってください」

 

「いや俺は違うよちょっとそいつに会いたいと思っただけだから」

 

「ヤクモさんにですか?それはまた珍しいですね。防衛戦か何かの救援要請ですか?」

 

「違う」

 

「であればクエストのパーティの依頼ですか?」

 

「それもNo」

 

「あ、もしかして自分の代わりに…………とか?」

 

「…………なんでこうクエスト絡みしか出てこないんだよ。まぁいいや、ここで待ってれば来るんだろ?じゃあ待ってる。あ、それと麦酒(コレ)もう一杯〜」

 

「あ、はい。かしこまりました」

 

2杯目の麦酒を待ちながらふぅと物思いに耽っていると大衆酒場の入口の扉がギィッと押し開けられる音が耳に飛び込んでくる。

背後から聞こえるその音に青年はまた客の追加かなんて思いながら聞いていると、聞き覚えのあると言うか()()()()()()()声が飛び込んできた。

 

 

 

「ヤクモ・ミナシノ、ただいま戻りました」

 

 

 

青年は思わず椅子から転げ落ちそうになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタン!

 

クエスト精算のために訪れたドンドルマ中心街の大衆酒場へ足を運んだ私だったが、入った途端に何故かいきなり椅子から転げ落ちそうになったカウンター席の青年に視線が向いた。

 

「(ん?)」

 

とりあえず気にはなったがまずはクエストの精算と思い私は酒場で盛り上がっているお客様から労いの言葉を貰いながらクエストを受注したカウンター奥の女性(受付嬢)のところまで歩く。

彼女はちょうど例の青年に麦酒を渡してから私の方へやってきた。

 

「お疲れ様ですヤクモさん」

 

「はい。お疲れ様です。本日の訓練クエスト終了しました。ディアブロス二頭狩猟にて1頭討伐、1頭は捕獲してまいりました。後ほど確認をお願い致します」

 

「はい。今確認しますね…………」

 

そういうと彼女はカウンター奥の通話機を取って2、3言確認を取るとすぐに戻ってくる。

 

「確認取れました。報酬はいつもの場所に入れておきましたのでご確認ください」

 

「ありがとうございます。それではまたお願いします。私はこれで」

 

そう言って外で待っている自分の教え子3人の元へ戻ろうと踵を返そうとしたそんな時。

 

「あ、そういえば…………あちらの方がヤクモさんにお会いしたいと」

 

「あちらの方、ですか?」

 

頭に疑問符を浮かべながら受付嬢の指さす方を見ると、先程椅子から落ちそうになっていた青年がバツが悪そうに苦笑いを浮かべて「よ、よぅ……」と軽く手を上げていた。

 

先程は背後からだったため顔までちゃんと見ることは叶わなかったが……………………見覚えのあるその顔に一瞬にして顔が紅潮してしまうのがわかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ド、ドド、ドラコさん!?どうしてここにいるんですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

私は咄嗟のことで自分から質問を投げかけたにもかかわらず、その答えを待たずに大衆酒場から勢いよく飛び出した。

 

 

 

 

…………で、数秒後勢いよく戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜も深くなり始め賑やかだった大衆酒場にも徐々に静寂が近づいてきていた。

 

揺れるランプの炎に照らされながら酒場の一角で2人のハンターは思い出話に花を咲かせていた。

 

「ぷはぁ〜うまっ!やっぱこの麦酒!すげえ美味っ!!」

 

「それはそうですよ。なにせここの名物ですから。にしても驚きましたよ。来るなら来るって事前に言っておいてください。ドラコさん。そもそも籍入れたばかりだと言うのに良いのですか?こんなところで」

 

『ドラコ』と呼ばれた先の青年は小タル型のジョッキを豪快に煽ってからダン!とテーブルの上に下ろす。

彼もまたヤクモ同様【伝説世代】と呼ばれる世代の一角を担っているほどの実力者に他ならない。

つまみに出しておいたフィッシュ&チップスを口に放り込みながら問の答えをドラコが述べる。

 

「まぁ、正直に言えば………………良くはねぇわな。帰ったら角生えてるかもしんねぇ。ゴシャハギみたいな顔してたらどうすっかな…………」

 

「はぁ……」

 

両手の人差し指を立てて鬼のジェスチャーをとるドラコにたいしてヤクモは片手で頭を抱えながらため息をついた。

 

「まぁまぁお前が気にするところじゃねぇよ。俺はただ近くに来たからこの街に寄っただけだし、そもそもここにお前が居座ってることも全然知らなかった」

 

「そうだったのですか」

 

「街に入ってお前の名前を小耳に挟んだから寄っただけだ。()()撃退したのは聞いてるけど、ここを拠点にしてるとは思ってなかったんだよ」

 

そう言って再び小魚を口の中にほうり込むドラコ。

 

「なんでも、ヤクモはここで教官してんだってな」

 

「よくご存知で」

 

「さっき受付嬢(あの子)から聞いた」

 

「あぁ、なるほど」

 

「で、今日訓練クエスト行ってたんだろ?」

 

「はい、そうですが…………それが何か?」

 

そこまで言うと、ドラコが頬杖をついてジト目になった。

 

「………………………………訓練クエストでディアブロス2頭とか、俺聞いたことねぇんだけど」

 

至極もっとも。

 

「それは、まぁ、私が担当している子達しか行っていませんので」

 

「一応聞いておくけどさ、卒業試験とかそのレベルのヤツらの、だよな?」

 

「いえ、だいたい中級レベルのクエストとして選びました」

 

「お前…………………………意外と鬼か」

 

「そんなことありません。私が教えたことを全て実践すれば難なくこなせるレベルです。現に教え子(あの子)達はやり遂げていますし。まぁ、とは言え流石に同じエリアに2頭重なってしまった時は崩壊寸前になってしまったので仕方なく片方は私が相手をしましたが」

 

「それは『やり遂げた』うちに入ってねぇよ。…………崩壊寸前って可哀想に。せめて1頭にしてやればよかったじゃねぇか」

 

「…………確かに、そうですね。考えておきます」

 

顎に手を当てて少し考えをまとめるヤクモを見ながらドラコがため息をついた。

 

「まぁそれはいいや。そんで?ここに残ってるのはお前1人?」

 

「と言いますと?」

 

「他の2人は?アイツらもここを拠点に?」

 

その言葉を聞いてヤクモは少し間を置いてから話し出す。

 

「…………あぁ、アカシさんとレマさんですか。いえ、あのお二方はあの後しばらくしてから旅立たれました。今頃どこで何をしているか……………………」

 

「そっか、あいつらにも久々に会えるかと思ったんだけど…………それはまたの機会にってか」

 

「ですね。申し訳ありませんが」

 

「謝ることは無いさ。仕方ない」

 

はい、と短く返してヤクモがフルーツジュースのグラスに口をつけた。

 

「……それはそうと、ドラコさん聞きましたよ、すごいじゃないですか。体長400m超えのモンスターの迎撃に成功したと。まだ面と向かって言えていませんでしたね。おめでとうございます」

 

「ん?あぁ、あれか。そんな褒められたものじゃねぇよ。あれこそ崩壊寸前だったからな。ギリギリ首の皮一枚で凌ぎきったって感じだったし。マジであれは…………………………………………流石に死ぬかと思った」

 

口元をひくつかせながら視線を逸らすドラコの姿にふと笑みを零した。

 

「おい笑い事じゃないぜ?自分の墓石はどんなデザインにしようか考えてたくらい切羽詰まってたんだからな!無理だぞまたあれやれって言われても」

 

「でも、そこそこ余裕があるじゃないですか」

 

「はぁ〜………………お前にはわかんねぇんだよ………………あのデカさ間近で見てみろって、腰抜かすぞ。攻撃してんのにダメージが入ってるかどうか全然わかんねぇんだから」

 

「その気持ちはすごく分かります。………………ドラコさんが遭遇した古龍の名前はなんでしたっけ?」

 

「あぁ、ダラ・アマデュラって言ってたっけな、確か。別名【蛇王龍】だってさ。マジでヘビのでかいヤツって感じ。戸愚呂巻いててさ」

 

両手を広げてそのモンスターの大きさをアピールするドラコ。

 

「………………あ、私蛇はNGですのでまた現れたらすぐにドラコさん呼びますね」

 

「待った、それはやめて。せめて一緒に戦ってくれよ!?」

 

「いや私蛇だけはどうも…………」

 

「………………救援(ヘルプ)来ても絶対に蹴ってやるからなそんな依頼!」

 

ため息混じりにジト目を向けるドラコから視線を逸らしつつ私も小魚を口に放り込む。

 

「そういやそっちの方はなんだっけ?なんか街の方も火事が多発して大変だったって聞いてんだけど」

 

ドラコの言葉であぁ、と答えながら当時の状況を振り返る。

 

「そうですね。あの時は大変でした。特に火薬庫に残されてた重油のような液体が静電気や衝撃で発火して………………。あ、私達がお相手した古龍はその後の調査でゴクマジオスと命名されたようです。別名【巨戟龍】、と」

 

「【巨戟龍】ねぇ………………というか火薬庫に重油?なんだよその爆発ハッピーセットは」

 

「はい。なんでも、そのゴグマジオスは主食が火薬らしくて。まぁ、厳密には火薬に含まれる硫黄を主食にしていたようですが」

 

「火薬を主食って……………………まじかよ」

 

「はい。加えてその古龍の身体から重油が吹き出ているらしく、それが火薬庫に残されてたものと同じだそうで。ですからあの時期は短期間に街の火薬庫から火薬が綺麗さっぱり消失するという事件も起きてまして。それもこれも原因はその古龍でしたが。ついでにこの街に保管されていた最古の撃龍槍も盗まれていたようで、それについてももう話すのに時間がかかると言いますか…………………………。あの時はまずドンドルマ全域で火薬を盗んだ犯人探しから始まりましたし…………。容疑者全員にアリバイが発覚して迷宮入りかと思いきや、撃龍槍(アレ)が消えたことでようやくモンスターの仕業だと………………………………。そこからまた長くて……」

 

それからほんの数秒間の静寂が二人の間に訪れ、ドラコがぽつりと言葉を零した。

 

「…………古龍って」

 

「…………はい。なんでもありです」

 

そう言って2人同時にため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやせっかく再開したのに乾杯してないよな。ヤクモは酒飲めたっけ?」

 

「一応飲めますよ」

 

「じゃあ………………あ、すみませーん麦酒2つお願いしまーす!」

 

ドラコがカウンター内の女性、つまり私が先程クエストを精算した受付嬢さんに向かって大声で注文を伝える。

はーいという返事と共にパタパタとカウンターの向こうで準備を始める彼女を見てから視線を戻した。

 

注文の品は割と早く到着した。

 

「おまたせしました麦酒になります」

 

「お、きたきた〜」

 

「ありがとうございます」

 

ぺこりと頭を下げて戻って行った受付嬢さんを見送って、もう乾杯する気満々のドラコに合わせてジョッキを持ち上げた。

 

「へへ、んじゃ改めて、生きてることに感謝して」

 

「はい、お互いが生き残っていたことに感謝を込めて」

 

ふっと小さく笑い合い、互いのジョッキを軽く打ち合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「乾杯」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢

 

 

 

数分後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンドルマ大衆酒場にて。

ドラコ・ラスターは壮絶に後悔していた。

 

何に、それは……………………

 

 

 

 

 

 

「えぐっ…………ぐすっ………………ドラコさん……無事で……ぐす、無事で本当に……良かった…………ぇぐっ、ぐすっ。わだじ、皆様のことが心配で心配で……」

 

「っ〜〜……………………」

 

「私たちの世代は……ぐす……みんな無茶ばかり…………ですし…………あぅ……ぐすっ!…………」

 

「ん〜あー、そうだよな、そりゃ心配するよな………………!」

 

「あの時も………………アカシさんも、レマさんも、…………無茶して、突っ込んで………………返り討ちにあって………………ぐす……私、………………ぐすっ……私…………頭の中真っ白に〜………ぃひぐっ…」

 

「ほらほら泣くな泣くな。大変だったなお前も」

 

「初めての接敵だったので………………ぇぐっ…………慎重に行きましょうって……言ってたのに、うぅっ………………私の粉塵があと少しでも遅れていたらと考えてしまうと……………………ぐす……私、私…………ぅう、ひぐっ、ぐす………………皆さんに、合わせる顔が………………ぐす……無ぐて……」

 

「大丈夫だからさ。ほら、あの二人だって今こうしてちゃんと生きてんだろ?それはいいことじゃねぇかよ、な?」

 

………………ヤクモが『泣き上戸』だったということに、だ。

会うのも久々すぎて頭からすっぽり抜け落ちてしまっていた。

 

「ど、ドラコさん…………うぅ……ひぐっうぅ…………ぅ、ぐすん…………ひぐっ…………う、うぅ……」

 

ついには両手で顔を覆いながら泣き出してしまったヤクモに溜息をつきながらドラコが後頭部を搔く。

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで【伝説世代】の2人による久方ぶりの再会は酒が入ってひたすら泣きながら愚痴をこぼすヤクモが疲れ果てて寝てしまうまで続いた。




お疲れ様でした。
後書きの姫です。


………………ヤクモは泣き上戸だったんですねw

まぁそれは置いておいて、1話目は回想回と言うか酒場で思い出話に耽る2人の様子を描きたかっただけです。

『ドラコ・ラスター』考案のたつのこブラスター様、今はまだ名前だけの登場でしたが『アカシ・カイト』考案の魚介(改)様、『レマ・トール』考案のMegapon様、ありがとうございました。
後ろのふたりに関してはまたヤクモと共にメインで書く予定がありますのでお待ちください。
ドラコさんもこの先ちょくちょく出番があるかもしれません。

まだ出せてないキャラもありますが、気長に待っていてもらえると幸いです。

ちなみにこの時点でのヤクモの年齢は24歳となっております。

それではこの辺で、お疲れ様でした
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