モンスターハンター〜伝説の邂逅〜   作:奇稲田姫

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巨戟龍編






追憶の巨戟龍
5 追憶の巨戟龍①


ラティオ活火山近郊火山地帯。

 

名前の通り『活火山』と呼ばれるこの場所は年中無休で地下からゴボゴボと溶岩が吹き出しており、そのせいで内部はもちろんその周辺一帯ですらも灼熱地獄と化していた。

しかもこの辺りではモンスターの目撃情報も後を絶たず、ハンターにとっては正直来たいけど来たくない狩場第1位に輝く程であった。

理由は明白。

この狩場は飲めば一定時間体温の上昇を防いでくれるクーラードリンク必須の狩場だからである。

でなければその灼熱の環境によって体力だけでなく集中力までジリジリと削ぎ落とされた挙句、他の地域に比べて更に凶暴な個体のモンスターと戦闘を行わなければならないことになる。

そんな中での狩りなど正直成功率は極極わずかなためラティオ活火山に来てクーラードリンクを忘れた日には依頼主に頭を下げてでも渋々引き返して来たくなるほど厳しい環境下だった。

それに加えて、たとえクーラードリンクを飲んでいたとしても汗が止まらなくなるほど暑いと来れば尚更。

 

しかしそんな狩場であるが『()()()()()来たくない』と言ったのにも理由はある。

それは、このラティオ活火山では通常の狩場では滅多にお目にかかれない珍しい鉱石類が多く採れるからだ。

活火山の活動によるマグマの流動によって本来なら地下深くに眠っているはずの鉱石が地表近くにまで流されて固まっており、特に依頼頻度の高いテロス密林やアルコリス地方の森丘ではあまり採取されないドラグライト鉱石をはじめ、カブレライト鉱石、はたまたユニオン鉱石なんてレア度の高い鉱石まで採れるとなれば多少暑いのを我慢してでも出かける価値は十分にあった。

ついでにその高い純度と発火性能、そして長時間高温を維持し続けることが出来る『燃石炭』に、燃石炭よりもさらに高温の炎を出すことの出来る『強燃石炭』はこの狩場でしか採取することが出来ず主に鍛冶屋、それからサイズの小さめのものは家の暖炉の火等によく使用されている。

故に寒冷期には必須アイテムとして出回るため商品価値の高さは折り紙付きだった。

 

そんな大自然の厳しい環境下である火山地帯に本日は足音が4つほど響き渡っていた。

そのうち、先程からヒーヒー言っていた足音が大きなため息とともに立ち止まり、額の汗をアームガードのちょうど甲の部分で額に滲んだ汗を拭ってから支給されたクーラードリンクをいっきに煽った。

 

「……っ……っ……ぷはぁ〜。ひー、やっぱ火山地帯は地獄ッス…………。クーラードリンクも効いてるんスかね?これ」

 

「ハッハッハ!効いてなかったら今ごろ俺達は蒸発してるぜ」

 

「はぁ〜、わかってますッスけど………………それより、レオさんはなんでそんな平気な顔してられるんスか〜?」

 

「俺はそもそも出身が南国だからな。ある程度は慣れてんの」

 

「うひぃ…………」

 

「直射日光の高温と活火山内のマグマの高温では性質が少し違うような気がするけど…………」

 

「変わんねぇよ変わんねぇ。紫外線があるかないかくらいの違いだろ?お前だって同じ出身なんだからわかるだろ?ヘイル」

 

「レオの感覚と同じにしないでよ」

 

4人のうちの1人。

語尾の「〜ッス」が特徴の女性は小豆色とシルバーのベース色、首元に黒い毛皮を取り付けてマントのように加工した装備を身に纏うハンマー使いの女性だった。

 

レマ・トール。

 

さながらビキニアーマーのようなメイルガードから分かるようにそこそこ露出の多い【蛮顎竜(ばんがくりゅう)】アンジャナフの素材から製作される『ジャナフ・S』シリーズ一式を揃えており、その背に背負ったハンマーも同じくアンジャナフの素材を使用したハンマー『蛮顎槌フラムスフィリ』を携えていた。

露出が多いが故にマグマからの熱波が肌に直当たりしているため、いつもよりも無駄に暑さを感じてしまっている様子。

とはいえ、首元にこれでもかと言うほどもふもふとした毛皮を取り付けているのであれば仕方が無い部分もあるだろう。

多少、ではあるが。

 

そんなレマの文句に答えたのは全体的にゴツゴツトゲトゲした装備を身に纏う男性で、極めつけはその両肩から伸びる豪快に捻れた角が印象的な外見をしたハンター。

 

レオ・ディレイプニルス。

 

【角竜】ディアブロスの素材をふんだんに使用した『ディアブロS』装備をヘルムからレッグガードまで一式揃え、ついでにその大柄な体躯に似合った大剣『カイラライホーン』を背中に背負っている大剣使いのハンターだった。

レオはレマの若干後ろを歩いていたが、弱音を吐いて立ち止まったレマの肩をポンポン…………というよりバンバンと叩きながらその横を笑って通り過ぎていく。

その強さたるや、叩かれたレマがそこそこ顔を歪めるほどのようだ。

 

そして叩かれたレマの肩を擦りながら呆れたように声を出す3人目の足音の主である女性が大丈夫かとレマに声をかけている。

 

ヘイル・スタンフィード。

 

そう名乗っていた彼女は全体的に白が基調のドレスタイプの装備である『ヤツカダ』装備を一式身にまとっていた。。

その特徴は【妃蜘蛛(きさきぐも)】の別名で知られ鋏角種に属するモンスター、ヤツカダキから入手することが出来る糸をレース状に編み込んだパーツをヘルムとコイルに取り付けることで真っ白なレースとスカートにメイルの紫色がアクセントになり、まるで結婚式のドレスかと見間違えてしまうほどの優美さを醸し出しているところだろうか。

しかしその性能は弓の扱いおよびサポートに長けており、彼女もまた装備同様【妃蜘蛛】ヤツカダキの素材を使用した『ケア・ド・ネフィラ』を使用しているようだ。

 

レオの暑苦しさやヘイルの装備とボーイッシュな顔立ちにギャップこそあるが2人とも実力は確かではあった。

 

「ふぅ、こちらの方向へ逃げたと思っていたのですが………………もう少し奥のようですか。御三方の方は大丈夫………………ではなさそうですね、レマさんは」

 

そして最後に長めの黒髪を後ろで1つに括り上げたポニーテールに、見ようによっては巫女装束のようにも見える『依巫・祈』装備を身に纏い、背中には彼女の背丈に近い長さを誇る太刀を背負った女性がため息混じりに声を出す。

背負われた太刀はピンク色の鮮やかな流線型を描く鞘に収まった紫色の刃が特徴的な【泡狐竜(ほうこりゅう)】タマミツネの素材から製作することが出来る『たまのをの絶刀の斬振』と呼ばれる太刀であり、彼女のトレードマークでもあった。

 

先頭を歩いていた彼女、ヤクモ・ミナシノは火山地帯の中枢辺りで両手を腰に当てながら軽く周囲を確認した後、3人の方へ振り返りレマがヘロヘロだと言うことを確認すると苦笑いを浮かべてこめかみを軽く掻いた。

 

そんなヤクモに向かってレマは両手を上げて降参の合図を出す。

 

「ここは反論せず正直に言うッスね。キツいっス」

 

「正直で何よりです」

 

「この程度の暑さにやられているようではまだまだ修行が足りねぇな、レマの嬢ちゃん」

 

「むぅ、言ってくれるッスね」

 

「張り合うな張り合うな。レオと張り合ってるとレマまで同類になっちゃうぞ」

 

「…………いやぁ、それはさすがに勘弁して欲しいッス」

 

「ヘイルお前な、俺の事どんな目で見てるんだ」

 

3人のやり取りを聞きつつもヤクモは周囲に視線を巡らせて警戒は解かないようにしていた。

 

現在4人がいる場所は火山地帯の中枢に位置する洞窟内であり、周囲一帯をゴツゴツとした岩壁に囲まれ、ところどころマグマが流れ出ている場所も見受けられる。

幸いここの空洞部には足元に溶岩が流れている場所は無いが、この狩場の他の空洞部では足元にも少量の溶岩が流れている場所もあるため、誤って溶岩に足を突っ込もうものならいくら防具を着ているとはいえただのやけど程度じゃ済まなくなってしまう場合も多々ある。

 

高い熱耐性の防具を着ていれば少し突っ込んだ程度では問題ないが、それが長時間となると話は変わる。

 

それはともかくとして、ヤクモもハンターとしての道を歩みだしてから多くの地を訪れここラティオ活火山にもそこそこの数は来たことがあるのだが、その記憶が今ヤクモの警戒網に警鐘を鳴らしていた。

 

本日の標的はこの火山地帯によく出入りしているリオレウスのような飛竜種でもなければ、溶岩の中をスイスイ泳いでるヴォルガノスのような魚竜種でも無い。

最近またこの火山地帯に現れて狩場の生態系や採集物等の調査を行うギルドの調査隊を襲撃し、討伐依頼が組まれたモンスターだ。

 

詳細は…………

 

「しっ。皆様警戒を」

 

そんな時、ヤクモの耳にとある音が入り込む。

 

同時にレマ達3人へ指示を送るが、彼女達も経験を積んだハンターにあることには変わりない、ヤクモが声を上げた時にはすでに己の武器に手をかけて周囲に視線をめぐらせていた。

 

「この音、逃げ込んだ先はここのようね」

 

「そのようです。姿が見えない………………という事はまた潜っているのでしょうか。なんにせよ警戒を」

 

「わかってるってヤクモちゃん。相手は手負い、ちゃちゃっと終わらせちまおうぜ」

 

「レオさんに賛成っす。新しい()()を調達しようが、何度でも叩き割ってやるッスよ!」

 

4人が背中を合わせるようにしながら周囲へ視線をめぐらせる。

その間にも耳に響いてくる()()()()()()()()()()()()()()()は次第に大きくなっていき、そして。

 

「天井!」

 

その音源がまさに4人がいる場所の真上でピタリと止まった。

 

直後、ヤクモの叫びと共に4人が同時にその場から回避行動で距離を取った。

それとほぼ同時に天井から超圧縮された水流のブレスが先程まで4人が固まっていた場所を薙ぎ払う。

 

判断がもう少しでも遅かったらあのブレスに巻き込まれてタダではすまなかっただろう。

前転から受け身をとって体勢を立て直し、ブレスが飛んできた方向を見上げる。

火山中枢の洞窟内の天井に骸が張り付いていた。

 

ブレスが外れたことに気づいた骸はギチギチと嫌な音を響かせながら勢いよく地面へと降りてくる。

 

蟹のような硬い外殻を持ち、ヤドカリのようなヤドを背中に背負うことが特徴である甲殻種に属するモンスターであり、全体的に青みがかった色と鋭く研がれた両腕の鎌。

同種に属する【盾蟹】ダイミョウサザミの対になる個体にして別名【鎌蟹】と呼ばれるそのモンスターが現れた。

 

【鎌蟹】ショウグンギザミ。

 

そう呼ばれるモンスターは数少ない甲殻種の中でも特段危険度が高いモンスターとしてハンターの間でも特に危険視されていた。

 

今回の依頼は火山地帯における採掘作業の安全確保と脅威の排除が目的であり、その脅威である最大の要因がこのショウグンギザミの出現であったのだ。

ここ数日の間に火山にてショウグンギザミの襲撃による被害件数が日に日に増えて行ったことでギルドから正式に討伐依頼として受理されたわけだ。

 

しかし

 

「へっ!新しいヤドなんか調達しちゃってまぁ、グラビモスの頭骨、よく見つけてきたなそんなもん!」

 

「何を持ってこようが何度でもぶち壊してやるっスよ!」

 

「レマ!もう一度ヤドの破壊頼むわよ!レオとヤクモはさっきと同じ、脆い関節を重点的に狙って!」

 

「合点ッス、ヘイルさん!」

 

「任せとけっ」

 

「承知しました!」

 

先程の戦闘で既に手負いとなっていたショウグンギザミもレマに粉砕されたヤドの代わりにグラビモスの頭骨を新しく携えて再び姿を現したのだ。

 

この場所で確実に落とす。

 

素早く弓に矢を番えるヘイルの指示を受けて3人がそれぞれ武器を構える。

 

 

 

 

 

そして、十分に引き絞られた『ケア・ド・ネフィラ』から放たれた一矢を合図に3人が同時に地を蹴った。




なんか今更感はありますが………………まぁ、良いでしょう、多分…………。


そして亀更新で本当に申し訳ないです
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