2040年イ401は佐賀にある宇宙ステーションの防衛の任を政府から請け負っていた。
「七番侵食魚雷発射!」
-プシュ-
少し間の抜けた魚雷の発射音が響きナガラに向けて2本の侵食魚雷が放たれた。
「高速水深音!魚雷2接近!」
「きずかれてた」
「一・二番スナップショット!機関停止潜れ!」
「きゅーそくせんこー」
-ボーン-
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水中で爆発する音がひとつだけ聞こえた。
「クラインフィールド展開」
そして迎撃に失敗した魚雷1本がイ401に命中したが、クラインフィールドを直前に展開していたため損害は皆無だった。
「魚雷命中まで5、4、3、2、1」
「ナガラ右舷に旋回しつつクラインフィールド展開!」
「遅い!」
-ドゴーン-
侵食魚雷が命中しナガラは船体中央を消滅させ黒い黒煙を上げながら撃沈した。
「大陸間連絡用SSTO打ち上げ成功ですね〜」
「は〜やれやれだな」
戦闘終了後、作戦が終わったと気を抜き体を伸ばす船員たち。
「今の日本から国外へ送るものなど果たしてあるのでしょうか?」
「あるから打ちあげてるんだろ?」
そしてその頃イ401の艦長とそのメンタルモデルは甲板に上がっていた。
「ナガラ、あなたはただ命令に従っただけ」
イ401のメンタルモデルであるイオナが撃沈したナガラに向かって言った。
「イオナ、大丈夫か?」
「クラインフィールドで疲れた」
「そうか」
艦長の千早群像が甲板に出てイオナに向かって話しかけた。
イオナは素っ気なく答えるが艦長は特に気にした様子はなく質問を投げかけた。
「霧はなんで現れた?なんのために存在する?」
「分からない。私達はただ命令に従う存在」
「お前は、俺の命令だから戦っているのか?」
「うん」
イオナと千早群像は沈みゆくナガラを見つめながらそんな会話をした。
ゆっくりとしたテンポでの会話だったが強い思いが込められた言葉だった。
「私はあなたの船、2年前に目覚めた時から」
「そうだな、あれから俺たちはお尋ね者だ…」
「…うん、私は船、艦長の物。私を連れて行って……群像の答えに…」
「あぁ……」
そう言って群像は少し笑った。
だが、そんな平穏な風景は突如終わりを告げた。
「!、重力子反応探知!」
「なっ!どこからだ!?」
「前方800m先 右舷に重力子反応を確認。推定大戦艦レベル!!」
「大戦艦!?まじかよ!」
「霧の船発砲!超重力砲来ます!」
艦内ではそれをすぐさま状況を確認し混乱が発生していた。
そして、発射された超重力砲は飛び立つ大陸間連絡用SSTOに一直線に向かっていき命中。
SSTOは状況を確認する間もなく撃墜された。
「大陸間連絡用SSTO撃墜されました……」
「僧!状況は?!」
「艦長!右舷前方に超重力子反応を確認しました。既に発射されて大陸間連絡用SSTOを撃墜されています」
「超戦艦か…イオナわかるか?」
やっと艦内に到着した艦長である群像は1番詳しいであろうイオナに向けて聞いた。
「……」
「イオナ?」
「大丈夫…あれは霧の大戦艦トサ、霧の艦隊最強と呼ばれる船」
「トサそれって?」
「大海戦の際に出現した戦艦でしょう」
「大海戦……」
その場の全員が士官学校時代に習った内容を思い浮かべ苦い顔をしていた。
何せ相手は霧の艦隊の船の中でも大海戦で人類の艦隊を殲滅した大戦艦なのだ。
さらにイオナが霧の艦隊最強と呼んだこともあり乗組員たちの表情は明るくない。
「!、トサ浮上します!」
「艦長、どうしますか?」
「……接触しよう」
「艦長、いいのですか?」
「あぁ、構わないかイオナ」
「うん。大丈夫」
「艦長がそう言うんならな」
「分かりしました」
「よしイオナ、クラインフィールドを展開しつつトサに接近してくれ」
「りょうかい、クラインフィールド展開」
「行くぞ…」
そしてイ401は約10ノット程度の速度でトサに向かっていった。
トサとの距離は徐々に縮まり800m程離れていた距離は今や200m程になっていた。
艦内は強い緊張に包まれた。
それは艦長の千早群像も例外ではなく鋭い表情でトサを見つめていた。
「艦長!トサから通信です!」
「何?」
トサとの距離があと100mを切るところでトサから通信が入った。
それも、イオナに直接ではなく静に通信が入ったのは完全に予想外だった。
「トサからはなんと言ってるんだ?」
千早群像がすぐさま落ち着きを取り戻し静に聞いた。
「はい、こちらと話をしたいと……」
「大戦艦が?」
「なんか罠じゃないのか群像?」
杏平がそう言うが群像はすぐさまその意見を否定した。
「それなら最初っからこっちに攻撃を仕掛けてくるはずだ。それに最初から不自然なところはあった」
「そうだけどな……」
「とにかく向こうからあってくれるなら好都合だ、接近するぞ」
群像の言葉を皮切りにイ401はさらに近ずいて行った。
トサは徐々に速度を落としイ401と並ぶと完全に停止した。
「僧、俺とイオナの2人でトサに会いに行く艦を任せる」
「分かりました艦長、ご武運を」
「いざと言う時は頼んだぞ」
「はい」
「何辛気臭い顔してるんだよ!俺も忘れんな!」
「杏平は空気を読んだ方がいいよ」
「なんだとー!いおり後で覚えてろよ!」
「なんですって?杏平の癖に生意気よ!」
「おふたりとも落ち着いてください」
「「あいつが悪い!!」」
「は、はぁ…」
群像と僧がお互いを信頼して会話してる中、雰囲気を破壊した杏平に文句を言った機関担当のいおりとの言い争い、またはじゃれ合いを始めそれを善意で止めようとした静がアタフタするという不思議な光景が広がっていた。
なお終始イオナは首を傾げていたが……。
「じゃあ行ってくる」
「はい2人とも」
「頑張れよ!」
「イオナも無理しちゃだよだよ」
「わかってる」
こうして群像とイオナの2人は船の外に存在する200m越えの巨艦に向かった。
「ここを歩けばいいのか」
「うん」
俺の前には霧の大戦艦トサの姿とトサから向かって階段になってる板があった。
俺とイオナは少しの間トサのことを眺めていたが覚悟を決めて足を踏み出した。
トサの艦上には巨大な主砲をや副砲などの武装が所狭しと搭載されておりイ401よりはるかに強大で頑丈な船だということを思わせる。
「これは?」
そして甲板には軍艦の艦上にあっては不自然なシンプルなテーブルと椅子があった。
「きっとトサが置いたんだと思う」
「そうだろうが…」
「トサは対話を望んでいた。そのための物」
「そんなもんか…」
「……」コクコク
イオナと会話を済ませて当たりを見渡し艦橋を見上げると1人の人影があった。
その人影は突如艦橋から飛び降り群像とイオナの目の前、テーブルの反対側に着地した。
その姿は白い雪のような長い髪に綺麗な青色の瞳をした女性だった。
黄金比に整った顔立ちに出るところは出た抜群のスタイル、間違いなく絶世の美女と言えるだろうがその姿は作り物感がありまるで心のない人形のように無表情だった。
突然のことに驚きつつも相手はメンタルモデルであることを思い浮かべ気にせず群像は話しかけた。
「初めまして、俺は千早群像でこっちがイオナだ君の名前は?」
「あぁ、私はこの戦艦のメンタルモデルトサだ。そちらと話したくてこの場にきた」
「よろしくトサ。早速だが話とはなんだ?」
群像は大戦艦メンタルモデルに臆することなく話を切り込んだ。
「こちらの要求はただ1つだ、私に協力をしてくれ」
「協力?」
「あぁ、時が来たら私を沈めてくれ」
「沈める!?」
「そうだ」
俺は驚きを隠せなかった。
最初の協力だけでも意味が分からないのに自分のことを時が来たら沈めろと言ったのだから。
隣のイオナにしても訳が分からないと言った表情で固まっている。
「…理由は?」
俺は何とかして言葉を絞り出した。
「霧と人類が和平を結ぶため」
「霧と人類が?できるのか?」
「できる。そのために千早群像、貴殿は時が来れば私を沈めてくれ、それからの事は霧の船達が何とかする」
「本当か?」
俺は一言呟いた。
「あぁ、私は嘘はつかない」
「でもどうやって?なぜトサが沈まなければならない?」
「ふむ、そうだな強いて言うなら悪役になるため」
「悪役?」
「人々は絶対的な悪がいると団結するだろ?メンタルモデルは人を真似て作ってある。欠点こそあるがアドミラリティーコードから解放されれば個々の船で動くはずだ無論、私が悪になることで霧の艦隊も団結させる」
「本気か?」
「本気だ」
「……」
絶句、そんな言葉が似合う状況になっていた。
ただでさえ混乱していたと言うのに霧の艦隊と人類の敵になることで和平を作る。
そして、そのための人柱?艦柱?になると言っているんだ混乱が大きくならないわけがなかった。
確かに今の話の通り行けば間違いなく世界は荒れるがひとつにまとまっていくだろう。
霧の大戦艦トサの犠牲の上に……。
「協力の話だが、断らせてもらう」
「……」
「無表情」そんな言葉が聞こえてくる姿だった。
「俺は霧とも話せば分かり合えると思ってる」
「……」
「それはトサ。君が証明してくれた、だから俺は俺なりに道を探してみる」
「そうか……」
「だからこの話は断らせてもらう」
「……わかった」
トサの態度は終始素っ気なく常に無表情だった。
だが人と同じように心がありただの兵器には見えなかった。
俺は霧と人類の共存はできると思ってる、現にトサやイオナとは話ができるのだから。
(トサを犠牲にすることなく霧と人の共存のために俺も頑張らなきゃな)
「群像大丈夫?」
「あぁ、大丈夫だ」
「……」
「これからも頑張ろうなイオナ」
「…うん……」
俺はイ401から離れていくトサを眺めながらイオナと話していた。
そして俺は実感していた、俺の考えていたことは夢物語ではないと、霧と人類の共存は可能だと……。
「だから!こいつが俺に文句言ってきたのが……」
「はぁー?何言ってんのよ!杏平の癖に!オタクの癖に!」
「オタクなのは関係ねぇだろ!」
「これどうしましょうか?」
「艦長に任せましょう……」
なお、艦内は群像とイオナが去った後さらに荒れていた。
僧は心の中で「艦長、早く帰ってきてください!」と叫んでいたのだが……。
その頃の艦長はトサとの会話を済ませてメンタルモデル2人とお茶していた。
大丈夫か401?
アンケートよろしくお願いします。
次登場するメンタルモデル
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カガ
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フソウ
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ヤマシロ