鴻渡千歳は救われたい -僕のヒーローアカデミア ATONEMENT-   作:佐鳥五鹿

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第3.5話 千歳はエンデヴァーが嫌い

 戦闘訓練の授業が終わりホームルームの後、クラスでは今日の感想戦をするのだと何人かが集まっている。

 

切島

「爆豪、お前も来いよ!」

 

芦戸

「意見交換しよ!」

 

 そんな流れを無視してさっさと鞄を持って教室の扉に向かう爆豪くん。

 止めようとする声がかけられたが爆豪くんは行ってしまった。

 

上鳴

「何だよ、あいつ」

 

蛙吹

「そんなに負けたのが悔しかったのかしら」

 

 私はそんな爆豪くんを追って席を立つ。引き止めるつもりはないけど話したいことがあったから。

 

葉隠

「千歳も帰っちゃうの?」

 

鴻渡

「いえ、すぐ戻ります」

 

 言い残して教室を出る。

 

 少し離れた場所に爆豪くんの後ろ姿を見つけたので追いかける。追いついた時には下駄箱で靴を取り出そうとしていた。

 

鴻渡

「爆豪くん」

 

爆豪

「……んだよ、俺を笑いに来たのか?」

 

鴻渡

「笑いに、ですか? 確かに昨日は大見得切った挙げ句に私に何一つ勝てなかったし、今日も緑谷くん相手にムキになった結果負けた、いいとこ無しのとんだ道化ですが」

 

爆豪

「喧嘩売ってんのか」

 

鴻渡

「……すみません。別に爆豪くんのこと嘲笑したり見下したりするつもりはないんです。昔から言葉選びのセンスが壊滅的だと言われてるんですが中々直せなくて。それであの、話したいことがあるのですが」

 

爆豪

「話す気なんてねぇよ」

 

鴻渡

「そんな、ひどい」

 

爆豪

「問答無用で話し続けるつもりじゃねぇか」

 

鴻渡

「爆豪くん、もしヴィランに操られて爆破テロをさせられた一般市民がいたらどうしますか?」

 

爆豪

「……ヘドロの時のこと言ってんのか」

 

鴻渡

「ヘドロ……? あぁ、爆豪くんの話じゃありませんよ。私の地元で起こったポップ☆ステップ事件と呼ばれている事件の話です。

ポップ☆ステップと名乗ってご当地アイドル活動をしていた人が、脳に寄生する蜂に操られて自分の意思とは関係なく街を破壊してしまったんです」

 

爆豪

「……」

 

鴻渡

「彼女の対処に多くのヒーローが集まりました。そのヒーローチームのリーダーとなったのはエンデヴァーだったんです。

エンデヴァーはポップ☆ステップを救うべき一般市民ではなく凶悪ヴィランと断じました。

そして、彼女を助けようと独自に動いていたヴィジランテのザ・クロウラー諸共ポップ☆ステップを焼き殺そうとしたんです」

 

爆豪

「ヴィジランテってことはお前の…」

 

鴻渡

「……はい。ザ・クロウラーもポップ☆ステップも私の大切な仲間でした。

私はその時エンデヴァーに寄生蜂は駆除できる事を伝えポップ☆ステップを助けてほしいと訴えましたが、一顧だにもされませんでした。

幸いザ・クロウラーはポップ☆ステップを連れて離脱に成功し、寄生蜂は駆除されてポップ☆ステップは病院に収容されました。

私はエンデヴァーをヒーローだと認めていません。あの時あの場に居てくれたのがオル先生やイレ先生だったなら、きっとザ・クロウラーと協力してポップ☆ステップを救ってくれたはずです」

 

爆豪

「……なんでそれを俺に話すんだ」

 

鴻渡

「爆豪くんが……エンデヴァーに重なって見えるからです」

 

爆豪

「……」

 

鴻渡

「強さに固執して人として大事なものを見失わないでください。エンデヴァーのようなヒーローにはならないでください。私が言いたかったのはそれだけです」

 

爆豪

「……俺は――」

 

緑谷

「かっちゃん!!! ……と千歳さん!?」

 

鴻渡

「おや、緑谷くん」

 

爆豪

「チッ……次から次へと」

 

緑谷

「あ、あの、かっちゃんにどうしても言わなきゃいけないことがあって」

 

鴻渡

「私の話は終わりましたのでどうぞ」

 

緑谷

「いや、その、他の人には聞かれたくない話で…」

 

鴻渡

「なるほど、では私は教室に戻り――」

 

爆豪

「……構わねぇだろ、こいつにも聞かせてやれよ」

 

緑谷

「でも、えっと…」

 

爆豪

「こいつも周りの連中に弱み握られてる状況で他人の秘密を暴露したりしねぇよ」

 

緑谷

「弱み…?」

 

鴻渡

「後で説明します」

 

緑谷

「…わかった。僕のは人から授かった"個性"なんだ。誰からかは絶対に言えない。おまけにまだろくに扱えもしなくて……全然モノに出来てない状態の"借り物"で……。だから使わずかっちゃんに勝とうとした。けど結局勝てなくてソレに頼った。僕はまだまだで…だから――いつかちゃんと自分のモノにして"僕の力"でかっちゃんを超えるよ」

 

爆豪

「……今日俺はてめぇに負けた」

 

緑谷

「……え?」

 

爆豪

「氷の奴見て、敵わねえんじゃって思った。ポニーテールの奴の言うことに納得しちまった」

 

鴻渡

「緑谷くんは見ていないと思いますが、轟くんはビル全体を凍結させて瞬殺しました。八百万さんは一戦目の講評を的確にしていました」

 

爆豪

「そこの眼鏡女についてはもう意味分かんねぇ。底が全然見えねえ」

 

緑谷

「そんなに凄かったの…?」

 

鴻渡

「録画をオル先生からもらったので教室で見られますよ」

 

爆豪

「だから、こっからだ。俺はここから、ここで一番になってやる。デクには2度と負けねえ。眼鏡女にもすぐに追いついてやる」

 

緑谷

「かっちゃん……」

 

鴻渡

「爆豪くん……その眼鏡女って呼び方どうにかなりませんか」

 

緑谷

「今その反応!?」

 

爆豪

「ハッ! やっぱ意味わかんねぇわこいつ」

 

オールマイト

「いたー! 爆 豪 少年!!」

 

鴻渡

「あ、オル先生」

 

オールマイト

「言っとくけど…! 自尊心ってのは大事なもんだ!! 君は間違いなくプロになれる能力を持っている!! 君はまだまだこれから…あれ、緑谷少年に鴻渡少女?」

 

爆豪

「離してくれよオールマイト。言われなくても俺はあんたをも超えるヒーローになる」

 

オールマイト

「あ…うん……」

 

爆豪

「じゃあなデク、鴻渡」

 

オールマイト

「もう立ち直ってた…教師って難しい」

 

鴻渡

「……緑谷くんの"個性"ってオル先生のですか?」

 

緑谷

「え!!? いや、そんなまさか、そそそそそんなわけないじゃないじゃない」

 

オールマイト

「緑谷少年! 喋ってしまったのかい!!?」

 

鴻渡

「緑谷くんも私と同じで他人の"個性"を使うタイプの"個性"だったんですね」

 

緑谷・オールマイト

「……え!?」

 

鴻渡

「慣れない"個性"だったからあんな怪我をしてしまったと、腑に落ちました」

 

緑谷

「えーあー…じ、実はそうなんだ! でもオールマイトの"個性"使ってるなんてズルいと思われるかもしれないから内緒でお願いします!」

 

鴻渡

「ええ、誰にも言いませんよ。それじゃあ教室に戻りましょうか」

 

オールマイト

「すまない、緑谷少年に少し話があるから先に一人で戻っていてくれるかい」

 

鴻渡

「わかりました。緑谷くん、皆教室で待っているので早く来てくださいね」

 

緑谷

「あ、うん。すぐ行くよ」

 

鴻渡

「それではオル先生、失礼します」

 


 

"個性"の元の持ち主紹介

 

『伝言(メッサージュ)』 音堺(おとさかい) 浪漫(ろまん)

鳴羽田幼稚園の先生。千歳が通っていた頃から今も現役。戦闘訓練での千歳の言動はこの人の影響。「そこにロマンはあるのかしら」が口癖。

 

『どっきり☆バルーン』 ジャック=似里(にさと)

『縮小』 洲藻粳(すもうる) 来兎(らいと)

東鳴羽田ホッパーズカフェの常連客。昔は二人でつるんで悪戯をしては騒動を起こす悪ガキとして有名だった……らしい。




デクもかっちゃんも原作に比べてワンテンポ落ち着くタイミングがあったのでだいぶ冷静になってます
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