今年もどうか、どうかよろしくお願いします
プロローグ最終話、始まります。
おそらく次から本編となるでしょう、多分!
「これより活動が再活性しつつある千剣山調査のブリーフィングを開始する!参加するハンター諸君は部屋中央の机の周辺に集まってくれたまえ!」
イノシマを含めて4人で話し込んでいると、先ほどまで白衣を着た古龍観測所所員と打ち合わせをしていた《ミヅハ》装備の女性、イノシマ曰くイズモと呼ばれた女性ハンターが大きく声を上げた。
部屋の中に召集されているハンターは現在の人数でイノシマを含めたドラコ、クリスティアーネ、イスミの4人に加えて弓使いのハンター、ライトボウガンを携えたハンター、それから片手剣とハンマー使いのハンターたち4人で構成ているらしいパーティとヘヴィボウガン、
それ故に、確かに実力的には引けを取らないかもしれないがイノシマ達4人が若干浮いてしまっているのは仕方のないことかもしれない。
「貴君に集まってもらったのはほかでもない、ここ数日の間に千剣山にて不穏な動きを察知した」
「うむ。それは聞いている」
ガタイの言いハンマー使いの男性がイズモの言葉に肯定を返す。
それに対してイズモは無言のまま頷き返した。
「調査隊の報告によると【蛇王龍】ダラ・アマデュラが活発化しているらしい。そのことを調べてもらうために先日先遣隊を派遣した…………のだが」
「連絡が取れなくなった、と」
弓使いの女性ハンターが顎に手を当てながら言葉をつなげた。
「その通りだ」
険しい表情を崩さないままイズモが目を伏せる。
「ん~、たしか~その、ダラ・アマデュラだっけ~?は古龍種だったよね~?どうしてそれが今になって、なんだろうね~?」
ガンランス使いの小柄な女性が頭に人差し指を当てながら唸る。
「詳細は不明と言わざるを得ない。なにせ調査をしてもらうために派遣した先遣隊からの報告が途絶えたのだからな。それ故に今回の狩りは討伐・撃退が主目的ではない。先遣隊の救助となる。全員それを念頭に置いていてくれたまえ!」
「"それは理解したでありますイズモ殿"」
それから話し合いはスムーズに進んでいき、ほかのベテランハンターたちの質問や意見交換も滞りなく進行されていった。
時々イノシマも話に割り込んで意見を述べてはいたが、ドラコ、イスミ、クリスティアーネの三人は部屋のいたるところから発せられる言葉を聞き逃さないようにすることに集中するので手いっぱいとなってしまう。まだ、いいとこ育ちのクリスティアーネはどうにか状況の整理をしながら聞けてはいるらしいが、イスミのほうは舌打ちをしながら腰に手を当てて肩を落としており、ドラコに至っては頭から湯気が出ていた。
しばらく時間が過ぎ、話し合いが難航し始めたころ。
「"そう言えば少し気になったのでありますが、ここにいるハンターたちで全員でありますか?"」
イノシマが左手を軽く上げながら一歩前に出た。
「あと一人いる。バルバレに今回のことで人員を要請したところこの場所の周辺の町や村すべてに緊急救援要請を送ってくれた。それに応じてくれたハンターが一人いるな。フオル村と言う村の専属ハンターらしいが。猫の手も借りたいこの状況一人でも人数が多いことに越したことはないからな」
「"そうでありましたか。余計な口出し申し訳なかったであります"」
「…………ふぅ。こほん。とにかくその応援ももうすぐ到着するとの報告がありま…………あった」
わずかに眉をひそめたイズモがため息交じりに片手で頭を抱えた。
なぜか語尾も若干言い直していたが。
「そろそろ……」
そう続けようとしたところで部屋の入口に一人のハンターが現れた。
「悪い!道が混んでて遅れちまった!」
漆黒の《デスギアS》装備に身を包んだ男性は肩で息をしながら転がり込むように入室してくる。
――――――
――――
――
※
…………それから数日後のことでした。
会議にて決定された先遣隊の救出作戦が予定通り決行されたのは。
この作戦は過去にさかのぼったとしても他に類を見ないほどの大掛かりな作戦となり、動員されたハンターの数もそれ相応にかなりの数となったこともあって『千剣山大規模救出作戦』としてのちに語り継がれていくことになりました。
ハンターから古龍観測所の職員に至るまでが動員されたと聞いています。
実績がなく未熟であった私たちが召集されるわけもなくその現場に立ち会うことはできませんでしたが、作戦が無事に完遂されたのちにドンドルマでその結果を聞くことになりました。
……私たちにとってはこの先絶対に忘れられないであろう、衝撃的な事実とともに……。
あれからまた数年の歳月が流れた。
コンコン。
「フィレット、いるか?」
ちょうど自分のデスクでギルドマスターから渡された素材の在庫管理に関する書類を書き終えたところで部屋の扉がノックされて聞き覚えのある声が飛び込んできた。
「いますよ~」
「入るぞ」
「はい~」
キリがよく一息つきたいと思っていたところだったのでちょうどいいタイミングであった。
扉が開き、赤いギルドナイト装備と背中にランス『ギルドパレスタワー』を携えた釣り目の女性が入室してくる。
「今狩りから帰ってきたんだがお前に…………っと、取り込み中だったか?」
「いえいえ~、ちょうどいまキリがついたところですよぉ~。休憩したかったところです~」
女性は私の隣に積み上げられた書類の山を一瞥してからクスリと表情を崩した。
「フッ。また、大量に押し付けられたようだな」
「新人とはいえ酷使しすぎだと思います~。はぁ~」
「違いない。だが、すまないな、本当なら私がやらなければいけない仕事なのだが…………どうも私は合わなくて」
「大丈夫ですよ~。人には向き不向きがありますから~。そもそも、私たちの中でこんな地味な仕事が得意なのは私かエミールさんのどちらかしかいませんし~?皆さん揃いも揃って書類仕事に向いていないんですから~」
「面目ない」
ため息をつきながら女性はテンガロンハットを入り口近くの帽子掛けに掛け、部屋に備え付けの椅子にすとんと腰かけた。
「お気になさらず~。そういえば本日の狩りの結果はどうでしたか~?ミコさん~。いつもどおりでしたか~?」
「ん?あぁ、そうだな。今シオンとヘラが酒場で報告を行っている最中だ、もう少ししたら
「そうですか~、相変わらず流石ですね~。あれ?ルシアさんも一緒だったのでは~?」
そういうと椅子に腰かけた女性、ミコはため息をつきながら天を仰ぐ。
「…………まさか~」
思い当たる節が多く私も思わず苦笑いを返してしまった。
「そのまさかだ。やめておけと言ったのに昨日無理して飲んで酔いつぶれたよ、見事に。自分が下戸だって認識できてないのかね、あれは」
「飲めないわけではないのですけど、弱いですからね~ルシアさんは~。ということは~、今自室でうんうんうなりながら吐いてるところですね~。まぁ、ルシアさんはあの性格ですから~。うれしくなるとつい感情的になって、自分のことを忘れてしまうのかもしれません~」
勘弁してくれ、とミコは言うと思い出したように手を叩いた。
「あぁ、すまない。そういえば客が来ていたことを忘れていた」
「それは…………一番忘れてはいけないことですよ~、ミコさん」
「だからすまないと……、まぁ、そんな感じだ、ちょっと呼んでくる」
「わかりました~」
ミコが退出してから少しの間部屋の中に静寂が訪れる。
開けっ放しになっていた窓からはわずかに風が流れ込んできた。
ふと右側の壁に安置してある一振りの太刀に視線を移し、ゆっくりと立ち上がって歩み寄った。
自分が使用している太刀『ギルドパレスサーベル』とは別の太刀であり、鮮やかな流線形と泡狐竜独特の美しい色彩をちりばめた太刀。
もう一度…………
その太刀に手を伸ばしかけたその時。
「入るぞフィレット。フィレット?」
「え!?あ、その、なんでしょうか~?」
「…………来客だ。私は席を外す。シオン達と合流してルシアのところに行ってくる」
「は、はい~。お願いします~」
ミコが入室してきたことで反射的に手を引っ込めた私を一瞥し、後から入室してきた《デスギアX》装備の男性ハンターへ丁寧に一礼してから「失礼します」と一言残して退出していった。
《デスギアX》装備の男性ハンターもそんなかしこまらなくてもいいとジェスチャーをしつつミコの退出を見送った。
「珍しいですね~、あなたが私を……いや、私
「あぁ、まぁ、近くを通りかかったもんで。俺の口から伝えたてまえちょっとは責任感じてるからな。依頼ついでに様子を見に来たんだよ。あれから変わりはないか?」
「
「言葉の綾だよ、真面目にとるな」
「存じておりますよ~。それで、ふぅ、変わりはないか、という問いに対する答えですが……」
「……」
「あれからは変わりました~。気持ちの整理もつきましたし~、ちゃんと前は向けていると思います~」
「ほかの奴らもか?」
「一応は~」
「釈然としない答えだな」
「
話を聞きながらヘルムを外していた男性は記憶を探るように顎に手を当てると、あぁ、あいつか、と手をポンとたたいた。
「あいつか。あぁ、まぁ、あの日も一番取り乱してたもんな……。リディは今日は狩場?」
「いえ、今日は休暇のはずですよ~。一昨日狩りから帰ってきたばかりなので~」
「そっか、じゃあちょっと様子を見に行ってみるか」
「そうしてあげてください~」
腰に手を当てて考え込むようにつぶやく男性へ微笑み返す。
そんな時。
再び部屋の扉が開かれた。
「フィレットいるか?書類が出来上がってたら確認したいんだけど…………って、あれ?久しぶりですねディードさん」
「あ、エミールさん~」
「よぉ、エミール。お前も元気か?」
「まぁ、ぼちぼちですね。それよりどうしたんです?僕たちに救援要請ですか?」
入室してきたメガネの青年、エミールに向けてディードと呼ばれた男性は小さく鼻を鳴らした。
「バカ言え、俺が受けているレベルの依頼に簡単に連れていけるか。もっと経験と実績を積んでから出直してこいよ。ククク」
「わかってますよ、言ってみただけです。…………っと、そうそう、フィレット、書類は出来た?」
「終わってます~。机に置いてあるので今お渡ししますね~。っと……これ、と、これ、これ、あとこれ、ですね~」
エミールに言われ手早く机の上から書類をかき集めると、軽くトントンと整えてからエミールに手渡した。
「はい、こちらですべてです~。漏れやミスなどがあればまた言ってください~」
「了解。確認しておくよ。あ、すみませんディードさんせっかく来てくれたのに、ご挨拶だけになってしまって。ちょっと今日はいろいろと忙しくて……」
「おう。気にするな。俺はあと2、3日は滞在予定だから暇なときでいいよ。話があるなら」
ありがとうございます、と短くお礼と会釈を返してエミールが手の甲で眼鏡を直しながら退出していった。
「はぁ、頑張ってるんだなお前らも。というか、全員そろってギルドナイト試験パスしたって聞いたときには思わず変な声が出ちまったよ」
「?変ですね~。私達ギルドナイトの情報は世間には出回らないはずですが……」
「
「……いやはや機密とはこれ如何に~……」
思わず苦笑いを浮かべながら頬を掻いてしまう。
「違いねぇ。俺らこの機密情報知ってるってことで暗殺されたりしないよな?」
「ギルドマスターさんがお送りしたのであれば公認でしょうし、ないとは思いますが……」
「が!?が、なんだよ」
「私としましても新人ですので確証はお伝え出来ないんです~、と」
「……よし、抗議だな。ギルマスはどこだ」
「本日であれば…………確か」
「冗談」
そう返すとディードは小脇に抱えていたヘルムを持ち直し、小さく首を鳴らした。
「さてと、
それから頭をがりがりと掻きながら言う。
「2、3日は滞在予定なのですよね~?」
「まぁな、狩りで消耗した物資の補給には都合がいい場所だからな。さて、そんなわけで、そろそろ行くわ。邪魔したな」
「いえ、わざわざ気遣っていただきありがとうございます~」
私がそう返すと、ディードは無言のまま片手を上げてからくるりと踵を返した。
それから扉に手をかけたディードが唐突に私の名前を口にする。
「……フィレット」
「?なんでしょう~?」
それからしばしの間があり、ゆっくりとディードが言葉をつなげた。
「…………あいつのこと…」
「愚問ですね」
私からは後姿しか見えていないせいで今
ディードの言葉にかぶせるように返答を述べながらまっすぐにその背中へ視線を向けた。
「弟子が師を忘れるなど、絶対にありえません。ですよね?ディードさん」
その言葉を聞いたディードはふっと小さく笑みをこぼした。
「そうだな、悪かった変な質問をして」
「いえいえ~」
「じゃ、時間があったらまた来るわ」
「お待ちしてます~」
その言葉を最後にディードが部屋を出ていった。
再び部屋の中に静寂と風の音がこだまし始める。
窓から侵入した風は部屋の中を一通り巡ったのち私の髪を軽くなでてから再び外の世界へと飛び出していった。
思えば彼女のもとでハンターとしての知識と技術を学んでいた時期も遠くはないにしろ過去の出来事となってしまった。
実地訓練初日に【雌火竜】リオレイアに接触させられたり、死の淵まで見ることになった【角竜】ディアブロス2頭討伐、火山地帯に放り出されてから【岩竜】バサルモスの討伐をさせられたこともあった。どれも私たちの成長のため達成ぎりぎりのレベルに定められた訓練内容、だったとしてもディアブロス2頭は今思えば異常だと感じるが。それも今だからこそ判断できるわけで、こうして10人全員でギルドナイト試験に合格できるほどの知識と技術を身につけられたのはまさしくあの訓練の結果に他ならない。
それから、そういった難易度の高い過酷な訓練の後は決まって彼女から1日丸々休暇が与えられ、すべて彼女持ちでご飯やお出かけをすることができていた。
狩場では常に凛として厳しい言葉しかかけてくれない彼女が私たちの無茶な要求や、思い切り手を引かれながらいろいろなところに連れまわされているときのあのタジタジした表情はギャップがあってとても女性らしい人だと感じた。
そして決して嘘は言わない。
だからこそ、私たちは彼女に信頼を寄せ、尊敬するようになっていったわけだ。
そんな物思いにふけっていたところで何やら部屋の外から話し声が聞こえ始め、その直後部屋の扉が開いた。
「だからさ!わざとじゃねぇんだって、あいつの鋏が脆いのがいけないんだろ?」
「それを考慮してあらかじめ鋏は狙うなと言っておいただろう?人の話はちゃんと聞いておいてくれよ」
「俺に言うなよ。そもそもの話だけどさ、俺が溜め斬りしようとしたところに鋏振ってきたあいつのせいじゃんか」
「あぁもう。あ、フィレットただいま。今帰ったぜ~」
そういえば
「あの~、廊下であまり大声は出さないほうがよろしいですよ~。エドさんはこの前注意されていませんでしたか~?」
「わかってるよ。でも声がでかいのは元からだからな」
「
「ルイてめぇ……」
「まぁまぁ、
「そこは個性の範囲で~。しかしその様子だと……成果のほうはあまりよろしくない感じですか~」
「いや?そういうわけじゃないんだけどよ。ターゲットは仕留めたんだが……」
そういうとエドワードがスッと視線をそらした。
その言葉を引き継ぎルイがため息をつきながら小さく首を振る。
「依頼主からは『ダイミョウザザミの鋏が欲しい』って言われてたのに、エドが思い切りぶっ壊しちゃったおかげで使い物にならないってこっぴどく怒られたんだよ、ね」
「あぁ~、なるほど~」
「だからあれは不可抗力なんだよ……」
「確かに、壁の上から見てたけどて……あれは動作キャンセルできなかったね」
「クレイン……お前だけだよ信じてくれんのは」
「そんなことないだろ。でもま、切り替えて次頑張ろうぜ」
「クス、仲がよろしいですね~。その調子で早めにギルドマスターさんへ報告お願いしますね~。特殊任務はギルドマスターのほうへ直接報告と言われてましたから~」
私がそういうとエドワードが思い出したように頭を抱えた。
「やっべ、そうだった。行きたくねぇなぁ……」
「はぁ、まったく。今さらどうもできないだろう?早く行ってさっさと済ませようじゃないか」
「そしたら酒場で軽く反省会だな。ルイもそれでいいだろ?」
「あぁ、それでいいさ。行くよエド」
「わかってるよ~、じゃあすっげぇ嫌だけど報告行ってくるわ。すっげぇ嫌だけどっ!畜生!」
吐き捨てるように言うとエドワードは先に部屋を出ていったルイとクレインの後を追っていった。
ふぅ、にぎやかになったものです。
あの時はこのような未来になるとは思ってもおらず自分以外の9人とはここまで関わることはしなかった。
それが今ではこんな他愛もない話ができる間柄にまでなっている。
それもこれも彼女のおかげだ。
師匠…………いえ、ヤクモさん。
私は、私たちはちゃんと成長できていますか?
再び視線を壁に安置してある太刀『たまのをの絶刀の斬振』へ向けた。
プロローグ編最終話となります
この話でお借りしたキャラの3人目が登場となります
お貸しいただき本当にありがとうございました
3人目
踊り虫様考案
「ディード」さん
フオル村専属で活動をする灰髪金眼で剣斧使いの男性ハンター。
手先が器用なのとどんな依頼でも受けてしまうお人好しな性格で、過去にその性格が裏目に出ていいように騙された過去もある、らしい。
仮に騙されたとしても誰かを助けるために、この信念が折れることはない。
装備
・《デスギアS》シリーズ(大規模作戦時)
↓
・《デスギアX》シリーズ(フィレット達との会話時)
武器
・剣斧《禍斧スメルツェクリ改》(大規模作戦時)
↓
・剣斧《災禍斧ダルクメルツェ》(フィレット達との会話時)