キャラ募集で送っていただいたキャラも採用されたキャラは順次物語に登場させていこうと思いますので少しだけお待ちください。
募集はまだまだ受け付けておりますので、よかったらどうぞ
→キャラ募集板
「レマさん!!」
「……!」
ヤクモが声を上げるのとほぼ同時のタイミングで弾丸調合を行っていたコハクが素早く行動を起こす。
レマをおぶさってきたエリンが息を切らせながらベースキャンプの簡易テントの中へ入り、ベッドの上へレマをゆっくりと寝かせた。
それから一緒にテントの中へ入ったコハクがエリンとともに手慣れた手つきでレマから必要最低限の装備を外していく。
アームガード、レッグガード、メイルとヘルム。
さすがにコイルだけはエリンに止められていた。
一通り装備を取り外したコハクは一度レマの全身を流し見てからわずかに眉を寄せた。
「これは…………そこそこ大きな爆発にでも巻き込まれたのかもしれないな。右頬と首筋、それから両足の太ももあたりの肌が露出していた部分にやけど痕。そして両腕の裏側。ここが特にひどい、おそらく爆発に気づいて咄嗟に両腕で顔を守ったのだろうな。そんな痕だ」
「爆発ぅ!?この依頼での目標モンスターに爆発系の攻撃してくるモンスターなんていたっけ?」
コハクは緊急事態とはいえレマの体をためらいなく触れていきながらやけどの分析をしていく。
エリンもその隣でコハクの手を目で追いながら腕を組んだ。
それに対してコハクが小さく首を振る。
「いや、依頼内容にあったモンスターにそのような情報はない。だが、今はそれを議論している暇はない、エリン」
「わかっているって、すぐに準備してくるよ。ヤクモちゃんちょっと手伝って~」
「え?あ、はいっ!」
「必要な材料は俺のアイテムポーチの中にそろっているはずだ」
2人の先輩ハンターのあまりの手際の良さに呆然としてしまっていたヤクモはエリンの一言で我に返る。
「大丈夫?」
「はい、なんというかいきなりの出来事で驚いてしまって……」
「そっか、無理もないよね、同期の子なんだし。何だったら休んでてもいいよ~。準備なら私一人でもできるから」
「いえ、私にも手伝わせてください」
「うん。わかった。それじゃあコハクくんの…………あそこの弾丸の調合途中で放置してある道具の近くにあるポーチの中から薬草と流水草を持ってきてくれる~?私は鉢と布もってくるよ~」
「布?」
「うん、そう。やけどの応急処置にはよく使うんだ~。ともあれ、今言った材料お願いね~」
「わかりました。すぐに準備します!」
「よろしくね~」
ヤクモは若干浮かんだ疑問点をすんでのところで飲み込み、エリンから言われた材料を求めて先ほどまでコハクが座っていた付近にあるアイテムポーチを開けて中を確認する。
中には弾丸の素材のほかに薬草も結構な量は言っていた。
とりあえずどのくらい必要なのかわからないのである量はすべて持っていこう。
あとは流水草、これも念のためポーチに入っているものすべて持っていこう。あって困ることはないだろうし。
しかし、やっぱり気になる物は気になってしまう。
「(流水草……葉の部分に水分を多く含んだ植物。確かにこれはやけどに効きそうではありますが。どうして薬草なのでしょうか、回復をするなら回復薬や回復薬グレートを使用するほうが効果の期待はできると思います…………。何か理由があるのでしょうか……)」
材料を抱えながら頭に疑問を浮かべていると背後から声をかけられた。
「材料見つかった?うん、うん、いいね。薬草に流水草。よし、それだけあれば十分だね。私のほうも準備できたから急いでやっちゃおう。材料かして~?」
声をかけられたことに反応を返すよりも早くエリンはヤクモの手元にある材料を見ながら何度か頷くとその場で持っていた調合用に使用する鉢を置くとヤクモの手元から薬草と流水草をだいたい同じ量とると鉢の中へ入れると一気に棒ですりつぶし始めた。
それも、ものの数秒で流水草の水分と薬草の青臭いにおいが混ざり合って濃い緑色の液体が完成した。
「手際、いいですねエリンさん」
「まぁね~、たまぁにこういうこともあるからさ~……っと完成。早くコハクくんのところにもっていかないと」
「あ、はい、そうでしたね。いきましょう」
短い会話の後エリンが材料をすりつぶした鉢を持ち上げつつコハクとレマのいるテントの中へ。
中ではコハクがレマの脈に手を当てながらところどころ焼け焦げた『ジャナフ・S』装備に視線を落としながら片手を顎に指をあてて考え込んでいた。
「コハクくん~、作ってきたよ~。足りる?足りなかったらまた作ってくるよ」
「エリン。あぁ、助かる」
鉢と布を受け取ったコハクはすぐに薬草と流水草の混合液を適当な大きさにちぎった布にしみこませると、そのまま患部へ貼り付けていく。
「あの……」
その様子を見ながらヤクモは先ほどまで考えていた疑問を何気なくぶつけてみる。
「?どうした?」
「いえ、ちょっと不思議に思ったことがありまして」
「なんだ?」
コハクは布に薬をしみこませて患部へ貼り付ける手を止めないままコハクが答えてくれる。
「なぜ、わざわざ手間をかけてまで薬草と流水草の調合を行ったのでしょうか。レマさんの状態からして急を要する案件だったはず、であるならばわざわざ調合の手間をかけるよりも回復薬や回復薬グレートを患部へ貼り付けるほうがよっぽど効率的だったと思うのですが……」
その問いに隣で椅子に腰かけながら見守っていたエリンがぷふっと小さく噴き出した。
「わ、私、そんなに変なこと言ったでしょうか……」
「いやまぁ、ごめんごめん~。このやり取り見たことあるな~って思ってさ。ね~コハクくん?」
「……そうだな」
ふぅと一息ついたコハクは空になった鉢をエリンに差し出しながら視線をヤクモのほうに移しながらゆっくりとした口調で回答を話してくれる。
相変わらず表情に大きな変化は見られないが。
「確かにただ体力の回復だけを目的とするならヤクモの言うように回復薬や回復薬グレートのほうが優れているのは確かだ。しかし、いくら優れているとはいっても欠点は存在する。何かわかるか?」
「欠点?」
わずかに眉を寄せて考え込むヤクモの肩をエリンが笑いながらポンとたたいてテントから出ていったことで、テントの中にはヤクモとコハク、負傷中のレマが残された。
欠点。
正直に言えば回復薬や回復薬グレートに欠点があるとは考えられない。
小瓶に入っていることによりポーチの中であまり場所を取らず片手で飲むことができる上に即効性も見込める。対して薬草は即効性こそあるものの効果に関しては回復薬や回復薬グレートに劣り、かつポーチの中でもかさばる上にかなり場所をとる。
「『回復薬は片手間に飲めて効果も高く即効性があるのに対して薬草は手間がかかる上に飲んでも大した効果が見込めないのになぜ?』といった顔だな」
「……」
考えをぴたりと言い当てられて若干肩を落とすヤクモ。
「まぁ、対して気にすることでもないのだけどな。回復薬の欠点、それは、その利便性の高さだ」
予想外の答えにヤクモが瞠目する。
「回復薬は体力の回復や即効性に優れてはいるが、その効果が最大限に発揮されるのは
「…………」
「物は使いよう、ということだ」
薬液を染み込ませていない布を包帯代わりに患部に巻き付けていくコハクがレマから視線を外すことなく話してくれる。
ちょうどそんなタイミングで新しく薬液を調合しに向かっていたエリンがテントの中に戻ってくる。
「そうだよ〜。でも、そんなことを思いつくのなんてコハクくん位じゃないと無理だって〜」
「どうだかな」
エリンから新しい薬液を受け取りつつ残りの患部の応急処置を進めていくコハク。
相変らす手際は良く、患部へ布を貼り付けて手早く包帯を巻いていく。
その動作も1つの場所をものの数秒足らずで終わらせてしまっていた。
「凄いです、あっという間に応急処置が…………」
「これくらいならな」
「コハクくんは普通のハンターじゃないんだよね~」
「エリン」
「いいじゃんいいじゃん減るもんじゃなし~。コハクくんはモンスター狩るよりもフィールドの植生や鉱物の研究とか、あとはモンスターの生態系の観察みたいなフィールドワークが大好きなんだよね~」
「放っておけ」
「フィールドワーク、ですか」
「はぁ、そうだな。俺はこんな性格だ、複数人でモンスターに対峙するよりは一人で黙々と植物や鉱物を扱っているほうが性に合っているんだ。その過程でモンスターを狩ることは多々あるが、それはまぁ仕方ないともいえる」
「だよね~。でもそのおかげで色々助けてもらってきたんだよ~」
「毎回無理やりパーティ編成してから声をかけてくるのだけはやめてほしいと何度も言ってるんだがな……」
ため息をついて頭を抱えるコハクを見ながらけらけらと笑うエリン。
「仲がよろしいのですね」
「……勘弁してくれ」
そんな調子でレマの応急処置が完了し一通り使用した道具類の掃除を済ませたヤクモは、近くの水場からベースキャンプのテントへ。
テントの中に備え付けられている棚に道具を戻し終えると、ちょうどそのタイミングでコハクと今後の打ち合わせを行っていたエリンから声をかけられた。
「ヤクモちゃ~ん、ちょっとお話い~い?」
「はい。それで、どうしましょうか。負傷中のレマさんをこのままにしておくわけにはいきませんし……」
「うん。そうだね~。だから今コハクくんと相談してね、今回はこのまま切り上げようってことになったよ」
いつもの朗らかな雰囲気は鳴りを潜め、間延びしていた語尾もなくなりピリッと緊張の糸が走っていた。
「そう、ですか……」
「気に病むことはない。今回はほかの狩場に出ている連中との共同任務だ。それに、これは早急に調査が必要な案件だという結論に達した」
「どういうことでしょうか」
「それは私から説明するよ。今回の依頼は砂原に大量発生した
「そう、ですね。爆発を伴う攻撃のできるモンスターには限りがありますから。しかし…………」
「あぁ、俺たちは4人いてなおそのどの個体の確認も取れていない。砂原に出現報告が上がっている爆発系の攻撃を仕掛けてくるモンスターは
「そう。ということはそれ以外の要因があるってことになるの。あとこれ」
そこまで言うとエリンはもともとクーラードリンクが入っていたであろう小瓶に入った黒い液体を取り出してヤクモの前に差し出した。
量こそほんの数ミリリットル程度しかないがどろりとした粘性の液体をしている。
「なんか、見おぼえない?砦のところにあった黒い水たまりに似てない?」
小瓶を受け取ってよく観察する。
確かに例の大砲の弾盗難事件の現場となった迎撃砦に残されていた黒い液体そっくりだ。
「確かに、これ、いったいどこで」
「レマの装備についてたの。なんか、偶然にしては出来すぎてる気がするんだよ」
「それには俺も同意見だ。一刻も早く鑑定に回すべき案件だ」
「わかりました。お二人の意見に賛同します」
ヤクモがそういうと今まで真面目な顔で淡々と語っていたエリンが一気に表情を崩して両手をパンとたたいた。
「ま、そんな感じ~。ほかのみんなにはちょっとごめんなさい~って感じだけど。想定外の事態が起こっちゃったら仕方ないよね~」
満面の笑みを浮かべながら頭の後ろで指を組むエリン。
「必要最低限以上の仕事は完了している、文句は言われまい」
「ど~だろうね~。あのギルドマスターだよ~?」
「……」
「いや言われませんよ、多分……」
目を伏せて黙り込んでしまうコハクに続いてフォローを入れようとするが、過去の出来事を思い出したヤクモは思わず語尾を濁してしまった。
特別任務『盾蟹と岩竜大量発生』。
依頼完了。
ヤクモ、エリン、コハクの3人は負傷中レマを連れてドンドルマに帰投した。