今回から以前募集をしました三人のキャラのうち残りの二人を登場させます。
送ってくださった方ありがとうございました。
雪山。
本日の雪山の天気は最悪の一言に限る。
日の光は仄暗く分厚い雲によってさえぎられ、いつにも増して強く吹く横風にのって吹雪く雪が横殴りに肌に突き刺さってくる。当然ホットドリンクを飲んではいるが、それでもこの寒さを完全に遮断するまでには至っていない。
そんな状態の雪山の山頂付近……。
グギャオオオオァァァァォォオオ!!!!!!!!!
飛竜種に属する大型モンスター複数の咆哮が凍てつく空気をビリビリと振るわせていく。
そのせいで現在この狩場はいつ雪崩が起きてもおかしくない超危険地帯と化してしまっていた。
そんな稀に見るひどい状態の狩場であるにも関わらず、山頂付近にある小さな洞窟内には数人のハンターの姿があった。
入り口付近に2人、外からのモンスターの襲撃に備えて見張りを行う2人は洞窟の外への警戒を強めながら両者それぞれの武器を握る手に力を込める。
「はぁ、はぁ、……こいつはちょいと……まずい状況になったなこりゃ……はぁ」
「だよな……というかよ~、聞いてた話と違うじゃねぇか……ティガレックス2頭じゃ……なかったのかよ」
「狩りに予想外の出来事はつきもの……とはいうが……ハッハッハw……こいつは参った参った」
「笑い事じゃないぜ、まったくよォ…………」
入り口付近で見張りをするうちの一人、漆黒の《ナルガX》装備に同じく【迅竜】ナルガクルガの素材から製作される双剣《夜天連刃【黒蝶】》を携えた青年は先程まで激しい戦闘をしていたことを物語るように荒い呼吸を繰り返しながら舌打ちをした。
その隣で豪快に笑う大剣使いのハンター。
『ディアブロX』装備の男性は人間一人がギリギリ体をかがめれば通れる入り口から外を徘徊する3体のティガレックスを一通り観察していく。
付近には先ほどどうにか倒した1頭目のティガレックスの亡骸が放置されていた。
「
「あぁ~……面倒なことに全く動きがないな。今出ていったら間違いなくボロ雑巾にでもされそうで恐ろしいくらいだ」
「まじか……」
青年は「うへぇ……」と渋い顔で返すと視線を洞窟の奥へ移す。
「そっちの様子は?まだ耐えられそうか?」
青年のかける言葉の先では、遠く辺境のカムラの里近辺で目撃情報が多発している【天狗獣】ことビシュテンゴの素材からなる《テンゴS》装備に身を包む少女が先ほどのティガレックスの複数体同時襲撃によって負傷したガンナーの女性を必死に応急処置を施していた。
青年の言葉に反応した少女はビクンと小さく体を震わせると、アワアワとジェスチャーで状況と伝えようとする、が。
「ジェスチャーじゃわからねぇ!声帯があるなら言葉を出してくれ頼むから。今のこの状況理解できてんのか?」
「あ!…………う、え、と……」
「おぃおぃ、後輩にあまりきつく言いすぎるんじゃないぜ、ハル」
「わかってる、頭ではな」
《ナルガX》装備のハルオキ(略してハルと呼ばれることが多い)に怒鳴られて少女がしゅんと肩を落としてしまう。
それから意を決したようにこぶしを握ると、しっかりとした口調で言葉を紡ぎだしていく。
「す、すみません、でした。僕……」
「謝ることはねぇよ。今はそんなことしてる場合じゃない。そいつの状況はどうだ?」
「は、はい!攻撃される寸前に気づいて咄嗟に体を逃がしていたおかげで、ち、致命傷にまではなっていません、でした。い、今は弾き飛ばされて岩壁にぶつかった衝撃で気を失ってはいますけど……」
「ガハハ、そいつは幸運だな」
「だから笑い事じゃねぇってレオさん……。ったく」
ハルオキの言う通り笑い事ではない、のは確かであるがそれ以上に幸運であることも変わりはない。
モンスターの討伐した直後のほんの一瞬のスキを突いた強襲だったにもかかわらず生還できることがいかに運がいいことか。
そうは言っても安堵の表情を浮かべながらホッと息をついている《テンゴS》装備の少女の前に横たわる女性をこのままにしておくわけにもいかないのもまた事実。
彼女は再び【毒妖鳥】プケプケから製作される装備を纏う女性のほうに視線を移して小さく息をついた。
先ほどハルオキが救援要請の発煙筒を打ち上げたので生き残ってさえいれば救援部隊と合流することもかなうだろうが…………。
「ふぅ、冗談はこれくらいにしておくか」
ひとしきり笑い終えるて一息ついた後、《ディアブロX》装備の男性、レオ・ディレイプニルスは自分のポーチの中身を一瞥してから笑顔を引っ込めて真剣な表情でハルオキに向き直った。
「ハル、救援要請は確実に送ったな?」
「もちろんだ」
その返答を受けてレオが頷き返してそのまま視線を洞窟の奥でガンナーの女性の治療をしている少女のほうへ向けた。
「クラマ。聞いた話によるとお前最近はコハクと一緒にフィールドワークに出ることがあるんだってな」
「え?あ、はい、最近コハクさんにはお世話に、なってます……」
クラマと呼ばれた《テンゴS》装備の少女が返事を返す。
「狩場の植生調査や生態調査、活用方法を学ばせていただいています。…………で、でも、僕はまだ……」
「わかっている。だから今お前にできる最大限をしてくれ」
「は、はい!」
「ハル、どうしようもなくなったら俺が囮になってひきつけるからその間にクラマとシューリャを連れて下山しろ」
「…………それは本当の最終手段ではあるけどな」
わずかに眉をひそめながらレオの提案にハルオキは渋々と承諾をする。
打ちどころが悪かったのか未だに意識が戻らない《プケプケS》装備の女性シューリャ、それから片手剣使いのクラマも含めてまだまだ経験値はハルオキやレオには劣るとはいえ将来有望な人材であることには変わりない。
狩り場慣れも早く視野も広いとなればなおさら。
それでもこのようなイレギュラーはベテラン勢二人を含めて全く想像することができなかった。
まさか、前情報にあった頭数の倍の数のモンスターがいるなんて……。
本来であればティガレックス2頭の討伐のはずだった。
2頭であれば4人で順番にたたいていけば問題ないはずだと踏んでの狩りだ。
狩りにイレギュラーがつきものとはいえこれは最悪の予想外となった。
先に1頭を発見して近くに2頭目がいないことを確認した彼らは道具類の消費も必要最小限にとどめられるように立ち回りながらどうにか1頭目を打ち崩すことに成功した。
ただ、ゆっくりと素材の剥ぎ取りをする時間は与えてもらえずに続けて2頭目が目の前に現れる。
2頭しかいないと思い込んでいた彼らはすぐさま戦闘態勢に入るが視線はその2頭目に集中してしまった。
当たり前といえば当たり前なのだが、そのせいで
そしてその硬直がいち早く解けたレオが狙われたシューリャのサポートに入ろうと駆けだしたころにはすでに遅く、突進を受けた彼女は壁に叩きつけられる形で意識を失ってしまっていた。
幸いなことに直前で気づいたシューリャの咄嗟の機転によってできうる限り体を逃がしていたらしく致命傷とはならなかったらしいが、それが無ければほぼ致命傷間違いなしたった。
下手をしたら…………。
「(まずいな、この洞窟は山頂付近にある…………つまりベースキャンプからは一番遠い場所にあるといっても過言ではない、か。その状況で負傷者一人。双剣使いのハルと片手剣使いのクラマは良いとして負傷したのは重量武器となるヘヴィボウガン使いのシューリャだ。……どうする。シューリャ本人ならともかくクラマとハルに慣れない重量武器を担がせるのは機動力の面で不安が残る……。三頭のティガレックスが相手ならなおさら)」
それは大剣使いである俺も同じか、なんてため息をつきながらレオが頭を掻く。
閃光玉は自分の分はぎりぎり一つ分の調合素材を残して使い切っているが、その分クラマとハルオキは余力があるはずだ。最後の分も早めに調合しておいたほうがいいだろう。
ただ、弾き飛ばされたシューリャは壁に激突した拍子にポーチの中身も飛散してしまっている。
現に洞窟の入口から見える数メートル先のところに道具が散らばっているのが見え……。
「…………」
散乱した道具の確認をしようとレオはもう一度洞窟の入口から外のほうへ視線を向けた。
のだが…………。
見えたのは散乱した道具類の現状ではなく……。
「…………おいおい、嘘だろ?」
グルルルルル……
身体に浮かび上がった赤い模様と同じくらい真っ赤に充血した狂気の双眼だった。
目が合うや否や、
言葉での警告を飛ばすよりも素早くレオは背中に背負っていた大剣を抜き放ち入り口をふさぐように移動して大剣の腹をかまえた。
それを見たハルオキとクラマが驚愕するが構っている暇はない。
「全員耳をふさげ!!!!!」
グギャオオオオァァァァォォオオ!!!!!!!!!
「っグ………オオオオォオォォォォォオオオ!!!」
「っ!!!!」
「っぁ!!!!」
レオが言葉を発するのとほとんど同時のタイミングだった。
入り口前に陣取っていたティガレックスの強烈なバインドボイスが響き渡る。
その振動はビリビリと洞窟内の氷を震わせ、衝撃波となって4人に襲い掛かった。
レオがガードで威力を軽減していなければほぼ間違いなく周囲の壁が破壊されてその瓦礫に巻き込まれていたことだろう。
だとしてもその強烈すぎる咆哮にはレオ以外の二人は思わず耳をふさいでしまうほどの威力を持っていた。
「く、そ!俺たちがここにいることが……ばれたのか!?」
「そう、らしい。さっき目が合っちまった」
バインドボイスの硬直からいち早く立ち直ったハルオキがクラマ、シューリャ、そしてレオの順で視線を移動させながら腰に差してある双剣に手をかける。
「ったく!マジかよまだシューリャが回復しきってねぇってのに」
「よし、ハルさっき言ったこと覚えているな?」
「さっきって……覚えてる、けど」
「ならいい。クラマとシューリャを頼んだぞ」
「…………わかった」
ふざけるな、俺も残る。と言いかけるハルオキだったがレオの表情を見たことでその言葉を飲み込んだ。
確かに今の現状では誰かがティガレックスの注意を引いてそのすきにほかのメンバーが狩場を離脱するのが最善策だ。
それに先ほどの咆哮によって周囲の壁も強度を失いつつある。それはいつ崩れてきても何もおかしくないことを意味しているため、一刻も早くこの場所から離れることが重要であると言える。
「うは、あのティガレックスの野郎さっきから何回か突進して来てやがるな。なんだ、俺たちを生き埋めにでもする気か?」
「え!?」
レオの言葉に今度はクラマが心配そうな表情を向けた。
「おっと、すまんなクラマ。今のは忘れてくれ」
背中を向けた状態でレオは応る。
それから入り口を確認するが、先ほどのティガレックスがこの入口の前にぴたりと陣取っているおかげで洞窟から出ることすらままならない。
「(……どうしたもんか)」
行動が制限されてしまっているおかげで思うように動けないことに焦りが募っていく。
「(ここは閃光玉で………)」
そう考えてポーチの中に手を突っ込んだその瞬間。
ガコン、ガコン!
レオの背後から砲撃音が鳴り響く。
それとともに先ほどまで突進を繰り返していたティガレックスが大きくバランスを崩した。
ティガレックスの額には
大きくのけぞってひるんだチィガレックスだったが、すぐさま体勢を立て直して突進の準備を始める。
しかし、次の瞬間額に打ち込まれていた二発の弾丸が大きく弾け爆発を起こした。
その衝撃はあれほど壁に激突してもびくともしなかったティガレックスを一瞬にして気絶させた。
思わずレオは背後を振り返る。
「シューリャ、起きたのか」
レオだけでなくその場の全員がシューリャのほうへ視線を向けていた。
「そりゃ……どこかの誰かが強烈な
徹甲榴弾Lv1を二発撃ったことによる反動を自分の身体とクラマに支えてもらいながらシューリャが小さく笑みを浮かべる。
だが、それにかまっていられるほどの時間も今はない。
シューリャが作ってくれた隙を逃す手はないのだ。
「でかしたぞシューリャ。よし、これなら十分逃げる隙を作れる、はずだ。ハル!俺の閃光玉を合図にして山を下りろ!いいな!」
「あぁ!レオさんも、ポッケ村*1で待ってるからな!」
「当たり前だ、仕事終わりの酒はまた格別だからなぁ、ガハハハ!」
ひとしきり豪快に笑うとレオは洞窟の入口から周囲を確認して、外へ飛び出していった。
洞窟内に残された3人の間にわずかな静寂が訪れる。
そんな中よろよろと体を起こしたシューリャがぽつりと言葉をこぼした。
「いっ……っ。ク、私がヘマしたせいで……すみません」
彼女にしては珍しくしおらしい声色にクラマも視線を落としている。
「気にするなよシューリャ。狩りなんて予定通りに事が進まなくてなんぼなんだからな。それから起きたんなら話が早い、いつでも動けるように準備しておけ」
「そ、そんな!シューリャさんはまだ怪我が……」
「
シューリャの怪我を心配するクラマの言葉をさえぎってハルオキが語調を強める。
思わず委縮してしまったクラマの肩をポンとたたきシューリャはゆっくりと立ち上がった。
「ありがと、クラマ。でも、大丈夫だから。打ったのは背中だし足にはあまりダメージは来てないから」
それからふと微笑みかけて先ほどの砲撃時に展開していたヘヴィボウガン《毒妖砲ヒルグウーラ》の砲身をたたんで背中に背負いなおした。
少し遅れてシューリャの言葉に納得できないながらも承諾したクラマは手早く広げていた荷物をまとめると、ポーチの中に押し込んでそばに置いていた片手剣《護法具・伏剣フドウ》を腰に差し直してシューリャとともに入り口付近で外の様子を観察しているハルオキの隣で体をかがめた。
それからほとんど同時のタイミングだっただろうか。
洞窟の外が閃光玉の強烈な光に包まれた。
「閃光玉、レオさんからの合図だ。行くぞクラマ、シューリャ。遅れるんじゃないぞ!」
「は、はい!」
「善処はする!」
ハルオキの掛け声に対してクラマ、シューリャがそれぞれの反応を見せ、3人はいっせいに洞窟から飛び出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ハルオキ、クラマ、シューリャの三人の背中が山頂エリアから遠ざかるのを見送り、レオは武器をかまえ名がら一息ついた。
まだティガレックスの閃光玉による目つぶし効果が切れるまではわずかに時間がある。
ホットドリンクの効果のほうはそれに反してもうほとんど効果は切れかかってしまっている。
すでにポーチの中にはホットドリンクの残りはないので三人が安全な場所にまで降りられたタイミングでこのエリアから離脱したいのだが…………。
「なかなか、思い通りにはいかせてくれねぇか……」
武器を構えなおすとともに足止めしていた3頭のティガレックスが閃光玉の効果から回復しそれぞれが山頂の空気を切り裂くほどの咆哮を上げた。
空気が震え、振動で近くの雪壁がわずかに崩れた。
同時にレオの身体をティガレックス3頭から放たれる鋭い視線が射抜いていく。
あの3人が無事に下山するまではここを引く訳には行かない。
「(覚悟を、決めるか!)」
武器を握る手に力を込め、己に課した覚悟とともに3頭に対峙した。
この話からの登場人物
正式採用したキャラ2
Megapon様から送っていただきました。
『クラマ・クロウ』さん。
気弱で引っ込み思案な彼女ですが、洞察力や観察力は人一倍ある片手剣使いのハンターです。
正式採用したキャラ3
シューティング☆様から送っていただきました。
『シューリャ』さん。
賭け事の好きなヘヴィボウガン使いのハンターで、割と酒を飲むことも多く狩りの仕事がない日でもよく酒場にいたりする。
この二人も今後いろいろなところで活躍予定ですので、よろしくお願いします