モンスターハンター〜伝説の邂逅〜   作:奇稲田姫

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4.霊峰に刻む円卓の絆-軌-

これが(わたくし)の実力ですわぁー♪

 

本日絶好の狩り日和!私のガンランスの調子も絶好調!

あぁ、このメタルが擦れる独特な音とそれに混じる専用弾薬の微細な音、展開と収納時に軋むガチャガチャ音がたまりませんわぁー♪

青い空、照り返す日差しと手入れの行き届いたガンランス、そして…………そしてそして!この!見てくださいこの簡易テントの出来栄え!頂点のこの角度!固定ロープの広がり!あぁどうして私はこんなにもセンスが良いのでしょう。時々怖いですわぁー♪自分のセ・ン・ス・が!

これなら救援依頼もちょちょいのちょいで終わらせられますわー♪

 

………………リオレイア……の亜種、ですか……。

なんと言いますか、まだあの地獄の訓練が脳裏に焼き付いてますわ……。動けなくなるほどではないにしろ、少々ぶるっとしてしまうくらいには……。

ともあれ、今の私達の敵ではありませんわー。なんせこの、私がいるのですからぁー♪

 

おーーーっほっほっほー!

 

 

 

 

 

とある狩人の日記より

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ガサッ……。

 

 

「…………いたよ。あれが……」

 

「はい〜、リオレイアの亜種、みたいですね〜。なんとまぁ……綺麗な鱗なのでしょう〜」

 

「見とれてる場合ではないですわよフィレットさん。無傷では無いとはいえ尻尾はまだ健在……」

 

「ん。…………まだこっちには気づいてないね」

 

私達は密林の中でも特に背の高い木が生い茂ったエリアの入口あたりに身を潜めながら海岸で静かに佇んでいるリオレイア亜種を観察する。

先程の3人のハンターによってダメージは蓄積されているので万全な状態の相手ではないが傷らしい傷は両脚の切り傷と背中の鱗がボロボロになっている以外特段目立つダメージ痕は見当たらない。尻尾もピンピンしているし、翼の翼膜もまだ綺麗な状態を保っていた。頭に関してもまだまだ傷らしい傷は見当たらない。

 

「まぁ、いつも通り私が前。フィレットさんとリディさんで撹乱してヘラさんは援護兼牽制…でよろしいですか?フィレットさん」

 

「はい〜、問題ありませんよルシアさん。硬化薬は飲みましたか?」

 

「バッチリですわ!行きましょう!」

 

ルシアさんの言葉と共に私達は1度こくりと頷きあい、行動を開始。

密林の木の影から一気に飛び出すルシアさんとリディさん。ヘラさんは2人とは別方向から身を潜めつつ慎重に移動しながら弓を展開して距離を測り始めた。私の出番はもう少し。

 

赤いテンガロンハットの位置を軽く直しながらルシアさんがガンランスを展開するのと同時にリディさんが閃光玉を投げて不意打ち気味にリオレイア亜種の視界を奪う。間髪入れずにルシアさんがこちらに振り向いたリオレイア亜種の顎下へ連続突き上げ、砲撃、砲撃、叩きつけからのフルバーストと一連の流れを叩き込み、すぐさまステップで前を開けると、今度はリディさんが剣斧(スラッシュアックス)を抜き放ち斧形態による斬撃、から一連の連続攻撃によって怯んだリオレイア亜種の首元に属性解放突きを叩き込んだ。それから2人同時に距離をとる。それとほとんど同タイミングで閃光玉の効果が切れ、リオレイア亜種が私達を視界に捉えた。

 

しかし、すぐにその視線は横に流れた。

 

弓の射程ギリギリの位置からヘラさんが竜の一矢でリオレイア亜種の翼膜へ深い傷を付けたことでリオレイア亜種の身体がぐらりと傾き、大きく怯んだ。

 

その隙を見逃すことなく今度は私がリオレイア亜種の目の前に閃光玉を投げて視界を奪い、一気に距離を詰めて太刀【ギルドパレスサーベル】を抜き放ち、両脚へ気刃斬りを放つ。

斜めに袈裟斬り、刃を返してもう一度。そして突き、斬り上げ、大きく体を捻って水平斬り。最後に納刀しながら頭を下げることで尻尾の回転を避ける。それと同時に閃光玉の効果が切れ、私の方へ噛み付いてくるリオレイア亜種の攻撃に合わせて一気に太刀を抜きながら居合切り。そんな私の一連の流れの間にもヘラさんから翼へ向けての射撃によってダメージは蓄積されていき、最後の居合切りのダメージによって大きくゆらぎ、転倒した。

 

「ルシアさん!!」

 

「まーーーかせてくださいですわ!!2人とも離れてくださいな!」

 

転倒と同時に私とリディさんは後退し、巻き込まないことを確認すると、ルシアさんがガンランスの奥義、竜撃砲の構えを取りトリガーを引いた。

火竜のブレスを解析して作られた竜撃砲が転倒したリオレイア亜種の頭部へ直撃し、その激しい衝撃によってリオレイア亜種の鱗が何枚か弾け飛んだ。

 

「っ!………………っと!部位破壊!完了ですわ!!」

 

「はいよ〜!!!っと!!」

 

ルシアさんと入れ替わるようにリディさんが前に出て剣斧(スラッシュアックス)を斧形態にして立ち上がろうとよろけていたリオレイア亜種の顎下からの力強い切り上げによって大きく体をぐらつかせて再び大きく転倒した。そして私もこの最大のチャンスを逃さないように距離を詰めて舞うように刃を振るう。ヘラさんは一定の距離を保ちながら私たちの攻撃の隙間を縫うような精密射撃を繰り出している。ちょうど視界の端ではチャージステップから弓を構え直している姿が映りこんだ。1射、2射、続けて力強く弓を引き絞って剛射を連続で2射……………それからすぐに武器を畳んで背負い直していた。

 

 

そして転倒していたリオレイア亜種がよろよろと起き上がる。

 

それから低く喉を鳴らしながらこちらを見据える視線が私と交差し、口元から炎を覗かせてから大きく翼を広げた。おそらく分が悪いと踏んだのか、それとも体力の問題なのか。どちらにするにしろリオレイア亜種のこの行動をするパターンは1つ。

戦線からの離脱。つまり逃げるための行動。

 

「あっ!逃げる!」

 

リディさんの声と共に接近していた彼女と私は風圧で動けなかったがガンランスのルシアさんは盾で防げたようで、視界の端で走り込んでくるヘラさんの様子を見つつある程度の高度になったタイミングでリオレイア亜種の目の前に閃光玉を投げていた。それと同時にヘラさんは飛び去ろうとするリオレイア亜種の真下にスライディングしながら潜り込んでシビレ罠の円筒を手際よく設置した。鮮やかな罠の設置と同時に閃光玉によって空中にいられなくなったリオレイア亜種がその場に墜落する。緊急回避によってギリギリ巻き込まれなかったヘラさんは私の隣にまで来るとポーチの中から捕獲用の麻酔玉を2つ取り出して手馴れた手つきで連続でシビレ罠にかかって身体を痙攣させているリオレイア亜種の頭に投げつけた。

捕獲用麻酔玉。

それはモンスターを「狩る」のではなく「捕獲」するための道具であり、弱ったモンスターに当てることでモンスターを昏睡状態に陥らせることができる。それによってモンスターを生きたままギルドや研究機関へ引き渡すことが可能となり、さらなる生態の解明の助けとなっていた。

 

依頼達成。

 

私の隣でヘラさんが得意げに胸を張った。

 

「ふっふっふ、またひとつ、私の麻酔玉によって深い眠りについてしまった」

 

「麻酔玉はあなたの発明ではないですわ。ふぅ」

 

「はぁ〜何とかなったね。とりあえずあとはギルドに連絡入れてリオレイア亜種の回収お願いしないと」

 

「ですね〜。連絡は私がしておきますね〜。リディさんと私はベースキャンプに戻りましょう〜。ルシアさんとヘラさんはリオレイア亜種の見張りと周辺の露払い、お願いできますか〜?」

 

「おっけー」

 

「了解ですわ」

 

「あぃ、了承」

 

私は武器を背中に背負い直しながらぱっぱと指示を出す。3人それぞれの返事を聞き私達は二手に別れた。

ベースキャンプへ向かうのは私とリディさん。

 

「とりあえず何とかなったね〜。もう少し長期戦になるかと思ってたけど、結構ダメージ蓄積してたみたいだね」

 

「そうですね〜。仕事の都合上救援依頼が多いですから〜」

 

「たまには最初からやりたいよ〜」

 

「ふふふ〜♪今度ミコさんに代わってほしいと言ってみればどうですか〜?」

 

「いや………ミコっちとシオン君抜けたら古龍とか新モンスターの調査が進まないでしょ」

 

「あとは〜、エドワードさんたちに同行するか〜、ですね〜?」

 

「あの3人に…………………特別任務?」

 

「そうです〜」

 

「…………でもさ、エド達。いっつもギルドマスターに怒鳴られてるからなんかな〜……」

 

「あれは主にエドワードさんが余計なことをするからです〜。普通にやってればまずあーはなりませんよ〜」

 

「それでも特別任務から外されないあたりエドとルイとクレインの3人って実力おかしいよね〜。その中に入るなんて出来ないよあたし」

 

そんなことを言いながら帰りの道中で襲って来た小型モンスターを数体狩り、はちみつや薬草など一通り採集していく。

ベースキャンプに戻る頃にはポーチの中は採集した素材で溢れかえっていた。

 

ベースキャンプにもどるとテントの中では私達に変わって負傷していた依頼主のハンターたちの看病をしていたアイルー達が一斉にこちらに視線を向けて軽く頭を下げた。それに私も会釈で返し、その場をリディさんに任せて私は送迎船の方へ向かった。

その途中ですれ違った船頭アイルーの2代目さんを抱きしめて2代目さん成分を補給してから送迎船に備え付けられている通信機でギルドへ「リオレイア亜種の捕獲完了」の連絡を入れた。これで明日にはリオレイア亜種はギルドに回収されていくことだろう。その間目を覚ますことがないあたり捕獲用麻酔玉の麻酔効果は絶大だということになる。弱っている時でしか最大効果を発揮しないとはいえ、その特定条件下では他に類を見ないほどの効果を期待できる。ギルドの開発班の叡智の結晶である。

 

通信機の端末を置いてからふぅと一息。

 

あとはルシアさん、ヘラさんの2人と交代で昏睡状態のリオレイア亜種の見張りをしつつギルドに引き渡せば完了。であれば負傷した3人のハンターには先に街に帰ってもらう方がいいか?

 

私は送迎船内の部屋から出てベースキャンプの方に戻りリディさんの様子を確認。先程のような取り乱すことはなく冷静に対処出来ている。

狩場で追加で採集してきた素材を選別しながら新しい解毒薬を調合して負傷したハンターの手当を続けていた。巻き付けていた包帯を新しいものに変えながら解毒薬を染み込ませて同時に解毒していっている。

腰に手を当てて大きく息をついていた。

 

「ふぅ。これで大丈夫でしょ。3人ともちゃんと解毒できてる。猛毒受けちゃった人も大丈夫っと。あとはもう少しで目も覚ますだろうからなにかご飯でも…………あ、フィーちゃん。連絡は終わった?」

 

「えぇ〜。今ちょうど〜」

 

「お疲れ様〜。どうする?そろそろ日も落ちて暗くなるし、ランプ着けてからご飯作ろうと思うんだけどなにがいいかな。この人達もそろそろ目を覚ますだろうし………暖かいものがいいよね〜?」

 

「そうですね〜。こんがり肉もありますので、薄くスライスして野菜と一緒にスープにするのもいいですね〜。ついでに薬草も混ぜると美味しそうです〜 」

 

「だね〜。そうしよう。スープなら喉も通りやすいし…………ルシアも文句言わないでしょ」

 

「………………」

 

「……なんか言ってよ!?」

 

「いやまぁ〜、多分〜、そうだと思います〜」

 

「………はぁ」

 

毎度の如くあれがいいこれがいいと注文の多いルシアに頭を悩ませつつもちゃんと料理をしてくれるリディには感謝しかない。

 

そうこうしているうちに日も落ち、辺りを暗がりが支配し始める。簡易テントの中のランプの灯りと焚き火の火の光が夜の静寂に浮き上がった。

そこに一通り捕獲したリオレイア亜種の周辺の露払いを行っていたヘラさんとルシアさんが戻り、いつも通りあれがいいこれがいいと言いながらリディさんと軽く言い合いをしていると負傷していた3人のハンターが目を覚ました。

私とヘラさんで器にスープを盛り、3人に差し出しながら声をかけた。

 

「目が覚めましたね〜。気分はどうですか〜?」

 

「あぁ、すまない助かったよ。………解毒もしてくれたんだな、感謝する」

 

「ありがとな」

 

「俺がミスったばかりに……申し訳ない」

 

「お気になさらず〜。大事にならずに良かったです〜」

 

「ん、間に合った」

 

3人はそれぞれ感謝の言葉を述べて、あたしたちからスープの器を受け取るとゆっくりと飲み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

私達は早朝に到着したギルドの回収班に捕獲したリオレイア亜種を引き渡し、あとのことを任せて3人のハンターとともに帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました〜」

 

リオレイア亜種の捕獲を終えてドンドルマに帰投した私は酒場の方に行くと言っていた3人とは1度別れてギルドの方へ戻ってきていた。そもそもまずは報告が先なので当たり前といえばそうだが。執務室に入って太刀『ギルドパレスサーベル』を立てかけ、被っていたテンガロンハット風の帽子を壁にかけるとペンを取り出して報告書をサッと書き上げた。

そのまま執務室を出ようとして扉を開けた拍子にエミールさんとばったり鉢合わせた。

 

「おっと、おかえりフィレット。帰ってたのか」

 

「エミールさん〜。ちょうど今帰ってきたばかりです〜」

 

そうやり取りを交わしてから並んでギルドマスターのところに向かう。

 

「今回の救援はどうだった?」

 

「えぇまぁ〜リディさんが解毒薬忘れた以外はいつも通りでしたよ〜」

 

「え、それは大丈夫だったか?それ絶対パニックになったんじゃない?」

 

「ですね〜。私がフィールドワーク中に解毒草を採集してなかったどうなっていたことか〜」

 

そう言うとエミールさんは片手を額に当てながら大きくため息をついた。

 

「まぁ、結果オーライならよかったよ。リディもスペックは高いんだけど……メンタル弱すぎる……。どうすればいいんだろうな」

 

「だったら一緒に行ってあげたらよろしいのでは〜?あの子も喜びますよ〜?ふふふ〜♪」

 

「…………か、からかわないでくれって。こういう色恋は経験ないんだからさ」

 

「いいじゃないですか〜」

 

実は最近よく一緒にいるエミールとリディだった。

私はエミールの照れた反応にクスリと笑みを零す。エミールの方も照れくさそうに頬を掻きながら応える。

 

「コホン、それはそれとして。何とかなったならそれでいいと思うよ」

 

「ふふふ♪そうですね〜。そういえばエミールさんもギルドマスターさんに報告ですか〜?」

 

「ん?あぁ、さっき古龍観測所から入電があって。なんか東の方…………そこそこ距離があるっぽいけど、その辺で規則性のある地響きが観測されたんだってさ。ただの地震かもしれないって見方もあるっぽいけど一応報告してきてくれたんだって」

 

「地響き、ですか〜?」

 

「まぁ、ドンドルマからかなり距離があるらしいから正直あまりここまで影響はないと思うけど、一応」

 

「そうですね〜、念を入れるに越したことはないですから〜」

 

そんな会話を交わしながら私とエミールさんは依頼達成の報告書と先の観測所からの報告をしにギルドマスターの部屋へ向かうのだった。

 

 

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