メインとなるのは第3章時点ではまだ「新人」の肩書であった10人の弟子たちです。
無情な現実と止まらない時間の中、彼ら、彼女らは何を想い何を学んでいくのでしょうか。
第4章『霊峰に刻む円卓の絆』開幕。
千剣山。
ここは天空山の近くに位置する広大な連邦地帯の一角にして頂点。
ところどころ歪な形をした山が天を衝かんばかりに立ち並び、上にも下にも雲の海が見渡す限りに広がって上空の雲からは絶えず雷鳴がとどろいていた。
落雷は連続で降り注ぎ、ただでさえいびつな形の地形をさらに破壊していく。
キィェェェアアアアアアアアア!!!!!!
そんな環境のなか、落雷の音をかき消すような咆哮が地形を揺らした。
千剣山の山に自身の身体をずるずると巻き付けながら目の前の超巨大古龍が部位破壊によって傷だらけになりながら自身に向けて敵意を向ける1人のハンターをにらみつける。
ザクッ…
よろよろと太刀『たまのをの絶刀の斬振』を杖代わりにして立ち上がる彼女の視界は既に右側が暗く闇に落ちていた。
装備は至る所にダメージの後が散見され、ボロボロの『依巫・祈』のメイルガードとアームガードはもうほとんど無いに等しい状態となってしまっている。
ギリギリ大事な部分はサラシによって隠されてはいるものの、それも真っ白だった頃の面影が一切なく、彼女の血によって真っ赤に染まっていた。
左腕の感覚も無い。
それもそのはず。
今まで自分の狩りを支えてくれていた左腕は二の腕あたりからバッサリと無くなっており、なにか鋭利なもので食いちぎられた痕跡が残っていた。
その代わり、彼女の隣には綺麗に切断された対面する超巨大古龍の尻尾の一部が転がっていた。
「はぁ……はぁ…………っ……」
既に時間の感覚はなくどれほど経過しているのかさえ不明だ。
撃退するかしないかのレベルではなくなっている。
狩るか狩られるか、やるかやられるかの極限状態。
体力も精神力も限界を超えて意識ですらやっと保っている状態でも、本能と闘志だけで彼女は動く。
「………………っ!」
それに応えるように超巨大古龍ももう一度咆哮を放ち、ガバッと開かれた口内にエネルギーをチャージし始める。
「………………」
この一撃が最後の一撃になる。
そのことはお互いに理解していた。
超巨大古龍のエネルギーチャージの予備動作は次にフィールドを大きく薙ぎ払う超極太の螺旋状閃光レーザーの前兆。
体力が余っている状態であるならば頭を動かしながら周囲一帯を薙ぎ払うレーザーも、限界体力の極限状態ではおそらく一撃撃つのがやっとだろう。
この1点に全ての力を収束させる。
彼女は壊れた人体のリミッターの恩恵を受けて、痛覚も感じなくなった両足に力を込めて走り出す。
居合を放つにも鞘は山の下へ落下しているため手元に無く、武器の切れ味もほとんど残っていない。
それでも、最後に一撃を。
これによって周囲の村やそこに住む人々の脅威が無くなってくれるのなら!
彼女の最後の想いに光が宿る。
次の瞬間超巨大古龍のエネルギーチャージが終了した。
同時に落雷の音すらも飲み込むほどの轟音とともに螺旋レーザーが発射された。
タイミングを外したら、そこで終わり。
一気に真横へ回避し、間一髪のところでレーザーの射線上から身体を逃がして風圧を利用しながら近くの壁へ飛ぶ。
そのまま壁を走りながらジャンプで足場へ。
休む間もなく握りしめていた太刀を超巨大古龍の頭上高くへ向けて大きく投擲した。
幸いにもこの大技である螺旋レーザーの発射後は僅かな硬直時間が存在していることは確認済みだ。
彼女はその隙を見逃さずポーチの中からギリギリのところで生き残っていた最後の翔蟲を使って今しがた自分で投げた太刀を追い掛けるように跳ぶ。
翔蟲の効果が切れると共に最後の翔蟲も絶命してしまったが、代わりに投げた太刀に追いつくことが出来た。
その太刀を空中…………超巨大古龍の頭上高くのところで引っ掴み、刃を下に向けて大きく振り上げる。
「…………こ…………れで…………!」
重力と落下の威力を上乗せし、今の彼女に出来る最大の一撃を螺旋レーザーの硬直が解けきらない超巨大古龍の脳天、度重なる戦闘において脆弱となった部分へ向けて渾身の力で刃を突き立てた。
その瞬間。
衝撃波が周囲に大きく広がり、この一瞬だけ音も消え去る感覚が芽生えた。
しかし、すぐに現実に戻り彼女の一撃を受けた超巨大古龍が衝撃によって激しく頭を振り乱したことによって抵抗できずに彼女の体は簡単に宙を舞った。
運が味方したのかそのまま山から落下するのではなく、ギリギリのところで残っていた岩盤に叩きつけられる。
「っ…………かはっ……!」
ドサリと地面へうつ伏せに倒れ。
朦朧とする意識の中で、視線を周辺を破壊しながらのたうち回る古龍の方へ向けた。
…………ただ、その先を確認することも無く意識は闇の中へ落ちて行った。
「”見事也”」
今回少し短いですが……