モンスターハンター〜伝説の邂逅〜   作:奇稲田姫

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2部構成にしようとしてまたもや3部構成にしてしまった←




2.中編

ピィーーー!!

 

突如として甲高い口笛がエリア一帯に響き渡る。

流石にこの音量を出すのは疲れるが、運が味方してくれたこともあり良く響いてくれたのは幸いだ。

 

唐突に鳴り響いた異音に対して近くにいた鳥達は一斉に空へ飛び立ち、同時に草食竜肉食竜問わず音の発生源へ視線を向けた。

 

それは当然ベースキャンプ近辺を徘徊していたリオレウス亜種の耳にも届いており、小さく喉を鳴らしながら音のした方向へ進路を変更し始めた。

 

まずは口笛(コレ)に対して反応を示してくれたことにホッと胸をなでおろしつつ、ヤクモは見晴らしの良さげな木の上から片手を望遠鏡のように目の上に当てる。それから数秒後、リオレウス亜種の姿を目視で捉えた。

先程自分と同じように少し慣れた場所の木の上からライトを使ったサインを出してくれたイノシマも既にこちらに向かって合流を図っている頃だろう。

今回はいつもの狩りとはまた少し色が違う。

商隊の全員生還が条件のためどうにかしてリオレウス亜種を安全航路上から引き離さなければならない。つまり、彼の興味を商隊からこちらに向けさせなければならない訳だが………………まさか、口笛1つで作戦の第1段階が達成されるとは思っていなかった。

そうは言ってもこちらとしてはありがたい限りなのでこのまま乗っからせてもらうとしよう。

 

ポーチの中から先程簡易的に作成したセミ笛を取り出して頭の上で大きく円を描くように振り回しながら枝から飛び降り、向かってくるリオレウス亜種に背中を向ける形で走り出す。

紐と短い円筒管で作った極簡易的なものなのでビジュアル的にも実際のセミ笛とは似ても似つかないがどうにか音は出すことが出来た代物だった。

しかも何故か音が高い。

そのせいで口笛よりもさらに甲高い音を響かせるセミ笛が癪に触ったのかどうか知らないがリオレウス亜種が小さい咆哮をしてからこちらへ向かうスピードを上げた。

それを背中越しで確認し、同時にそれを追うように走るイノシマも視界に収める。

 

通常種のリオレウスとは異なり蒼火竜と呼ばれるその体は澄み渡る青空のごとく彩られ、通常種よりも一回りほど大きな巨体には獰猛さもより一層増しているため希少性もさることながら危険性も折り紙付きのモンスターであった。

その巨大な殺気をひしひしと背中に感じながらヤクモは不安定な足場であることを感じさせないようなスピードで湿地帯を走り抜けていく。

時折大きな火球が空から連続で飛来してくる。

今のところ全力で走っているおかけでどうにかこうにかブレスの射線上から間髪のところで抜けられてはいるが、これから少しでもスピードを緩めれば直撃は免れないだろう。

伝説だなんだと祀り上げられてはいるが正直この緊張感は何度やっても慣れる気がしないし、同時に慣れてはいけないと言う事も改めて思いしらされる。

『死』のプレッシャーには慣れてはいけない。

思考を冷静にそして狩場を客観的に見る為にはそのプレッシャーは必要不可欠な要素だからだ。

死地になれてしまえばどこかで必ず綻びが出てしまう。

そうなってからではまず遅い。

ハンターとしての道を進み始めてからなんど融通が利かないと言われようが貫いてきた自論である。

 

直後。

自分のすぐ隣に火球が着弾した。

 

「っ!」

 

既にセミ笛の音は鳴らしておらず、走るのに邪魔だったためその辺に捨てては来たが役割は十二分に果たしてくれたと言っても差し支えないだろう。

背後の蒼火竜は甲高く煩わしい音に完全に頭に血が上っているご様子。

その目には現在ヤクモしか写っていないことだろう。

 

咄嗟に腕で爆風から顔を守りながらその風圧に身を任せて体を反対方向へ投げ出す。

すぐさま受け身をとって正面からリオレウス亜種に対峙しつつ同時に背中から太刀『たまのをの絶刀の斬振』を引き抜いた。

 

一応商隊が身を潜めている北の洞窟から湿地帯東側に位置するベースキャンプまでのルート上からリオレウス亜種を引き離すことは出来ただろうか。

ベースキャンプを出てから南下しそれから進路を西へ変更しつつ商隊とは真逆の位置で同時に時計回りで誘導していこうというのが今回の作戦だ。

 

ベースキャンプ前の空間よりは少々広めのこの場所はいつもならイーオスの2〜3頭はいるのを覚悟していたが運がいいのか、それともイーオス達が本能的にリオレウス亜種の存在を察知したのか分からないが本日は小型モンスターの姿は見えない。

 

逃げるのを止めて正面から武器を向けてきたハンターに対してグルルゥゥ…と小さく喉を鳴らすと滞空していたリオレウス亜種がゆっくりと地面に降りてきた。

リオレウス亜種の着地とほぼ同じタイミングで、その背後から追いかけてきていたイノシマが走るルートを西に変えて翔蟲を使用して飛んでいった。

彼女にはこの隣のエリアでやってもらうことがあるので1度ここで二手に別れる手筈になっている。

 

それを視界の端で見送り体の前で構える太刀を握り直した。

 

「蒼火竜。貴方と相対するのは初めてですね。本来なら刃を交える前に一言添えるべきところではあるのですが。状況が状況故、無礼を承知で斬らせていただきます。何卒御容赦を」

 

背が高い木々に囲まれているおかげで薄暗い中ではあるがリオレウス亜種の姿は何故かよく見える。

それは向こうも同じらしい。

 

先に仕掛けたのはリオレウス亜種だった。

 

低く喉を鳴らし、僅かに体を沈みこませてから勢いよく地を蹴りながら突進を開始する。

こんなぬかるんで不安定な足場だと言うのにその速度は通常種をうわまっているのではないだろうか。

しかも安定感もある。

 

素早く真横へ回避行動を取ったあと即座に接近して突進後の硬直に狙いを済まして太刀を振るう。

狙いは尻尾………………と行きたかったが少し突進の軌道がズレたせいで予想していた場所に来てくれなかった。回避後の一瞬で狙いを尻尾から足に変更し、走り込む勢いのまま数回斬りつけたあとリオレウス亜種の振り向きに合わせて斬り払いをしながら距離を取った。

体の前で刀を構え直して舌打ちをひとつ。

 

「………………やはり通常種より硬い」

 

今相対している相手が通常種よりも強固な外殻を持っていることは人伝に聞いてはいた。

しかし『聞いていた情報』と『実際に対峙した上での情報』ではやはりどうしても多少の誤差は生じてしまう。

ただ正直にいえば、ヤクモもここまで差があるとは思っていなかったのは事実だった。

 

眉を顰めながらどう攻めようかと思考をめぐらせる余裕もなく今度はリオレウス亜種の口元から赤い炎が零れ始め、それから大きくのけぞり………………

 

「ブレス!?」

 

こちらに向かって巨大な火球が放たれる。

走り出そうと踏み出した足で急ブレーキをかけ、そのまま真横へ体を投げ出すようにしてどうにかブレスの射線上から退避した。

しかし、無理やり体を動かしたせいで体勢が崩れる。

その隙を目掛けてリオレウス亜種が再び突進を仕掛けてきた。

 

どうにか今の体勢で出来うる限り軸足に力を込め、目視で距離を測りながら左手に握る鞘に太刀の刃を収める。

納刀、そして突進に合わせて一気に軸足に溜めていた力を爆発させて居合抜刀気刃斬りを放った。

 

「ッ!(……少しズレましたか)」

 

一撃は与えることが出来たが僅かに抜刀のタイミングをずらしてしまったせいで追撃の斬撃まで与えることが出来なかった。

本来であればするりと攻撃を見切りモンスターと交差するその一瞬の隙を突いた神業級の斬撃によって時間差でダメージが蓄積される技ではあるのだが、それが発動するタイミングはかなりシビアであり少しでもタイミングがズレてしまえば発動はもちろん斬る前にモンスターの攻撃に直撃してしまうリスクも大きい技だ。

今回はただ発動しなかっただけであるがタイミングとしては相当ギリギリであった。

あと少しでも抜刀が遅れていたら今しがた背後で突進の勢いを前方に大きく投げ出しながら倒れ込むリオレウス亜種の体の下敷きになっていただろう。

布地が主体の《依巫・祈》装備でブレスやボディプレスなんか直撃したらそれこそ文字通り再起不能だ。

 

振り抜いた太刀をすぐさま納刀し、背中に背負い直しポーチから閃光玉を取り出して体を起こしながらこちらに振り向いたリオレウス亜種の目前に向けて投げる。

突如として目を焼かれたリオレウス亜種が仰け反る。

 

リオレウス亜種にどの程度効くのかは定かではないが、見積もるのであれば通常種よりも短いと判断するのが妥当だろう。

だいたい通常種が約20秒程度だとして…………その亜種個体なら10秒~15秒であると見積もるのがいいか。

であればあまり時間は無駄にできない。

ヤクモは即座に太刀を抜き放ち閃光によって盲目となったリオレウス亜種に肉薄する。

その足音を聞いてなのか分からないが、リオレウス亜種が僅かに頭をのけぞらせて咆哮を放った。

バインドボイスと呼ばれる咆哮はその声量と衝撃故にまともに受ければ思わず耳を抑えてしまう程の衝撃であり、そうなってしまえば体は硬直してしまい身動きが取れなくなってしまう。

つまり、モンスターの目前で無防備な姿を晒してしまうことに等しい。

 

しかし、ヤクモはそうなると踏んでいた。

 

それはそうだ。

閃光玉は視覚こそ奪えるが聴覚までは奪えない。

目が見えなくとも自身に武器を向けるハンターが接近する足音などは聞こえるはずなのだ。

ではどうすればそれの接近を妨害できるか、『空へ逃げる』以外の選択肢があるとすれば咆哮(バインドボイス)一択になる。

これは通常種と同じだ。

ヤクモは走り込む勢いを殺さぬままヒュっと1度水平に太刀を振り、バインドボイスに合わせて体を逃がしながら見切る。

それから力強く踏み込んで切り上げに繋げ、完全に太刀の間合いへリオレウス亜種を収めると身体中の力を一気に解放して気刃を纏った。

 

「はああぁぁぁっ!!!!」

 

刃が踊る。

まるで双剣の乱舞のごとく舞うように放たれる斬撃が無防備に晒された首にヒットしていく。

斜めに斬り抜き、続けて遠心力を載せながら逆から。

次いで回転力を乗せた水平斬りと体の切り返しを利用した縦切りに繋げ、納刀から抜刀斬りへ移行した。

流れるように斬撃を放ちながらも正確に閃光玉の時間を計っていく。

自信が予想した閃光玉の効果時間に達すると同時に斬り払いで後ろへステップし、もう一度ステップを踏んでリオレウス亜種から距離をとった。

その直後、自分を攻撃する煩わしい虫を払う様に翼を大きく広げたリオレウス亜種が天に向かって吠え、同時にギロリと八雲の方へ視線を向けた。

 

どうやら閃光玉の効果時間は予想通りらしい。

 

「はぁ……はぁ……」

 

とは言ってもこうまで足場が悪い中で立ち回るのはいつも以上に体力を使う。

小刻みに肩を上下させながら武器を体の前で構え直し、リオレウス亜種が攻撃に転じたのとほぼ同時にリオレウス亜種を中心として時計回りに走り出す。

直後リオレウス亜種から放たれたブレスが先程までヤクモが立っていた地面を薙ぎ払い、攻撃を外したリオレウス亜種が低く喉を鳴らしながら視線をヤクモの方へ向け、突進を開始した。

通常種よりも突進の予備動作が小さくかなり見極めづらいが走り込む勢いを利用して前に前転することで突進の軌道から体を逃がす。

すぐさま地面に手を着いて体勢を建て直し突進後無防備になる背中へ追撃をするために走り出した。

 

しかし、そこで予想外の事態が発生した。

 

なんと、リオレウス亜種の巨体が突進を外したことを察知した瞬間両足で急ブレーキを掛けて静止し、間髪入れずに尻尾を振り回して来たのだ。

 

「なっ!?…………ッ!!!!」

 

完全に裏をかかれた。

攻勢に転じようとしていたヤクモの動きに綻びが出る。

咄嗟に両腕で頭を守るようにクロスさせ、自分の体が吹き飛ぶであろう方向へ向かってジャンプすることで多少衝撃は殺せたかもしれないが、それでもヤクモのか細い体は大きく宙を舞った。

 

不幸中の幸いと言うべきだろうか、エリアを囲む岩壁ではなく木の幹に背中を思い切り打ち付けたことで頭部へのダメージは少ない。

 

尻尾の一撃でこの威力……流石は空の王者の亜種個体と言うべきだろうか。

 

よろよろと投げ出された太刀を握りしめ、太刀を杖代わりにしながら体を起こす。

視線の先ではリオレウス亜種がこちらへ向かって悠々と歩いて来ているのが見える。

威嚇するようにこちらへ軽く吼え、トドメを刺そうと言うのだろう口の端から真紅の炎がちらりと見え始めた。

ブレスが来る。

そう感じて回避を試みるが先程の一撃がかなり効いてしまっているらしい、両足が重い。

 

そんなヤクモに向けてリオレウス亜種が大きくのけ反り、ブレスを吐き出した。

 

 

 

 

 

「ッ! 」

 

 

 

 

 

重い足が動かない。

反応が遅れ足がもつれる。

油断大敵、その言葉を心と体に嫌という程刻み込んで太刀を振るって来た、はずだった。

しかしこれは完全にヤクモの油断が招いた結末だ。

「亜種個体と言えど通常種と大差ないだろう」と言う無意識な慢心が生んだ結果。

これでは他の同世代に顔向けできるわけが無い。

ヤクモは自身の浅はかさを恨みながらキッとブレスを睨みつけた、まさにその直後。

 

 

 

 

 

「"ヤクモ殿!!!!!!"」

 

 

 

 

 

 

切れかけていた意識が一瞬で覚醒し、声の方へ視線を向ける。

視線の先では電子音声が音割れするほどの声量を出したらしいイノシマがカムラの里に伝わる翔蟲を使用した特殊技法、鉄蟲糸技(てっちゅうしぎ)『形態変形前進』によって武器の盾斧(チャージアックス)を片手剣形態から斧形態へ変形させながらヤクモの前に割って入った。

そのまま武器を前に出す仕草をし、盾として腕に取り付けている武器でリオレウス亜種のブレスを真正面から受け止める。

それは通常のガードとは一線を画す。ヤクモは思わず言葉を漏らしてしまった。

 

「ガ、G(ガード)……P(ポイント)!?」

 

「"様子を見に来て正解であります。動けますか?"」

 

G(ガード)P(ポイント)。それは盾斧(チャージアックス)の武器が誇る防御技法の1つで、普通に盾を使ってガードするよりも一回り以上の強固さを誇る防御技法だ。

通常片手に盾ともう片方に剣と言うように片手剣のような立ち回りを得意とし、時には盾に剣を組み込んで1つの斧として攻撃力をあげる武器、それが盾斧(チャージアックス)と呼ばれる武器だ。その扱いは同じ系統の剣斧(スラッシュアックス)同様かなりの難易度を有する武器の1つだった。

ましてやGP。武器を片手剣形態から斧形態へ形態変形させる時や、片手剣形態の突きの時等右腕に取り付けた盾を前に出している時にのみ発動できる通常ガードよりも強固なガード方法。それ故タダでさえ扱いが難しい盾斧(チャージアックス)の中でも群を抜いて難しい技法だった。

それをこうも容易くしかもあの鉄蟲糸技から即座に移行できるなんて……。

 

「"目を閉じてください!"」

 

「っ!」

 

ブレスを受け止めたイノシマが即座にポーチから閃光玉を取り出してリオレウス亜種の目前に投げる。

閃光の直前にどうにか目を閉じたヤクモ。

しかしリオレウス亜種の方はまともに閃光を受けたようで呻くように低い声を上げながら大きくのけぞった。

 

「"1度体勢を立て直すであります。隣のエリア準備出来ましたのでそちらに。リオレウス亜種の方も視力が回復した後もすぐには商隊の方には行かない、と思うのであります。向こうも頭に血が上っていますし"」

 

「そ、そうですね。1度引きましょう。すみません。お手数をお掛けしました…………ッ! 」

 

そう言って立ち上がろうとした時、背中にズキンと痛みが走る。

どうやら先程背中を打ち付けた際のダメージが来たらしい。

幸い防具のおかげで骨まではやっていないっぽいが背中、それから両腕が麻痺してしまっている。

 

「"肩を貸すであります。とりあえず隣のエリアへ行きましょう"」

 

「申し訳ありません。ありがとうございます」

 

イノシマに肩を貸して貰いながらどうにか交戦エリアの西側のエリアへ逃げ込む2人。

閃光玉の効果が切れるタイミングでもう1つ閃光玉とついでにペイントボールもイノシマに投げて貰ったのでとりあえずこちらの移動に気づかれることなくエリア移動、そして位置情報の特定も出来るようになった。

 

ペイントボールの臭いからしてまだエリア移動はしていないようだ。

恐らくヤクモを探しているのだろう隣のエリアから遠目に見えるリオレウス亜種は首を伸ばしてキョロキョロと視線をめぐらせながら低く喉を鳴らしている。

 

交戦エリアのすぐ西側のエリアにはメラルーとアイルーに加えファンゴ種といった小型モンスターも徘徊しているのでそこで大型モンスターと交戦するのは少し分が悪い。

大型モンスターに集中しているところに横槍を入れられたらそれこそ目も当てられないし、かと言って小型モンスターに注意を向け過ぎれば今度は大型モンスターの手痛い一撃を貰いかねない。

 

だからイノシマには先に隣のエリアへ行ってもらって小型モンスターの露払いを頼んでいたのだ。

予定通りこのエリアにいた小型モンスターの姿は見えず、閑散としていた。

 

ヤクモは手頃な岩の上に腰掛け、支給された応急薬を飲んで体力を回復させついでに携帯食糧も口に放り込んで大きく深呼吸をした。

即効性の回復薬とは言え体力こそ回復は出来るが傷等が完治する訳では無い。

 

イノシマはヤクモが道具を使用している間万が一に備えて周囲を警戒してくれており、深呼吸で息を整えたタイミングでヤクモの元へ戻ってきた。

 

「"ヤクモ殿、怪我の具合はいかがですか?"」

 

「はい。腕にまだ痺れは残っていますが打ち付けた背中の痛みは多少引いてきました。もう少し休めば痺れも無くなるでしょうから立ち回りには影響はありません」

 

「"ふぅ。良かったであります。間一髪でしたな"」

 

「ですね。助けていただきありがとうございます」

 

「"仲間を助けるのは当たり前でありますよ。とは言え、あまり長くリオレウス亜種の前に姿を現さなければまた商隊の方へ言ってしまうかもしれませんね。ふむ、では今度はオイラがリオレウス亜種の相手を…………"」

 

「……いえ」

 

「"?"」

 

次なる作戦を話し合っている最中、自ら囮役を申し出ようとしていたイノシマの言葉に被せるようにして言葉を切った。

 

イノシマは気付いていない。

というか、以前ウツシから聞いたことがあるのだがカムラではペイントボールというものをほとんど使用しないらしい。

つまり、イノシマはペイントボールの扱いに慣れてはいないのだ。

だから気づかない。

 

 

ペイントボールの臭いがこちらに向かって来ているということに。

 

 

 

 

 

 

「…………その必要は無さそうです」

 

そう言いながらヤクモは隣に立て掛けていた太刀を握りしめ、視線を空へ移した。

 

その直後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グギャアアオォォォォォォオオ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空の王者が奏でる猛々しい咆哮が湿地帯全域の空気をビリビリと震撼させた。

 

 

 

 

 

 

※現在の状況※

 

 

商隊:状況報告無し(詳細不明)

 

リオレウス亜種:ジォ・テラード湿地帯南西部へ移動(ヤクモ・イノシマ交戦中)

 

イズモ:状況報告無し(詳細不明)

 

ヤクモ・イノシマ:ジォ・テラード湿地帯南西部へ移動(リオレウス亜種交戦中。うちヤクモ軽傷有り)

 




恐らく次回で「水蓧 八雲の章」が区切りになりそうですね。

のんびり待っていてもらえるとありがたいです

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