全てを知っても、君は笑ってくれますか?   作:ワサオーロラ

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この出会いに感謝を

手に2回ほどシャンプーをプッシュして、手でそれを擦り合わせて泡立てて髪につける。瞼ぐらいまで伸びた髪を上げて、その流れで頸ぐらいまである髪に一通り泡をつける。そこからいろんなところを念入りに洗う。軽く髪をかくように爪を立てるといい感じに気持ちいい。

 

隈なく洗っていると毎回左耳の後ろっ側にある少し残った部分を毎回手が触れる。今は伸びた髪で隠して見えないようにしているものの肌色の少し髪が薄い部分がそこにはある。そのまだ生えたばっかりのようなチクチクした感触を触るたびに、伸びてないんだなって言うガッカリとした気持ちになる。

 

そんなことを思いながら桶に貯めた水で手を洗い、シャワーに手を伸ばす。出てくるお湯で髪につけた白いものを流し残しがないようにいろんな方向から水攻めして落としていく。落ちたら乾かないうちにトリートメントをつける。そこから数分放置する。その間に体を石鹸をタオルにつけて体を洗う。体が洗い終わると一緒にトリートメントも一緒に落としていく。

 

その後コンディショナーもつけるがこれもまた同じで放置する。この時は歯磨きをしながら時間を潰す。それが終わったら洗顔をして浴槽に浸かる。髪や体を洗うのは、夜しているが毎朝朝風呂は欠かさず入っている。風呂から出て、服を着てリビングに行くと俺が入っているうちに杏花さんが入れてくれたコーヒーを飲むのが毎朝飲むのが俺の朝スイッチを入れるルーティーンである。

 

その後ドライヤーをかけに洗面台に行く。熱い風で乾かして、その後涼しい風で乾かす。この工程を3回くらい繰り返す。少し薄いところに熱い風を当てると、その日ずっとヒリヒリしてる日とかあったから最近は櫛とかを使ってダイレクトに当たらないようにしている。だいぶ乾いてきたら、ヘアバンドをして化粧水をつける。手に溜めた水を少しとって顔にペタペタとつけていく。全部つけ終わったら顔を両手で覆ってゆっくりと馴染ませていく。少し湿ったところを軽くタオルで拭き取り、手を洗う。

 

洗面台の前にある大きな鏡を見るたびに、自分って女子みたいな顔だよなって思う。まつ毛が長くて、くっきりとした二重なんて女子が憧れるもの。中二とかの頃は一方的に話し続ける女子がそんなことを言っていた気がする。別に嫌いじゃなかったけど、好きでもなかった。人と話すのは好きだし、なんならいろんな手の話題に対応できるようにいろんなジャンルを調べてた時期があったから、中学の半ばは結構周りに好かれている方だった。俺が生徒会長になるって言った時も周りの人達みんなが俺を応援してくれて、とても心強かった。それを壊したのも俺だけどな。

 

それもそうだろう。人間としては変わってなくても、周りは自分の風評的評価などを気にするもんだ。それが軽いものだったら、別に気にすることでもないだろうが、法に触れる。“人殺し”ってなったら話は別だろう。殺したわけではないけど、関与したとなれば周りが俺から離れていく理由には十分だろう。もちろん噂が出回ってからすぐに態度に現れ、俺の周りは誰もいなくなった。その絶望からか、生徒会長としてのプライドからかあらゆる人に話をかけたが、無視されるか、話してくれても断られた。そのうち友達がずっといなかったことで今まで何をしてきたか、どんなことをして、どんな話題で話していたのか思い出せなくなった。そんなこんなで俺は友達の作る方を忘れた。

 

朝ごはんを食べ、荷物の準備をしていると、杏花さんに抱っこされた澄美麗ちゃんが降りてきた。

 

「おあよーおにいちゃん………」

 

「おはよう。澄美麗ちゃんが眠そうだね。」

 

抱っこされた少女の頭を俺は撫でる。ん〜っと声を上げた後彼女は杏花さんの方を向いてまた眠ってしまった。羨ましいと思いながらも、その可愛さに朝から元気をもらった気がした。

 

「寝ちゃいましたね。」

 

「ああ、そうだな。もう行くのかい?弁当作ってないんだけど…」

 

「はい。今日やることがあるので、早めに。今日は学食試してみたいので、大丈夫です。」

 

「そうか。まあ、気ままに頑張れよ。」

 

「はい。それでは行ってきます。」

 

「ああ、いってらっしゃい」

 

靴を履いて立ち上がると、目の前で子供を抱えて経っている母親が軽く手を振った。俺もそれに応えるように微笑みながら手を振った。そして玄関のドアを開けた。

 

 

 

 

 

その日は思った以上に早く出たから、電車が混んでる時間帯になることはなかった。最寄りが一つ隣だから、混雑してきたとしてもすぐ降りつことができるのだ。電車から降りて、学園まで歩っていると、後ろから運動部がぞろぞろと掛け声を上げて走ってきた。俺は止まってその人に道を譲る。俺の前を通る彼らは俺に頭を下げていった。30人ぐらい位いる人たちがみんな俺に向かって頭を下げるから俺も首が疲れる。列の最後の方まで来て、歩き出そうとした時、

 

「あれ、りっひー?」

 

「え?愛さん?」

 

「あ〜やっぱ、りっひーだ〜やっほ〜」

 

独特のあだ名で俺のことを呼ぶのは一人しかいない。その声に後ろを振り向くと、案の定運動のしやすそうな格好をした、愛先輩だった。

 

「おはようございます。早いですね。朝練ですか?」

 

「うん。今日は陸上部の朝練に参加してるんだ。」

 

「え、あー、スクールアイドル同好会と陸上部掛け持ちしてる感じですか?」

 

「おぉ?愛さんスクールアイドル同好会にしか入ってないよ?」

 

「えっ、じゃあなんで陸上部の朝練出てるんですか?」

 

「あ〜愛さんよくいろんな運動部の助っ人で呼ばれるんだよ。」

 

「あ、そうなんですか。」

 

俺のとこまで来た愛さんは俺と同じ速さで歩き始めた。そこに違和感を覚えたが、今だけこうして歩いていると思ったていたから何も言わなかったが、いつまで経っても俺と同じ速さで歩くだけで、練習に戻ろうとしない。流石の俺も突っ込まざるを得なかった。

 

「あの、もう前誰も見えませんけど、行かなくていいんですか?」

 

「え、あ〜〜〜!!やばい、りっひーとの話面白くて、忘れてた!また同好会でね。バイバイ!」

 

「え、ちょ……行っちゃった。」

 

そう手を振った彼女はさっきよりも早いスピードで走っていってしまった。追いかけようとは思ったが、リュックとかあるから諦めた。話が面白いなんて言われたことがなかったから、少しえへへっとにやける。それよりもだ。

 

「………まだ入るって言ってないんだけど…まず、誘われてないし」

 

危ない。愛さんのせいで少し気持ちが揺らぎそうになった。愛さんはああ言ったけど、正直迷っている。ただ帰って勉強するのも暇だから部活か同好会に入りたいって思ってた時にスクールアイドル同好会とに出会って惹かれた。そこからちょくちょくいろんなスクールアイドルの動画を見ている。だから入りたいとは思うけど………逃げ出しちゃったから、少し気まずい。あの人たちだったら、きっと許してくれるし、なんなら自分たちのことを責める気がする。これは彼女と俺の問題じゃなくて、俺の心の問題だ。それ以上でもそれ以下でもない。

 

考え事をしながらとぼとぼ歩き敷地内に入ると、彼方さんを膝枕したベンチが目に入る。まだ時間もあるから、座ろうと思い、そこ向かって、座ったはいいもののそこに座っても何も決まらなかったからのんびり考えるかって事で、鞄から本を出して、先端に穴が空いており薄い青のリボンが結んである、シラーという花ががラミネートされたその栞を胸ポケットに入れ、本を読む。これは荷物を整理してた時に、服の入った鞄に見知らぬ宛先不明の真っ白な封筒の中に手紙と一緒に入っていたもの。まあ、字からして海音なんだろうけどな。

 

海音は昔に比べて態度は変わったり、話す回数が減ったものの、話しかければ話してくれるし、何かあれば話しかけてもくれた。素っ気なくなったのは事実だが、話さなくなったわけではなかった。別れ際にあんなこと言ったとは思えないほど、謝罪みたいな手紙と一緒に使ってくれみたいな感じで入っていた。その手紙でその花がシラーって名前なのを知った。多分花付好きの母さんに聞いたんだろうな。そうでもないと海音は俺が知らない花なんて送ってこないだろうしなぁ。

 

俺はふと思い、スマホでシラーの花言葉を調べる。一番最初に出てくるのは、「さみしい」だった。これは送ってきた理由としてしっくりこなかったから、スルーした。それ以外にも、「辛抱強さ」「多感な心」「変わらぬ愛」「不変」があるらしい

 

(変わらぬ愛は、まずないだろう。辛抱強さは否定しない。多感な心は……まあ、色々あったからある。不変は変わってしまったからないだろうな、それとも兄弟仲とかか……でも、あいつそんな回りくどいことしないだろうからないな。ってなると、一番しっくりくるのは「辛抱強さ」かな。まあ〜双子だし考えること一緒だろ。)

 

俺はうんうんと頷き、横の鞄にスマホを入れ、膝の本を取ろうとした時、本が思っていた位置よりも高いところにあったのだ。それもそうだ。

 

俺の膝の上に、紫と白のシマシマの枕を置きその上に頭を置いて寝ている人の上に本が置いてあったのだから。流石にしれっと寝ていたのでびっくりして少し跳ねる。その時その人の頭が少し揺れて起こしてしまったらしい。

 

「ん〜おはよぅ〜陸人くん」

 

「か、彼方さん、なんで寝てるんですか?!」

 

「だって、いつもの特等席に先客がいて、それが陸人くんだったから、いいかな〜って。」

 

「いいかな〜じゃないですよ。びっくりしたじゃないですか。」

 

「彼方ちゃん迷惑かけちゃった?だとしたらごめんね。」

 

「いや、別にいいですけど、一応なんか言ってくださいよ。まさか誰にでもしてるわけじゃないですよね?」

 

「彼方ちゃんのことなんだと思ってるのさ〜流石にそんなことしないよ〜同好会の子たちとか、陸人くんにしかしないもん。」

 

それまで俺のことを見て、話ていた彼女はプイッと頭を時計回りに回転させた。

 

「彼方さん〜機嫌直してください〜」

 

「ご立腹なのだ〜。これはまだ膝枕していただかないといけません。そして彼方ちゃんを満足させてください。それまで直らないし、離れません!」

 

(ん〜と言われてもね。耳元で囁く………?いや流石にやばいか、頭撫でる、いやそれも恥ずかしいな………)

 

悩んでいたら、ふと愛さんの言葉を思い出した。

 

“また同好会でね!”

 

その言葉で、浮かんだことをそのまま彼方さんに質問した。

 

「彼方さん、俺が同好会入るって言ったら、う…嬉しいですか?」

 

「それはもちろん!でもそれは彼方ちゃんだけじゃなくてみんなそうだと思うよ。」

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

「なんでそんな質問?まさか、入ってくれるの?」

 

そう言って彼女は俺の方へ顔を向けた。機嫌直るまで向かないって言ってたのに、すぐこっち向いたから、少し可愛いなって思い、クスってなる。

 

「正直それぐらいしか機嫌直す方法が浮かばなかったので…それに迷ってたので、誰かに喜んでもらえるんだったらいいかなって思ったので。」

 

「そ、そっか〜………」

 

そういうと彼女はゆっくりとまたそっぽを向いてしまった。俺また何かしたかと思ったが、さっきの感覚として機嫌はいいはずなんだけどな…

 

「なんでそっち向くんですか?」

 

「いや、彼方ちゃんもわかんないんだよ〜なんか顔熱くて…」

 

「えっ、大丈夫ですか?熱ですかね!」

 

俺は彼女の方を抱いて、少し起こしておでこを触る。

 

「熱はないですね。太陽に当たり過ぎたのかもですね。」

 

「あわわわわ………だ、大丈夫だから〜」

 

そう言って俺を突き飛ばして、彼女は起き上がり、荷物を持って駆け出して行った。なんで突き飛ばされたのか、なんで気分いいのにそっぽ向かれたのか、俺にはわからなかった。慌てて走っていったから、枕を置いて行ってしまった彼女を慌てて追いかけて、結局会えなかったので放課後渡すことにした。その枕には彼方さんの匂いが残ってて、教室で顔を埋めたが、自分がやばいやつになると思ったから、数秒で離れる。あと低反発ですごい気持ちよかった。彼方さんが愛用する気持ちがわかる気がする。

 

(つか、これ持ってきてよかったのか?)

 

そんなこんなで結局放課後渡すことにした。

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