周回しながら書くのキツ……
ベル・クラネル
Lv1
力 :H120→E401
耐久:I42→G249
器用:H139→E453
敏捷:G225→D507
魔力:I0→I0
《魔法》
【】
《スキル》
【
・早熟する
・想いを紡ぐ限り効果持続
・想いを紡ぐほどに効果向上
・条件を満たせばこのスキルは昇華される
「―――嘘だろ…?」
ヘスティアは愕然とした表情で手の動きを止めた。
眼下にあるかわいい眷属の背中、そこに秩序だって書き込まれた聖火と炉の
眷属に与えられし成長過程を数値化するそれを彼女は戦慄の眼差しで見つめていた。
あの朝帰りを通り越して昼帰りした事件から一日が経った。
極度の疲労により、その日一日を使って睡眠に費やし、早い時間帯に起きた二人は現在、取り敢えずという事で【ステイタス】の更新を行っている。
因みにオベロンはというと、昨日オラリオ中に足を伸ばして苦心したというのに、いつの間にかホームで眠っており、更にはそれを自分だけ教えて貰わなかったと不貞寝している。訴訟も辞さない覚悟らしい。
ヘスティアは最近慣れてきたその作業を行い…それがいつもと異なりだしたのはベルの背に浮かび上がってくる【ステイタス】が信じがたい様相を描いていたからにほかない。
――あまりに早すぎる。
実直な感想といえばただそれ一つだ。ヘスティアが『神の恩恵』を刻んでいるのはベルただ一人で、彼女自身伝聞で聞いた程度の知識しか持たず、より踏み込んだ内容こそ知らないものの、これは異様だとはっきり分かる。
(何だこれ…魔力は当然として、耐久以外のアビリティは3ランクも上がっている…)
熟練度など10以上もぽんぽん上がるのは最初のうちだけ。すぐに頭打ちに陥りやすい、と親交のある神に愚痴をこぼされたことがある。
その通り、もし仮に全ての冒険者がベルと同じペースで熟練度が上がっているのなら、オラリオにLv1で燻る冒険者の数はまず居なくなるだろう。そう評する程には、早い。
(こんな飛躍を迎えた原因は……やっぱり《スキル》か…!)
ベルには知らせていない《スキル》。オベロンの口添えにより、嘘をつけない実直な性格のベルには知らせない方がいいと言われ、隠してきていたが、やはり正解だったらしい。
自分よりオラリオ歴が長く、かなりの時間を外界で過ごした、神にも匹敵する経験を持つ彼が今までに類を見ない『レアスキル』と判断したそれ。
恐らくはオベロンが鍵となったと思われる――ダンジョンで救われたと言った事からそう睨んでいる――スキル。
一瞬、その【ステイタス】をありのまま伝えるかと迷ったが、苦悩の果てに、ベルの強くなりたいという意見を組んだ。
正直な所、心配が無いわけではないが、そこも含めて信頼しているのだ。いざとなれば、頼れる団員(人間ではないが)もいる。
ベルの背中を押してやりたいと、ヘスティアはそう思った。
「ベル君、今日は口頭で【ステイタス】の内容を伝えてもいいかな?」
「あ、はい。僕は構いませんけど…」
見上げるベルの瞳を見つめ、告げた。その飛躍ともいえる成長速度を。無論、【
語られる【ステイタス】に驚いた顔をするベルを視界に入れながら、ヘスティアは出来る事に務める。
「…とまあ、熟練度が凄い勢いで伸びてるわけ。何か心当たりとかはあるかい?」
「い、一応……一昨日は9階層まで行ったんですけど……」
「きゅっ!? あ、あほーっ!防具もつけないまま到達階層を増やしてるんじゃない!9って、君確か昨日5階層で死にかけたんだろぉ!?」
「ご、ごめんなさい!?」
ぴょん、とベルの背中から降りたヘスティアは一方的にまくし立てた。ベルは服を着ることも許されないまま、極東でいう正座の姿勢でしゅんと小さくなる。
話し合いの後、ベルとヘスティアは互いに誓った。眷属は神様を悲しませない事を、主神は子の成長を望むことを。
「ふう…それじゃあ、ボクは何日か留守にするよ。……友人の開くパーティーがあってね。行く気はなかったんだけど、やっぱり久しぶりに顔を出そうかと思ってね」
「だったら遠慮なく行ってください。友達は大切ですもんね」
そう了承し、ヘスティアは少し悪いと思いながらもクローゼットを漁る。オベロンの購入したベッドで手狭になりつつあるが、その分収納や管理が行き届いている為、存外小綺麗に纏まっている。
物色した衣服で一番マシな物を詰め、部屋の外へと向かった。
ドアに手をかけたところでもう一度ベルの方を向く。
「ベル君、もしかして、今日もダンジョンにいくのかい?」
「そのつもりですけど……やっぱり駄目ですかね?」
約束をした手前、流石に自重すべきかと準備の手を止める。
その気まずそうな顔には一笑して紡ぐ。
「ううん、いいよ。約束を守ってくれるなら、ね?怪我は残ってないようだけど、油断しちゃダメだよ」
「はい、ありがとうございます」
そう言って外出する神様を見届け、僕はまずヴァリスを確認する。今日はダンジョンへ行くよりも前に行かなければならない場所が二つあるのだ。
♢♢♢♢
「ふう…まさかバベルで装備を買えるなんて思ってなかったけど、いい買い物したな」
ホームから出た僕はまず『豊饒の女主人』へと赴き、払っていなかった食事代を返金した。…まさかあの狼人の青年が払っているとは知らなかったけれど。……いつか返そう。そんな機会あるかなぁ?とは思うけど。…まあ、頭の片隅に置いておくことにしよう。
次に訪れたのは武具屋。最初は適当に探そうかとも思ったけど、ベテラン冒険者であったリューさんから、バベルに【ヘファイストス・ファミリア】のテナントが建っていると聞き、そこならば低いレベルに合わせた装備も揃っていると太鼓判を頂いた。
行ってみると、確かにヘファイストスのロゴこそ入っていないものの品揃えも品質も良いものだと感じられた。無印良品というのだろうか?
まあ、ともかくそこで僕は『ヴェルフ・クロッゾ』氏作である新しい防具『
この資金は一昨日僕が拾っていた魔石とドロップアイテムによるもの。より深い層の代物だからか、いつもより収入は多く、更には僕の回収していたのが希少種である『ブルー・パピリオ』のドロップアイテムだったのだから驚きだ。おかげでいい値がつき、今回の装備を妥協せずに済んだ。
「おかえり〜ベル君」
一度持ち物を整理しようかとホームに戻ると、オベロンさんがテーブルでメロンを食べていた。
「あ、起きたんですねオベロンさん。ところでそのメロンは?」
「少し遅れたけどおはよう。ふふっ…君はこのメロンの品種を知っているかい?」
これ見よがしに掲げたメロンはとても瑞々しく、色艶や肉厚さも良いものの様に見える。……僕にはそのような審美眼はないので素人目の判断に過ぎない。
品種といわれても、そもそもオラリオに来るまでに品種というものすら知らなかった田舎出身だ。当然、メロンなんていう高価な果物を買うはずもないからどんな品種があるのかすらも理解していないのが現状だ。
僕が頭上に疑問符を浮かべるのを満足そうに眺めたオベロンさんは新しいお皿に切り分けながら答えを言う。
「これは【デメテル・ファミリア】が栽培に成功した『オベロン』という品種さ」
「!それって…」
「そう、僕の名前だね!実は僕、【デメテル・ファミリア】ともちょっとした縁があるんだ。それでメロンを作るって言うから、僕も協力してたら予想以上に興に乗っちゃって……。開発改良にかなりの資金を費やしたほどだよ」
知らなかった。まさかウチ…というよりオベロンさんがそんな有名な所に関わっているなんて。
「って!もしかしてファミリアの資金とあの借金の量は…!」
「あ、しまった!いや、これは違うんだ、その………半分あげるから許して!」
思わず、といった枕詞が似合う表情で必死に弁明するオベロン。差し出されたメロンはこれまでに見たことがないほどに美味しそうだ。とても食べてみたかったが、唾を啜り堪える。
「い、いえ。それは神様へのお土産として」
「でも彼女暫くは帰ってこないんだろう?もう切っちゃったし、ベル君が食べなよ」
「でも…」
「大丈夫、優先契約は協力者特権で確保してるから、今度はみんなで食べよう。今回はそうだね……一昨日頑張った君へのご褒美、なんてどうだろう?」
口ぶりから、初めからそれが目的らしい事が分かった。食べようとしない僕に、遠慮がちに「駄目かい?」と悲しそうに問う。
もう、そんなことを言われたら断れないじゃないですか。
「おっ…美味しっ…!な、なんですかコレ!?こんな美味しい果物なんて食べた事ないですよ僕!?」
じゅくり、と豆腐の様にスプーンが滑らかに入る。しかしただ柔らかいと言う訳ではなく、ぎっしりと身が詰まっており、まるで黄金を乗せているかのようなずっしりとした重量感。
口に含めば見た目に違わず溢れ出す果汁。果実酒とは比べ物にならない程濃厚で、それでいて重くない。むしろ次へ次へと口に運ぶ手を止められない。
メロンを半分渡された筈だが、いつの間にかそれは消え失せていた。
「本当に美味しかった…。これとんでもなく高くても絶対買うって人いますよ」
「ははは、それはそうだろう。僕ですら唸るような物に仕上げたからね。因みにこれ一玉で8万ヴァリス。三日前の初競りだとどこかの富豪が二玉で300万も出したと聞くし、かなりいいんじゃないだろうか」
「さっ…!?」
今なんて?さんびゃくまん…300万ヴァリス!?
嘘でしょ、果物にそんな値段がつくとは思ってなかった。そして300万の衝撃で薄れてしまったが、8万というのも相当に高価である。
一般的な冒険者の5人パーティーで、一日中ダンジョンにもぐって稼げる平均が2万5000だという。分ければ5000。単純計算で16日分の給料である。実際は生活費や探索費などがかかる為、もっと必要だろう。
因みに今の僕の装備は合計しても3万に届かない。
しかし、驚愕する気持ちと同時に、あの味ならば納得だという感想も抱いていた。食事や嗜好品に莫大な額を使う人の気持ちがちょっとだけ分かった気がする。
「……あ!そうだ、僕ダンジョンに行くんだった…」
あまりのおいしさに頭から抜け落ちていた。危ない危ない。持っていたお金と不必要な物をしまいこみ、新調した武具を早速装備する。
僕の見立て……というか直感どおり、その鎧は最初から僕のものであったかのように体に馴染み、動きに支障は無い。
「それじゃあいってきます」
首だけを回して呼びかけるが返事はない。
それはそうだろう。中に誰もいないのだから。これにはベルも首を傾げる。はて、ここに居たはずのオベロンさんはどこへ行ったのか。
少し隠れられそうな場所を見たが、影も形もない。最終的に(妖精だしそんな事もあるか)と納得させた。
「よし、今日は取り敢えず8階層まで行こうかな」
一昨日、止められた場所の一つ上。しかしあの時とは違いしっかりとした準備も、上昇した【ステイタス】もある。
ちゃんとパープル・モス対策に解毒薬を【ミアハ・ファミリア】から買ってある。
思わぬ寄り道で遅れた時間を取り戻す様に走る、走る、走る。
道中、仲良くなった人たちからの激励も貰い、ウキウキとドキドキの入り混じった心で大穴へと爆進していった。
「いっくぞ―――!」
♢♢♢♢
今から少しだけ前の時間。
ダンジョン内のある階層、ある場所にて。
「やあ、久しぶりだね」
オベロンはそこに座り俯いている人影へと声をかける。
それで気がついたのか、その人影が顔を上げる。目元までを覆い隠すフーデットローブを身にまとい、口元に巻かれたマフラーは僅かな露出すら許していない。その姿は控えめに行って不審者そのものであり、この格好では精々が身長しか予測出来ないであろう。
その影はパタパタとオベロンの元まで進み、どこか嬉しそうに見える。
「………!」
「来るのが遅れてごめんね。寂しかったかい?」
「………!?」
影は何も答えない。ただ、ぶんぶんと首を横に振って、蠢く虫達を指した。
「ああ、この子達がいるから…。…ごめんね、僕としてもこんな所に置いておくのは忍びない」
「………」
またも、否定。オベロンは悲しそうに語る。
「…君はそういう人だったね。まあ、もう少しだよ。もう少しで地上に帰ることも出来るんだ。僕も、君みたいな子がいるのは耐えられないからね。もう一年もかからないと思う。…後ちょっとの辛抱だよ。それにこっちに来れる頻度も増やせそうだ」
ピクリ、今の言葉のどれに反応したのか、嬉しそうに口角を上げる。
「ああ、ああ、大丈夫。きっと大丈夫さ。よく頑張ったね」
「………っ…!」
「布石も揃ってきてる。本当にすまないんだけどあと少しだけ力を貸してくれるかな?」
「………!」
「ありがとう。……何?…ははっ、そうかい。それは、嬉しいな」
和やかに交わされる会合も終わりの時間はやって来て、おみやげを置いて立ち上がる。
「それじゃあ、僕は行くよ。また少しだけ寂しくしてしまうけど…また近い内に来るよ」
オベロンが立ち去ると、再び元の通りの静寂が訪れ、ピタリと口を閉ざした影は最初の位置に戻って蹲る。
ぐすり、ぐすりと、暗い暗いダンジョンの中に、啜り泣く声が静かに響き渡った。
実はタイトルにネタバレがあったりなかったりテキトーにつけてたりします
この中で好きなキャラは?(一位のキャラは登場し、最下位は愉悦展開にする予定)
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アーディ・ヴァルマ
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フィルヴィス・シャリア
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レフィーヤ・ウィリディス
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シャクティ・ヴァルマ