鴻渡千歳は救われたい -僕のヒーローアカデミア ATONEMENT-   作:佐鳥五鹿

5 / 10
第2.5話 『治癒』を貰った時の話

 千歳がリカバリーガールのもとを訪ねたのは雄英高校推薦入試の日、試験が終わった後のことだった。

 

「あの、リカバリーガールさん…いえ、先生」

 

「はいはい。おや、あんたは」

 

「鴻渡千歳です。リカバリー先生にお願いがあるのですが」

 

「うん、言ってみなさい」

 

「…『治癒』の"個性"を私にも使わせてもらえませんか?」

 

「どこか怪我したのかい?」

 

「いえ、そうではなくて…」

 

「…なるほど、あんたの"個性"の話だね」

 

「はい。私自身の怪我なら『超回復』という"個性"で治せるんですが他人の怪我を治すことはできなません。ですから『治癒』を使えるようになりたいんです」

 

「あんたの『チートコード』で"個性"をコピーすると私に何か影響はあるのかい?」

 

「いえ、何もありません」

 

「なら黙ってコピーしても気付かないと。それでもお願いしてきたってことは同意がなければコピーできないのかね」

 

「いえ、コードの取得にはそのような条件はありません。

 ヴィランを除いて、私を信じて託してくれる人からだけコードを取得させてもらうことにしているんです。もしも私が勝手に取った"個性"で誰かを傷つけるようなことがあれば、その"個性"の持ち主は責任を感じてしまうかもしれませんから。

 もっとも、『治癒』は誰かを傷つけることはないと思いますが」

 

「いいや、『治癒』はそんなに万能でもないんだよ。元々人が持ってる治癒力を活性化させるだけだからね、体力を消耗させちまうんだ。大怪我を治そうとしたら逆に死んじまう」

 

「…それって、もしかして怪我がない状態で『治癒』を使ったら」

 

「賢い子だね。そう、過回復は人体にとって毒になる。『治癒』だって使いようによっては簡単に人を殺せちまう”個性”だってこと、忘れちゃいけないよ」

 

「……はい」

 

「うんうん、それじゃ持っていきな」

 

「……え? いいのですか?」

 

「イレイザー達から話は聞いていたし実は最初から渡すつもりだったさね。話して確信したよ、あんたなら悪用することはないだろさ」

 

「ありがとう、ございます。……コード・アクワイア」

 

「……? 終わったのかい?」

 

「はい。『治癒』のコード、確かに拝受いたしました」

 

「本当に何も起こらないんだね」

 

「そうらしいです。私には光り輝いたリカ先生の身体からコードの文字列が解き放たれて、そのコードが私の身体に吸い込まれる様が視えたのですが」

 

「そいつは興味深いねぇ。……一つ聞いても?」

 

「なんでしょうか」

 

「イレイザーの『抹消』をコピーしないのは何でなんだい?」

 

「……私は何にでもなれてしまいますので、近くにいる人の居場所を奪うようなことはしません。リカ先生の『治癒』は何人いてもいい”個性”なので例外なんです」

 

「それじゃ雄英に入っても生徒の”個性”をコピーしない、と」

 

「はい。どうしても必要に迫られなければ、そのつもりです」

 

「苦労する性分さね……」

 

「……それにあの人、かなり無茶するタイプじゃないですか。『抹消』なんてレアな”個性”を持っているからギリギリのところでブレーキかけてますが、私というバックアップができてしまったらきっと……長生きはできないかと」

 

「そいつはあるかもしれないねぇ」

 

「……もう、私のせいで誰かが死ぬのは見たくありませんから」

 


 

"個性"の元の持ち主紹介

 

『強化睡眠記憶』 村上 鋼

千歳の”個性”が発現して間もなく出会った少年。千歳の1歳年上。当時は自分の個性が嫌いで仕方なかったが、千歳と交流する内に友達も増えて克服した。千歳とは学区が違ったため自然と疎遠になってしまったが、お互いのことは今でもよく"覚えて"いる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。